旧約:とある戦士達の黙示録   作:一条和馬

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舞台裏と舞台袖

 一方その頃、第一世界ミッドチルダにある最大宗派ベルカの総本山“聖王教会”

 

 

 その一室で、クロノ・ハラオウンはとある女性と深刻な表情で向かい合っていた。

 名前はカリム・グラシア。

 聖王教会の教会騎士団所属の騎士の一人で、昔からクロノやはやてと友人関係と持つ女性である。

 

 

 クロノが本局を抜け出し、聖王教会にまで顔を出していたのは、今回の事件について彼女の見解を直接聞くためであるのと、もう一つあった。

 

 

「騎士カリム。頼んでいた例の件、何か進展はあったか?」

「今回機動六課が関わっている一件に、古代ベルカが関係あるかっていう貴方の読み、こちらも気になって調べたの。予想は的中みたいね。“|預言者の著書《プロフェーティン・シュリフテン”の後押しもあって、その見解は確実になったわ」

 

 

 預言者の著書とは、カリムが持つ古代ベルカの希少技能のことで、一種の未来予知能力である。

 が、かなり曖昧で、カリム本人も、「よく当たる占い程度のもの」と自負してはいたが、機動六課創設に深く関わっているもので、いかんせん全くあてにならないわけでもなかった。

 

 

「所で、はやて達と連絡がつかなくなったっていう話を小耳に挟んだのだけれど、そっちはどうなっているの?」

「それはこちらでも調査中だが、定期連絡が途絶えてしまっている以上、何かしらのトラブルがあったと思っていいだろう……まぁ、はやて達の事だ。そう簡単にやられはしないとはわかっているのだがな」

「……それもそうね。じゃあ、私達は私達のすべき事に挑みましょうか。彼女の言葉を借りると、全力全開!ってところかしら?」

 ちょっとしたジョークも交えながら、カリムは部屋の中央に幾つかの立体映像を映し出した。

 中世のヨーロッパ風な部屋にミスマッチなその映像には、古代ベルカ史に残る、厳選されたデータが写されていた

 

「アースラからの定期連絡の最後にきた“アグニシステム”とやらの実態から聞かせてもらおうか?」

「アグニシステム……“ゆりかご”を発掘した古代ベルカ人が、護衛艦として開発されていた“大砲(アグニ)”の名を持つ戦艦……ただ、ゆりかごの解析が進むにつれ、護衛艦が必要かという見解を持つ者が増え、結局制作されることなく歴史の闇に葬られたベルカ負の遺産の一つね。」

「……今の話で気になることがある。」

 立体映像を見ていたクロノが、ふと、カリムの方を向いた。

 

 

 

「完成していないものが、何故今になって現代に現れた?」

「私もそこが気になって更に調べたのよ。そしたらとんでもないものを見つけちゃったのよ……」

 

 新しい映像がクロノの前に映し出される。

 そこには、一冊の本が映し出されていた。しかし、彼にとってそれは十年以上前から知っているものであった。

 

 

 

 

 

「闇の書………か」

「闇の書の中には、幾つかの負の遺産のデータが入っている……その一つがアグニシステムってことなのよ。しかも、ゆりかごのおもり役を命じられていた時より厄介な性能を持った状態でね」

「厄介な性能?」

「闇の書に載っているアグニシステムには、“無限増殖”と“女王による統括”機能が搭載されているのよ。」

「増殖に統括……まるで蟲だな。」

「そう。例えるなら、寿命のない女王蜂から無限に湧く兵隊蜂ってところかしらね。ただ、その蜂とは決定的に違う点が一つだけ……女王、つまり本体が消滅すると、兵隊……分裂体も消滅するっていう所」

「つまり、女王を討てば良いわけだな?」

「簡単に言うとね。でも、そんなに単純じゃないのよ。アレは言わば単細胞生物」

「雌雄の区別があるとすら思っていなかったが……いや、待ってくれ。だとすると……」

「そう。分裂時は全然違うけれども、時間が経つにつれ全く同じ形状になるのよ。つまり……」

「時間が経てば経つほど、女王を探すのが難しくなるわけか……」

 クロノの言葉に頷くカリム

 

 

「事を起こすなら、早いほうが良いわね。」

「そうだな。」

 

 

 ひとしきり会話を終えた二人は、各々通信を始めた。

 

 クロノの通信相手は、本局でくつろいでいたヴェロッサ・アコース査察官であった

 ヴェロッサ・アコースは、時空管理局の本局査察部に所属する査察官で、カリムの義弟の男性である。

 

「アコース、こちらでの用事は済んだ。私が戻る前にクラウディアと、他の艦の発艦準備をしておくように整備員に伝えておいてくれないか?」

「提督殿のご命令じゃあ逆らえないね。で、すぐ戻って来るのかい?」

「いや、ちょっと寄る所がある。少し時間が掛かるだろうな。」

「わかったよ。じゃあ、姉さんによろしく伝えておいてね。」

「ああ。」

 

 

 

 

 

 一方、カリムは隣の部屋で待機していた自分の秘書であるシャッハ・ヌエラに連絡を入れていた。

 シスターシャッハは、幼いころからカリムとアコースの護衛を勤めていた修道騎士で、双剣型アームドデバイス“ヴィンデルシャウト”を扱う彼女の腕は、シグナムと互角に渡り合える程のものである。

 

 

「シスターシャッハ、クロノ提督をある場所まで送ってくれませんか?」

「騎士カリムが調べていたアレ関連のものですね? かしこまりました。」

 

 

 数十秒後、修道服に身を包む女性が現れた。シスターシャッハである。

 

「では騎士カリム。私はこれで。」

「次会うときは、こんな堅苦しい内容の話じゃなくて、もっとのほほんとした日常的な会話がしたいですね。」

「全くです。その時には、はやて達も交えて。」

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 かつて、ロシアと呼ばれた雪原の地で、正統王国の兵士であるクウェンサーとヘイヴィアは近くの山を見ていた。

 

 

「……なぁ、クウェンサー」

「何? もしかしてまた鹿狩りを手伝えってか?」

「それ良いな!………じゃなくて!」

 ちぇ…っとテンションを下げるクウェンサー

 

 

「今回のアレ、お前はどう思う?」

「アレってなんだよ」

「ほら、スターライトなんとかとか、突如オブジェクトが姿を消すとか。しかも二体もだ。」

「あんまり深く考えないようにはしてたんだがな。」

「なんだよ学生君。お前は単位以外興味ないのか?」

「そういうわけじゃないよ。ただ、語り始めたらきりがない気がしてさ。」

 そういうと、クウェンサーの目つきがガラッと変わった。

 

「だってさ! 宇宙からの謎の光! それはお嬢様のベイビーマグナムを一撃で撃墜するほどの高威力! さらにその直後、全長五十メートル以上あるオブジェクトが二体も行方不明! これはまさに宇宙人が関わっているに違いない!」

 

 やべぇ……変なスイッチ押しちまった。と後悔するヘイヴィア

 

「う、宇宙人ねぇ……」

「だってさ、そう考えるのが一番現実的じゃないかな?」

「しかし、何で宇宙人なんだ? どこかの国の最新兵器とか、そんな考えはねぇの?」

「………いや、確かにそうは思ったけどさ、ほら、少しはそういうロマン溢れる事を夢みたいじゃん?」

「そんなもんかぁ……?」

 はぁ……と、肩を落とすクウェンサー

 一方のヘイヴィアにはオカルト寄りの神秘はピンとこないらしい

 

「……でもさ、ヘイヴィア。仮に、本当に宇宙人……またはそれに関する何かだったら……どうする?」

「どうするったって……俺らじゃどうしようもねぇだろ。」

「そいういう事」

 一面真っ白な雪原を見ながら、ぽけーっとする二人

 

 

 

 

 程なくして、何かが近づいてくる音がした

 振り返ると、そこには一方通行がいた。

 

 

「よォ。二人で秘密のデートか?」

「ラブラブって……一応、俺には婚約者がな……」

「まぁまぁヘイヴィア。そう簡単にジョークに引っ掛からない」

「俺ァ半分本気だったんだがな」

「そうですか……所で、一つ気になる事が……」

「なンだ?」

 ギロッ……っと、鋭い目付きでクウェンサーを見据える一方通行

 悪魔の様な目付きに、一瞬たじろぐクウェンサーだったが、どこか敵意や殺気は感じなかったので、そのまま会話を進める事にした

 

 

「実はさ、学園都市とか、超能力者の話はよく知らなくてさ。教えてほしいなー…なんって」

「おい、クウェンサー……いくら何でも失礼じゃないか?」

「なんで?」

「いやだって学園都市は……」

 

 

 半世紀前に消えた────と、言う前にヘイヴィアの言葉は一方通行に阻まれた。

 

 

「気にすることじゃねェ。事実、学園都市の崩壊についての表立っての情報は少ない。気になるのも無理はないだろう」

 

 手近な木をつま先でつつく一方通行。

 するとどうだろうか。小突かれただけの木に一条の切れ目が入り、斧で断ち切った様に綺麗な切り株が出来上がったではないか!

 二人の若者が目を見開いて驚くのも気に留めず、その切り株に腰掛ける一方通行

 

 

「さて、何から話そうか……その前に、お前らがどこまで知ってるか……それを聞かせてもらおうか」

「が、学園都市についてか……昔、歴史の教科書をパラパラ読んだ時にちょっと見た程度だなぁ……」

 唸るヘイヴィア

「確か、第三次世界大戦の時、他国のミサイルの一斉射を受けて……」

「本当にそう思うか?」

 クウェンサーの言葉を途中で遮る一方通行

 

「当時、他国の技術力より二、三十年先をいっていた学園都市が、たかが追尾機能が付いた鉄屑の集団に負けるなんて変な話だと思わねェか?実際、大戦中に学園都市があった日本……今ではその名も聞けねェが、学園都市以外は被害が一切無かった……学園都市は、学園都市外である日本すら完璧に守っていたんだよ」

「じゃあ、今、“島国”にある“ブラックスポット”は一体……?」

 謎が解ける度に現れる新しい謎に困惑するヘイヴィア

 

「アレが出来たのは大戦のずっと後だ。表立っての情報は第三次世界大戦中に出来たとされているが、その真実を知っているのは、かつての学園都市の“裏”を知る人物か、“アイアンマウンテン”の“ディスク”って奴位じゃねぇか?」

「……これは、調べるととんでもない事がわかりそうだよね」

「だな。だが、俺が一番知りたいのは、“スターライトブレイカー”についてと、あのオブジェクトが消えた地点についてだな…」

 

 クウェンサーの言葉に便乗するヘイヴィア

 そこまではわからねェな……と返答する一方通行

 

「あ、ここにいた……」

「だろー? ミサカの山勘も案外役にたつもんだ」

 三人がポケーっと時の流れに身を任せていると、お嬢様……ミリンダと、ミサカ番外が草の根分けてやって来た

 

 

「なんだお嬢様か……そっちはミサカさん……だっけ?」

「ミサカ番外(ワースト)でいいよ。そうしないとお姉様(オリジナル)と被るから」

「?」

「……で、何の用だ?」

 一方通行の鋭い眼差しがミサカ番外を見つめる。もちろんこれにも敵意や殺気は含まれていない

 

「いや、特には。暇だったし」

「あたしも。せいびはせいびへいがやってくれてるし。ごはんもたべたし」

「ご飯……そういや飯食ってないな」

 思い出した様に呟くクウェンサー

 

 

 同時、ガサッ……っと何かが動く音がした

 

 

「お、おいクウェンサー! あれを見ろ!」

 

 丁度、一頭の鹿がこちらを見ていた

 見たこともないものを見るような目で一方通行達を見る鹿だったが、クウェンサーとヘイヴィアは、肉を前にしたライオンの様なオーラを放っていた

 

「ヘイヴィア……」

「クウェンサー……今日はご馳走だ!」

 

 

 アサルトライフルを構えた二人の顔は、とっても活き活きしていたという。

 爆乳お姉さんな上司(フローレイティアさん)にすぐバレて結構な数没収された過去の記憶では、野獣と化した彼らは止められない────

 

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