ここは、時空航空艦アースラのミーティングルームである。
「八神部隊長、あと20分で第97管理外世界の衛星軌道上に到達します。」
「そうか、ほんならシャーリー、これからウチらは最後のミーティングに入るから、そっちは任せるな」
「了解しました」
シャーリーと呼ばれた茶髪で眼鏡をかけた女性はミーティングルームを後にした。
「さて、これが最後のミーティングになるな。」
はやてが真剣な顔になり、機動六課前線メンバーの八人を見渡す。
「これからの任務のおさらいといこか。まず、『時の流れ』の調査。ならびに『ブラックスポット散策』これをいちいち全員でやってたららちがあかん。ふたてにわかれてやってもらうな」
「はやてちゃ……コホン、八神部隊長、その部隊分けをどうやってするの?」
「それやけどな。スターズとライトニングで分けて行動してもらおうと思ってたんやけどな。どう思うかな?」
「私は別に構わないよ。なのははどう?」
「うん、私もそれでいいと思うよ。」
「ほんなら、それで決定な。次に作戦の役割分担になんねんけどライトニングが時の流れ調査、スターズはブラックスポット散策をお願いするわ。あ、そうそう、クロノ提督から、『上条当麻』というご老人に接触してほしい言うお願いがきてな。そっちの方も頼むわ。私やロングアーチ、他の六課のメンバーは衛星軌道上で待機してるから、何かあったらすぐ連絡してな。そしたら、降下ポイント到着まで皆は待機。出撃命令が出るまでに準備を終わらせときや。」
そう言ってはやてはミーティングルームから出ていった。
前線メンバーの八人は出撃前の緊張感を漂わせていた。
ここで、部隊の解説をしておこう。
スターズ分隊は隊長である高町なのはを頂点に、副隊長のヴィータ、フォワードのスバルとティアナで構成されている。
ライトニング分隊はフェイト・T・ハラオウンを隊長に、シグナム副隊長とエリオとキャロの四人編成である。
副隊長であるヴィータとシグナムは、10年前のとある事件をきっかけに時空管理局に勤めるようになった。
2人とも戦闘力が高く、2人がタッグを組むと1つの小艦隊ぐらいなら倒せるくらい強い。
『目標ポイントに到着しました。スターズ、ライトニングのメンバーは降下準備を開始してください』
アースラで通信を担当している女性のアナウンスが聞こえる。
作戦では、アースラは衛星軌道上で待機だが、メンバーの降下時だけ大気圏を抜け、地上に降りる。
『ライトニング分隊の降下ポイントに到着。降下開始してください。』
アースラのハッチがゆっくり開く。
地上を見ながら、フェイトは呟く。
「私達がいた時から百年も経っているんだよね…」
「そうだね、アリサちゃんやすずかちゃん、元気かなぁ?」
なのはが昔を思い出している表情をしながらフェイトをみる。
「もしかしたら、お孫さんまで出来ているかも知れないね」
「そしたら一度会ってみたいな。アリサちゃんやすずかちゃんのお孫さん。」
二人は笑顔になって話していた。さっきまでの緊迫感がまるでウソの様に。
「じゃあ、私達はそろそろ行くねなのは。」
「うん。フェイトちゃん達、気を付けてね」
「なのはもだよ」
この心配しながら、信頼している二人の関係こそ、真の親友であると思う。
「どうしたヴィータ?」
「一言言いに来ただけだよ。……シグナム、気ぃつけろよ?」
「私はお前が心配なんだがな……」
「なんでだよ!私が弱いって言いたいのか!?」
「一人で突っ込んで行きそうで心配なだけだ。」
「余計な心配しなくても、部下の手前でそんな事はしねぇよ。でも、あいつらは私が護るって決めてっから。」
「じゃあ、期待しておくぞ。ヴィータ」
「ああ、そっちも頑張れよ。シグナム」
ヴィータとシグナム、この二人も信頼しあっていた。
二人はとても長い年月共に過ごしてきた為、こうした深い友情が出てきたのかも知れない。
「エリオとキャロも頑張ってね!」
スバルが微笑みながら、エリオとキャロに話しかける。
「はい!頑張ります!」
「スバルさんやティアナさんも、お気をつけて」
「ありがとう。私達は絶対大丈夫だから、あんた達は自分の仕事を頑張りなさい。」
スバル、ティアナ、エリオ、キャロ。
この四人は機動六課設立時に同時に入ってきた新人だったが、いまは数多くの訓練と実戦を得て、『ストライカー』という称号を持っている。
ストライカーとは、『どんなピンチでも恐れず、その人がいるだけでピンチを切り抜ける人』の事である。
「ライトニング分隊、出撃準備完了。出撃します。」
そう言ったフェイトは、開いたハッチから飛び降りた。
続いてシグナム、エリオ、キャロの順番に降りていく。
『スターズの降下ポイントまではヴァイス陸曹のヘリで行きます。スターズの四人はヘリに搭乗してください。』
「ヴァイス君、ヘリの準備出来た?」
「バッチリですぜなのはさん!」
「出発出来る?」
「乗り込んでくれゃあ、いつでも!」
「じゃあ、スターズの皆!ヘリに乗り込むよ!」
なのはに続き、ヴィータ、スバル、ティアナとヘリに乗り込む。
「こっちはオッケーだよヴァイス君!」
「了解!……行くぞ、ストームレイダー。」
『解りました』
ヘリはゆっくり羽を回し始める。
「目標ポイント確認!出発しますぜ!」
ヘリはアースラのハッチから勢い良く飛び出した。
「はやて部隊長、スターズ分隊を乗せたヘリは目標ポイントに向かっています。ライトニング分隊は降下ポイントに無事着地しました。」
「そうか。」
はやてはアースラの艦橋にいた。
「……これが百年後の私達の故郷……」
見渡す限りの広がる荒野を見ながらはやては呟く。
……それから20分後、
「なのはさん! 目標ポイントに着きましたぜ!」
「ありがとうヴァイス君! ハッチ、開けてくれるかな?」
「今開けます! 皆さん、お気をつけて!」
ヴァイス陸曹がそう言った後にヘリのハッチが開く。
「じゃあ、ヴィータちゃん、スバル、ティアナ、行くよ!」
「「了解!」」
「おうよ!」
四人はヘリから飛び降りた。
ヘリから地上までの距離は見積もって数百メートル、彼女達はパラシュートもなしに降りている。
なのはは赤い玉がついたネックレスを取り出す。
「レイジングハート、準備はいい?」
『いつでもいけます』
「よし、レイジングハート! セットアップ!」
なのはの言葉と同時に赤い玉、レイジングハートが輝き、なのはを包み込む。
パンと言う音と共に光が割れ、中から白い服と先端に赤い玉がついている杖を持ったなのはが現れた。
「よし! あたしらもやるぞ! アイゼン! セットアップ!」
『了解』
ヴィータを赤い光が包む。
その中からは赤い服を来たヴィータが現れた。
手にはハンマー型のデバイスを持っている。
「ティア!」
「ええ! いくわよスバル!」
「オッケー! 行くよ、相棒」
「頼んだわよ、クロスミラージュ」
「マッハキャリバー!」
「クロスミラージュ!」
「「セェェェェットアップ!」」
スバルは青、ティアナはオレンジの光に包まれる。
スバルはなのはと同じ服だが、お腹の部分が出ていて、スカートの部分は短パン、頭には白いハチマキを着けている。
足にはローラーブレード、右手には籠手型のデバイス、リボルバーナックルが装着されている。
ティアナは動きやすさを考えた様な半袖の黒い服に白い上着を羽織っている。
片手には白い拳銃型デバイス、クロスミラージュを持っている。
バリアジャケット。
彼女達はそれを展開したのだ。
なのはとヴィータは空中を飛び、スバルとティアナはウイングロードと呼ばれる魔力で出来た道の上に乗る。
彼女たちはゆっくり地面に降り、バリアジャケットを解除した。彼女たちの服装は六課の制服……茶色を主にした服に変わる。
「はやてちゃんは、ここら辺に拠点に使えそうな場所があるからって言ってたけど…………あれの事かな?」
なのはが一つの建物を指差す。
所々が壊れているが、レンガで出来た建物の壁は今でも高貴だったものを連想させられる。
四人はその建物の正門の後らしき所まできた。
「…………ん?ねぇちょっとティア?あれ見て」
スバルがティアナに話し掛ける。
「何か見つけたの?」
「うん。ここに何か書いてあるんだけど………」
「うーん……」
実は、ミッドチルダには日本語が共通言語であるが、字は英語と、ごちゃ混ぜになっている。
「どれどれ……」
なのはがひょっこり顔を覗かせる。
「えっと……常盤台……中学……かな?」
「学校の跡地ね……確かに使えそうだけど……」
ティアナが崩れた校舎を見つめる。
(相当レベルが高かったんでしょうね。この学校……)
レンガ造りの壁は半世紀経ってもその時いかに豪華だったのかを連想させる。
崩壊していると言っても、校舎の半分は残っていて、荒野にたたずむ城の様な存在感があった。
「ティアー! 早くしないと置いてくよー!」
「えっ? ちょっと! 待ちなさいよスバル!」
四人は常盤台中学の校舎の中に入っていった。
「わぁ………すご~い…」
スバルは中を見ながらそんな事を言った。
シャンデリアは蜘蛛の巣があったり、長い間手入れされていないからボロボロになっていたりはしていたが、その存在感で、スバルを軽く圧倒した。
「うーん……」
廊下を歩きながらなのはは学生寮を見ていた。
ほとんどの部屋は中がぐちゃぐちゃになっていた。
「………ん?」
一つの部屋の前でなのはは立ち止まる。
ここは、ドアこそ無くなっていたが、中は案外綺麗だった。
「ここには誰が住んでいたのかな?」
なのはは入り口の横にある金の札を見る。
「………えっと、御坂美琴さんと、白井黒子さんね」
なのはは部屋の中に入っていく。
シングルベッドが二つ、一メートル位間隔を空けて置いてあり、壁の直ぐ横に机と本棚があるだけのシンプルな部屋だ。
しかし、その一つ一つから高級感が溢れていた。やはり金持ちは根本から違うという事か。
【こちら、スターズ1。皆、一度正門前に集合しようか。】
なのはが他の三人に念話を飛ばす。
数分後、四人は正面玄関に集まった。
「さて、皆集まったね。ヴィータ副隊長、スバル、ティアナ、何か変わった物はなかった?」
なのはが四人に問いかける。
「私は向こうの校舎を見てきたが……酷かったな。崩れたり焼けた様な跡の他に、ここにいた人の亡骸も……ずっとそのまんまだったんだろうな……」
ヴィータが報告するが、最後の方は声が震えていた。
「ティアナかスバルは?」
先に言葉を発したのはティアナだ。
「すぐそこの角を曲がった突き当たりの部屋に、大量の機械類の残骸がありました。使えるものはありませんでしたけど……」
続いてスバルも報告を始める。
「私は職員室で探索しましたけど、ほとんど燃えた後のようで……ほかには、あの部屋だけ、爪か何かの跡が……」
「爪?」
スバルの言葉の一つのワードになのはが反応する。
「はい。正確には爪かどうか解らないですけど……そんな感じが……」
「そう……まあ、そこは後で見に行こうか。さて、私の報告いこうか。皆ほど有力な情報は得ていないけど、現地本部として使えそうな部屋を見つけたよ。見晴らしもいいから、誰か来た時にも迅速に対応出来る。うってつけだと思うよ。………私からの報告は以上。後は、皆で職員室を調べてから、部屋で一時待機しましょう。」
そう言った後、四人は目的地の場所を知るスバルを先頭に、職員室に向かった。
「確かに…ちょっと不思議だな」
職員室の壁にある傷跡を見ながらヴィータは呟く。
(…………ん?)
ヴィータは何かに気が付く。
「なぁ、なのは?」
「どうしたのヴィータちゃん?」
「この部屋だけ違うのはこの傷跡じゃねーよな?」
「………?」
なのはは周りを見渡す。
「……あ、確かに………ここだけ……」
「ああ、超能力とかいうやつと魔法が戦ったっていうんだったら、そこら辺で魔力を感じてもおかしくない……おかしいのは、ここだけその魔力量が多い所だな。」
「しかも、その魔力の発信源はこの爪跡………」
「魔法でついた傷……か」
「ここで人が争った形跡はなし……じゃあこの傷跡は一体何の為に……?」
行き詰まった……という表情を見せる二人であった。