旧約:とある戦士達の黙示録   作:一条和馬

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照山最次

 

 

 ──ある晴れた昼、なのは達機動六課スターズ分隊が教会に入り浸り、シメオン四天王である右天を倒してから数日経過していた頃、衛星軌道上に待機していたアースラに、とある男が向かっていた。

 

 

「あかん……いくら後方支援の為とはいえ、こんな長い時間箱詰めやったら流石に疲れてくるわ……」

 

 はぁ…と溜め池をつくはやて。

 

 

「そんな事言わないでください。第一、この様な隊を編成したのははやてちゃんでしょ?」

 

 身長が三十センチ程しかない少女、リインフォースⅡが彼女をなだめる。

 

 

「だってだって~、提案したんはなのはちゃんやで?」

「それを認めたのははやてちゃんです」

「うう……」

 

 

 身長では勝っていても、口では勝てないか……と言いたそうな顔のはやて

 

「むっ!? はやてちゃん? 今なにか失礼な事考えていませんでしたかっ!?」

「えっ!? なんのことかなぁ……?」

「むー……怪しいです」

 

 怒って頬っぺたを膨らませるリインフォースを見て、思わず突っついてみたくなったはやてだが……

 

 

パシュー

 

 

 艦長室のドアが開き、一人の女性が入ってきた。

 

「あ、シャマルやん。どないしたん?」

「もうすぐお客さんが到着するみたいなんで、その報告に来ました」

 

 シャマルと呼ばれた白衣の女性は、突っつき合うはやてとリインフォースを見ながらそう言った。

 

 

「そうか。ならミーティングルームにおった方がええかな? それともこの部屋?」

「団体じゃないから、ここでもいいんじゃないかしら?」

 

 はやての疑問に、シャマルは頬に手を当てながら答える。

 

「そやな。じゃあ、今の内に部屋の片付けしとこうか」

「たいして散らかってませんけどね」

 

 そう言いながらはやてとリインフォースは机上の資料やら本やらを片付け始めた。

 一方アースラ艦内にある連絡用通路には、そのとある男が到着していた。

 

 

「……お待ちしていました」

 

 蒼い狼、ザフィーラが男を出迎える。

 

 

「そんな改まらないで下さい。貴方の方が歳上なんですから」

 

 喋る狼を目前にしても、なんの躊躇いもなく話す男。

 

「では、ユーノ………主はやては多分艦長室にいるだろう」

「ありがとうザフィーラ」

 

 そう言ってメガネをかけた男、ユーノは艦長室に向かった

 

 ユーノ・スクライアは、元管理局局員で、今は時空管理局本局内部にある“無限図書館”の館長を勤めている。

 

 

 十年程前はロストロギアの発掘等を行っていたのだが、その最中に彼は当時普通の小学生だったなのはと出会い、彼女の将来を大きく狂わせたのだが、それはまた別の話。

 

 

 説明している間にユーノは艦長室の前に着いていた。

 

 パシュー

 

 

「あっ! いらっしゃいユーノ君!」

「久しぶり、はやてにリイン。元気だった?」

「それがなユーノ君。私らずっと箱詰め状態やからとっても元気! ………とはよう言えんわ……」

 

 しょんぼりするはやて

 

「そう言えば、クロノ提督はどうしたんですか?」

 

 テンションが下がりっぱなしのはやてに変わってリインフォースがユーノに尋ねる

 

「それがね、スカリエッティが予想より固く口を閉ざしているから、調査員を手伝ってくるとか言って…」

「クロノ君も大変やなぁ~……」

 

 

 いつまでも低いテンションではいられへん! と自分に言い聞かせたはやては少し調子が戻っていた

 

「ほんなら、世間話はこの辺にして、真剣な話いこか」

「ですね」

 

 

 近くにあった椅子に腰かけるはやてとリインフォース

 それに続いてユーノもはやての反対側の席に着いた

 

 

「じゃあユーノ君、今回の現象について何かわかった事はある?」

 

 

 はやての言葉に、ユーノは一度頷いてから答えた

 

 

「一応、全くなかった訳じゃあ無かったけど、根本的な原因までは検討がつかないんだよ。前例がないぶん尚更ね」

「じゃあ、そのわかった部分だけでも……」

「うん。今回の事件の犯人……特定した人物は浮かび上がらないんだけど、ベルカ式の騎士が原因ではないか……と僕は予想してる」

「ベルカの魔法に、世界一つを隔離して時間の流れを早めるような物なんてありましたっけ?」

 

 

 リインフォースが首を傾げながら言う

 

 

「確かに、普通では無理だね。…………でも不可能ではないんだ……」

「……それって」

 

 はやてが言おうとした直前、ユーノははっきりと言った

 

 

「例えば、闇の書とかね」

「…………」

「…………」

 

 はやてとリインフォースは口を紡いだ。

 

 

 

 

 

 十年前……

 

 

 

 闇の書……

 

 

 闇の書の闇……

 

 

 幾つかの単語がはやての脳内を走り回る。

 

 

 

(闇の書事件、そして闇の欠片事件はもう解決済みのハズ…あれの可能性は無いものやと考えた方がええな……)

 

 

 はやては真剣な表情で考える

 

 

(第一、元祖リインフォースが命を張って止めたんや。そんなハズはない。断言出来る)

 

 

 

 

「闇の書以外で考えると、地球に僕達の知らないロストロギアが埋まっていて、何かの手違いで起動した………なんて考え方もあるね」

 

 

 はやての考えている事を察したのかユーノはそう語る

 

「そうかもな。………でも、なんか都合良すぎやないか?」

 

 はやては一つの疑問にありつく

 

 

「“時の捻れ”が発生したのは五年前……ちょうど滞在していた局員が全員本局に戻った時や。偶然にしても話が上手すぎる」

「そこなんだよ。誰か………否、何かの策ではないかとも考えられるね」

「でも一体なんで時を捻れさせたりしたんやろか……」

「………何か時間がいる事をしていたかも知れないね。しかも百年単位の長い時間が」

 

 

 ユーノはどこか遠くを見る目でそう告げた

 

 

 百年もいる事なんて何だろう……と考えながら

 

 長い沈黙を破ったのは、アースラの警報音だった

 

 

 

 ビー! ビー! と艦長室に警報が鳴り響く

 

 それと同時にアースラはガタガタと数回揺れた

 

 

 

「……ッ!? 何事や!?」

 

 

席を立ったはやての横にモニターが現れ、ブリッジクルーの一人、アルトの顔が映る

 

 

「どないしたんや!?」

「大変です八神部隊長!! 大至急ブリッジに上がって来てください!!」

「わかった! すぐ行くから待っててな!」

 

 

 はやてがそう言うとモニターが消える

 

「一体何があったんですか?」

 リインフォースが尋ねる

 

「わからへん……やけど一大事なのは確かやな。マクロスピードでブリッジに行くでリインフォース!」

「はいです!」

 

 

 はやてとユーノ、リインフォースは艦長室から出てブリッジに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───アースラに危機がせまる数時間前、地上……なのは達がいた教会に、一人の男が来ていた

 

 

 

 男はオレンジ色の頭に白い特攻服(背中に夜露死苦と書いてある)を羽織ってタバコを吸っていた

 

 

 

 その男はブレイドの前に立ち塞がっていた

 

 

 

「ここであったが百年目!覚悟しろアダムッ!!仲間の仇……打たせて貰うぞっ!」

(こいつ何の話してんだ?)

 

 

 真剣な表情で喋るオレンジ頭を頭打った痛い子を見るような目で見るブレイド

 

 

 

 

 

 

 これまでの経緯を超簡単に話すと、超いきなり教会にこの男が現れ、超大声で「アダムはいねぇかぁぁぁ!?」と超言ったからブレイドが超呑気に答えたら超いきなり攻撃してきた訳だ。

 

 

「俺の名前は照山最次(てるやまもみじ)照山最次……これ以上言葉は必要ねぇ!!死ね!アダム!!」

 

 

 男の右拳から炎が出てくる。

 

「リトルボーイ!!」

 

 炎を纏った拳でブレイドを攻撃する

 

「くっ!」

 

 両腕で腹をガードし、致命傷を防いだブレイド

 

「もう一発だ! リトルボーイ!!」

 

 今度は右に回避し、照山の攻撃を避ける

 

「…………覚えたっ! リトルボーイ!!」

 

 今度はブレイドの拳が炎に包まれる

 

「のわっ!?」

 

 リトルボーイの直撃を受けた照山は、数回バウンドしながら地面を転がる

 

 

「くっ! …………貴様、覚えるフラグメントかっ!?」

 

 叩きつけられた体を起こしながら照山はそう告げる

 

「だが、同じ技でも、オリジナルより強い筈がねぇ」

 

 照山の拳が再び炎に包まれる

 

 

「馬鹿めがっ!お互い同じ技なら勝負を決めるのは………」

 

 

 ブレイドも拳を炎に包む

 

 

 

 刹那、二人の拳が交わる

 

 

 

 

「拳の堅さだっ!!」

「ぐぉぉぉぉぉ!?」

 

 

 照山の腕から少し血が溢れ出る

 

(くっ!……野郎、なんて硬ぇ拳なんだ!)

 

 出血で痺れる腕を無理やり動かしながら、照山は眼前の敵を見据える

 

(奴の能力は覚える事……長期戦は完全に不利だな。だったら……)

 

 

 照山が右腕を天に掲げるように構えた

 

「一撃で仕留めるまでだっ!」

 

 彼の右腕付近に、火の玉が現れる

 

(遠距離攻撃に切り替えたかっ!?)

 

 とっさに回避体制にはいるブレイド

 

「良いのか!! 貴様がこれを避けると、後ろのジジイはどうなる!!」

「なにっ!?」

 

 ブレイドは後ろを振り向く

 

 

そこには、教会の前に立つ、上条当麻の姿があった・

 

 

「喰らえ!! バルカンショックイグニション!!」

 

 照山はためらうことなく火の玉をブレイドに向かって投げる

 

 

 

 

 

 

 

対してブレイドは、何のためらいもなくジャンプして避ける

 

 

 

「死ぬなよ上田!!」

 

 

 その言葉だけを残して。

 

 

 

 

 

 

 対する一人の老人は、逃げようとせず、ただ、拳を構え、叫ぶだけだった。

 

 

 

 

「ブレイドォォ! だからワシの名前は上条当麻だぁぁぁ! とっとと覚えやがれぇ!!」

 

 

彼の右手が火の玉に向かって伸びる

 

瞬間、爆音が響いた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………のが普通だったのだが、それは起きなかった

 

 

「なっ………!?」

 

 

 その場で驚いたのは、拳を突き出した上条ではなく、しかしゆっくりと地面に戻るブレイドでもなく、攻撃を仕掛けた照山最次本人だった

 

 

 なんせ、自分の必殺と言えた技があっさり消されたのだから。

 

 

 焦る照山に一瞬の隙が出来た。

 

 

「隙ありぃ!!」

「ブルスコァァァ!?」

 

 意味不明な言葉を発しながら、顔面を思いっきり殴られる照山

 

 数メートル飛ばされたその体は、肉体的には大したダメージはなかったのだが、謎の老人に己の技が効かなかったという精神的ダメージの方が大きかった

 

 

 

「くっ! ………俺の負けだ………殺せよ。俺を早く殺せよっ! 俺の仲間の命を奪ったみたいにさぁ!! 奪えよ! 俺の命も! ニードレス狩りなんてしてる野郎に人間の情なんてあるはずねぇよなぁアダム! その手で! その何人もの人間を手にかけた手で俺を殺すがいいさ!!」

 

必死になって叫ぶ照山を見て、ブレイドはただ黙っているだけだった

 

 

「どうしたんだよ!? テメェはアダム・アークライトなんだろ!? シメオンの総帥なんだろ!?」

「いや、俺の名前はアダム・ブレイドだが……」

「…………え?」

 ブレイドの言葉を聞き、照山の目が点になる

 

「…………ユーアーネームイズアダム?」

「イエス。マイネームイズアダム」

「ユーアーネームイズアークライト?」

「ノー。マイネームイズブレイド」

 

 

 数秒間の沈黙が訪れる

 

 

 

「…………俺の早とちり?」

 

 

 照山の言葉に、その場にいた人間は皆頷く

 

 

 

 

 

 そして照山は、こう言った

 

 

 

 

 

「その………ごめんなさい」

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