【5】
テッカマンブレードの仲間であるノアル・ベルースと如月アキの搭乗する宇宙船ブルーアース号がテッカマンブレードの後を追い、その姿を確認した時には、すでに勝負に決着がついていた。
「なんだ? 見た事ない戦闘機がDボゥイを囲っていやがるぜ!?」
「ノアル! あそこ!!」
仲間の危険を感じて武装を使用しようとしたノアルだったが、アキの声でトリガーを掴む前に攻撃を中止した。
アキがコックピットのパネルを操作し、宇宙を漂っていたデブリの一つを拡大する。
否、それはデブリではなく……
「ありゃあ、ラダムのテッカマンじゃねぇか!!」
「見た所、あの戦闘機がDボゥイを援護してくれたみたいね……」
「誰だか知らねぇが、テッカマンをあそこまでボロボロにするたぁ並の連中じゃないって事だな!」
「とりあえず私達も合流しましょう!」
「ラーサ! 手ぇ貸すぜDボゥイ!」
「ブルーアース号! ノアルとアキか!!」
「チッ! ブレードの腰巾着共か!」
悪態を突くエビルだったが、戦況はこちら側に完全に傾いていた。
「アキ! 俺もソルテッカマンで野郎を叩きに行く! ブルーアース号の操縦任せるぞ!」
「ラー……いや、ちょっと待って!!」
レーダーで周囲を観測していたアキが今にも飛び出そうとしたノアルを呼び止めた。
「今度はなんだアキ!?」
「『奴ら』に気付かれたわ! もうすぐ近くまで来てる!!」
【6】
アキが『奴ら』と呼んでいた謎の物体を、ミントが乗るトリックマスターもほぼ同じタイミングで観測していた。
「また何か来ますわ皆さん! 警戒を!!」
『今度はなんだってんだい!?』
「熱源センサーにも反応なし!? 正真正銘正体不明の『何か」ですわ!!」
ミントが再び観測した映像を各紋章機へと送る。
『これは……?』
それは、宇宙の黒よりも漆黒な色をした、球体だった。
全長5メートル前後の凹凸一つない球体が、何かの力を働かせてミント達の方へと文字通り飛んできていたのだ。
『チョコボールですかね?』
『あんなチョコボールがある訳ないでしょう!』
蘭花の疑問に、ミルフィーユがボケて、ノーマッドがツッコむ。
ある意味、ギャラクシーエンジェル隊らしいノリを取り戻しつつあった。彼女らに真面目な話は似合わないのだ!
そんな中、件のチョコボールもどきはミント達の前で急に動きを止め、死を待つ状態だったテッカマンダガーの元へと近づいて行き……。
「……ッ!」
『アレ、もしかして……食べてる?』
黒い球体は、まるでずぶずぶと沼にでも沈むかの如く、テッカマンダガーの身体を取り込んでいく。
「また連中か!」
「いかん! お前たちも早く逃げるんだ!!」
その場から飛び跳ねる様に逃げるテッカマンエビルと、同様に反対へと飛んだテッカマンブレードの言葉が自分たちに向けられているという事に気付くのが遅れたギャラクシーエンジェル隊の面々。
気が付いた時には時すでに遅く、モニターの端々に黒いモヤがかかり始めていた。
テッカマンダガーを食らった黒い球体が膨張し、エンジェル隊を取り囲もうとしていたのだ。
「これは……ッ!?」
『大変ですよ皆さん! この黒いモヤモヤが、紋章機ごと僕たちを取り込もうとしているんです!!』
『なんですって!?』
『チッ! 武装も使えない!! ミント、何かわかるかい!?』
「ちょ、ちょっと待ってくださいまし……」
ミントはトリックマスターの全機能を解放し、周囲の観測を始める。
しかし、普段ならすぐに開始されるスキャンニングが、いつまで経っても始まらなかった。
「いけません! わたくしのトリックマスターも言う事を聞いてくれませんわ!!」
『えぇーん! 私なんて食べても美味しくないですよー!!』
『これは……万事休すと言う奴ですな……』
『結果は神のみぞ知る……』
涙目で猛抗議するミルフィーユの言葉が届くことなく、浸食は進む。
達観しているのか自身の保身に興味がないのか、ウォルコット中佐とヴァニラがそれぞれぽつりと呟く。
「フハハハハ! ブレード! 今回は貴様の命、この変な女達の命と引き換えに見逃してやろう!! だが、次は無いと思え!」
包囲網から脱したテッカマンエビルは黒い霧から全速力で逃げる様にオービタルリングの方へと飛び去って行ってしまう。
『Dボゥイ! ここに居たら、『この前の戦艦』みたく俺達も巻き込まれちまうぜ!』
「いや……まだだ! まだ間に合う!!」
しかし、宇宙の騎士は銀河の天使達を見捨ててはいなかった。
「ペガス! ハイコート・ボルテッカを広域放射して奴らだけを吹き飛ばす! 出力は最低限だ! やれるか!?」
『ラーサ!』
テッカマンブレードの声に合わせて、ペガスが変形を始める。
ブレードの目の前にペガスの変形した腕がグリップとして現れ、それを握ると同時、ブレードの肩部分の装甲が開き、中から淡い緑色の粒子が溢れ始めた。
「ハイコート! ボルテッカァァァァァァァァ!!」
まるでマイクを壊しそうな叫び声と共に放たれたテッカマンブレードの必殺技、ハイコート・ボルテッカはギャラクシーエンジェル隊だけを助けるためにその威力を数十分の一にまで落とし、見事、紋章機の周囲に漂っていた黒い霧だけを吹き飛ばした。
「アキ!」
『奴らの反応は消失したわDボゥイ! 謎の戦闘機からもちゃんと生体反応を確認済みよ!』
「ラーサ! 聞こえるか、戦闘機のパイロット! 生き残りたければ俺達についてこい!!」
『うーん……まだ動けますぅ~』
『ウォルコット中佐。ここはひとまず……』
『……仕方ありませんな。こちら、ギャラクシーエンジェル隊のウォルコット・O・ヒューイ中佐です。そちらの指示に従わせて頂きます!』
「わかった。ノアル。俺が大気圏付近まで先導する。ウォルコット中佐達を後方からサポートしてやってくれ!」
『ラーサ。全く、Dボゥイが率先して人助けとは、明日は槍、いや、神機でも降るんじぇねぇか……?』
無事にラダムのテッカマンと謎の黒い霧を撃退した一行は、一路、その進路を地球へと向けるのだった。