新約:とある戦士達の黙示録   作:一条和馬

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神喰らう者と死神の聖剣(3)

 

 セトとブレイドがソルヴァ達からの依頼を引きうけ、とりあえずの休憩場所として宿屋の一室を貸し与えられていたその頃。

 

 街の外れでは、ケースから神機を取り出したレナ達が遠眼鏡片手に待機していた。

 

「あー、とりあえず、簡単に任務のおさらいをしておこうと思う」

 流石にこのまま何も言わずに時間経過を待つのは如何なものかと思ったのか、リンドウがコウタとレナに説明を始める。

 

「今回の任務は掠奪者を名乗る略奪者集団に襲われている村の救援だ。最も、それはフェンリルギルドから依頼を受けたブレイド達二人の仕事で、俺達は道中の護衛。周囲にアラガミやラダム獣が現れた場合、優先的に撃退する、と。ま、そんな感じだ」

「私達は、その掠奪者とかいう連中を捕まえないんですか?」

 

 初の実地演習にまだ緊張をしつつも、レナがリンドウに質問をする。

「色々規約があってな。神機を『ただの人間』には向けられないんだわ」

「でも、リンドウさん? この辺ってあまりアラガミやラダム獣がいないって聞くんですけど、俺達に出番回ってくるんですかね?」

「何事も平和が一番だと思わないか?」

「そりゃそうですけども……」

「そういう事だ……っと、言ってる傍からお出ましだ。二人とも、向こうの廃ビルの影に白いのが三体居るのがわかるか?」

 

 リンドウに指摘された場所を遠眼鏡で確認する二人。

 そこにあったのは、旧学園都市に存在していたビルの名残。そしてその下を闊歩する、白いアラガミだった。

 刃の様に鋭利な尾と鬼の様な顔を持つ、オウガテイルと呼ばれる種のアラガミだった。

 

「良いか。命令は三つ『死ぬな』『死にそうになったら逃げろ』『そんで隠れろ』『運が良ければ不意を突いてぶっ殺せ』」

「……四つですけど?」

「……ま、とにかく生きのびろ。それさえ守れば、後は万事どうにでもなる」

「はぐらかされた……」

 

 レナの指摘をさも当然の様に流したリンドウは遠眼鏡を仕舞い、神機を肩に担ぐ。

 赤と黒の色でまとめられたチェンソー型の近接型神機が、彼の相棒だった。

 

「さっきの神父たちと言い、実はフェンリルの関係者ってこんな適当な人が多いのか……?」

 疑問を抱えながらも、コウタもリンドウに続き神機の準備を始めた。

 ドラム型と呼ばれる円形のカードリッジを取り付けた機関砲タイプの遠距離神機はその昔、伝説的な活躍を見せたゴッドイーターが使用した物の同型タイプであるらしい。

 

 二人に続き、レナも自分の神機を確認する。

 リンドウとコウタの神機は第一世代神機と言われる現在主力として活躍中の神機だ。

 第二世代のレナの方がむしろ珍しい。

 そんな彼女は取り回しの効くショートブレードと、射程距離こそ短いものの、一撃の威力が高いブラストの武器をチョイスしていた。

 いずれも最初に神機使いに支給されるものだ。

 

 新型は旧型と違って遠近両方を使いこなさなければならず、さっさと自分に合った武器の種類を見つけたコウタと違って、レナはまだ手探りの状態だった。

 今回の装備は、最後の訓練で使用した装備でそのままやって来ただけに過ぎない。

 

「さーて、新人お二人さん、おっぱじめるぞ!」

 

 

 

【5】

 

「……で、何で僕たちは手錠を掛けられて牢屋に放り込まれているのかなブレイド?」

 蝋燭の炎でのみ照らされた薄暗い牢屋の中で、セトは横で同じように拘束されたブレイドに問いかけた。

 

「どうだったか。……しかし、未だに信じられないな。彼女……華夏(かな)たんだったか? 炎と氷、二つの能力を持っていた……」

 

 丁寧な言葉を崩し、悪態を突くブレイドであったが、これは彼の本来の口調である。

 従ってセトはあまり気にした様子は無かった。

 

「フラグメントはニードレス一人に一つの筈だ。何かあるに違いないんだが……」

 

 

 ニードレスにはとある原則が存在する。

 それは『フラグメント』……これは、ニードレスが使用する能力の総称なのだが、そのフラグメントは神の恩恵。

 一人一つが絶対で、例外はないと言われているのだ。

 だが、バスジャックをした二人の男を従えた少女は、炎と氷という両極端のフラグメントを使用し、ソルヴァ達に先んじて乗り込んだセトとブレイドを一撃で撃退。

 彼女らは囚われの身となってしまったのだ。

 

「どちらにせよ、まさか僕たちが、あんな子供にやられるなんてね」

「しかもあの子、座っていた玉座から動いてもいなかったぞ。さぞ余力を残していたのだろうな……」

「余力といえば、テッカマンの姿も見えなかったな。ガセネタなら取り越し苦労で済むけど、本当なら相当厄介な相手という事になる……」

「死神の聖剣も奪われてしまったし、どうすんだセト?」

 

 どうしたものか、と状況に対し冷静に思案していると、鉄格子の向こうから何かを砕く音と、何人かの足音が迫って来ていた。

 

「何の音だ?」

「セト様! お助けに参りました!!」

「ソルヴァたん!!」

 

 足音の正体は、ソルヴァと村の住民の物だった。

 手にした工具で、セト達の拘束を無理矢理解除する。

 

「すまん、助かった……所で、どうやってこの場所を?」

「実は、捕まったセト様たちを追いかけてきまして、この地下の牢屋を初めて見つけたのです」

「しかし、セト様は死神の聖剣を奪われてしまったままだ。このまま乗り込んでも勝ち目は……」

「いや、心配はない」

 

 町長の言葉に、セトはしっかりとした声で答える。

「死神の聖剣は呪いの聖剣。誰でも使える訳では無い」

 

 その証拠を見せてやろう、と続けたセトは、ブレイドとソルヴァ達を引き連れて、再び掠奪者達の待つ玉座のある部屋へと向かった。

 

 

 

 

「また来たの? 何度来ても、お姉ちゃんたちは私には勝てないんだよ?」

 

 棄てられた教会の中央に備え付けられた玉座に座ったままの少女、華夏は丸眼鏡に麦ら輪帽子と白いワンピースで身を包んだ、小さな女の子であった。

 

「死神が不意打ちで負けたと言われたら、地獄の仲間に顔向け出来なくてね」

「フン、剣はコチラの手にあるのよ? 今更何をしようっていうのかしら!?」

「お前なんか剣が無かったら怖くもなんともないんじゃボケカスゥ!」

 

 華夏を護る様に、手品師の男と細身の男が立ちふさがる。

 手品師は死神の聖剣の切っ先をセトに向けながらせせら笑った。

 

「言ってなかったか? それは死神の聖剣。手にしたものは強大な力の代償として、大いなる呪いをその身に受ける事になる」

「呪い……?」

 華夏の言葉に対し、セトはニヤリ、と口角を上げて、ゆっくりと剣を持つ手品師の方を指さした。

 

「死神に魅入られた者は最期の足跡がつかない。おいヒゲ、お前の足元はどうなっている?」

「なんですって? ………あ。」

 

 死神の聖剣を持っていた手品師の身体は、ふわりと宙を浮いていた。

 また死神に魅入られたのだ。

 

「イヤアアアァァァ何でなのォォォォォォォ!?」

「剣を手放すんじゃアニィ!」

 

 細身の男に言われるまま、大柄の男は無我夢中で剣を放り投げた。

 すると、彼の身体は地面へと落ちる、再び死神が気まぐれを起こしたのだ。

 

「だから言っただろう? 呪われているんだって」

 地面に落ちた聖剣を拾いながら、セトは華夏の方へと視線を向けた。

 まだ十歳を満たしているかも怪しいその少女は、死神を前にしても、その玉座から動くことはなくセト達を見下していた。

 

「さて……いくわよっ!」

 聖剣を構え、跳躍するセト。

 やはり普通の人間では考えられない程の高さまで軽々と飛び上がって見せる。

 

「おっ……おんどりゃああああ!」

「ぬおおおおおおおおおっ!」

 

 しかし、男達も最早その程度ではビビりはしない。

 細身の男は手にした拳銃、手品師はトランプ、ダーツで応戦をする。が、その全てがセトの直前で静止し、そのまま地面へと落ちていく。

 

「なっ、なんでじゃあああぁ!?」

「そんなものは効かん」

「だっ、だが! これはどうかしら!?」

 

 二人の男が後退する。

 男達の後ろには、セトに両掌を向けた華夏が待機していたのだ。

「炎と氷のフラグメント発動……ッ!」

 

 

 ガコンッ。

 

 

「!」

 セトが反応したと同時、華夏の後ろから炎と氷の渦が発生。

 間一髪直撃こそ免れはするが、爆風により大きく弾き飛ばされてしまう。

 

「ぐわっ!」

「セト様!」

 心配そうに駆け寄るソルヴァを制し、立ち上がるセト。

 派手に吹き飛びこそしたが、ダメージは少ないようだ。

 

(しかし、先程の音は一体……?)

「死ねやネェチャン!」

「セトーーーッ!!」

 ブレイドの言葉に、一瞬隙を突かれて目の前までやって来ていた細身の男の存在に気が付くセト。

 銃口はセトの頭を狙い、トリガーには既に指かかかっていた。

 

 

「……死神」

「「「!!」」」

 

 ボソリ、と呟かれたセトの言葉に反応するように、大柄の男と細身の男が膝をつく。

 

「う、動けない……!?」

「か、身体が、重く……!?」

「ちょっと待ってセト……?」

「何をしているんだお前ら……!?」

 

 男達の異変に気が付き、華夏は玉座から数歩離れて男達へと近づく。

 

「何で私まで動けなくなってるんですかね……?」

 何故か巻き込まれたブレイドに誰一人として反応する事無く、話は進んでいく。

 

 

 その時だ。

 

 轟! という音が響き、何かが崩れ落ちる音が続いた。

 

 セトが投げた死神の聖剣が、華夏の座っていた玉座に深々と突き刺さったのだ。

 

「……しまった!!」

 大柄の男が、カマ口調ではなく普通の野太い声で声を上げる。

「……おいガキ。何様だ貴様?」

 その手で聖剣を手放したセトは、ゆっくりと華夏の方へと歩き始めた。

 その足取りには余裕すら感じ取ることが出来る。

 

「よせセト! 剣を手放したままニードレスに向かっていくなんて自殺行為だ!!」

 味方であるブレイドの忠告すら無視し、セトは一歩、また一歩と華夏との距離を縮めていた。

 

「くっ……来るな! 炎と氷のフラグメントでぶち殺すぞ!!」

「やれよ」

 華夏の目の前で両手を広げて、セトは挑発して見せる。

 

「ここは弱肉強食の無法地帯ブラックスポット。掟は一つ。戦わざる者には『死』を、だ」

「……ッ!」

「使ってみるがいい。お前の力を」

「う……うう……ッ!」

「どうした? 偉そうにしているくせに、一人では何もできないのか?」

 

 

 

「様子が、変……?」

 華夏の様子が明らかにおかくなっていたのは、先程から戦いを傍観しているだけだったブレイドにも容易に見て取れることだった。

 

「な、何で華夏たんはフラグメントを使わないんだ!?」

「使わないんじゃない。『使えない』んだ」

「どういうことだセト……!?」

「簡単な話だ」

 ブレイドの問いに、セトは答える。

 

 

「華夏は、ニードレスなんかじゃない」

「!!」

「何ィーーー!?」

 

 その言葉に、ソルヴァ達を含めた一同は驚愕した。

「じゃ、じゃあ私達が見た炎と氷は一体……?」

「玉座の裏を見てみろ」

 

 セトに言われるまま、ブレイドは玉座の裏へと移動する。

「こっ……これは!?」

 そこには、玉座の裏に隠れる様に設置された機械がビッシリと詰められていた。

 二本の筒が玉座の前の方へと伸びており、その先端部分も前からは見えぬ様、巧妙にカモフラージュされていたのだ。

 

「この仕掛けで氷と炎を出していたんだ。そこの髭の手品師がな」

「くっ……!」

 どうやら図星であったのだろう、手品師の男が膝から崩れ落ちる。

 

「華夏が炎と氷を出した時、何かの機械音がした。そこで気が付けたんだ。フラグメントはニードレス一人に一つ……炎と氷を同時に操るなんて不可能だからな!」

「つ、つまり、我々は勝ったのか……?」

「勝ったも何も、こいつは虚構のニードレスだったんだ。最初から勝負にすらならなかった」

 

 その答えに、問いかけた町長やソルヴァ達は歓喜の声をあげる。

「セト様! ありがとうございました!! さぁ、連中にトドメを!!」

「わかった」

 ソルヴァに促され、三人の前に死神の聖剣を振り上げるセト。

 天に掲げられた巨大な剣が、セトによって振り下ろされ……

 

 

 

 

 彼女の横にいたソルヴァを、容赦なく剣の腹で殴りつけた。

 

「え?」

「なっ!?」

 吹き飛ばされるソルヴァを見ながら、手品師達とブレイドが素っ頓狂な声を上げる。

 セト以外のその場にいた連中が状況についていけず、ただ彼女の方を静観していた。

 吹き飛ばされたソルヴァの元へ、状況を理解した町長や村の住民が駆け寄っていく。

 

「何をするんだ貴様!」

「全部分かったんだよ。街を襲ったニードレスと言うのはお前の事だな、ソルヴァ?」

「そっ……そんな事あるわけないじゃないですか! セトさん! 敵はあちらで

「違うな」

 必死に無実を訴えようとしたソルヴァだが、その言葉は途中でセトによって遮られてしまう。

 

「おかしな点は幾つかあった。まず最初。ソルヴァ達は名乗ってすらいなかった僕達の名前を言い当てた。道中、一度も名前を口にしていないのに、だ」

「そ、それは、あなた方が有名なギルドメンバーだから……!」

「そいつは光栄な話だ。しかし、まだあるぞ? 僕とブレイドが捕まっていたのは村の地下。なのに、君達は『後を追って初めて知った』と言った。若いソルヴァが知らないならまだしも、他の大人連中が知らないのは変な話だとは思わないか? それに、僕達と同行していたフードの三人……顔どころか、腕輪すら隠していた彼らを、君は迷うことなく『ゴッドイーターの三人』と呼んだ」

「!」

「ギルドから受けた依頼は『ニードレスに襲われた村を救え』だ。そして、現に華夏はニードレスではない事が証明された。これらの事から導き出される答えは一つ!」

 

 

 全員の意識がセトの次の言葉を待つ中で、ゆっくりと、続きが紡がれていく。

 

 

 

 

「僕たちが来る前に村は占拠され、村人がそっくり入れ替わったんだよ」

 

 場を包む緊張感を肌で実感できるほどに達したセトは、堂々と最後の言葉をソルヴァ達に向かって放った。

 

 

「ソルヴァ!! お前が率いる掠奪者(プレデター)によってな!!」

「何ィーーー!?」

 

 

 

「……フフ、クックック。ごめんなさいね、二流の芝居を見せちゃって。でも、コロシは一流だけどね☆」

 最早取り繕う気すら無くしたソルヴァや住民……に扮した野党共が、徐々にその本性を表していく。

 各々が隠していた拳銃やナイフに手を出し始めたのだ。

 

 今までの優しそうな表情とは一変。血に飢えた獣の様な表情になるソルヴァ。

 おそらく、こちらが本来の掠奪者のボスとしての顔なのだろう。

 

「確かに、お前たちの事については調べさせて貰ったよ。ギルド派遣の用心棒だからな……で、いくら欲しい?」

 

 それは、金ならいくらでも払ってやる。という、彼女の寛大な心の現れであったのかもしれない。

 街の住民全てに成りすますような人間でも、仕事に対する一応の礼儀は持ち合わせていた様である。

 しかし、その提案を全力で否定する男が一人、この場にはいた。

 

 

 

「馬鹿め!! 人は金のみで生きるのではありません! 例えば彼女とか! お姉さまとか! 後、特に妹とか!!」

「そうか」

 

 何か壮絶なズレを感じるが、ソルヴァはそれを『交渉決裂』だと判断したようで、最後に一度だけ、『村人ソルヴァ』としての美しい顔を見せた。

「じゃあ死ね。ニードレスの力、思い知るが良い」

「! 来るぞセト!」

「そこの二人! 華夏を安全な場所へ!!」

「わ、わかった!!」

 

 手品師達は玉座の後ろにあった扉を蹴り開け、華夏を抱きかかえたまま部屋の奥へと消えていく。

 

「よそ見している暇などあると思ったか! マグネティックワールド!『死神の聖剣』!!」

 ソルヴァが掌をセトへと向けてそう叫ぶと、彼女がしっかり手に持っていた筈の聖剣は彼女から離れ、瞬きする間にソルヴァの手元へと渡ってしまった。

「あぁーっ! 剣が!! 何が起きたんだ!?」

「私のフラグメントは特殊磁界(マグネティック・ワールド)!!」

「磁力の能力……!? まっ、まずいぞセト! 君の穿いている鉄のパンツも脱がなくては!!」

「んなもん穿いてないわーっ!!」

「うふふ。貴方なんて、剣が無ければただの人間なんだよね?」

 

 ブレイドとセトの漫才など気にも留めず、ソルヴァはマグネティックワールドの能力を発動し、周りの瓦礫を集め始める。

「死ね」

 ソルヴァがその瓦礫達に何かしようとした、その時だ。

 いきなり真面目神父モードになったブレイドが、静かに聖書を開いた。

 

「セト。死神の発動を許可します」

「ハッ! 剣はここにあるんだよ! これなしで死神の力とやらは使えないんだろ!?」

「いや、剣ならここにあるぞ?」

 エクソシストの力により、セトに封印されていた死神の力が解き放たれる!

 

「ジャイルグラビテイションッ!!」

「!!」

 セトは振り上げた手刀を容赦なく振り下ろす。

 すると、死神の力が働き、住民に扮した野党はその一撃を持って地面に叩き付けられた!!

 

「ソ……ソルヴァさ……ま」

 何の抵抗も、と言うか見せ場すらなく、野党の雑魚共は沈黙してしまう。

 

「そう……やっぱり、これが死神の聖剣なんてのは、嘘だったのね?」

 手にした剣を地面に放り投げながら、ソルヴァはニタァ…と口角を上げて笑った。

 そんな彼女に負けない程、セトも悪人の顔をして答えて見せる。

 

「その通り。僕は重力生成(グラビトン)のフラグメントを持つ、ニードレスだ」

「わざわざ隠す必要があったの?」

「あるさ。君みたいなマヌケな悪党を引っ掛ける為にね」

 さぁ、と続けながら戻ってきた剣を構え直すセト。

 

「覚悟してもらおうかソルヴァ!!」

「フン、では、私は悪党らしく人質でも調達させて貰おうかなぁ!!」

 ソルヴァのフラグメント、マグネティックワールドは特殊な磁界を発生させる事により、彼女の半径100メートル圏内の物なら何でも吸い寄せる事が出来るのだ。

 

 そう、距離の条件さえクリアしていれば、彼女にとって壁など文字通り障害にすらならないのだ。

 

「マグネティックワールド! 『華夏』!!」

「きゃああああああ!?」

「かっ…華夏様!?」

 

 ソルヴァのフラグメントにより吸い寄せられた華夏は、その小さく細い首をソルヴァに捕まれてしまう。

 

「ぐぅ……ッ!」

「貴様!!」

「おっと、動くなよ! 一歩でも動くと、この小娘の命は無いと思え!!」

 

 抵抗する事すら許されなくなったセトは、聖剣を地面に落として、とりあえず抵抗の意思がない事を示す。

 

「ニードレスがそんな事で油断すると思ったか! マグネティックワールド反発(アンチ)!」

 ソルヴァの持つマグネティックワールドには二種類の技があり、一つは吸い寄せる技。

 そしてもう一つは、逆に近くの物を反発させて飛ばすことが出来る能力だ。

 その力によってソルヴァから反発するように、サイズがサッカーボール程もある瓦礫がセトの方へと飛んでいき、彼女の無防備な腹部へと直撃する。

 

「ぐっ! かはぁ……!」

「セト!」

「お姉ちゃん!!」

「ハッハッハ! 所詮、私のフラグメントの前では無力だったって事だ!!」

 倒れたセトの元に、ブレイドが駆け寄る。気絶してしまってはいるが、今すぐに命に関わる事はなさそうだ。

 

「さて、残りの雑魚は、一瞬で片付けて上げるからね。君のお父さんや、村の皆みたいに」

「チッ! こうなれば、私のフラ

 

 

 

 

 

 

 

「待ちなさい!!」

 

 

 

 

 

 

 その声は、今まで聞いた事のない少女の声だった。

 華夏が隠れていた部屋の方から、その声の主はゆっくりと近づいてくる。

 

「誰だお前は……?」

「ッ! ダメだよミユキお姉ちゃん!!」

「大丈夫よ華夏ちゃん。私が、必ず助けるから……!」

 

 ミユキと呼ばれた黄緑色の髪の毛の少女は、勇ましく声を上げながら登場したものの、全身から汗を噴き出しながら荒い息を吐いていた。

 

「脅かしやがって。死にぞこないの雑魚が一人増えただけで、何ができるって言うんだ!?」

「私は死なない……タカヤお兄ちゃんに会うまでは、絶対に死ねない! そして!!」

 ミユキは、隠し持っていたピンク色のクリスタルの取り出し、前に構えた。

 

 

「私を助けてくれた華夏ちゃんを、見捨てる事も出来はしない! テック・セッターッ!!」

 

 

 

 ひし形の横に二つ三角のクリスタルを付けた様な特異な形をした宝石が、ミユキの叫びに応じて怪しく光り、彼女の身体を包み込む。

 

 

 

「まっ……まさか!?」

 

 

 

 

「テッカマンレイピア!」

 

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