というわけでこうしんしま〜す!
後ろからの追跡に注意しながら森を駆け抜け吹きだまりの町に向けて
ほぼ丸一日かけてきた道を私とカヤさんフーラルさんとカシムさんが逆走します
「つ、追跡はありませんか?」
「ああ、どうやら撒けたようだな」
盗賊も極めていたというカシムさんに確認をとり周りの安全を確認した後
ひとまずたき火を起こさずに月明かりのみで重傷のマリベルさんとピエール、意識を失っているアルスさんとガボさんに薬草と祝福の杖で回復を行い私たちも休息を取ります
「しっかし、なんなのよあの魔物達は…すごい強さだったわよ?」
「だからアレは神殿を訪れた旅人の力で強化された魔物だ、凄まじい回復力と防御力、それに筋力も段違いに上がっている…何かしら無効化するための準備が無ければ勝てるはずが無い」
ちっ、まさにチートですね…人のこと言えませんが
「う、ううん……ここは?」
うめき声とともにアルスさんが意識を取り戻しました
「いったんあの洞窟から逃げてきたんです、大丈夫ですか?」
「うっ、負けたのか……」
「一旦吹きだまりの町に戻る予定ですから、今夜はここで野営する予定です」
そこまで聞くと傷がまだ痛むのか少し休むと言ってまた眠りについてしまいました
回復の魔法もゲームと違って万能ではないのです…でも腕をくっつけたりするくらいはできますがね
「さて、どうやらうまく撒けたようだし、さっさと休もうぜ」
私たちもその日はテントも張らず休みました
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吹きだまりの町に帰る予定だったのですが行く途中には気がつかなかった山肌の集落を見つけ、そこにしばし滞在することになりました
や、やっと町に来られました…目が覚めたマリベルさん達に歩いてもらえたので洞窟から逃げる時よりも楽ではありましたがそれでも行く時よりもかなりの時間がかかってしまいました
ひとまず宿屋を取り情報を集めていると、なにやらここは魔物の影響力が吹きだまりの町よりも強いようで、何人かの人間は完全に魔物のスパイのようなものになっており、魂を砕かれた人間も配備されておりかなり厳重な警戒が敷かれているそうです…ここまでくればもう分かりますよね?
「おそらくこの村の洞窟が西の洞窟つながっている可能性が高くフォズ大神官がとらわれている場所も同じということか…」
「村人の神官達の話しではそうなってましたね…信憑性はかなりあると思いますよ」
そこまで聞くとこの町にいる神官達のまとめ役、神官長とカシムさんは相談を再開し明日洞窟に潜ることになりました…明日が楽しみですね
ーーーーー
「ぐぶっ!」「げはああぁっ!」
魂を砕かれて門番がわりにされていた男の首をカヤさんが後ろから切り裂き、突然の出来事で驚いた二人目を私が毒針であごから頭蓋まで貫通させ、そのまま壁に叩きつけとどめを刺します
……なかなか残酷な気もしますが、魔物に知らされるまでの時間との戦いなので仕方がありません。ためらいなく殺します
「…今のうちだ、急いで行こう」
苦々しげな表情をしたカシムさんとフーラルさんの盗賊ならではの感をたよりに洞窟をドンドン潜ってゆきます
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だいたい四階くらいでしょうか、降りたところでついこの前感じたのと同じ気配がし…あのゴンズとイノップが現れました、すでに目の傷もカシムさんの与えた傷も治っていてまさに万全の体制です
『や〜ぱり、おまえらか大神官を助けるために必ずくると思っていたぜ』
「前回の目の傷の借り…しっかり返させてもらうぞ』
ちっ…ここで会いますか……まだ大神官を助けてないんですが…
「……おい、お前達…大神官はきっとやつらの話しの通りなら目の前の階段の下だ…ここはオレが引き受ける…すり抜けて行ってくれ」
カシムさんが小さな声でこちらに話しかけてきます
「…そんな!あいつらには勝てないって言ってたじゃない!」
マリベルさんが抗議の声を上げますが
「ああ、確かに勝てはしないだろうが、時間稼ぎくらいならできるはずだ…さあ!はやくいけ!」
最後に叫ぶようカシムさんは言うと今までに見たことが無いほど素早くイノップに切り掛かります
「今です!早く行ってください!」
私もすかさず裁きの杖を振りかざし竜巻でカシムさんに襲いかかろうとしていたゴンズの動きを阻害します
「っ!リンはどうするんだ!」
「私も残ります!回復の手段があるのは私だけでしょう?ならもっと時間が稼げるはずです…行ってください!」
まだ何か言いそうだったのでピエールに頼んでさっさと連れて行ってもらい、ゴンズに向き直ります…
『くそっ!お前ら大神官を助けるつもりだな!?そうはさせるかよ!』
持ち前の豪腕を振るってゴンズが殴り掛かってきますが、空中にジャンプした瞬間を狙って竜巻を起こし壁まで吹き飛ばします……私はぶっちゃけほとんど特技や魔法が使えないのではたいした力もありません、が私にはアルスさん達と違い5年間の下積み時代とも言うべき時代があります…いまこそその訓練の成果を生かす時でしょう
そう思いながら、踊るような足さばきでゴンズに足を進めながら祝福の杖をカシムさんに向けます
『ぬおおぉぉ!』
すでに私がカシムさんを回復させるのが分かっているように爪を振り上げてきますが、まさに紙一重と言った風にヒラリとよけ、杖で押し返します
『ぐああああぁぁぁ!!』
その事実に驚きながらも怒り狂ったように何度も振り回しますがその斬撃の一つもあたらず、逆に大振りでできた隙に持ち替えた魔導士の杖が3連発のメラを即座に放ち体制を崩させます
そう、私が修めた『職』踊り子の特技『みかわしきゃく』の動きをそのままそっくり行うのです
たしかに明確な特技は発動できないので魔法的な効果(素早さが一時的に急上昇して回避率が上がる)などはありませんが、今まで格上の魔物相手にこの特技で躱しまくった経験は体に染み付いています
そう、これが私の考えた唯一の時間稼ぎです…あとはアルスさんが大神官を助け出すのを待つだけ……
早くきてくれればいいな…そんな望みを持ちながら私は踊るような足さばきを続けました
おや?お客さんもう帰るのかい?……そうか、まあ明日も見て行ってくれよな!
というわけで第三十八話をお楽しみに!