ではお楽しみください
インデックスの治療を終えてから数日経ち、月宮、上条、インデックスの三人は銭湯に向けて歩を進めていた。
「もう体調は大丈夫なのか?インデックス。」
三人の真ん中にいた上条が、右側にいたインデックスに話しかけていた。インデックスは、両手で大切そうに銭湯用品を持ちながら、上条に笑顔で
「もうバッチリ大丈夫なんだよ!とーま!」
と答え
「それよりも、早く銭湯に行きたいんだよ!ジャパニーズ銭湯は、ヨコヅナがフジヤマで、お風呂上がりは牛乳をごくごく飲むのが風習ってこもえに聞いたんだよ!」
と、上条と月宮に目を輝かせながら答え、「先に行ってるねー!」走って行ってしまった。
様子を見ていた月宮も、「一人じゃ心配だし私も先に行くよ。」と上条に言うと、インデックスに向かって走っていく。
大して気にもせず、月宮がいるなら大丈夫だな。と思いながら上条がそんな二人を見ながら歩いていると。
突如、周りの空気がおかしいことに気付いた。
今はまだ日が登っている時間だ、だと言うのに周りには人っ子一人見えないのだ。
「インデックス!月宮!戻ってこ…」
「ステイルが
上条の後ろから、女性の声が聞こえた。
「
「アンタ…。」
女は変わった格好だった、ヘソが見える白い半袖、左右で長さの違うジーンズにはウエスタンベルトに鞘を付けている。
「
…インデックスを保護、上条には心当たりがあったが、この話は割愛させた頂こう。
「嫌だ、と言ったら?」
乾いた笑みを浮かべ冷や汗をかきながら、上条は神裂火織と名乗った女にそう言う。
すると女は、腰に付けていた鞘から刀を引き抜きかけ…
「仕方ありません。」
刀を少し抜き、『何か』を発生させ、上条の近くにあった風力発電機を切った。
-そして上条当麻はこの女性と戦うことになった。
-場面は変わり、インデックスと月宮は、上条が後ろからこないことに気付かず、途中の公園にあったベンチで休憩しながら何気ない会話をしていた。
「インデックスちゃんってさー、日本語話せるけど、何時からこっちにいるの?」
「んっと、何時からかはわからないんだよ。」
「へー、そんなに昔から日本にいたとか?」
「ううん、私には一年くらい前の記憶からしかないから。」
「そうなのかー。………え?」
インデックスは、今とんでもないカミングアウトをした気がする。
「記憶が無い…?確かインデックスちゃんって『完全記憶能力』ってので、十万三千冊の魔導書とかの原本の中身を脳みその中に入れてるんだよね?」
上条と、本人にもそれは確認済みだ。
「うん、そうなんだよ。ことりは魔術とかすぐ信じたのはびっくりしたかも。」
「まあ私はそういう趣味があるからであって…って話逸れちゃう。記憶がないって言うのは、思い出の方?」
人間の記憶っていうのは何通りある。
エピソード記憶だとか、意味記憶とか、それぞれのいれものが違う為、どんなに脳のパンクというのは記憶方面では到底無い話だろう。
まあ意図的に記憶喪失にするとかなら可能性があるが…。
「うん、思い出とかの方なんだよ。覚えてたのは禁書目録だとか十万三千冊の魔導書だとか…。多分それのせいで魔術師達から追われたり……あっ…。」
不味い!とでも言うような顔をするインデックスだが、直ぐに表情を柔らかい笑顔に戻した。
月宮はソレを見て見ぬふりをして、そろそろ上条が来る頃かと思って周りを見渡す。だが…
「…まだ来てないのかな?…まさか何かあったとか…。」
そう、上条がいないのだ。インデックスもソレに気付いたのか焦り始める。
「本当だ!?とーま!とーま何処!?」
「上条ー!何処だー!?」
-能力者とシスターは、二人で上条を探し始める。
-その頃、上条は、戦闘でボロボロになった身体で、神裂という女から衝撃の事実を聞かされていた。
インデックスが目の前にいる神裂はと同僚だったこと、親友だったこと。
インデックスの前の記憶は、神裂達が消したということ。
神裂達とインデックスの関係…
「…仮に、アンタの話が本当だとして、インデックスの限界ってのはあとどれ位なんだ?」
目の前の神裂に、上条はそう聞いた。神裂は少し間を置いて口を開く。
「……もってあと三日。」
それを聞いて上条は憤った。
「どうしてそれをインデックスに言わねぇんだよ!なんで"敵"として最後まで振舞おうとしてるんだよ!」
「貴方がどれだけ彼女を想っても、記憶を失った彼女には自らの敵にしか見えない…。あんな目で見られるくらいなら…いっそ…。」
神裂は顔に影を作る。
「いっそ…なんだ?最初から敵として憎まれた方がマシだってのか?バカか!そんなのテメェらの勝手な都合だろうが!アイツが何遍忘れたって、何遍だって友達になってやりゃいいじゃねーか!!」
汗をかきながらも神裂に言う上条、その言葉を聞き、神裂は鞘を握っている手に力を入れる。
「あなたに…。」
素早い速度で上条の左脇腹を狙って突く、上条はすんでのところで避ける。
「あなたに何が分かるんですか!」
声は叫びに近かった、やりきれない思いの詰まった叫び。
鞘を横に振るうと上条の後ろの壁が破壊されてゆく、上条はひたすら横に避けていた。
「私がどんな気持ちであの子の記憶を奪ってきたか…ステイルがどんな思いであなた達を見ていたか…!!」
しかし遂に、神裂の振るう鞘が上条の喉仏に突きつけられる。
「インデックスは返してもらいます。」
神裂の目は本気だった。
乱れた呼吸を少しずつ整える上条は…
「(やっぱり強ぇ全然歯が立たねぇ!…けどよ!)」
決意を決め
「(ここで折れる訳にはいかねぇ!)」
喉仏に突きつけられた鞘を傷付いた両腕で掴む。
身体中が叫びを上げている、血だって流れている。
「その身体でまだ戦う気ですか。」
「る…せぇよ…」
「私を倒した所でどうにもなりませんよ、私達が所属している『
「…っっせえっつってんだろ!!!」
淡々と語る神裂の声を、上条の叫びが横入りする。
鞘を思いっきり下に押してぐらついた事に驚く神裂の額を、上条の右拳が思いっきり当たる。
「テメェは…力があるから仕方なく人を守ってんのかよ…?そうじゃねえだろ!守りたいものがあるから力を手に入れたんだろうが!」
上条の右腕に鈍い痛みが走り、上条は地面に倒れて行く。
「……。」
顔を拭い、地面に倒れた上条を見下ろす神裂。
「俺はさ…死ぬ気で戦って、それでもたった一人の女の子も救えねーような…負け犬だよ。」
弱々しく、だが同時に強い気持ちを感じる声で上条は言葉を紡いでいく。
「だけどアンタは…そんな力があれば──誰だって…何だって守れるのに……!!」
神裂は鞘を上条の方に構える。
上条開かれた両手を握り締め、腕に力を込めていく。
「アンタは何のために力をつけた?その手で誰を守りたかった!?」
─雄叫びを上げ立ち上がる上条、鞘を振るう神裂。ゴシャァ!という音が鳴り響き、そこで上条の意識は途絶えられた。
-月宮とインデックスはボロボロの上条が道で倒れているのを見つけた。
「…!上条!」
「とーま!」
二人して上条の方に走り、意識がない事に気が付くと、急いで小萌の部屋に帰っていくことにした。
-上条が目が覚めた時には、神裂と戦った三日後であった。
インデックスと月宮が交代制で看病をし、インデックスの時に目覚めたのだ。
「三日経ってるのか…!?インデックス!月宮!早く逃げるぞ!」
怪我がどうだとか言ってる場合ではない、早いところここから逃げ出したかった。
「ダッ、ダメだよとーま!まだ安静にしてなきゃ…。」
「そうだぞ上条!何が何だかわからないけど、まだ安静にして!」
月宮とインデックスが止めるが、上条はインデックスの腕を引っ張り玄関に向かおうとしていたその時。
コンコンコン、という玄関をノックする音がして、ガチャリという音と共に玄関が開いた。
現れたのは三日前に上条と戦った神裂と、赤髪の神父服を着た青年…ステイル=マグヌスであった。
「ふぅん、その体じゃ簡単には逃げられないようだね。」
上条達の方を向き、ステイルが言い放つ。
すると、インデックスが上条の前に立った。
「やめて、これ以上とーまを傷つけないで!」
ステイルの顔がピクリと動く、月宮は状況についていけず上条の真横に立ち尽くしている、上条が三日前に聞いた事を説明しようと口を開く。
「インデックス、コイツらは─」
上条の声も聞かず、インデックスは言葉を続ける。その顔はどこか苦しそうで…
「私ならなんでもするから、どこへでも行くから…お願いっ…。」
言葉を言い終えるとインデックスは倒れてしまった。
身体を支えようと上条が腕を伸ばすが、インデックスはステイルが支えた。
「今夜午前零時。」
ステイルがそう呟く。
「その時刻に全てを終わらせるよう術式を組上げる。」
「…まっ、待てよ!聞いてくれ!それが
そう言う上条に、ステイルは睨みつけ
「それで?そのどこかにいるらしい連中に試したこともない薬を使わせて、この子の身体を好き勝手に弄ろうというのかい?見ろ!」
ステイルが目を向かわせた先にはインデックスが苦しそうに布団で寝かされていた。
「今の台詞をこの子の目の前で言えるか?"ちょっと試したいことがあるからそのまま待ってろ"なんて言えるのか!?」
上条は顔を曇らせる、そこにステイルが十字架を取り出して上条の目の前に突き出してきた。
「これはインデックスの記憶を殺すための道具だ、君の右手が触れれば僕の
ステイルが更に言いよる。今ここで触れてしまったら、最悪インデックスが死んでしまうかもしれないのだ。
「どうした、やってみろ…!異能者!!」
上条の右手が十字架に伸び……そして戻した。
上条と月宮は、部屋の外に座っていた。そこに神裂がやってきて
「ありがとうございました。あなたが、あなた達が"足枷"となってくれたお陰です。インデックスを安全に保護することが出来ました。」
月宮は先程からの状況が理解出来ず、その言葉自体聞こえてない様子であり、上条は乾いた声を漏らす。
「─は、そういう事か…俺にトドメを刺さなかったのは。」
「一年近く我々の追跡を逃れてきた子ですから、それに─
その言葉聞いた上条は、立ち上がって何処かに向かおうとした。
「どちらへ?」
「いいか?わっかんねーようなら一つだけ教えてやる。俺はまだ諦めちゃいねぇ。百回失敗したら百回起き上がる。千回失敗したら千回這い上がる!たったそれだけの事をテメェらに出来なかった事を果たしてみせる!」
「残り二時間余り─何をするかはわかりませんが、どうか素敵な悪足掻きを…。」
神裂がそう言い、上条はインデックスを救うために決意をして歩いてゆく。
「つっても気合いだけじゃあどうしようもないよな…。クソッ!こういう時は一から情報整理しねぇと!」
「(インデックスは記憶し続けることであたまがパンクする…なら記憶を止めて眠らせれば時間稼ぎになるんじゃないか…?)」
と情報整理をしている上条の所に、可愛らしい声がかけられる。
「上条ー!」
上条が誰かと思い声の方を向くと、そこには月宮がいた。ちょうど考えがまとまって聞きたいことがあったから丁度いいと思い、上条は月宮に問をかけた。
「丁度良かった…なあ月宮。」
「何?」
「記憶のし過ぎで頭がパンクって本当にするのか?」
そうだ、インデックスの他にも完全記憶能力を持つ人間はいるだろう。インデックスは85%を魔導書を記憶するために使っているらしいので、残りは15%らしい。1年間隔で記憶を消さなければいけないのであれば、一般人の完全記憶能力者は5、6歳でしんでしまうことになる。
月宮は質問の意味がわからない様子をしたが、直ぐに答えた。
「上条、
「…は?いやどういう意味だ…?」
「人間の脳みそってな、元々140年分の記憶が可能なんだよ?」
「でっ、でも!限界まで記憶力を使いまくったらどうなるんだ!?」
「良いかな?上条。人の記憶っていうのは一つだけじゃないんだよ。意味記憶とかエピソード記憶だとかは、それぞれのいれものが違うんだ。だからインデックスちゃんの、『十万三千冊の魔導書を覚える為に思い出を削る。』だなんて行為はしなくてもいいはずなんだ。」
「インデックスに別れを言わせてくれ…。」
上条は外から戻り、ステイル達にそう言った。
途中彼らは色々と言っていたがあまり聞こえなかった。唯一聞こえたのはステイルが言った、「10分だけだ!いいな!?」という言葉だけ。
インデックスの方に行くと、苦しそうな顔で上条の顔を覗き込んでいた。
「なあインデックス、今度こそ全部終わらせてやるから。─そしたら夏休みらしいことしたいよなぁ。海とか補習とか。…嫌なこと思い出しちゃったよ…。」
そう優しく上条が言うと、インデックスは微笑んだ。
そうして上条は目的のものを探す。きっとインデックス自身でも気づかない場所にあるはずだ。
口の方に手をやり、中を見ると…確かにあった。変な文字が。
「考えてみりゃあ…、使い方次第で世界を捻じ曲げることが出来る
『教会』はインデックスを手放したくなかったのだろう、だからこそ絶対に裏切られないような、インデックスの頭に何か細工をしたのだ。
「…。」
唾を飲み込み、インデックスに我慢してくれと一言いってから右手でその文字に触れた…。
次の瞬間、上条の身体が吹っ飛んだ。
「─告!警告!Index-Liborum-Prohibitorum─禁書目録の「首輪」第一から第三までの全結界の貫通を確認。侵入者の撃退を最優先とします。─警告。第3勝第3節、『首輪』の自己再生は不可能。対侵入者用の
インデックスはロボットのようにそう言ってゆく彼女の目が光ると、空間に亀裂が出来た。
上条はその亀裂の中に恐ろしいものを見てしまった。、正面から視てしまったら死んでしまうだろう…。
そしてインデックスが光線を放つ。上条は右手でそれに触れていく。
「(怖いって?まさか!あの亀裂の奥に覗いている「何か」
─月宮は、上条だけを部屋の中に入れさせて自分は外で待っていた。
上条が中に入って直ぐに魔術師達が中から出てくる。
「……。」
「……。」
「……。」
三人とも言葉を交わさず、ただ黙っていた。
暫く待っていた三人だが、扉が破壊されたので中に急いで入っていった。
「『
そう言ったのは赤髪の神父…ステイルだった。
神裂も信じられないのか、唖然としており、月宮は状況を把握できてないのか立ち尽くしている。
「見ての通りだ!インデックスは魔術を使ってる、お前ら『教会』に都合のいいウソを教え込まれてたんだ!一年おきの記憶消去も、全部インデックスの脳に仕組まれた"魔術"が元凶だったんだ!」
ステイル達にそう言い放つ上条は、
「お前ら!いつまで固まってんだ!待ってたんだろ……ずっと、インデックスが、俺達が笑って迎えられる結末を!今手を伸ばせば届くんだ!いい加減始めようぜ!魔術師!!」
言い終えたところで、上条の右手の指からバギィ!という音が響く。
塞がれなくなった光線が上条に向かってくる、だがそれが上条に当たることはなかった。
「
神裂が刀でそれを切ったからだ。言い放ったのは─魔法名だろう。
インデックスは背中から倒れ、放たれていた光線は天井を突き破ってゆく。
「それは『竜王の殺息』──伝説にある聖ジョージのドラゴンの一撃と同義です!どんな力があるとはいえ、人の身でまともに取り合おうと考えないで下さい!」
神裂の言葉を聞きながら上条は、床に倒れ込んだインデックスの所へ走って行こうとする。
だが、それよりも先にインデックスが首を巡らせた。
巨大な剣を振り回すように、光線が再び振り下ろされる。
「────魔女狩りの王!」
身構える上条の前で炎が渦巻く、人の形を取る火炎は、両手を広げて上条の盾になる。
「行け!能力者!元々あの子の
ステイルが上条へ叫ぶ。
「ああ!」
半ば叫ぶように返事をし、上条はインデックスへ走る!
途中、禁書目録が何かを言うが必死に走る上条には聞こえない!光線の色が血のような赤に変わり、『魔女狩りの王』がみるみる弱っていく。
頭上には何十枚の光の羽
足元には、たった一つの想いすら利用されて糸で操られる一人の少女。
少女の為に右手を振るっていた上条には選択の必要なんて無かった、もとより少女を助ける為に魔術師と戦ったんだから!
(この
上条は握った拳の五本の指を思いっきり開く。
まるで掌底を浴びせるかのように、
(────まずはその幻想をぶち殺す!!!)
そして上条は右手を振り下ろした。
そこにあった黒い亀裂、更なその先にある亀裂を生み出す魔方陣。
上条の右手が、それらをあっさりと引き裂いていった。
本当、今までなんでこんなものに苦しめられていたのか笑い飛ばしたくなる程に。
「───警、こく。最終……章。第、零─……。『首輪、』致命的な、破壊………再生、不可……消」
プツン、とインデックスから発せられる言葉が途切れた。
光線も消えて、魔方陣もなくなり、部屋中に走った亀裂が綺麗に消えていき、
その時だった、上条当麻の頭の上に1枚の光の羽が舞い降りた。
「ーーーー!」
その瞬間、上条は誰かの悲鳴を聞いた。
それが誰のものだったか、それすらも上条には分からなかった。
金槌で頭を殴られたように、全身の指先一本に至るまで、たった一撃で全ての力を失った。
上条は未だ床の上に倒れているインデックスに覆いかぶさるように倒れ込んだ。
まるで降り注ぐ光の羽から彼女の体を庇うように。
粉雪が降り積るように、何十枚という光の羽が上条の全身へと舞い降りていく。
上条当麻は、それでも笑っていた。
笑顔のまま、その指先は二度と動かなかった。
この夜。
上条当麻は『死んだ』。
病室の前には、銀髪のシスターと学ランの中性的な人物と、カエルに似た顔をした医者の三人がいた。
医者から色々言われ、手紙を貰っていた(恐らくは病室の人物へのものだろう)銀髪のシスター…インデックスはその手紙を8枚ほどグチャグチャに丸めていた、敵だと思っていた魔術師から貰ったものだったので。
と、最後の九枚目に大体だがこのような事が書いてあった。
『インデックスは様子見ってことになってる。』
読んだ直後に、手紙はクラッカーのような音と共に爆発してしまった。(尚、危険そうだったので最後の手紙は学ランの人物…月宮が対爆発性の手にしている。爆発したが怪我はなかったよ!やったね!)
「何だよあの神父……チッ…。まあいいや、インデックスちゃん!早く上条と会おう。」
悲しげな表情をしている隣のシスターの頭に手を乗せて笑う。インデックスはその笑顔を見ると少しは気分が晴れたのか、少し笑顔になった。
コンコンと扉をノックする、中からは少年の声ではい?と来た。インデックスは緊張しており、月宮は笑顔のまま扉を開く。
「?
少年の言葉はとても丁寧で、それでいて他人行儀のものだった。
─『記憶喪失』というより、『記憶破壊』だね?一体何があったんだい?
インデックスの脳裏にはその言葉が思い出していた、夏の暑い部屋でカエル顔の医者から言われた言葉。
色んなことがあって、ある少年は身体ではなく
「えっと…君たち大丈夫?とても辛そうだけど…。」
「私は大丈夫大丈夫!さあさインデックスちゃん。インデックスちゃんが先に話すんだ。」
インデックスを残して、月宮は病室を出た。
病室の前の壁に寄りかかりながら月宮はインデックスを待っていた、インデックスがでてきた後で話そうと思っていたからだ。
「変身しようかな…。」
その言葉と共に、月宮の姿は変わっていく、長い茶髪に、元々可愛らしい顔はさらに可愛く、少女のような顔になっていく。目の色も髪とおなじ茶色のツリ目だ。服装もセーラー服になる。
(本当に記憶を失ってないのなら、この姿に気付く筈だし、少しの表情の歪みもない筈……。)
病室からは少年とインデックスの言い争いの言葉が聞こえてくる。それでもその声はとても楽しそうで…。と、そんな風に考えてると扉が開き、インデックスが走り去ってしまった。
「どうしたんだろう…?まあ入るか…。」
開いたままの扉から病室に入ると、少年が困った顔をしながら笑っていた。……こちらに気付くと、
「さっきはゴメンな月宮!ちょっと寝惚けてたんだよ!」
と、謝ってくる…だが、先程の表情の歪みで月宮は察していた。だからこそ言う。
「謝るなよ、
少年……上条当麻はびっくりしたような顔をしたが、柔らかな笑みを浮かべると話し始めた。
「なんだ、気付いてたのか…。本当にゴメンな、俺、何も憶えてないんだ。正確にはエピソード記憶が無いんだよ。」
「つまり……自分の思い出や人間関係を思い出せないっていうの?」
「そうなる……のかな。」
「そっか…。」
その言葉を聞いて、月宮はダムが崩壊したかのように涙を流した。
もう覚えてくれていないのだ、目の前の彼は、自分を救ってくれたことも、インデックスを救ったことも。それどころか自分達の知ってる彼ではない…。受け入れにくいがその点は受け入れなければいけないだろう。何よりも上条はインデックスには知らせていないみたいだし。
泣く月宮を、上条は困った顔をしながら慌てていた。…そんな顔をさせたくて、ここに来た訳じゃない…月宮は泣き止むと、初めてあった時のように、言葉を放つ。
「私の名は月宮小鳥、上条とは同級生で超能力者第八位。…またよろしく、
インデックス編はこれで終わり、次は日常を一つ入れてから吸血殺し編です。