機動戦士ガンダム -Target in Sight-   作:Yutazou.S

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プロローグ -E.F.F-

[October 03. U.C.0079 10:00 a.m.]

 

 

 

 オーストラリア大陸中部。エアーズロックからそう遠くない廃墟に、車両数台と共に、巨大な人形機動兵器の姿があった。

『少尉、準備はいいか?』

「はい……万全です」

『今回、評価試験を行うジムは、ジオン軍のMSに対抗すべく開発された連邦初の量産型MSだ。より実戦に近いデータを得るため、ジオンから鹵獲したザクと模擬戦を行ってもらう。模擬戦と言っても、命の危険もある任務だ。実戦と思って、任務を遂行せよ』

「……了解」

 技術大尉の言葉を聞きながら、エージ・タリスマン少尉はコクピットの中で酷く緊張していた。

 連邦軍がようやく作り上げた量産型MSのテストパイロットという重圧を感じながら、彼は深く呼吸をした。

 

 事の発端は今から2週間前に遡る。エージは南米に位置する地球連邦軍本部ジャブローに召喚された。

 広大な基地の地下通路の中を散々迷った末、約束の時間数分前に目的地にたどり着き、彼は辞令を渡された。

「し、小官が連邦のMSの、テストパイロットでありますか……!?」

 オーストラリアのバーズビル兵器開発基地に赴任し、量産型MSの試験運用に参加せよ。辞令の内容は簡潔であったが、それの意味するところは重大だ。

「気が早いな少尉。まぁ、間違ってはいないがね」

 彼を呼び出した張本人であるジョン・コーウェン准将は笑って言う。准将はMS開発や実戦化に関わる中心人物の一人である。

「貴官も知っての通り、我が軍はMSの運用ノウハウが不足している。既にいくつかの部隊はMSの配備が進められてはいるが、多くの部隊はそれすらも叶わない。一刻も早く実戦配備するためには、貴官のようなテストパイロットと実働データ必要なのだよ」

「こっ、光栄であります!」

「活躍を期待しているぞ、少尉」

 エージは士官学校を卒業後、ジオン軍の地球侵攻を受けMSの脅威を目の当たりにした。なんとか生き延びた彼は数ヶ月後、ジャブローにてMSパイロット養成課程を受けた。

 彼にとって、連邦のMSの実戦化は切望していたことである。それに関わることができるというのは喜ばしいことであったが、准将からの期待もあり同時に重荷にもなっていた。

 オーストラリアに赴任した後はMSの試験運用に備えシミュレーターでの訓練を60時間行い、9時間程実機も操縦した。そして、テストパイロットたちの中で高い操縦適性を示したエージが試験時のパイロットに選ばれ、今に至る。

 

 エージが今搭乗している機体は型式番号RGM-79「ジム」。RX-78「ガンダム」を簡略化した量産型MSである。連邦軍の技術の粋を結集させ開発されたMSガンダムの量産型だけあり、カタログスペックではジオン軍のMS-06「ザクⅡ」を上回っている。しかし、戦闘におけるMSの勝敗を分けるのは最終的にはパイロットの練度であり、その点においてはジオン軍に一日の長があった。

 そのため、連邦軍においてMSの量産化とMSパイロットの養成は急務と言え、実戦データのないままではあるがそれらは平行して進められていた。

 

『それでは、ジムの評価試験を開始します。廃墟に潜む3機のザクを撃破してください』

「了解」

 オペレーターのサーリャ・ミカサ軍曹から指示され、エージは慎重にフットペダルを踏み込む。彼の搭乗するジムはそれに応え、廃墟となったビル郡へ歩行を開始した。

 数十mも進むと、廃墟となったビルの影に隠れていた仮想敵機……MS-05B「ザクⅠ」──俗に「旧ザク」と呼ばれている──がモノアイカメラを輝かせながら姿を現す。

「落ち着け……シミュレーター通りにやればいい……!」

 自らに言い聞かせるようにエージは静かに呟き、コントロールスティックの射撃トリガーを引く。ジムの右手に携行した100mmマシンガンが火を噴き、旧ザクの1機を瞬く間に蜂の巣にした。

『ターゲットの破壊を確認。残り2機です』

 すかさず次の標的へと照準を合わせる。自動操縦で制御された旧ザクが105mmザク・マシンガンを掃射してきたのを見て、咄嗟に左腕に保持したシールドを構える。模擬戦とは言ったものの、実弾を使用しているため命の危険を伴うのは本当だ。

 105mmマシンガンを防御し、お返しとばかりにジムの頭部に内蔵された60mmバルカン砲を撃ち込む。旧ザクの頭部が潰れ、明後日の方向へ乱射するところへ100mmマシンガンの三点バーストを見舞った。

『ターゲット撃破。残り1機です』

 同じように105mmマシンガンを掃射する、最後に残った旧ザク。今度は背部に備えたランドセルのスラスターを利用し左へ回避する。身体が右に押し付けられるのを感じながら、エージはジムに武器を持ち換えさせた。

 左背部から突き出した円筒形の棒を右手で引き抜き構えると、棒からピンク色に光り輝く剣が形成される。ミノフスキー粒子を縮退寸前状態のままIフィールドによって収束させビーム刃を形成する格闘兵器、ビーム・サーベルだ。ザクに対するジムやガンダムの大きなアドバンテージは、こういったMSが携行可能なビーム兵器を扱うことができる点にある。

 スラスターを吹かしジムを加速させ、最後の仮想敵機へ急速で接近する。

「これでっ!」

 加速した勢いを乗せすれ違い様に旧ザクへビーム・サーベルを叩き付けると、旧ザクの胴体は飴のように溶けて両断された。

『全ターゲットの撃破を確認しました。戦闘体制を解除。任務は終了してください』

 サーリャの声を聞き、エージは安堵するよりもジムの性能に驚嘆していた。自動操縦とはいえ、旧ザクを短時間で3機も撃破したのだ。こちらの損傷も極めて軽微なのが、それを物語っていた。

(こいつはすごい……シミュレーターや実機を操縦したからわかるが、やはり機動性や運動性はザクとは大違いだ。こいつが本格的に量産されれば、ジオンに勝てるはず……!)

 彼は確信した。

『では、ジムから戦闘データを回収します。試験開始地点まで帰還してください』

「了解だ」

 ジムの踵を返し、廃墟の東側へと戻っていく。思っていたよりはあっさりと終わったな──そんなことを彼は考えていたが、突如コクピットに警報が鳴り響く。

『こ、これは!? 熱源反応です! 廃墟の北、距離1100。MSです!』

「何だと!?」

『どうして、こんな所に……ジオン軍が!?』

 

 MS-06J「ザクⅡ」──ザクのパイロットたちは、自分達の乗る機体とは違う直線的なシルエットのMSを視認していた。

『MS……? 連邦軍のようだな』

『ああ、データにないタイプだ』

『新型か? ツキが回ってきたようだな』

『攻撃を仕掛ける。手柄を立てるチャンスだ』

『了解した。確実に仕留めるぞ』

 野心に駆られ、3機のザク小隊は悠々と廃墟へ侵入していくのであった。

 

 この近辺は連邦軍の勢力圏内のはずである。にも関わらず、ジオン軍のMSとの遭遇。

(何故ここにジオンが……!? いや、理由は兎も角、今は奴らを撃退しないと!)

 エージの思惑をよそに、技術大尉から通信が入る。

『緊急通達。敵の戦力が判明した。敵はザクⅡが3機。圧倒的にこちらの不利だ。すぐに戦線を離脱しろ』

 ザクは既に交戦距離に入っていた。エージはジムの足をザクの方へ向けつつ、残弾の少ないマシンガンの弾倉を取り替えながら返した。

「しかし大尉、このジムならやれます! それに、今奴らを倒さなければ……!」

 エージが反論するより早く、技術大尉は続ける。

『タリスマン少尉、これは命令だ。ジムが敵に破壊される、あるいは奪取されることがあってはならない。撤退を最優先にしろ、いいな!』

「っ……!」

(敵が目の前にいるというのに……!)

 彼は思いの丈をぶつけるように、スラスターと歩行を併用して横移動しつつ100mmマシンガンと60mmバルカンを連射した。突出していたザクの左腕が、たて続けに武器を持った右腕が吹き飛ぶ。

『聞いているのか少尉!? 撤退しろ!!』

 エージの耳には、技術大尉の声は届いていなかった。このまま撤退したところで、いずれは敵に追いつかれる。仮に撒いたとしても、敵を自分たちの基地まで案内してしまうことになる。そして何より、眼前の敵を野放しにすれば、連邦のMSの存在が露見してしまうのだ。

 今、彼が採れる最善策はひとつだけだった。

「ここで奴らを倒す!!」

『少尉!? 貴様、命令違反するつもりか!?』

 技術大尉が怒鳴る頃には、両腕を失った敵機は沈黙していた。即座に次の敵機へ照準を定める。敵は味方機が撃破されたことに狼狽しているのが、モニター越しにわかった。

「そこだっ!」

 これを好機と見て、エージはビルを盾に機体を静止させ、マシンガンとバルカンをありったけ撃ち込む。2機目のザクが瞬く間に蜂の巣になり、爆散した。残るは1機。

 最後のザクが120mmザク・マシンガンを乱射してきた。立て続けに僚機を失い、焦っているのだろうか。だが、エージは怯まずシールドを正面に構えたまま、敵機へ突進しながらマシンガンを撃ち返した。

 連邦の新型が放つ威圧感に恐怖を覚えたのか、ザクは背を向け逃げ出すことを選択した。

「逃すかっ!」

 ちょうどマシンガンが弾切れになったエージは、シールドとマシンガンを投げ捨て、再びビーム・サーベルを抜刀。スラスター全開で最後の敵機へ追い縋る。

「おおおおおおっ!!」

 裂帛の気合いと共に加速を乗せた突きを繰り出すと、ザクのランドセルから胸部を貫いた。エージはサーベルを敵機から引き抜き距離を取る。致命傷を負った敵機は、崩れ落ちると共に爆炎に包まれるのであった。

「はあっ……はあっ……!」

 時間にして数分──久方ぶりの実戦に、エージは疲弊していた。

 無理もない。味方に被害を出さないため、単機で敵機小隊を相手取ったのだから。

『敵の反応が消失しました。ザクⅡは全滅……危機は回避されました!』

「っ……よかった……」

 サーリャの声で、エージは我に帰る。続けて、技術大尉から通信が入った。

『タリスマン少尉……。よくやった、と言いたいところだが……命令違反は軍人にあるまじき行為だ』

「……申し訳ありません、大尉」

『今回は大目に見るが、次は許すことはできない。わかったな、少尉』

「はっ……ありがとうございます」

 彼の言葉に心から感謝し、エージはシートに身を投げ出すように安堵したのだった。

 

 生か死か……勝利か敗北か……戦いの結末は二つしかない。

 自らの生命と誇りを賭けて、兵士は戦う。

 愛する者を守るために。自らの信念を貫くために。自分が生きた証を歴史に刻みつけるために……。

 

 そして……今、一人の兵士の戦いが始まろうとしていた。

 

 

 

 




 はじめましての方ははじめまして、そうでない方はおはこんばんちは、うp主です。
「機動戦士ガンダム -Target in sight-」Prologue -E.F.F-、いかがだったでしょうか。
 以前から私は、ガンダム小説を書いてみたいと思っていました。しかし、物語を一から考えるのは難しいため、PS3のゲーム作品であるターゲットインサイトを基に執筆させていただきました。

 次はジオン編となります。連邦編とジオン編を交互に、時々両軍の交わる話を投稿する予定です。
 では、また次回お会いしましょう。

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