機動戦士ガンダム -Target in Sight- 作:Yutazou.S
[October 03. U.C.0079 00:47 p.m.]
東南アジア、ボルネオ戦線の密林地帯に設けられたジオン軍前線拠点周辺。遠くでは爆発音と砲声が響き、連邦軍部隊の侵攻が始まっていることを知らせる。
MS-06J「ザクⅡ」――ザクを駆るジェームス・ロナウド軍曹は拠点へと急ぎ足で向かっていた。「我が軍の前線拠点に敵部隊が接近している。拠点の防衛を支援せよ」との通達を受けたのだ。
『敵の目標は密林地帯に設けた我が軍の拠点である。至急救援に向かえ。なお、この拠点はボルネオ戦線において最も重要な拠点である。絶対に敵の浸入を許してはならない。十分に注意せよ』
部隊の司令官であるフィン・ロックハート中尉、続けてオペレーターのアリス・エーデル伍長から通信が入る。
『既に連邦軍が攻撃を開始しています。急いで防衛部隊の支援に向かってください』
「了解」
ジェームスは自機に続くザクへ言う。
「聞いての通りだ、ライノ2。急ぐぞ」
『ライノ2、了解。にしたって、なんで俺達だけで出なきゃならねんだ』
ライノ2――カターヤ・カラ伍長は文句を垂れた。急を要する友軍の支援だというのに、5機のMSが配備されている地球方面軍第3遊撃傭兵部隊第1小隊――通称M-31から送り出せる増援は2機のザクだけだったのである。
「仕方ないだろ、他の機体は修理が間に合わなかったんだから」
『チッ、背に腹は代えられないってか……』
「……見えてきたぞ、拠点だ」
やや開けた平地にコンテナが積まれ、簡素な格納庫や見張り台がいくつか設置された拠点が見えた。ジオン軍の主力戦車「マゼラ・アタック」6両と予備機と思しきザク1機に加え、作業用と思われるザクの上半身をマゼラ・アタックの車体部分に乗せた機体――MS-06V「ザクタンク」が配置されている。ジェームスは拠点の指揮所へ通信を飛ばした。
「こちら、地球方面軍第3遊撃傭兵部隊第1小隊、隊長のジェームス・ロナウド軍曹。拠点防衛の支援に来た、確認されたし」
『……確認した、よく来てくれた。連邦軍がMSを戦線に投入した。現在本拠点の戦力は防衛部隊のみであり、我々だけでは対処できない。迎撃を頼む』
「了解。……連邦のMSだと……!?」
拠点指揮官の言葉にジェームスは動揺していた。開戦以来、MSはジオンの専売特許とも言えた。そのMSを連邦軍が実戦投入したということは、ジオンのMSを運用することによる優位性が失われることを意味する。
動揺しているのはカターヤも同じのようだ。
『マジか……こいつは一筋縄じゃいきそうにないな』
「だが、退くわけにもいかんだろう?」
『しゃあねぇ。さっさと片付けちまおうぜ、ライノ1!』
「ああ!」
出撃前の情報によれば、敵部隊は拠点の北部から侵攻しているようだ。仮設矯が架けられた小さな川を飛び越えたところで、ザクのピンク色に輝くモノアイカメラが連邦軍の61式主力戦車数両を捕捉する。
「突出しているのは4両……まだ後続が来るはずだ」
ザクの右手に装備した120mmザク・マシンガンを掃射。カターヤ機や拠点の防衛部隊のMS-05B「ザクⅠ」――旧ザクも同じように射撃戦を行い61式4両を難なく撃破するも、さらに遠方からの砲撃がジェームス機を掠める。
「っ、お次はそこかっ!」
木の陰に隠れていたもう1両を見つけザク・マシンガンを撃ち込むと、61式3両の155mm連装砲による反撃が開始される。
「散開! 足を止めると撃たれるぞ!」
『わかってらぁ!』
ジェームス機は左へ、カターヤ機は右へ回避する。ザクの運動性を以てすれば61式の砲撃など回避は容易だが、いくら装甲の厚いザクとて直撃を何度も受ければただでは済まない。
左へ移動しながら射撃。拠点防衛部隊の旧ザクとの連携で61式3両を撃破する。
「今ので戦車二個小隊……MSはどこだ……?」
ふと呟いた直後、小高い丘から砲弾が降り注ぐ。ジェームスは咄嗟に右肩のシールドで防御した。
「っ、今の連射性能は戦車じゃない……ってことは!」
丘の方を見ると、曲線主体のザクと違い直線的なフォルムのMSが3機立っていた。
『あれが連邦のMSか……見た感じザクよりは弱そうだが』
「油断するな、見掛けで判断すると痛い目に遭うぞ」
カターヤの言葉にジェームスが反す。相手の戦力を甘く見て命を落とした兵士は数知れず、かつて部隊の仲間もそうして死んでいったのだ。
連邦のMSは3機とも異なる武装を装備していた。恐らく中央の機体はマシンガン、右翼の機体はバズーカなどロケットランチャーの類だろう。だが、左翼の機体の武装はおよそ武器らしからぬ形状の銃で、ジェームスには判別できなかった。
「防衛部隊のザク、援護を頼む! ライノ2、挟撃して奴らを叩く!」
『了解っ!』
先程と同じようにジェームス機は左へ、カターヤ機は右へ回り込みながらザク・マシンガンを斉射。連邦のMSはその場を動かず、頭部から機関砲を連射しながら左腕の大きなシールドを構えた。
「頭部に内蔵型の機関砲……威力はまずまずといったところだが……!」
『くっ、なんて堅牢なシールドだ……マシンガンじゃビクともしねぇ!』
シールドに阻まれながらもマシンガンを撃ち続ける。すると、カターヤ機を狙う右翼のMSがバズーカを発射した。
『当たるかよっ!』
カターヤはザクにスラスターを使用した高速移動をさせて回避し、後方でバズーカのロケット弾が炸裂したのを感じながらMS用手榴弾――クラッカーを投擲する。クラッカーが炸裂し敵MSが体勢を崩したところにすかさずザク・マシンガンを胴体へ撃ち続けると、右翼のMSは沈黙し数秒後爆発した。
『へっ! 棒立ちのまま射撃なんかしてっからよ!』
一方、ジェームス機と対峙する右翼のMSはその右手の銃からピンク色の光弾を放った。ザクのモノアイカメラが捉えた光は、先程のマシンガンの砲弾の数倍の熱量を持って迫っていた。
「なっ……!?」
咄嗟に右肩のシールドで防御する。光弾が着弾すると、被弾箇所は熔解していた。
「ビーム兵器、だと……!?」
奴が持つのは小型のメガ粒子砲だというのか――ジェームスは戦慄した。左翼のMSへの攻撃を再開しつつ、右翼のMSを撃破したばかりのカターヤへ注意を促す。
「ライノ2、左翼のMSに攻撃を集中! 奴はビーム兵器を持っているぞ!」
『MSがビーム兵器だぁ!? 冗談じゃねぇ!』
味方がやられて慌てたのか、中央のMSは防御を解除しカターヤ機へマシンガンを連射する。
『クソッ、邪魔すんな!』
カターヤは毒づきながら機体に回避運動を取らせ、再びクラッカーを敵機へ投擲した。敵機が体勢を崩した隙に連携して"ビーム砲持ち"へマシンガンを撃ち込むが、やはりシールドに阻まれ決定打を与えられない。
「それならば!」
ジェームスは意を決し、スラスターを吹かして"ビーム砲持ち"へ突撃する。敵機もビーム砲を撃ってくるが、パイロットの腕が未熟なのかジェームス機には掠めるだけだった。
「喰らえっ!」
そのままジェームス機は左肩スパイクアーマーを突き出し、タックルを繰り出す。タックルを受けた"ビーム砲持ち"はバランスを崩し転倒した。
「今だ、ライノ2!」
『了解!』
"マシンガン持ち"を引き付けていたカターヤ機は倒れた"ビーム砲持ち"に照準を合わせ、ジェームス機と共にザク・マシンガンでの集中砲火を浴びせた。"ビーム砲持ち"は瞬く間に蜂の巣にされ爆発した。
「撃破を確認! 次だ!」
『おうよ!』
"マシンガン持ち"へザク・マシンガンで牽制しつつ、ザクの左手に斧形の格闘武器――ヒート・ホークを保持させ、刃を赤熱化させる。左手で支えない分マシンガンの命中精度は下がるが、牽制としては十分だ。敵機はシールドを構えたままマシンガンで反撃するが、ザク・マシンガンと同程度の火力ならば致命的な損傷にはならず、ジェームスは構わず接近する。
「おおおおっ!」
ヒート・ホークを勢いよく降り下ろす――が、その刃は敵機を叩き斬ることなく、シールドに阻まれた。
「くっ、反応だけはいい……が、急所ががら空きだっ!!」
ヒート・ホークを防いだことで空いた胸部へザク・マシンガンを叩き込むと、敵機は力なく崩れ落ちた後爆発した。
「敵機撃破……ライノ0、周囲の状況は?」
『敵部隊沈黙……敵の迎撃を完了しました。防衛作戦は成功です』
「そうか……」
ジェームスが問うとアリスが答えた。続けて、拠点指揮官から通信が入る。
『とりあえず、危機は去ったようだな、軍曹……貴官らのおかげで拠点を守りきることができた。協力に感謝する』
「礼には及びません、指揮官殿。それが我々に与えられた任務ですから」
『……だが、連邦軍がMSを完成させた。これから次々と戦線に投入されるだろう』
戦闘には勝利したが、指揮官の声は重かった。ジェームスは率直に述べる。
「ザク・マシンガンにある程度耐える装甲強度とビーム兵器を使っていたことから、ザクよりも高性能なのは明らかです。機動性に関しては未知数ですが」
『厳しい戦いになりそうだな……そうだ軍曹、撃破した敵MSの残骸の回収を頼みたい。少しでも解析できた方がいいだろう』
「わかりました。ライノ2、残骸は回収できそうか?」
ジェームスが訊ねるとカターヤは、炎上している敵MSの残骸を一瞥して。
『んーむ……機密保持のための自爆機構でほとんどおしゃかだろうが、やってみるか』
カターヤの言葉に頷きながら、ジェームスは新たな戦いの始まりを感じていた。
お久しぶりです、作者です。
やっとこさ更新です。おせーよ。
これからは投稿ペースを上げ……られたらいいな()
ちなみに補足ですが、今回登場した敵MSはジムです。資料によっては9月下旬に素ジムに乗っていたパイロットもいたようなので、実戦配備が優先され連邦編での評価試験が後回しになっていたと想定しました。