機動戦士ガンダム -Target in Sight-   作:Yutazou.S

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霧に潜むヒトツメ -E.F.F. 01-

[October 04. U.C.0079 09:00 a.m.]

 

 

 

 ジムの評価試験中に起きた、敵MS小隊との遭遇戦の翌日。バーズビル兵器開発基地は朝早くから深い霧に包まれていた。

 この日、基地司令部のとある会議室には、基地所属のテストパイロット達が集められていた。基地司令であるデンバー少佐はパイロット達の顔を眺め、口を開いた。

 

「テストパイロットの諸君に集まってもらったのは他でもない。昨日RGM-79の評価試験中、ジオン軍MS部隊との遭遇戦があった」

 パイロット達はどよめき、エージに視線が集まる。

「幸いにも敵部隊を退け、機体とデータが奪取されることは免れたが、ジオン軍には我が軍がMSを完成させたことが露見してしまっただろう。また、近頃オーストラリア大陸におけるジオン軍の動きが活発化しており、昨日の遭遇戦は単なる偶然ではなく、本基地に進攻中の敵部隊、その先遣と接触したと考えるべきだろう」

 再び会議室がどよめきで満たされる。デンバー少佐は手を挙げパイロット達を制する。

「だが、皆も知っての通り、研究施設である本基地が保有する防衛戦力では、ジオン軍と戦っても勝ち目はない。そこでだ」

 デンバー少佐が一息置くと、会議室のスクリーンにジムが映し出された。

「戦時特例を適用することによって、試験運用中のMSを実戦に投入する」

 その言葉でパイロット達は理解した。自分達も命を懸け戦わなくてはならないと。

「戦時特例とはいえ、試作MSの実戦での運用は軍事機密を外部に漏らす可能性がある。機密漏洩を防ぐため、本基地のテストパイロットから選抜した特務部隊『試作MS実験部隊』を発足させる。部隊の詳細は、マクガバン大尉から説明する」

 そう言ってデンバー少佐はパイロット達へ敬礼し、エージ達パイロットも敬礼を返した。デンバー少佐に代わりマクガバン大尉が前に出る。

 

「試作MS実験部隊、立案者のドレイク・マクガバン大尉だ。早速だが、テストパイロットの諸君には本部隊の説明をさせてもらう」

 マクガバン大尉が言うと、スクリーンの画面が切り替わる。

「まずこの試作MS実験部隊の目的についてだ。第一に、迫りつつあるジオン軍の襲撃から本基地を防衛すること。第二に、それを行いつつMSの実戦データを収集すること。以上の二つである」

 状況は逼迫しているが、実戦は連邦軍にとって未知の兵器であるMSの最高の実験場ともいえた。データ収集を行うのは理に適っている。

「次に、部隊編成についてだ。本部隊が現在保有する戦力は、RGM-79、RX-75、そしてジオン軍から鹵獲したMS-06Jが各2機。それに加えて、現在急ピッチで調整中のRGM-79が2機の計8機のMSだ。これらを2個小隊に分け、本部隊の主軸とする。部隊の指揮官は、私が務める」

 基地の持てる戦力を総動員して、この状況を乗り切る。言葉には出さないまでも、意味することは全員が察していた。

「それでは、部隊の要員を通達する。第1小隊はエージ・タリスマン少尉、クラウディオ・メロ軍曹、ハリー・シールズ伍長、リチャード・ミリハス伍長、クラコフ・レオニード兵長。隊長にはエージ・タリスマン少尉を任命する」

 名前を呼ばれ、第1小隊に任命されたエージ達5人は起立して敬礼する。

「第2小隊はグラット・コリンズ准尉、ロイド・クライブ曹長、ドレッド・コイル軍曹、リーバル・ストック伍長、ルーク・ロベルト兵長。隊長にはグラット・コリンズ准尉を任命する」

 第1小隊の面々が着席し、第2小隊の5人も同じく起立して敬礼する。

「加えて、部隊のオペレーターにサーリャ・ミカサ軍曹とフレン・エスピノ伍長を任命する。以上が本部隊の要員だ」

 会議室に集められた中でパイロットではない2人が敬礼した後、着席した。

「これまでのことで、何か質問は?」

 質疑応答に入り、真っ先にエージが手を挙げる。

「隊員が搭乗するMSについては、指定はないのですか?」

「そこは各小隊長に任せる。隊員の適性を鑑みて機体を選んでくれ」

「了解です」

「他に質問は?」

 会議室を静寂が包み込む。マクガバン大尉は満足気に言った。

「それでは、以上で試作MS実験部隊の説明を終了する。各員、解散――」

 ――言い終わらぬ内に、基地内に警報が鳴り響いた。

 

『基地周辺のミノフスキー粒子濃度の上昇を観測、敵襲の恐れあり! 総員、戦闘配置!』

「……悪いが、早速出番のようだ。試作MS実験部隊、出撃準備にかかれ!」

「了解!」

 

 会議室を後にし、パイロットたちが格納庫へ駆けていく。格納庫へ入り、エージは隊員達を集合させた。

「第1小隊、隊長のエージ・タリスマン少尉だ、よろしく頼む。これより搭乗機体を決める」

 隊員達の顔を見ながら、エージは緊張した面持ちで言った。

「俺がジム、メロ軍曹がザク、シールズ伍長がガンタンク。ミリハス伍長、レオニード兵長の2名は待機だ。第1小隊、出撃!」

「了解!」

 

「訓練じゃないぞ、実弾装備を忘れるなよ! こいつの調整は後回しでいい!」

 ジムに乗り込む前にエージはリュウジ・イシダ整備班長に確認する。

「今こっちのジムを出すことは出来ないのか、整備班長?」

「うるせぇ! 出せるならとっくに調整も終わってらあ! さっさと敵さんを片付けてきてくれ!」

「仕方ないか……行ってくる!」

「大事な試験機体だ、壊すんじゃないぞ!」

「わかってる!」

 シートベルトを着用しコクピットハッチを閉じると、モニターにジムのメインカメラが捉えた景色が映る。100mmマシンガンとシールドを装備し、ゆっくり格納庫を出た。

『……第1小隊、第2小隊、聞こえるか? 状況を報告せよ』

 マクガバン大尉からの通信。高濃度のミノフスキー粒子の影響か、基地内での通信にもノイズがかかっている。

「第1小隊、出撃準備完了です」

『第2小隊、同じく出撃可能です』

『ミノフスキー粒子が散布されたのは恐らく、ジオン軍が基地周辺に部隊を潜伏させるためだろう。参謀部では、湖周辺の森林及び丘陵地帯に敵部隊が潜伏していると分析しているが、レーダーは当てにはならない。目視による索敵を行い、敵を迎撃せよ。第1小隊は前進! 第2小隊は基地の防衛に当たれ!』

『「了解!」』

『それでは、第1小隊は索敵ポイントに向かってください』

 ノイズばかりで方角以外示さないレーダーに索敵ポイントまでの方向と距離が表示され、それに従ってエージは北東の丘陵へジムの足を進める。と、ジムのセンサーが不審な反応をキャッチした。

「木の影に熱源……そこか!」

 熱源反応へ向けて100mmマシンガンを連射すると、2機のザクがモノアイカメラを輝かせながら120mmザク・マシンガンで反撃してきた。機影とデータを照合するとエージは回避行動をとりながら即座に司令部へ告げる。

「敵機を確認、06Jが2機です!」

『やはり、ジオン軍が潜伏し……たようだな。予定ど……敵を迎撃せよ』

 基地から少し離れただけで通信がやや途切れ途切れになる。

「了解! 第1小隊各機、1機ずつ確実に撃破するぞ!」

『了解!』

 手前のザクの胴体に照準を合わせ、100mmマシンガンを連射。ザク・マシンガンの特徴的なドラムマガジンに命中し、弾薬が爆ぜた。

「火器は封じた、今だシールズ伍長!」

『は、はいっ! 撃ちます!』

 エージの声を合図にハリーの乗る量産型ガンタンクの120mmキャノン2門が火を噴き、ザクの装甲を易々と粉砕した。

『あ、当たった……!』

「喜ぶのは後だ! メロ軍曹、援護を頼む!」

『了解!』

 クラウディオの連邦軍所属であることを表す白い塗装のザクが、敵機のザクへザク・マシンガンを撃ち込むが、右肩のシールドに防がれた。

『くっ、敵さんなかなかやる!』

「だが、これならどうだ!」

 エージはシールドを構えたままスラスターで敵機に突進した。敵機は真っ直ぐ向かってくるエージ機へザク・マシンガンを乱射するが、ジムのシールドはその程度の火力では撃ち抜くことができない。

「行けぇーっ!」

 シールドごと敵機に激突しそのまま押し倒すと、マシンガンから持ち換えておいたビーム・サーベルをザクの胸部に突き立てる。深々と突き刺さったビーム刃を抜くときには、ザクのモノアイから光が失われていた。

 

 エージはサーベルを納刀し再び100mmマシンガンに持ち替えると、一息吐いて言う。

「ふう……各機、機体状況を報告」

『メロ機、異常なし』

『シールズ機、異常ありません』

「よし……司令部へ、06J 2機を撃破。次の索敵ポイントへ向かいます」

『了解、引き続き敵機を……見次第、速やかに迎撃せよ』

 

 湖の西側へ向かうと、再び熱源反応。味方が撃破されたことに焦ったのか、先程より熱量が大きい。と、霧の向こうで強い砲炎が見えた。

「!! 各機注意しろ、敵はバズーカを装備している!」

『り、了解!』

 バズーカの砲弾がエージ機の頭部を掠めた。冷汗をかきながらもエージは告げる。

「再び敵機発見、06Jが2機! 迎撃に移ります!」

 接近してザクの機影が鮮明になると、やはり1機はザク・バズーカを装備していた。ジムとてバズーカの直撃に耐える装甲はシールド以外に持ち合わせていない。

「バズーカ持ちを優先して叩け! 直撃だけは何としても避けろ!」

 頭部バルカンとマシンガンを同時に連射し"バズーカ持ち"へ攻撃。撃たれながらも敵機はハリーのガンタンクへ狙いを定めていた。

「伍長、狙われているぞ!」

『させるかよっ!』

 ザク・マシンガンを連射しながら敵機に接近していたクラウディオのザクがヒート・ホークを抜き、ザク・バズーカの砲身を溶断する。

『もう一丁!』

 返す刀、もとい斧で敵機の胴体を――捉えることなく、左腕を切り落とした。

『チッ、逸らされた!』

「だがよくやった軍曹! 伍長、撃て!」

『了解!』

 ガンタンクの120mmキャノンが右脚に直撃し、ザクは倒れ伏す。残るザクは1機。

 エージは最後のザクにマシンガンを向けつつ、外部スピーカーで呼びかける。

「これ以上の戦闘は無意味だ、機体を降りて投降しろ!」

 3機に包囲されたザクのパイロットはしばらく迷っていたようだが、やがて構えていたザク・マシンガンを地面に置き両手を上げた。

『……我々の敗北だ。武装を解除し、投降する。そこの倒れたザクは起こしてやってくれ』

「了解……貴官の賢明な判断に感謝する」

 エージはマシンガンを下ろすと、司令部へ通信を開く。

「司令部へ、ザク1機を撃破、1機は武装解除。パイロットは2名生存、いずれも投降させました」

『うむ……ミノフスキー粒子濃度が低下してきている、これ以上の索敵は必要ないだろう。よくやってくれた、タリスマン少尉……敵兵を回収し基地に帰還せよ』

「了解」

 残ったザクをクラウディオとハリーに任せ、擱座したザクを起こしてパイロットをジムの手に乗せると、エージは基地内へ歩みを進めるのだった。

 

 

 




 どうも作者です。前回の投稿からそこまで時間を空けずに投稿できたかな……?
 今更のことではありますが、度々今までの話を加筆修正していますが、後に知った情報や資料を基に修正しています。ご了承ください。
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