宇宙将来体
本日、東松山に隕石が落下。
墜落現場には米高校の学生手帳が落ちており、所有者の安否の確認は取れていません。
「ここは何処だ」
気がつくと森の中に寝転がっていた。
俺は確か空から爆発音がして見上げたらそこに火球があって。
「俺死んでんなぁ」
なのに何故今こうやって意識があるのか。さっぱりわからない。
手を視界に入れてグーパーしてみるとやはり感覚がある。
取りあえず立ち上がって歩き出す。すると幸いにも山道に出た。
しゃがみこんで地面を凝視する。
「蹄の彫りは向こう向きのほうが深い。逆方向は浅いな。つまり向こう側に何かを運んでる? なら都市があるな。少なくとも生産側ではないはずだ」
適当な予想をして自分を納得させて歩き出す。しばらくすると大きな壁が見えた。
壁には門があって、そこ予想通り馬車が列をなしていた。
とりあえず並んでみる。
「坊っちゃんは冒険者志望かい?」
「冒険者?」
「なんだ違うのか? ならなんでこのオラリオに来たんだ?」
「死んだはずなのに生きてるから並んでます」
「よく分からねぇな」
俺だってわからない。
なんでアンタが中世の人のような服装をして馬車に乗っているのかという疑問もある。
あれか? もしかして今流行の異世界転生物?
「おいおいおい。異世界か? ここ」
取りあえず門番の質問にすべてYESと答えて中に入った。かなり雑な警備だ。
街の中に入ると雰囲気ががらっと変わった。歩いている人間はファンタジー作品のような服装をしていて、鎧や武器を身に着けている人たちもいる。
褐色肌の女や耳の尖った男、異様に小さいが大人びている人など色々な人がいる。
そして街の中心には黒い塔がそびえ立っていた。
「よう。お前この街に来たばっかだろ? 教えてやろうか?」
後ろから髭面の男が声かけてきた。
歩きながら色々と教えてもらう。
「それじゃあどこかの派閥に所属して冒険者になるのがいいんですね」
「そうそう。でもなぁ派閥に加入するには持参品がいるんだが、お前ないみたいだな」
「ええ、無一文です」
いい人そうな男が方をポンポン叩く。
「特別に俺の派閥に入れてやるよ。顔が効くからな」
(話がうますぎないか?)
だがまぁ乗ってやるかと思い髭の男についていく。
連れて行かれた先は結構大きな建物だった。
「ここが俺のファミリア。ソーマ・ファミリアだ」
ファミリアに入るには神様から恩恵をもらわなければならない。
今日は特別な日らしく直ぐに恩恵を刻んでもらえた。
「今日は新しい仲間が増えた!! 宴だ!」
団長と名乗る男が盃を振り上げた。
団員たちは一斉に酒を飲み始める。
「自己紹介しろよ新人!」
「ニッタ クイナといいます。よろしくお願いします」
「よろしくなニック!」
早速名前を略された。
酒は飲めないので飲むふりをして食べ物だけ食べる。
最初は楽しい宴だったのだが。途中からそれは凄惨さを極めて行った。
「リリルカ呼んでこい!」
しばらくすると縄で縛られたリリルカという小さな女の子が運ばれてきた。
運んできた大男はリリルカを天井に向かって投げた。天井にある梁を中心には2、3回転したあと宙ぶらりんにぶら下がった。
「なにを」
と呟いたのと同時に一人の男が、ぶら下がった少女を殴った。殴られた勢いで飛んでいくが紐に繋がれているのでまた戻ってくる。それを殴るを繰り返す。
「いいぞやれやれ!」
「はっはあ! ど真ん中!」
殴られて少女が血を撒き散らす。だが鳴き声も悲鳴もあげようとしない。
ニックが動けないでいると少女を吊るしていた縄が切れて地面に落ちる。
ドタッという音を立てて地面に落ちた。
「何だつまらねぇな。吐きもしねぇ」
男は少女の長い赤色の後ろ髪を掴み上げる
「サポーターが! てめぇこの前俺たちの金くすねたよなぁ! 殺さないだけありがたく思え!!」
殴っていた男が少女の髪を掴んだ。
「おう! 新入り!」
ニックは体をビクッと震わせる。
「まだ殴ったことないんだろ? 殴らせてやるよ」
そういうとリリルカをニックの前に連れた。
リリルカは机の上に乗った。殴りやすいように。
目は怯えも恐怖も憎しみもない。光も闇もない。感情もない。そこには穴があった。
「どうした?」
「いや」
髭面の男が渋るニックを見てリリルカに顎で促した。
心の中で何かが切れる音がした。
「殴り方を知らないのか?」
「知ってる」
殴らなければ、俺も同じ目にあう。
甘い話には裏があるというが裏どころじゃない。
「殴り方なんざ知ってるさ」
ニックは拳を振りかぶる。
「いいぞ! やっちまえ!」
「今だ! なぐっぶふぉ!?」
ニックは側で囃し立てていた髭面の男の頭を掴んでスパゲティの乗ったさらに顔を叩きつけた。
ソースや皿の破片が飛び散って音を立てて地面に落ちる。
「殴り方なんざ知ってるさ。殴る相手の選び方もなぁ!!」
団員たちは一斉に武器を抜く。
「いたいけな女の子を痛めつけるクズ野郎共。お天道様がオメェらを許してもオラァてめぇらを許さねぇ!」
「殺せぇ!」
飛びかかってきた。
「あ……あな……あなた……」
「心配すんなちびっ子。俺はな。神ソーマいわくイレギュラーらしい」
ニックは上着を脱ぎ捨ててワードを口にした。
「"デオキシス ノーマルフォルム"」
それを口にした瞬間体がぐにゃぐにゃとゆがみ始める。
体色が肌色から赤と緑に変わっていく。
異常な光景に襲いかかろうとした者達は踏みとどまった。
腕が触手に変わってまた腕に戻った。
「来いよ」
手招きする。
「それとも新入り一人が怖いのか?」
怒声を上げていっせいに襲いかかってきた。
ニックは右手を振り上げると部屋中の机と椅子が空中に浮かび上がる。
これは魔法ではない。スキル【宇宙招来体-デオキシス-】の効果。内容はつまりデオキシスのちからを得ることができる。
これは魔法ではない。念力だ。
机や椅子を砕いて木片へと変えて嵐のように回転。冒険者達を吹き飛ばす。
「だ、団長!」
「団長はレベル2だ! 格が違うんだ!」
「"アタックフォルム"【サイコブースト】!」
フォルムチェンジで姿をアタックフォルムに変えて魔法を唱える。
四本の触手から出た念力の力が凝縮される。そしてそれを打ち出した。
その念力の塊は団長へと直撃して大爆発。
壁に突き破って敷地内の土地に大きな音を出して激突した。
それを見た全員が固まる。
ニックは姿をもとに戻して降り立った。
そしてリリルカに上着をかぶせて抱きかかえる。
「この女は俺がもらう! 次俺たちに手を出してみろ。お前ら全員星にしてやる」
それだけ言い残してニックはホームをあとした。ついでに転がってる金の入った袋と武器も強奪しておいた。