宇宙招来体がダンジョンに潜るようです。   作:チノパン

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私の名前を呼ぶな

 ガネーシャの所に行って名乗り出たところ報酬をもらえた、それもかなりの額を。

 話の通じる人で公にしないでほしいと頼んだところその通りにしてくれた。

「賑やかな人だったね」

「だな。ああいう神様の所なら楽しそうだよな」

「ホームの外見はアレだけどね……」

 股間の部分がオープンザプライスした入り口には面食らった。

 でもかなり大きくて清潔感があってソーマとは大違いのホームをしていた。

 同じ神様で何故ここまで差が出るのか。

「いつかああ言う大きなホームに住みたいな。二人はどういう家に住みたい?」

「具体的には何も決まってないな」

「私は平和なところですね」

 リリの元々の境遇を知るニックは、その言葉をしみじみとした感情になる。

「それでは。私は行く所があるので」

「おう。気をつけろよリリ」

「……はい」

「なんか。元気がなさそうだったね」

「そうか?」

「うん。何かあるのかな」

「わからねぇな」

 確かに最近何か考え込んでいることが多い。何かあったのだろうか。

 

 

 

 リリは何時もの場所にお金を保管した。

 元々かなりの額があったがニックと組んで以来今までとは段違いの速度で溜まっていっていた。それに加えて今回の恩賞。

「…………」

 もうすぐでファミリア脱退の為のお金が貯まる。

 ずっとあのファミリアを抜けるためにお金をため続けてきた。やっと目標額が現実味を帯びてきた。

 なのに。やっとあのファミリアから解放されるっていうのに。

「……本当にやめていいのでしょうか」

 頭にあるのはニックの事だ。

(何を。あれはタダの冒険者でサポーターを虐げてきた奴等と同じ。いつあの人が私を裏切って捨てるとわからない。それに元々取り入って裏切る為だけにパーティを組んだんだ。何度危険な目に合わされた? 何度言うことを聞かずにため息をついた? 早いところパーティを解消しよう。あと少しで貯まるんだ)

 貯金している額の書かれた紙を眺めながらずっと考え込む。

 今まで何人もの冒険者を騙してきた。

 それと同じだ。騙しやすいカモを食って稼ぐだけ。それで脱退して地獄から抜け出すだけだ。

 あの人もカモなんだ。

 

「よう」

「あ」

 ニックが相変わらずの間抜けな顔をして帰ってきた。

「何かあるなら相談してくれよ。俺やベルだってお前の力になりたいぜリリ」

 名前を呼ばないで。お願いだからそうやって優しい声で私の名前を呼ばないでください。

「リリどうした?」

 あなたに呼ばれる度に決意が揺るぎそうになる。その度にあなたの欠点を思い浮かべて何とかあなたを嫌いにならないといけない。

 身を刻むように、それが辛い。

 お願いだから。それ以上その見返りを求めない優しさを私に向けないでください。

「外に出てきます」

 耐え切れずリリは外に出た。

 

 向かうのは都市を囲む防壁の上。

 彼処はいつも誰もいない。だからゆっくりできる。

 腰掛けて膝を抱える。

 風が灰色のフードをひっくり返して髪を露出させた。

 空を見上げると澄んだ青空が広がっている。

 後ろめたくなって再度顔を膝に埋めた。

 私はどうしたらいいんだろう。

「私はどうしたらいい」

 返事なんて無いのを知っているのも関わらず、リリは虚空に問いかけた。

 

「俺達の餌になればいい」

 返事なんて無いはずなのに返事が帰ってきて驚いて顔を上げるとそこには。

 髭面のおっさんを筆頭に見たことのある顔がいた。

 散々自分をいたぶった相手。ベルが守ってくれた時迫ってきた奴ら。

「そんじゃあ。来てもらうぜリリ」

「私の名前を呼ぶな!!」

「愛しのダーリンじゃなくて嫌か?」

 そんな仲じゃないと否定しようとしたところで口と鼻に布を当てられ気を失った。

 男達は気を失ったリリのフードを掴んで引きずりながら運ぶ。

「あとは手はず通りだ。いいな」

「わかってますよ旦那」

 団長には手を出すなと言われたがそれで納まっていられるかってんだ。

 それにあいつ等を殺したらファミリア内で評価はうなぎのぼり。幹部だって目じゃないぜ。

「がははははは!!」

 

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 キザな台詞を言ったせいで気を悪くさせちゃっただろうか。

 もう少し大人な言葉遣いをした方がいいのかと後悔の念にニックはくれていた。

 リリは冒険者にひどい目に合わされていた。だから冒険者の自分もあまり好きでは無いのかもしれない。

 暴力の象徴としてあるのなら同じ部屋にしたのも間違いだったもしれないな。

 せめて同じ宿でも部屋は別にするべきだった。

 

 というか女の子と同じ部屋ってよく考えると不味くないか?

 下の宿屋の親父は俺たち二人をどう見ているのだろうか。

 やばい恥ずかしくなってきた。

 ちょっと聞いてこようかな。

 でも怖いよなぁ。

 だって話を聞きに行ってよ。"ここ最近はお楽しみでしたね"なんて言われてみろ。もうリリと顔合わせられないよ。

 小人の女連れ込んで数日間お楽しみとか変な噂が立つわ。というか同じ部屋に泊まってる時点で変な噂が立つか。

(あれ。ならホームから隠れて潜伏しても同じ部屋にいるってことで、俺のロリコン噂が広がったら潜伏にならないんじゃないか?)

 この同じ部屋に泊まって安全を確保しながら潜伏するってのは破綻してるんじゃないだろうか。

「変な噂が立つ上に居場所バレバレって……。じゃあ。まずくない? ソーマの中で俺の噂とんでもないのが出回ってんじゃないの?」

 アイツはリリの枕をスーパースーパーしてるとか。

 

 宿屋で毎日やってるとか。

 これは不味い。非常に不味い。

 冬に学校でストーブの消し忘れに気がついた時くらい不味い。

「やっべぇ……ひゃっべぇ……」

 わざとらしく掠れた声を漏らす。

「……ベルは大丈夫だよな?」

 ピュアなあいつの事だ。変な見方はされてないだろう。

 多分大丈夫だ。の筈だ。

 じゃなきゃお前どんな顔すればいいんだよ。

 笑えばいいと思うよ?

 いやお前。リリみたいな小さな女の子と同じ部屋に寝泊まりしてる男がニヤつきながら宿屋から出てきてみろ。完璧変態じゃん。

 即で裁判所行有罪確定懲役15年だよ。

「ニック!!」

「ひゃい裁判長! 俺はロリコンじゃありません!! 可愛い子が好きなだけです!!」

 

 扉が突然開かれて変な声と言葉が出た。

「なんか大変そうだけど、こっちも大変なんだ!」

 ベルが何か紙を手渡してきた。

 握りしめていたせいでくちゃくちゃになっている。しかも文字が汚い。

「はーなになに」

『お前の女の身柄は預かった』

「シルさん攫われたんじゃないのか?」

 ベルは。顔を赤くして否定する。

 名宛はニックになってると。

「俺の女は否定しな……はいはい急いで読みます」

『霧の深い階層で待っている。兎小僧と二人でこい』

「ふん。雑魚共が。数字でなく霧の深いってだけなのが学のなさを感じるわ」

 最後にご丁寧にソーマの印が押されていた。 

「てかまて。俺の女ってことはリューさん攫われたか」

「リリでしょ!」

「いずれものにしてみせる!」

 ついに怒ったベルにエメラルドグリーンの盾で頭を殴られた。

「急ごう!」

 人混みを駆け抜けて行く。

 

「どうしたの二人共!?」

 途中エイナさんに遭遇した。

「人助け!」

「皆殺し!」

 意味不明な三文字を残して走り去る背中に向かって落ち着くように呼びかけたが二人は行ってしまった。

「どうしよう……あ」

 エイナは少し離れたところにアイズがいるのを発見した。

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