回復薬も装備も揃えたのですぐにダンジョンに潜った。
冒険者はダンジョンから生まれるモンスターを倒して魔石を手に入れてそれを売る事で生計を立てる。
地下に行けば行くほど敵は強くなるが魔石も大きくなり売ったときの値段も上がる。
「あの姿は使わないのですか?」
「モンスターに間違われない?」
「……否定はできませんね」
「でしょ」
アレは奥の手の奥の手。
ダンジョン内を探索していると壁から何かが生えてきた。
「あんな感じに生まれるのか?」
「ええ」
「……気持ち悪」
頭が出てきたところを切って首を落とした。
「きっも! 無理無理無理! うっわ血がダラーなってるやん!」
ドン引きするニックに代わってリリが魔石を抜いた。魔石と首を失ったモンスターは塵になって消える。
「モンスターを倒して魔石やドロップアイテムを手に入れて金に変える。こうやって冒険者は生活します」
初日にしてニックは生きていけるかどうか疑問を抱いた。
それでもリリの指導の元戦っていると、だんだん俺天才なんじゃないか? と思い始め。
リリとの相談で少し下の階層に踏み込んでみることにした。
だが、すぐにやめとけばよかったと思うことになる。
「うぉぉぉおおお!!」
「きゃあああああ!!」
「うああああああ!!」
三人は赤い人間の体に牛の頭の生えた怪物。ミノタウロスに追われていた。
リリよりも歩幅の関係でニックのほうが早い。なのでリリは今ニックに抱きかかえられている。
そしてその二人の横には。
「誰だお前!?」
全く名前も何も知らない少年が走っていた。
「ニック様フォルムチェンジは!?」
「無理! 変身する前にやられるわ! 人間状態だと色々脆いんだよ!」
デオキシスモードならコアさえ残っていればなんとかなるが、人間状態なら普通に死ぬ。と思う。あのステータス説明不足なんだよ!
「あー! あー! 死ぬぅ! リリ! 愛してるぞ!」
「あなたそれ言いたいだけでしょ!!」
リリはボウガンに矢を込めて肩越しに狙う。
「刺され!」
放たれた矢はミノタウロスの右目に直撃した。
「……」
「……」
「……」
『ブオオオオオオ!!』
「「「怒ったぁ!」」」
ミノタウロスは怒りのあまり速度を上げる。
「あ、駄目だ。片腹痛くなってきた」
「ちょっ……!?」
片原抑えながら走っていると、隣を走っている謎の少年が口を挟む。
「あ、間違えたぁ!」
「何を間違えたんだ名前をしらぬ人!」
「この先……行き止まり……」
「「…………ふざけるなぁ!」」
そう叫んだ二人の目の前に壁が迫ってきた。
行き止まり。逃げられそうもない。
ミノタウロスは息き絶え絶えの三人を完全に沈黙させるべく丸太のように太い腕を振り上げた。
「慈悲を! 慈悲をくれ!」
「ああ。幸せになりたかった」
「終わった」
三人が死を覚悟したその時、ミノタウロスに一線走る。
動きを止めたミノタウロスは血を吹き出して真っ二つに切り裂かれた。
血飛沫が上がり三人に降り注ぐ。
ミノタウロスを斬ったのは美しい女性だった。
「う、うあああ!!」
謎の少年は走り去っていった。
「大丈夫?」
「ひ、ひい」
「だ、大丈夫です」
立ち上がって頭を深く下げる。
「せめて! お名前だけでも!」
「ニック様、結構余裕ありますね」
女性は振り返って名乗った。
「アイズ」
それだけ言うとアイズは立ち去っていった。
二人も直ぐに帰路につく。
「風呂風呂風呂風呂!」
今すぐにでもこの気色悪い体を洗い流したい気分だったのでリリとギルドのシャワーに行って時間を決めて落ち合うことにした。
時間一杯水を浴びて、血を洗い流した。
最後の方は慣れてきたが、やはり生き物を一匹たりとも殺したことのない生活を送ってきたので突然"モンスターだ! 殺せ!"と言われても無理がある。
その上ミノタウロスとか言う怪物に襲われて死にかけた。
「飯食えるのかな俺」
「申し訳ありません。待たせてしまって」
「良いよ。俺も時間いっぱい水浴びたから」
「それじゃあ打ち上げにでも行きましょうか?」
「良いぞ」
忘れよう。そんで明日ダンジョンの手前で思い出そう。