そして誰もが帰ってくる Heart of the warship girls   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

6 / 11
瑞鶴旗艦にして20、60、10、100を五回回したら烈風二に流星一でて糞吹いた。
やはり瑞鶴は運がいい。
しゅごい


つまり不知火は落ち度がない

 

「さて、というわけだ諸君」

 

 窓の外は次第に暗くなっていく。沈みかける夕日の輝きを受けながら、机の前に横一列で私たちは並んでいた。右端から榛名、瑞鶴、加賀、北上様ち、そして私。不知火提督の右後ろに。。普段着や寝間着ではなく艦娘としての正装だ。巫女服や弓道着、セーラー服。そして提督は常と変わら無い笑みを浮かべながら言葉を紡いでいく。

 

「昼前にいきなり三艦隊分の深海凄艦が強襲、八丈島にいた提督たちが戦ったけれどエリートやフラグシップの戦艦や空母なんかもいたから全滅させられずに撤退、戦艦タ級が一、ル級が一、空母ヲ級が二、雷巡チ級が二。合計六体でこれ全部フラグシップだって」

 

「うわなにそれ頭悪い」

 

「全くだ。どうやら襲ってきた三艦隊分のそれぞれ旗艦と副官的なのが残ったぽいね。チ級二とヲ級一、ル級は中破で、タ級ともう一隻のヲ級は小破状態。帰ってくれればいいのに、そんな被害受けても元気に進行中。もうちょっとしたらあー、えっと」

 

「一時間もあればこの島の沖合を通過しますので進行中の連中を横からドカンするというわけですね」

 

「超大雑把にまとめてくれてありがとう。まぁそういうことというわけで――出てくれる人挙手」

 

 ――は?

 出てくれる人?

 帽子の下で驚き目を見開く私だった。

 けれど、

 

「榛名にお任せ下さい」

 

「やりますか」

 

「アウトレンジで決めれるといいなぁ」

 

「ま、仕方ないよねー」

 

 榛名たちはやる気無さげに、けれど当たり前のように手を掲げていた。

 今更言うまでもなく、艦娘は深海凄艦と戦う為の存在だ。深海凄艦が海に出れば迎撃の為に出撃することは当然あるのだから彼女たちが出撃の意思を見せたのは驚くことはない。けれど、問題はその前。提督が命令という形ではなく、志願を募ったこと。

 ――なんだそれは。

 

「ふむ……ちなみに不知火ちゃんは」

 

「言葉にする必要がありますか?」

 

「必要ないね。……じゃあ」

 

「っ」

 

 視線を感じた。提督だけではない。榛名も、瑞鶴も、加賀も、北上も、不知火も。執務室にいる全員から等しく目を向けられている。それを私は帽子の唾で表情を隠し、自分の足元を見ることで逸らしていた。

 意味があるわけじゃないのに。

 誰もが手を上げた中で私の身体は動くことはなく、

 

「じゃあヴェールヌイちゃんは僕とお留守番で。いつも通り五人で頑張ってね」

 

「なっ……!」

 

「了解です、では三十分後に港に集合で。お手洗い、見たいテレビ番組の予約、つまみ食い。それに死亡フラグ立てまくって逆に生存フラグ立てることも忘れずに。はい、解散」

 

「はーい」

 

 不知火の言葉に榛名たちは各々の返事を返しながら、けれど私に何一つ触れることなく部屋から出ようとして――

 

 

「――待ってくれ!」

 

 

 気づいたら、私はそう叫んでいた。

 誰もが止まる。足を止め、動きを止め、そしてまたも視線を私に止めて。身体が震えているのを実感する。しかしそれがどんな感情によるものなのかは解らない。怒りか恐怖か戸惑いか。

 

「……どうして」

 

 多分、それら全部だ。

 

「どうして……なにも言わないんだ……!」

 

「じゃあ君はなにを言ってほしいんだい?」

 

「っ……!」

 

 提督の即答は刃となって胸に突き刺さった。

 その痛みを感じ顔を上げることはできず、それでも口は動いていた。

 

「……今から出るということは夜戦になるだろう」

 

「そうだね」

 

「そうしたら……正規空母である瑞鶴や加賀はほとんど戦えない。まともに戦えるのは不知火や北上、榛名だけのはずだ」

 

「そうだね。そのあたり仕方ない」

 

「一回の攻撃では全て沈ませるのは難しい、反撃が来るのは間違いない。だったら、だったらどうして……私に何も言わないんだ……っ」

 

「だから何を言ってほしいのさ」

 

「っ……決まってるだろう! 出撃しろとどうして言わないんだ! 私が戦わないから!? 最初に言った、棄て艦にでもすればいいと、なのにどうして、態々出撃を志願するような形を取るんだ! 相手はフラグシップなんだよ!?」

 

 いつの間にか。

 自分でも抑えきれない感情が爆発していた。けれど、私の言っていることは正しいはずだ。ただでさえ五隻しかいない。その半分がまともに戦えない。戦力は半減し、深海凄艦たちが中破なり小破していたとしてもフラグシップの特に強い個体たち相手に油断できない。

 だから、例え戦えないとしてもただの的として使えばいいのに。

 

「んー、僕棄て艦戦法しないって決めてるからねぇ。ただでさえ人少ないしさ」

 

「そんなこと言って……艦隊が敗北すれば、提督だって死ぬかもしれないんだよ!?」

 

 叫び、

 

いいんじゃない(・・・・・・・)それでも(・・・・)

 

 意味が解らないことを、彼は言った。

 

「………………は?」

 

「正直、女の子戦わせるだけでも業腹なのに、皆死なせてまで生き残ろうなんてほど僕は生き汚くないからねぇ。皆が死んだら、僕が死ぬのもしょうがない」

 

「なっ……ぁ……なにを……っ」

 

 提督が何を言っているのか理解できない。どうして彼は、己の死を肯定できるというのか。それも、自分たち兵器(・・・・・・)に対して。混乱する頭に、彼の背後に立つ不知火や背後の北上たちを見るが、何も言ってくれない。

 

「っどうして、そんなことを……! 提督は、司令官は人間で……私たちは、艦娘で、兵器で……私たちと違って、貴方には」

 

「――僕は人間で君たちは艦娘で、艦娘と違って人間は替えが聞かないって?」

 

「っ……そうだろう!」

 

 艦娘とは兵器だ。兵器とは大量に作り出されなければならない。或は用途によっては変わるかもしれないが、少なくとも艦娘はそういうものだ。艦娘なんて同じ型の存在がいくらでもいる。この鎮守府では違うけれど、他のところに行けば同型の艦娘が顔を合せるなんてこと珍しくない。

 

 例え沈んでも――誰もが帰ってくる。

 

 実際にそうだった。

 三か月前、当時所属していた艦隊にて暁、雷、電の三人は沈んだ。年始年末という一定期間の間に深海凄艦の勢いが強くなっていたのだ。度重なる出撃にて三人は沈んでしまった。別に珍しいことではない。艦娘として生まれ、第一線で戦う以上はいつか轟沈するのが運命なのだから。あの時の提督に恨んでいるわけではない。悲しくなかったわけではないけれど、これが当たり前だ。そう言い聞かせ、ボロボロになりながら鎮守府に戻れば、

 

 ――怪我一つない暁たちが待っていた。

 

 あの時の衝撃は今でも忘れない。呆然とする私に提督は涙を、悲しみではなく喜びの涙を浮かべて言った。

 

『よかったな響。ちょうど、建造していたら偶然この三隻が出たんだよ。レベルを上げ直すのは大変だけど、また元通りだぞ』

 

 元通りなわけがない。

 彼女たちは自分の目の前で沈んだ。泣きながら、司令官の名を呼びながら、次の生への願いを口にしながら。海の藻屑となって消えて行った。確かに、この目で見た。

 おかしい。おかしいだろう。おかしいはずだ。おかしくなきゃおかしい。

 新たに建造されたという暁たちを受け入れれば――一緒に戦って、沈んだ暁たちはなんだったというのか。彼女たちが存在していた意味が何一つなくなってしまう。失くしたはずのものがこんなにも簡単に帰ってくるなんて、まるで自分たちは取るに足らない石ころでしかないと言われているような気がした。

 いや、本当はそうなのだろう。実際誰もが暁たちのことを喜んでいたし、自分も喜ぶべきだった。これが艦娘というシステムの中では至極真っ当なことのはずだった。

 

 それでも、私の心は壊れてしまった。

 

 壊れて、怖くなって、戦えなくなった。あの時消えた姉妹たちが無意味なるのが、そして自分もそうなってしまうことが怖くてたまらなくて。

 何もできなくなって、今ここにいるのだ。

 

「っ……!」

 

 思い出すだけで全身が引き裂かれそうになる。己の思考が間違いっているというのに、その想いが全てを支配しているのだ。

 どうしようもなくどうしようもなくどうしようもない。

 

「……ヴェールヌイちゃん」

 

「……なんだい」

 

「君が君の心を蔑ろにしちゃあいけないよ」

 

「――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「艦娘には心がない。心があるのは人間だけで、艦娘はそういう風に見えているだけど、本当のところはそんなものない」

 

「……」

 

「実際軍学校ではそう教えられている。艦娘とは兵器であり、生き物ではない。意思疎通は可能でも感情や精神は持たず、人工知能のようなもの。心はない、心はあるのは人間だけだ。……馬鹿みたいだよねぇ。いい年こいた大人が、新しい世代の子供たちにそんな風に教えてるんだぜ。……心なんて曖昧なもの、人間だって何を以てそれがあると判断しているかだって曖昧なのにさ」

 

 本当のところを言えば。

 そう教えなければ、戦えないのだ。年端もいかぬ少女たちを戦場へ送り出すという行為は並の精神ではできない。それがただ人間の真似をしているだけの何かであると刷り込まなければ、出撃させるなんて無理だ。慣れることはあるかもしれないが、心の磨耗は止められない。だからメディアや小学校の時期から教えている。

 あぁでも――。

 一体誰が、今僕の目の前で瞳に涙を溜めながら泣いている彼女に心がないなんて言えるのだろう。

 そんな奴こそ、心がない。

 

「ねぇ、ヴェールヌイちゃん」

 

「……」

 

「君がどんな風な想いをしているのか、まぁ一応解るよ。少なくとも解ったつもりではいる。君の抱えているソレ(・・)を、僕たち(・・・)は良く知っているから。……君は、優しすぎたんだよ」

 

「……っ」

 

 艦娘だからと、何もかもなかったことになるのが耐えられなかった。誰もが、当たり前だと流してしまう些細なことにまで一々心を痛めて、そのせいでどこにも行けなくなってしまった。何もできなくなってしまった。

 正しいか間違っているかでいえば間違っている。

 強いか弱いかでえいば弱い。

 だとしても、その想いは、きっと掛け替えのないものだと思う

 榛名ちゃんも、瑞鶴ちゃんも、加賀さんも、北上様ちゃんも、不知火ちゃんも。

 大切な人たちを無くして、その喪失をなかったことにできなくて、ここに流れ着いたのだ。

 

「私と同じって言うなら……どうして……どうして、そんな風に戦いに行けるんだ」

 

「決まってますよ」

 

 半ば独り言のように零れた言葉を拾ったのは不知火ちゃんだった。僕の右後ろで、いつもと変わらずに無表情のままでヴェールヌイちゃんの疑問に答える。

 

「私たちだって、本当は戦いたくない。艦娘としての使命なんて棄てて、この島で皆さんとずっと一緒にだらだら日々を過ごしていたい……でも、戦わないと、この人は死んでしまいますから。それは、嫌です。だったら、どうせ死ぬのなら。この人の為に戦って、死にたい。私たちが戦っているから、この人が生きている、私たちの生に意味があると信じられるんです」

 

「でも不知火ちゃん、沈んだら沈み切る前に僕のこと道連れに殺しに来るっていつも言うよね?」

 

「えぇ、私が死ぬときは道連れになってもらいます。これは誰にも譲りません……嫌ですか?」

 

「いや全然」

 

「ならば問題ないですね」

 

「だねぇ。……さて、ヴェールヌイちゃん」

 

 掛けた声に、ビクンと肩が揺れる。そんな彼女を背後にいる皆が優しい瞳で見ていることに気付いているだろうか。ここに来た時は、皆こんな感じだった。

 

「君に戦えって言わない理由は簡単だよ。言っただろう? 人類守護とかどうでもいい。ここは戦う場所じゃない。君みたいな優しい心を無くさないための場所だ。傷を舐めあって、依存しあって、足を引っ張りあって、駄目になって、いい子じゃなくなって、やるべきことをやらなくて――それでも、心を守るための場所なんだよ」

 

 だから、戦えなんて言わない。棄て艦なんてもっての他だ。

 

「君の代わりなんていないんだからさ」

 

「――っ」

 

 だから――、

 

「君も、君自身の心を守ってね」

 

 

 

 

 

 

 




まぁだからなんだよ?とか言われたら返す言葉もないけど、こういうのも悪くないんじゃないかなと思う。

心って何だろうね。
まぁ合言葉は愛がなければなんとやらってやつ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。