そして誰もが帰ってくる Heart of the warship girls   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

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ついに不知火とケッコンカッコカリしました。
というわけで完結とか言いつつ記念に。


こうして提督は決意する

 不知火ですが、最近の司令の様子がおかしいです。

 先週くらい前、珍しく司令部から連絡が来てかららしくもなく悩んでいることが多い。

 いや、怠けていたり、呆けていたりするのはいつものことなのだが、それでも悩む、というのは滅多にない、或は私たち艦娘にその姿を見せるようなことがないのだ。不知火たちの前では常に飄々とし、自然体でいる、そういう風に心がけ、実践している。

 馬鹿な――馬鹿な人なのだ。

 いや、知恵や知識という点に関しては右に出る人はいない。少なくとも自分が建造されてから、関わった人間の中ではそうだ。彼は掛け値なしに天才を呼ばれる者だ。かつて陽炎や黒潮を疲労轟沈させたということはあるが、経験不足というよりも周囲の大人たちがそういう風に仕向けていたというのが大きかった。多分、将来有望な年若い提督に轟沈という経緯を積ませようとか、そんなことだったのだろう。

 今更言っても仕方ないけれど。

 そんな司令は普段からサボりがちではあるが、事務能力という点では決して低くない。というか自分や加賀さんにそのあたりのことを教えたのも司令だし、瑞鶴さんや加賀さんの漁、榛名さんの農業に触れさせたのも司令だ。北上さんは……まぁあの人は仕事をしないのが仕事のようなものだ。偶に大きな魚を釣り上げたり、森から猪とか採ってくるし。

 だが、そんな司令が最近単純に宙を眺めたり、釣り糸も垂らさずに海を眺めている。話掛けても反応が鈍い時も多い。

 

「というわけで急遽艦娘会議です。最近司令がおかしい原因を考えましょう」

 

「おおー」

 

「ありがとうございます、加賀さん」

 

 気の抜けた加賀さんの合いの手に感謝しつつ、部屋の中を見渡す。

 既に一日は終わり、夕食は風呂も終えて後は寝るだけ。六人部屋に布団も敷いて、夜のガールズトークの時間である。寝間着袴の加賀さんと瑞鶴さん、パジャマ姿の榛名さんとヴェルさん、北上さんは相変わらずのタンクトップの上からジャージを羽織っている。季節はもう十月なので、それなりに肌寒い。

 

「でも提督の様子かー。言われてみれば確かに最近ちょっとあれだよねー」

 

「確かに、榛名も少し変に思っていた所です」

 

「んー、そうねぇ。ぼーっとしてること多いわよね」

 

「この頃私がネタ振りしても反応してくれないものね……これは一大事よ」

 

 六人で円を作りながら、真ん中に並べたお菓子をつまみなが四人も頷く。

 やはり自分だけの気のせいではなかったらしい。まぁ自分が彼について言ったことが勘違いや間違いがあるとは思っていないから、これはあくまで確認だったのだが。

 

「ヴェルさんはどうですか?」

 

「ん」

 

 一人発言していなかったヴェルさんに話を振る。

 気づけば彼女がここの鎮守府に来てから半年くらいたった。二日目のまさかの装備無しで前線に突っ込んで回避に専念せざるを得なかったという珍事件を繰り広げた彼女だったが、それ以降は随分と安定した。三か月前に起きた深海凄艦の大発生の時も、前線であまりにも手が足らず緊急的に――最新式テレビや家具等を引換に――赴いた時も自分の役目をまっとうし、戦い抜いていた。

 そんな彼女は水色のパジャマ姿で、自家製のポテトチップスをつまみながら、

 

「そうだね、私もおかしいとは思っていたよ。ただ、別に調子が悪いとか困っているとか、そんな感じじゃなさそうだから特に何言わなかったけれど」

 

「そこです」

 

 ビシリッ、とヴェルさんに指を指す。

 その通りだ。

 確かに呆けたり、ぼんやりしているが、決してネガティブなものではない。

 

「悩んでいるけれど、決して悪い方向性ではない……一体、どういうことでしょうか。ここ最近は出撃もなく、実に平和だったはずですが」

 

「ヴェルっちの畜産もそこそこ上手くいって、鶏の卵とか毎日取れてるしねぇ。畑や漁の方も順調だし、森の動物が暴れたとかそんな話もない。今日も鎮守府は平和だと思うけどねぇ」

 

「基本何もしないアンタが威張らないでよ。まぁ、その通りだけどさ。加賀姉はなんかない?」

 

「ない、わねぇ。少なくとも、島や私たち自体にはあまり大きな変化はないはずだけど」

 

「……と、いうことは、提督自身に何かあるということでしょうか?」

 

「やはりそういうことですか」

 

 自家製のティラミスをスプーンで掬いながら頷く。何気にあの司令は甘いものが好きなので、色々試した結果ティラミスが一番受けた。毎回それなりの量を作って、パッド一枚分平らげてしまう。今食べているのは自分たちように別に作っていたもので、彼に食べさせるより前に味見はしていたが、やっぱりいい味だ。

 

「……正直、私としては不知火が解らないというなら、誰にも解らないと思うけれど」

 

「……おだててもこのティラミスくらいしかでませんよ?」

 

「褒めてない、あ、でもティラミスは貰う。いや、そうじゃなくて、司令官と一緒にいる時間が一番長いのは君だろう? その君が解らないのなら、もう本人に聞くしかないんじゃないかな」

 

「ふむ……」

 

 ティラミスを渡しながら、言われたことを頭の中で咀嚼する。 

 確かに、自分と司令の付き合いは長い。時間的にもそうだし、このメンツの中でもそうだ。理解し、されているという点では誰にも負けない自負はある。いや、こういうのは勝ち負けの問題ではないだろうけど。

 

「どう思われますか?」

 

 他の四人に話を振るが、

 

「まぁヴェルっちの言う通りだよねー」

 

「えぇ、榛名もそう思います」

 

「提督さんといえばやっぱ不知火だしねぇ」

 

「そうね、私もそう思うわ」

 

 四人が四人とも同じような答えだった。

 

「ふむ」

 

 では、仕方がない。

 こうしてお喋りしていても楽しいガールズトークなだけで、司令の悩みの答えは得られないだろう。

 

「では、今から司令の部屋に行ってきます」

 

「お、夜這い?」

 

 それは司令の反応次第だ。

 立ち上がって、皆に軽く手を振ってから出て行こうとし、 

 

「ちょっと待った」

 

 ヴェルさんに止められる

 

「なんですか」

 

「なんですかじゃなくて、その恰好のまま行くのはどうかと思うのだけれど」

 

「?」

 

 言われ、自分の姿を見下ろす。

 

「はぁ――司令のワイシャツと下着だけですが何か」

 

 大体毎日洗濯物からちょろまかしている司令のブカブカワイシャツ。

 不知火の寝間着は常にこれだ。

 

「せめて下くらい着ようよ!」

 

「夜ですよヴェルさん、お静かに」

 

「誰のせいだと……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしようかなぁ……」

 

 手の中で小さな箱を遊ばせながら、僕はしみじみと呟いた。

 それは、少し前で大本部から送られてきたものだ。

 残念ながらこんな無人島に住んでいるせいで、社会情勢からは取り残されているが、世の中は少しづつ変化していくものらしい。一体どんな風に思ったのかは知らないが、こんなものを一部の提督に配布しているのだから。

 

「三か月前の戦いで前線で軽く無双しちゃった時のせいかなぁ……今思えばなんか適当なことを言った気がするし」

 

 限界練度九十九。それを突破した不知火ちゃんたち。ヴェールヌイちゃんもまた、毎日彼女たちにしごかれることですぐにその限界を超えていた。

 境界線は――彼女たちを人として扱うかどうか。

 兵器として扱えば、あくまでも規定内の画一した能力しか発揮できない。けれど、そうではなく、一人の人間として扱った時、彼女たちは艦娘としての限界を超えられる。

 積み重ねられた想いは、無駄じゃあない。

 そんなことを、適当に言いふらしたのだ。

 どうやらそれが受け入れられたらしく、艦娘に対する風潮が変わっている――というのはこれを貰った時に一緒に知った話。

 なんというか、複雑だ。

 喜ぶべきだけれど、同時にどうにも言葉にできない。

 

「……まったく、どうしようもないねぇ僕も」

 

 苦笑する。

 迷っているのは手の中の箱をどうするか。

 渡すか渡さないかではない。

 ――渡してもいいのかどうかだ。

 

「……どうだろうねぇ」

 

 呟いたのと同時に扉が叩かれ、音が響いた。

 少し驚きながら視線を向ければ、

 

「不知火です。少しお聞きしたいことがあるのですが、よろしいですか?」

 

「え、あ、ちょっと待って」

 

 部屋の中を見回す。別に散らかっているわけではない。僕自身はかなり適当だし、散らかすのは得意だが毎日朝に不知火ちゃんが整理や掃除をしていてくれたりするから片付いてはいる。普通のフローリングの床に机、ベッド、それに壁一面の本棚。大体がミステリーや推理か学術書。特に変なものはない。

 この間は一秒となく、

 

「ん、いいよしらぬい――」

 

「失礼します」

 

 答え切る前に扉が開いた。

 扉の外の声で解っていたことだが、我が秘書艦の不知火ちゃんだ。もう十時過ぎで、寝る直前だったらしく、普段短めのポニーテールで括っている髪は下ろされている。寝間着は少し大きい、ブカブカのワイシャツ――アレが僕のものであることはスルーしている――だけの裸ワイシャツという色々理性を削ってくる恰好だ。

 ともあれノータイムは酷い。

 

「ホントに失礼だね!? 思春期の子供の部屋に乱入するお母さんみたいなことやめてよ!」

 

「何か不都合でも? それに――ダメと言われても入るので関係ないですね」

 

「なにそれひどい」

 

 相変わらずセメントである。

 

「それで、こんな時間にどうしたのかな? 夜這い?」

 

「別にそうなっても構いませんが」

 

「もうちょっと照れようよ」

 

「生娘でもあるまいし、というか手を出す本人に言われたくないです。そういえばヴェルさんにも手を出したそうですね、流石です……いえ、そうではなく聞きたいことが一つ」

 

「微妙に貶されたのか褒められたのが解らないけど……何かな?」

 

 床に座り込み、ベッドに背中を預けながら問いかける。

 気づかれないように小箱は隠しながら

 

「最近司令の様子がおかしかったのでそれについて――あと後ろに隠したそれについても」

 

「目ざとすぎる……!」

 

 秘書艦が有能すぎて辛いとは如何に。

 適当にあっちやこっちキョロキョロするが、不知火ちゃんが正面に正座して直視しているので視線が突き刺さっている。

 というか普通にパンツが見えている。何気に可愛いピンクい奴。

 わざとだろうなぁ。理性へのダメージが酷い。

 結構シリアスな思考をしていたのに。

 

「あー……」

 

 赤くなっていそうな顔を隠そうと帽子の鍔を下ろそうとして、空振りする。

 当たり前だが消灯前で、僕だって部屋着だ。帽子なんて被っていない

 

「……」

 

「……」

 

 微妙な沈黙が流れ、

 

「あー、不知火ちゃん」

 

「はい」

 

「僕と結婚しない?」

 

「はい――はい?」

 

 率直に言いすぎて、目を白黒させてしまったことを申し訳なく思いつつ、言葉を続けた。

 

「いやなんか色々社会感覚変わったらしくて、人間と艦娘の間の結婚が有りになったんだよ。と言っても法的なものじゃないから仮扱いなんだけどさ。でも、鎮守府内では普通の婚姻関係を結べるようになったんだよ。それでまぁ、この頃ずっと悩んでたわけだけど……やっぱりに渡すなら君しかいないしね」

 

「……」

 

 頬を掻きながら苦笑する。

 榛名ちゃんや加賀さん、瑞鶴ちゃん、北上様ちゃん、ヴェルちゃん。他の五人のことも勿論大好きだけれど。

 それでも、結婚というのなら。人生の墓場と呼ばれるそれの相手を選ぶとしたら。

 やっぱり、不知火ちゃんしかいないのだ。

 

「……迷っていたのは」

 

 ポツリと、不知火ちゃんが言葉を漏らした。

 表情は変えないまま、目を伏せている。

 

「誰に渡すか、ということですか?」

 

「まさか。この話が来た時から渡すのは君しかいないと思っていたよ」

 

「……不知火が受け入れないとでも?」

 

「それも、違うかな」

 

 自惚れとは思わない。

 彼女ならば、僕が申し込めば、間違いなく受け入れてくれただろう。まぁ考えないでもなかったけれど。

 問題は、別のことだ。

 

「では」

 

 言葉を続けるのに、彼女は一度息を整えることを必要とし、

 

「――陽炎や黒潮(・・・・・)のことですか(・・・・・・)?」

 

「……そうだね」

 

 今でも思い出す。

 常に笑みを絶やさず、天真爛漫なムードメーカーだった陽炎ちゃん。

 そんな陽炎ちゃんの能天気さや不知火ちゃん無自覚セメントボケに突っ込みに苦労していた黒潮ちゃん。

 かつて共に戦い――僕の無知が殺してしまった少女たち。

 忘れられない。

 忘れるわけがない。

 一生、僕は彼女たちのことを忘れない。

 

「なんとなく、さ。申し訳なくなったというか……結婚とか、そんな呑気なこと言ってもいいのかなぁとか、そんなことを思っていたわけだよ。渡すかどうかでも、誰に渡すかでもなく、渡してもいいかって迷ってたんだよ」

 

「しかし……答えは出たんですか?」

 

「どうだろうねぇ」

 

 再び苦笑する。

 普段ヘラヘラとした笑みを浮かべている自覚はあるが、今は意識しなくても勝手に頬は緩んでいた。

 

「ホントは君が訪ねてくる直前も悩んでいたんだよ。でも、なんか、ね。君の顔見て、直球で聞かれたら……なんか言っちゃてたよ。まぁそれに、陽炎ちゃんがいたら僕の葛藤とか笑い飛ばしながらバシンバシン背中を叩いていただろうし、黒潮ちゃんがいたらため息吐きながら馬鹿にされていただろうさ」

 

「……そうですね、そういう子たちでした」

 

 僕はへらへらと笑みを浮かべたままに頷き、不知火ちゃんもまた小さく頷く。

 

「じゃあ、答えを聞こうかなぁ」

 

 笑みを、消した。

 ぶっちゃけ真面目な顔とか何時振りか解らないけれど、それでもこんな時くらいは普通の顔でいたい。

 いや、まぁへらへらした顔つきは生まれつきなので変えられない気がするのだが。

 とにかく可能な限り真面目顔をして、隠していた指輪の入った箱を彼女へと差し出し、

 

「僕と結婚してくれるかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――不知火は兵器よ?」

 

「――あの日から僕は君を兵器として見たことなんかないよ」

 

「――人間の女の子じゃなくて艦娘よ」

 

「――僕にとって君はセメントだけれど心優しい女の子だよ」

 

「――少なくとも、社会的に見たら変態よ」

 

「――君に言われるのならご褒美だね」

 

「――自分が死ぬときは貴方も道連れにしようとしている酷い女よ?」

 

「――それを望んでいる僕も酷い男だからお相子だね?」

 

「――今の話を聞いた時、自分が選ばれなかったらどうしようとか考えたわよ?」

 

「――僕だって拒否されたらどうしようとか考えたよ?」

 

「――こんなこといって貴方から言葉を引き出している面倒臭い女よ?」

 

「――男の甲斐性の見せ所だねぇ」

 

「――司令官は、不知火でいいのかしら」

 

「――君がいいんだよ」

 

「そう」

 

 前に出ながら、不知火ちゃんが倒れ込む。

 軽く両腕を広げていた彼女を、そのまま僕が受け入れ、

 

「じゃあ――いいわ」

 

 ニッコリ(・・・・)と笑みを浮かべた不知火ちゃんを抱きしめる。

 兵器なんかではない、柔らかい感触。

 そして、唇を重ねて、

 

「幸せにして」

 

「勿論」

 

 

 




『この後滅茶苦茶セックスした』

誰か……不知火の裸ワイシャツとウェディングドレスの絵を……それだけが……私の願いです。

この世界観ではケッコンカッコカリは適当に。
次回作が色々交互があり、

①たった一つの犯した間違い Crime of the warship girls
提督過去話。陽炎不知火黒潮メイン。でも言うまでなくバッドエンドでしかないので辛い。

②海の光は全て命 Life of the warship girls
話中でこの無人島ズが無双した最前線のイベント海域の鉄火場の話。
こっちのほうが世界観的には正道だけどブラック鎮守府かも。
別提督旗艦大鳳で武蔵木曽夕立時雨伊8のメンツ。

③深海凄艦は艦娘達の夢を見るか Nightmare of the warship girls
深海凄艦物。ただどういう風になるのかはまだ決まっていないので何とも言えない。
帰ってくる艦隊の姉妹艦とかからオリジナルの深海凄艦出すかもしれないし、全然関係ない面子の原作?公式のままかも。


ともあれどれにするとしても夏以降ですねー
アンケというわけではないですが、まぁこれが言い的な話があればそれに偏るかも。

ではぬいぬい!
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