皇歴2011年 神聖ブリタニア帝国 アリエスの離宮
僕が、ギアス嚮団からブリタニア帝国へ帰国を果たしてボワルセル士官学校へ入学して暫くして。今日僕は、オルフェウスとエウリアに日用雑貨品や士官学校で使うノートや筆記具、破れた服を縫う為の裁縫道具などを購入しに行って貰い、ジェレミアを密かにアリエスの離宮へと招いていた。
僕とジェレミアは、離宮の中のリビングで向かい合うように立っている。
「ではジェレミア卿。卿に特1級命令を言い渡す」
僕が腕を後ろに組み、胸を張って仰々しくそう言うと「イエス・ユア・ハイネス!」とノリ良く答えてくれるジェレミア。ノリが良いぞジェレミア!
因みに特1級命令は皇帝が出す勅命を指す言葉であり、原作では準1級命令と言うものをシュナイゼルが出していると思われる。つまりこの言動は、真面目に考えれば不敬罪に問われかねない発言なのだが、今回のニュアンスでは「それぐらいの気持ちでやってね」と言う事である。
「本日は、我が兄姉オルフェウスとエウリアの誕生日である!よってサプライズの誕生日パーティーを執り行う事が決定した」
「つまり自分もパーティーの準備をせよとの事ですな」
「その通り!最高のパーティーを執り行う為に、卿の協力が必要不可欠である!心せよ!」
「このジェレミア・ゴットバルト!ご期待には全力で!!!」
そう言ってジェレミアは、早速誕生日パーティーの会場を設営し始める。
元々この企画は僕とエウリアとで考えたのだけど、そもそもオルフェウスもエウリアも自分の誕生日を知らないのだ。だから初めは、誕生日パーティーではなくて別の記念パーティーにしようかとも話し合ったのだけれど、誰もが持っている誕生日を祝えないのは寂しいと思い誕生日パーティーにする事にした。まぁオルフェウスは、オルドリン・ジヴォンと双子なので調べれば分かるのだけれど、それをするとエウリアの誕生日だけわからないと言う事に成ってしまい僕の心持ちが悪い。
もちろんオルフェウスの誕生日のことは、オルフェウスとエウリアに話したが「知らなくて良い」とオルフェウスに言われたので伝えてない。多分エウリアを気遣ったのだと思う。エウリアは、気にしなくて良いと言うが、そうはいかない。親しい仲だからこそ、使うべき気遣いもあるだろうと僕は思う。
で、まぁオルフェウスの誕生日もあやふやに成ってしまったので、じゃぁ新しく誕生日を作りましょうと僕が提案しエウリアがそれに乗ったのが今日なのである。
さてジェレミアがせっせと会場を設営している間に僕も料理の方を作りますか––––––––––––。
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今私とオルフェウスは、帝都ペンドラゴンで1番大きなショピングモールに来ている。因みに交通手段は、レナがオルフェウス用にと買ったサイドカー付きバイク。買ったのだけど、レナが買ったバイクを改造してオルフェウス用にして最早別物とかしている。レナは機械工作も得意なようで、士官学校でもその才能を遺憾なく発揮している。
教官のパソコンにウイルスを仕込みテスト前日に試験問題が生徒全員にメールで配布させたり、授業用のグラスゴーを居住性抜群に改造したり、傲慢な先輩が搭乗するグラスゴーの操作パッドを変更して右足を動かすと左手が動くような設定にして落第させたりと才能の無駄遣いでは?と思わなくもないが、レナは才能に満ち溢れている。優しい子なんだけど…。
「親しいやつ以外には、エゲツない事をするがな」
「そうなのよねぇ…うん?」
「全部口に出てるぞ、エウリア」
「え!?は、恥ずかしい!」
独り言をブツブツと言ってたと思うと恥ずかし過ぎて顔に熱がたまるのが分かる。
「それでレナの機械工作がどうかしたのか?」
顔を赤くしている私にオルフェウスは、可笑しそうに聞く。
手を繋いで並んで歩いているので、私がブツブツ言っている内容は、全て彼に聞こえていたのだろう。
「今日乗ってきたあのバイク本当ならオルフェウスでも乗るの難しいでしょ?レナの機械工作が役に立つ事もあるんだなぁと思って」
「あぁあ、何時もはよく分からない物ばかり作っているからな、レナは」
「パソコンは、まだ分かるんだけど」
「蓄電池にソーラーパネル、小型の火力発電機、小型ラジコンロボット、小型無人航空機、人工知能の開発とかな」
「あの子は、一体どこに向かっているのかしら」
「まぁ悪戯では、士官学校で役立ってるぞ」
レナは、士官学校でも悪戯をしているらしい。ギアス嚮団でもあの子は、悪戯と称して実験対象の私達に酷い事をする研究者などを色んな意味で抹殺していた。学校でもそんな事をしているのかしら?
「そんな危ない事は、してないぞ。俺も見ているからな、精々ドローンで教官のカツラを飛ばしたり、試験問題を流出させたり、ラジコンロボットで女子風呂を覗く手伝いをしたり」
「女子風呂?」
「あ!」
「どう言う事?」
本当にどう言う事!?あの子そんな事してたの?オルフェウスなんで止めないの!?まさか貴方も一緒になって覗いてた訳じゃないでしょうね!
「ご、誤解だ!エウリア!覗いてない!覗いてない!」
本当に珍しくオルフェウスが狼狽している。
この様子だと本当に覗いていないのだろう。まぁジト目で見てしまうけど。
「た、確かにレナは、ラジコンロボットにカメラを搭載して女子風呂に突撃させて男子生徒の覗きを手伝おうとしたが、女子風呂に入って待ち構えていたら風呂の中に男の教官が素っ裸で入ってきて全員膝を着いて見るのを辞めていた!」
「…男子風呂に突撃してたって事?」
「…いや、女子風呂だった」
なんで女子風呂で男の教官が入浴してるのよ!大丈夫かしらその士官学校…。
「その教官は、その後クビになったから大丈夫だ」
「ナチュラルに心読むのやめて…」
「口に出てる」
「…またかぁ」
思った事が口に出るのは、良くないわね。
あぁ、だから私嚮団でも「スパイには、君向いてないね」と言われていたのか。確かに思った事を口にする諜報員や工作員は、居ないわね。
てっきりギアスが使えないからだと思ってたわ。
「まぁこの話は、帰ったらレナに説教して終わりね」
「…すまんレナ」
「オルフェウス?大体何であなたレナを止めないのよ?お兄ちゃんでしょ!」
「いやまぁ、そのぉ」
ええい!歯切れが悪い!こんなオルフェウス初めて見た。
でもまぁ、普段の冷静でかっこいい大人の感じも好きだけど、こう言うオドオドしてるのも新鮮で可愛いなと思ってしまう私は、相当オルフェウスの事が好きなんだろう、何か自覚すると恥ずかしいなぁ。まぁ今問い質すのが先にね。
「その?」
「…買収されました」
買収!?まさかお金貰ったの?
「何を貰ったの」
「…バイク」
あれかぁ。今日乗って来たやつね。うーむ役立ってるわね。仕方ない、私も恩恵を受けていた訳ね。
くっ、レナに上手くしてやられたわね。今日この場所にパーティーの為の時間稼ぎを依頼したのも、オルフェウスならバイクを使うと読んでのことね。私も使えば説教は、ないだろうと考えた訳だ。
「でもどうしてバイクで買収されたの?バイク好きだったけ?」
「エウリアと二人で出掛けるなら何か足があった方が良いだろうと思って…」
うん、好き。
「そういう所も好きよ」
「ありがとう」
素直にそう言うとオルフェウスは、少し頬を染めながらそう返してくれた。多分私も似たような顔をしているのだろう。
なんか周りから生暖かい目で見られるから早く買い物を終わらせて帰りましょう!
「うん!じゃっ早く買い物をしてデートでもエスコートして貰おうかしら」
「ふっ、喜んでMy Princess」
オルフェウスがそう言って私の手の甲に口付けをする。
なんて様になっているのだろう。かっこいい…なんか私の反応レナに似てきたかしら––––––––––––。
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ジェレミアが会場の設営を終えて既に完成している料理を机の上に運んで並べてくれている。皇族や大貴族のパーティーみたいにすごい量の料理がある訳ではなく、一般家庭でする様なパーティーなのでマリアンヌが健在であった時程も品数は無い。
そもそも僕が自分で作っているのでそんな品数を作れない。でもまぁ喜んでもらえる様に頑張って作りましたとも。
そんな感じで準備をしていると、エウリアからもうすぐ着くと連絡があった。
程なくしてオルフェウスとエウリアが帰宅した。
「お帰りに~オルフェウス!エウリア!」
「ただいまレナ」
「ただいま」
僕の言葉にしっかりと「ただいま」を返してくれる二人。家族っていいねぇ。
挨拶を終えた後、オルフェウスが日用雑貨を倉庫や収納に片付けエウリアが食材を僕と一緒にキッチンへ運ぶ。
「お疲れエウリア、デートはどうだった?」
「やっぱり気付いてたのね」
「バイクはその為だからね」
「女子風呂を覗いた件については、後でお説教ね」
「うぇ!?オルフェウス、それも言ったの!?」
何で言ったんだオルフェウス!?そんなこと言ったらエウリアの評価が下がっちゃうじゃん!
「口を滑らせたわ」
「…」
オルフェウス。
「レナ」
「ごめんなさい」
だってあの教官が…。しかしここで言い訳をすれば説教が長くなる。
ここは、耐え時だ。
「まぁこの話は、後にして準備は出来た?」
「勿論」
「なら私がオルフェウスをリビングへ連れて行くわ」
「了解」
さてさてサプライズパーティーの始まりだ–––––––––––––––––––。
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パンパンとクラッカーの音がリビングに響く。クラッカーから出た銀テープは、先ほど扉から入ってきた金髪のイケメンの頭にも引っ掛かっている。
金髪のイケメンは、目を開いて驚いた表情をしていて驚かす事は、成功した様だ。
「オルフェウス!エウリア!誕生日おめでとう!!!」
「おめでとう!オルフェウス、エウリア嬢!このジェレミア心からお祝い申し上げる!」
僕とジェレミアが二人に祝いの言葉を送ると、オルフェウスはさらに困惑した様子で僕とエウリアの方キョロキョロしている。勿論オルフェウスの気持ちもわかる。そもそもオルフェウスもエウリアも自分の誕生日を知らないので今日が誕生日と言われてもピンと来ないのだろう。
「ふふ、驚いたオルフェウス?」
「あ、あぁ」
「実はね、オルフェウスの誕生日はレナが調べて分かったらしいけど、オルフェウスが私に遠慮して聞かなかったでしょ。だからそれだとあなたの誕生日をお祝い出来なくなってしまうし、レナはオルフェウスと私の誕生日をお祝いしたいと言ってくれてるから、貴方が貴方の誕生日を知るまでは、私と同じ今日を誕生日にしてお祝いしましょってレナと話したの!」
「え、あ、そうか」
「嫌だった?」
「いや、そんな事は無い。嬉しいよ」
「良かった!」
エウリアは、本当に嬉しそうにしてオルフェウスの手を引いて料理が並べられた机の席に着く。オルフェウスも心成しか嬉しそうだったのでサプライズパーティーは、成功だろうか。
「この料理、全部レナが作ってくれたのよ!」
「全部レナが、凄いな」
「でしょう!」
「あぁ、ありがとうレナ」
「喜んでもらえて良かったよ」
部屋の装飾は、ジェレミアがした事も伝える。すると「ありがとうジェレミア」とオルフェウスがお礼をジェレミアに言う。相変わらず呼び捨てなのね、オルフェウス。オルフェウスの礼に続きエウリアも僕とジェレミアにお礼を言ってくれた。
「しかし何故今日が二人の誕生日になったのですか?」
「あぁ、それはね」
「今日は、俺とエウリアが初めて施設で出会った日だからだろ?」
エウリアが、ジェレミアの質問に答えようとすると、それを遮りオルフェウスが答えを言う。
「え!?覚えてたの?」
「当たり前だろ?」
「さすがオルフェウス」
そんな話をしながらみんなで食事を始める。
「でもごめんねオルフェウス。勝手に決めちゃって」
「いや、エウリアと同じって言うのは嬉しいよ」
「でも本当の誕生日じゃ無いよ?」
エウリアとしては、本当のオルフェウスの誕生日をお祝いしてあげられないのが申し訳ないのかもしれない。気を遣われた事で少し後ろめたく感じているのかもしれない。オルフェウスは、そんな事気にしていない様ではあるが…。
よし、そんな二人にこの言葉を贈ろう。
「みんな同じさ、“自分が生まれた日が何時か”なんて覚えている人なんて居ない」
「…」
「ただ自分が信頼する人が告げる日を、そのまま信じるしかないんだ。本当かどうかは、問題じゃない。“自分の誕生日を知っている”それ自体がすでに幸せなんじゃ無いかと僕は思うんだ」
「…知っている事が」
「だから今日僕は、二人が生まれてきてくれた事を嬉しく思うし、心からお祝いするよ。誕生日おめでとう。オルフェウス、エウリア」
「ありがとう、レナ」
「あぁ、ありがとうレナ」
そんな事を話しながら後々どんちゃん騒ぎを起こして賑やかに二人の誕生日を過ごした。途中からビスマルクが来てオルフェウスとエウリアに誕生日プレゼントを渡してきたり、ジェレミアがお酒を飲んでブリタニア国歌を熱唱していたり、届出人不明のオルフェウス宛のプレゼントが贈られてきて騒ぎになったり、日が暮れて中庭で打ち上げ花火を打ち上げたら警備の人間がすっ飛んで来たりと楽しい日になった。
あとオイアグロ、匿名でプレゼントを贈るなら剣にジヴォンの紋章を彫るな!
まぁ、本当に忘れられない楽しい5月15日になった––––––––––––––––。
次回
『帝都狂乱-序』
コメント、高評価、お気に入り登録、有難う御座います!
今後とも宜しくお願い致します。
今回はまぁ甘い話になりました。
5月15日
『オズの魔法使い』を執筆したライマン・ブランク・ボーム氏の誕生日です