コードギアス転生って誰でもハードモードじゃね!?   作:女神

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第11話 帝都狂乱-序

皇歴2014年 神聖ブリタニア帝国 帝都ペンドラゴン

 

「これより"決闘の儀"を始める!両者前へ!」

 

闘技場の中央で高らかに宣言する帽子をかぶり白と薄紫のストライプ柄の服とズボンを身に付けている男。

その男の声に従って闘技場中央へ歩を進める二人の影。

一方は、30代くらいの背の高い優男。優しげな顔の割にしっかりと鍛えられた肉体は、服の上からでもよく分かる。腰には、二本の剣を携えゆっくりとした足取りで闘技場中央へ向かう。

 

もう一人は、10代前半の様な子供であり体も未だ発達段階の未熟なものだった。金髪で後ろ髪を編んでいるその子供は、誰が見ても美少年でありその立ち振る舞いから高貴な子供である事は、すぐに分かる。誰が見ても場違いなその子供は、しかししっかりとした歩みで闘技場中央へ進みまっすぐと対面の男の顔を見た。

 

「両者!正々堂々一本勝負!始め!!!」

 

帽子の男の宣言と共に金髪の子供が、対面の男に斬りかかる。その速度は、常人では捉える事すら難しいものであった。しかし対面していた男は、その一太刀を自身の持つ二つの剣を胸の前で交差させて受け止める。受け止められた金髪の子供は、それでも冷静に次の行動へ移る。鍔迫り合いの要領で反動をつけて後ろに飛び下がり、剣を構え直す。そして再び初撃を上回る速度で攻撃を繰り出す。その上初撃とは違い何度も何度も攻撃を仕掛ける。それを受け流し受け止め躱すを最小限の動きでやってみせる男。戦いを見て観客は、この決闘のレベルの高さに言葉を失う。二人の実力は、まさに一流の騎士だ。

 

「くっ」

 

「…」

 

一人は、ブリタニア帝国の下級貴族でありながら裏ではブリタニア皇室に忠誠を誓い一切の汚れ役を引き受ける『プルートーン』の首領を務める"ジヴォン家”の当主オイアグロ・ジヴォンである。

オイアグロは、ブリタニア屈指の剣術家でありその実力はナイトオブラウンズに勝らずとも劣らないものである。そしてギアスの事も知っているブリタニアでも極めて少ない人物の一人でもある。

 

「これ程の実力とは…」

 

そんなオイアグロと対等に戦う金髪の少年に観衆の目は向く。その剣技は、オイアグロに劣らぬものでスピードに至っては、オイアグロを凌駕していた。そして側から見ていては分からないが、剣を交えるオイアグロは、はっきりと感じていた。子供が振るう剣にしては異常に重く、それが自身の知る『超常の力』によるものだと…。

 

神聖ブリタニア帝国第17皇子レレーナ・ヴィ・ブリタニア。

オイアグロを相手に、剣を交える金髪の少年の名前。元ナイトオブシックスにして『閃光のマリアンヌ』『不死身の魔女』と呼ばれていた皇妃マリアンヌ・ヴィ・ブリタニアの次男であり、現状確認されているヴィ家唯一の皇子である。その剣技は、亡きマリアンヌを彷彿とさせるものがありシャルルやビスマルク、コーネリアにとって懐かしさすら感じさせるものであった。

 

そもそも何故レレーナとオイアグロが戦っているのかと言うと、それは1週間前に遡る–––––––––––––。

 

 

 

レレーナとオルフェウスは、ウズベキスタンでの暗殺任務の後E.U.へ戻り機情局と国防情報局(DIA)、ユーロブリタニア参謀情報部からの情報リークについて調査を行なった。丁度いい事にウズベキスタンでの捕虜の中にE.U.の対外情報総局(FIGD)の諜報員がおり、その人物から『ザ・リフレイン』を使って記憶を読み取りFIGDの他の諜報員や暗号について情報を集める事が出来たのだ。

その結果ユーロブリタニア参謀情報部より情報がリークされた事が分かった。その上機情局の情報までもユーロブリタニア参謀情報部からリークされていた事が判明。

 

レレーナは、ユーロブリタニアへ向かい機情局の情報をどうやって入手したのかを探った。

 

当然レレーナのユーロブリタニアへの訪問は、内密に行われていたので調査は難航した。しかし参謀情報部監察室の人間にギアスを掛けて調査を代行させる事で情報は、思った以上に早く集まった。

 

結果として機情局の情報を参謀情報部へ流したのは神聖ブリタニア帝国第1皇女『ギネヴィア・ド・ブリタニア』の後援貴族であるバレッタ子爵だった。この貴族は、大陸系貴族でありユーロブリタニアに近い事は、公然の秘密である。

そしてギネヴィア自身、ユーロブリタニアの宗主であるヴェランス大公の息子と結婚しており娘が今年生まれている。その為彼女は、本国とユーロブリタニアの関係を改善しようと躍起になっている。又自身が皇帝になる為にユーロブリタニアの支持を必要としており、情報のリークはその為の点数稼ぎの一面もあった。

 

国防情報局(DIA)の情報を参謀情報部に流したのも本国の貴族だった。ただし此方は、大陸系ではなく神聖ブリタニア帝国第5皇女『カリーヌ・ネ・ブリタニア』の後援貴族をしている男だ。ギネヴィアもカリーヌも反ヴィ家の皇族で、その後援貴族達が命令か忖度かで情報を流していたのだ。

 

そしてローゼンクロイツ伯爵は、"レレーナがウズベキスタンへ向かった"と言う機情局からの情報を入手したギネヴィアが、軍統合本部へ圧力を掛けて増援として派遣させたようで、通信記録から捕虜となったレレーナを事故に見せかけて暗殺する様に命じられていた様だ。だからこそ基地に到着した際に、全て終わっていた事に苦悶の表情を浮かべていたのだ––––––––ギネヴィアにどうやって報告するかについて考えていたのである。

 

こういった情報を入手したレレーナは、一度本国へ戻り本国の情勢を自身の目で確かめようと考えた。

 

しかし本国へ帰国しアリエスの離宮へ戻ったレレーナを待っていたのは、オルフェウスを連れて行こうとするオイアグロであった。ヴァルトシュタイン家の養子となっているオルフェウスをオイアグロは、ギネヴィア達と結託してビスマルクを説得しジヴォン家に引き込む事にしたのである。

図らずもウズベキスタンでの報告を受けていたギネヴィアは、レレーナとオルフェウスの強さについて知る事となった。その為、レレーナの力を削ぐ為にオルフェウスを奪い取りオイアグロに恩を売り、あわよくば自身の力としたい思惑があった。又自身の力にならずとも、家族をテロによって失った妹『マリーベル・メル・ブリタニア』の力になればと考えたのだ。

 

が、この事案がレレーナの逆鱗に触れた。

自身の抗議を無視しエウリアを悲しませた事でレレーナは、遂に実力行使に出る事を決意した。レレーナは、真っ先にビスマルクに斬りかかり負傷させてしまう。結果レレーナは、内密にアリエスの離宮で謹慎するする事が決定した。しかしレレーナは、今までシャルルやビスマルク、V.V.への配慮の意味も込めてギアスをあまり使用して来なかったが、この一件でその枷が外れてギアスを多用する様になる。

 

そして事件が起きる。ある大貴族が自身の邸宅から勤め先の会社へ向かっていた際に暴漢に襲撃され重傷を負わされたのである。この事件は、流しの犯行で犯人の特定には時間が掛かっていた。捜査機関が怨恨、通り魔の両方で捜査をするも犯人の足取りさえ掴めなかった。そうこうしている内に第2第3の事件が発生する。そしてさらに事件は過激化して行き、とうとう皇妃の一人までもが襲撃され重傷を負ってしまった。

 

事態を重く見た帝国特務局は、事件の捜査を捜査機関から特務局へ移し警備と捜査を行う。

すると特務局は、ある事に気付く。襲撃された皇妃や貴族には、共通点があったのだ。

 

襲撃された皇妃、貴族は、ヴィ家に対してキツく当たっていたのだ。所謂反ヴィ家と呼ばれる勢力だった。特務局がその事実に気付いた時には、機情局の人間が皇妃や皇族の警護と言う名目で堂々と皇妃や皇族貴族達を監視していた。

 

監視している理由の一つに今回襲撃された皇妃、貴族達に機密情報漏洩の嫌疑が掛けられていたからである。

 

既に皇族や皇妃、その親衛隊から多くの苦情が機情局や特務局へ寄せられていたのだが機情局は、一切そういった苦情を受け取らなかった。それどころか皇族貴族たちは、より厳しい監視下に置かれ現場では、親衛隊と機情局とで衝突が多発していた。当然苦情は、特務局へ集中し状況打開の為にベアトリス・ファランクス特務総監は直接機情局長官を糾そうと考え機情局庁舎へ向う。

 

当初ベアトリスは、ナイトオブワンであるビスマルクにも意見を聞きたいと思っていたのだが、襲撃事件はビスマルクも含まれていたのだ。しかもビスマルクは、この数日間ですでに50回以上襲撃をされていてろくに仮眠を取る事も出来ない状態であった為、意見を聞くのを見送りにしたのである。だからこそベアトリスが機情局庁舎を訪れたのである。

 

しかしそこでベアトリスは、衝撃を受ける。

 

初めは、少し違和感を感じた程度であったが長官と会談をしている内に長官の言葉の端々に襲撃された皇妃や貴族への嘲笑の様なものが感じられたのだ。さらによく長官を観察すると、長官の目が薄っすらと赤色がかっていた事に気付く。ベアトリスは、サーと血の気が引いて行くのを感じた。慌てて会談を終えて庁舎を出ようとした時にさらなる衝撃を受けた。よくよく周りを見ると庁舎の警備員や受付、案内人、すれ違う職員、誰を見ても皆薄っすらと目が赤く光っているのだ。ベアトリスは、機情局が何者かのギアスによって制圧されている事に気付くも時すでに遅しであった。

 

「こんにちは、ベアトリス特務総監」

 

後ろから聞き覚えのある声を掛けられ振り返る。振り向いた先に立っていたのは、帝国の皇子にして機情局の現役の諜報員レレーナ・ヴィ・ブリタニアだった。レレーナは、現在ナイトオブワンに斬りかかった為にアリエスの離宮で謹慎中の筈である。にも関わらずレレーナが堂々と機情局庁舎内に居るという事は、機情局を制圧したと思われるギアスユーザーは、レレーナであるとベアトリスは考え付く。

 

レレーナのお気に入りがビスマルクの養子となっており、最近ジヴォン家に連れて行かれた事は、ベアトリスも把握していた。ビスマルクもベアトリスもそれを止める事はしなかった。それの報復が、今回の事件なのだと考えてしまう。

 

「…殿下」

 

「ふふ。何もそんなに怖がらなくてもいいでしょう」

 

ベアトリスは、今でこそ特務総監の地位にいるが元々は帝国最強の騎士の一人ナイトオブツーであり様々な苦難苦境を超えてきた。それでも今レレーナから発せられる異様な威圧感に膝をついてしまう様な、逃げ出してしまいそうな自身に驚いたと同時に、そうさせるレレーナに対して恐怖を感じていた。

これ以上一緒の空間には、居られないと思い足早にその場を離れようとするが周囲を機情局の職員に囲まれ身動きが取れない。

 

「殿下、これは一体どう言う事でしょうか?」

 

「何、要件はすぐに終わりますよ。ここで気付いたことを忘れて貰おうと思いまして」

 

「何を!?」

 

「レレーナ・ヴィ・ブリタニアが刻む!偽りの記憶を!」

 

レレーナの瞳から赤き光が飛び立ち、その光はベアトリスの瞳に吸い込まれて行く。そこでベアトリスの意識は途絶える。

 

ふと意識が戻った時、ベアトリスは既に機情局から特務局へ戻る車両の中に居た。そしてペンドラゴン皇宮でビスマルクと出会い機情局で得た情報を共有する。その際にビスマルクから機情局の様子を聞かれ特に変わった様子は無かった(・・・・・・・・・・・・・)と伝えたのだった––––––––。




次回
『帝都狂乱-破』

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<ブリタニア帝国人物>
バレッタ子爵
・断章『ゼロの男』に登場したデラ・バレッタの両親(本文では父親を指す)
・設定は、本作オリジナル

<ギアス>
『ザ・リフレイン』
・ナイトメア・オブ・ナナリーに登場したマオのギアス
・相手のシナプスサーキット(脳を含む全神経)を認識・改編する力
・対象者の記憶を呼び起こしループさせたり、相手のシナプスサーキットに集中して心を読む事ができる

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