コードギアス転生って誰でもハードモードじゃね!?   作:女神

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第12話 帝都狂乱-破

皇歴2014年 神聖ブリタニア帝国 帝都ペンドラゴン

 

帝都ペンドラゴンでは、現在厳戒態勢が敷かれている。数日前より大貴族や皇妃が何者かに襲撃される事件が多発し、その上未だに犯人が特定されていないからだ。襲撃された皇妃や大貴族は、特務局の捜査により所謂反ヴィ家派閥である事が特定されているが、一人だけ当て嵌まらない人物が存在した。

 

それが帝国最強の騎士ナイトオブワン-ビスマルク・ヴァルトシュタインである。彼は、ヴィ家のマリアンヌ・ヴィ・ブリタニアと血の紋章事件以前よりの付き合いを持っておりマリアンヌとは、親しい間柄であったのだ。しかし彼もここ数日の間に何十回も襲撃を受けている。ナイトオブワンとして全て自ら撃退しているが、流石に昼夜問わず襲撃を受ければ心身共に疲労が溜まっていた。

 

今彼は、帝都ペンドラゴンにあるナイトオブラウンズが使用して居るインバル宮で彼自身にあてがわれている執務室に居る。そして今ペンドラゴンを騒がせている連続襲撃事件について考えた–––––––––––。

 

 

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ビスマルク自身襲撃されながらも今回の一連事件について調査し考えていた。そして大凡の答えに辿り着いた。

 

「どうやってこの問題を終結させるか…」

 

今回の一連事件は、間違いなく自身が敬愛するマリアンヌ様の次男であるレレーナ殿下が主犯である。レレーナ殿下は、現在アリエスの離宮で謹慎をしておりナイトオブラウンズが3人で監視をしている事は知っている。しかしレレーナ殿下が、主犯である事は間違いない。と言うよりも離宮で謹慎しているかどうかすら怪しい。ギアスを使えばどうとでもなる。

 

事の発端は、オルフェウスを無理やりジヴォン家の養子とする為に実質拉致しレレーナ殿下の抗議を聞き流した事で間違いない。そしてそれに対する報復が、この一連事件だ。いや、勿論私のミスではあるが…どうしたものか。

 

既にその事案に関わっていたギネヴィア第1皇女やカリーヌ第5皇女、ジヴォン家そして私自身に関係する貴族達が悉く襲撃され重傷者も出ている状態だ。死者が出ていない事は、幸いであるがいずれ出るであろう事は間違いない。レレーナ殿下は、こういった場面で容赦する様な性格をしていない事は、幼少期から知っている自分が一番よく知っている。

 

「一番妥当なのは、オルフェウスをレレーナ殿下にお返しする事であるが…返したからといって、事態が終結する事はないだろう」

 

仮にもしオルフェウスを返すことで事態が終結した場合、事件の背後にレレーナ殿下が居たことが公然の事実となってしまう。そうなると今後他の皇族貴族から恨みを買ってレレーナ殿下方が生活し難くなってしまうからだ。保身に()けたレレーナ殿下なら必ず事件と自分は、関係ないという事にするだろう。例え当事者達がレレーナ殿下が主犯だと考えても大衆にまでその事実が、出てこないようにする為に違うと言い張るはずだ。

 

またギネヴィア皇女殿下方も何かしらの報復に出る可能性が高く、事態の沈静化には容易為らざるものがある。レレーナ殿下とギネヴィア皇女殿下方の両方の顔を立てる方法を考えなければいけない。

 

「シュナイゼル殿下か…」

 

咄嗟に帝国の若き宰相シュナイゼル・エル・ブリタニア第2皇子に相談する事も考えたが、シュナイゼルはビスマルクから見ても優秀であり常に優しげな仮面を着けているので何を考えているのか計りかねる時があるのだ。それ故に相談する事を躊躇ってしまう。

 

しかし時は、一刻を争う事態だ。恐らく既に機情局は、レレーナ殿下の手に落ちているだろう。その上、帝国特務局もレレーナ殿下によって因果を含められている可能性は高い。何故ならベアトリスが襲撃事件での機情局の対応について質しに行った帰りしなに情報共有の為に話せば、機情局では特に何も無かったと言うのだ。

 

この事件では、間違いなく機情局とレレーナ殿下が関わっている。何故なら皇族や大貴族を襲撃する事件が多発している時に、情報漏洩の摘発を始めたからだ。何もないとは、思えない。そしてそれに気付けぬベアトリスでは、ないのだ。つまりベアトリスは、気付けなかったのか、忘れさせられたのか、敢えて何も言わなかったのかと言う事になる。忘れさせられた可能性もあるが、最悪取り込まれた可能性も無くは無い。

 

そうなった場合、機情局と特務局がレレーナ殿下についていると言う事でありそれは、主君であるシャルル陛下にとって脅威になり得ると言う事だ。

 

もしそうなっていた場合、ナイトオブワンとして皇帝陛下の騎士として自分だけでも守らなければいけない。

 

ただ、そうは言っても現在進行形で自分が襲撃されている状態では、シャルル陛下を守る事も難しい。

しかも襲撃をされている理由が、「妻を寝取られた」「娘を弄んで殺した」「息子がパワハラで自殺した」「父が…」「甥が…」と外聞が悪い内容ばかりなのだ。彼等とは一切面識がない。にも関わらず彼らは、「私が」と言う。その上彼等は、自分が言っている事が絶対正しいと思っている。

 

実際は、お前の妻は幼馴染の男と駆け落ちしているだろう!お前の所は娘じゃなく息子だろ!お前の息子は受験鬱で今も引き篭もって居るままだろ!お前の父は!お前の甥は!私は全く関係ない!!!なのに何で私の事を恨んでいるんだ!?風評被害も甚だしい!!!

 

いや、勿論分かってはいるが。恐らく記憶を書き換えられたか、思い込んでいるかのどちらかだろう。そんな事が出来るのは、帝国広しと言えどシャルル陛下とレレーナ殿下だけではないか。そして自分にこんな仕打ちをするのは、間違いなくレレーナ殿下だ。全知全能(The Almighty)を使えば、シャルル陛下のギアス能力を使用する事も容易いだろう。オルフェウスの事では、確実に自分も恨まれているだろう。

 

考えが甘かった…。オルフェウスにとってジヴォン家は生家であり、オルドリンとオイアグロは血縁者であるのだ。一緒にいた方が良いだろうと考えたのだが、レレーナ殿下にとってはいけなかった様だ。マリーベル殿下のメル家は、ヴィ家とも関係が良好でジヴォン家はその後援貴族。ヴィ家の悪い様にはならないだろうと考えたが、レレーナ殿下はエウリアと呼ばれる少女の心情を優先した。その上ギネヴィア皇女殿下なども関わった所為で政治的な意味を帯びてしまった…。その結果がこの騒乱だ。

 

自分だけならまだいいが、シャルル陛下にまで累が及ぶのは防がなくてはいけない。

 

「とにかくレレーナ殿下を抑えなければ…」

 

だがいい方法が思いつかない。下手に接触すればレレーナ殿下のギアスが飛んでくる可能性があり、面と向かって会うことすら憚られる。いや寧ろ真っ先に斬りかかられた際にギアスが使われなかった事は、幸いであった。

 

「ジヴォン卿と一度話した方が良いだろうな」

 

ビスマルクは、今後のことでオイアグロと会って事態打開策を考える事にした。しかし彼は、知らない。既にオイアグロ率いるジヴォン家にもレレーナの魔の手が迫っており、危機的状況になっている事に。

 

日が暮れ辺りが真っ暗となり街灯の光が街を照らすようになった時、ビスマルクがインバル宮を出てオイアグロの元に行こうとした。それと時を同じくしてペンドラゴンで更なる事件が発生する––––––––。

 

 

–––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

 

ビスマルクが、インバル宮からジヴォン家の屋敷に向かおうとしている時、時を同じくして神聖ブリタニア帝国第5皇女カリーヌ・ネ・ブリタニアは、視察先の劇場から自らが住む離宮への帰路についていた。

 

「カリーヌ様、明日は午前よりホテル・グレートペンドラゴンでの親善パーティーがございまして、午後2時よりギネヴィア皇女殿下との会食が用意されております」

 

「こんな時に親善パーティー?」

 

「こう言った時だからこそ、貴族達と結束して行こうと言う事だと思われます」

 

カリーヌは、乗っているリムジンで対面の席に座っている執事が明日の予定を淡々と言う事にイライラしていた。今自分たちの後援をしている貴族や企業の役人達が次々と襲撃されているのだ。中には、自身の母も襲撃され重傷を負わされているのだ。こんな時集まってパーティーなど警戒心が無さ過ぎるのではないかと思ってしまう。

 

「ご安心下さい姫様。姫様は、この身に代えて私が守ってみせます」

 

カリーヌがイライラしている理由がわかる、彼女の選任騎士『ダスコ・ラ・クレルモン』は彼女を安心される為に口にしてハッキリと伝える。自分が守る故パーティーに参加して欲しいと。

カリーヌ自身が、自分も襲撃されるのではないかと不安に思っており、それ故にストレスからイライラしているのだ。その上機情局があからさまに護衛名目で自分を監視している事もストレスの原因となっている・

 

「はぁあ…ダスコしっかり守ってね」

 

「イエス・ユア・ハイネス。この命に代えても」

 

カリーヌの隣の席に座っているダスコは、体をカリーヌの方へ向け頭を下げる。

 

「では、明日のパーティーには参加の方向で宜しくお願いしたします」

 

カリーヌは、思う。この執事、今日はやけに図太くはないだろうか。そして同じ事をダスコも思っていた。昨日までの執事は、どちらかと言うとカリーヌの機嫌を損なわないように最大限の配慮と言葉遣いをしていたが、今日は少し皮肉混じりなような気がしていたのだ。

 

「今日は、どうかされたんですか?」

 

ダスコが思い切って執事に聞いてみる。すると執事は、赤みがかった瞳でダスコを見て薄っすらと笑みを浮かべて見返してきた。その笑みを見てダスコは、ゾッとした。そして本能的にカリーヌを抱いて車から飛び降りる。すると直後に先程まで乗っていたリムジンが運転手と執事を道づれにして爆発する。

爆風からカリーヌを守るように体勢をとった為にダスコの体には、強烈な衝撃が襲う。

 

「ぐっ!?」

 

「キャッ!?」

 

爆風が収まりダスコがカリーヌを離すと、二人は立ち上がるが先程まで乗車していた車が燃え盛る様を見つめる事となった。運転手と執事は、まず助からないだろう。そう思っていると護衛車から護衛の者達が降りて来て二人の安否を確認する。

 

「ご無事ですか!?カリーヌ殿下!クレルモン卿!」

 

「大丈夫だ!直ぐに新しい車を手配してくれ!皇女殿下を早く安全な場所へ避難させるんだ!」

 

「い、イエス・マイ・ロード!」

 

ダスコが駆け付けてきた護衛の者達に手際よく指示を出す、それに答え機敏に対応を始める護衛の者達。それを見ても未だカリーヌは、放心状態のままであった。そんな主君の状態を確認するとダスコは、彼女の前に立ちしっかりと目を見て先程伝えた事をもう一度伝える。

 

「姫様は、私がお守り致しますので安心して、私にお任せ下さい」

 

「ダスコ…」

 

「大丈夫」

 

カリーヌは、第5皇女である。しかし年齢的には、未だ10歳とレレーナやナナリーとほぼ同い年なのだ。当然こんな年齢では、まともに人に害されそうになった事など無くまして殺されかけた事など一度も無い。レレーナからして見れば「何でやねん!」とツッコミを入れたくなる程、順風満帆な生活を送って来たのだ。

そんな彼女が、今日初めて本気で殺されそうになった事で恐怖のあまりまともに思考する事すら出来なくなっているのだ。

 

そんな主君を落ち着かせようと必死に宥めるダスコ。すると再びダスコに本能が警鐘を鳴らす。

 

「伏せて!」

 

ダスコがカリーヌを抱き地に伏せる。すると突然銃声が辺りに響き護衛の一人が倒れる。倒れた護衛は、血を流し絶命した。カリーヌがその遺体を見て小さく悲鳴をあげる。

 

「イヤァア!」

 

「姫様!見てはいけません!」

 

ダスコがカリーヌを抱きしめ視界に遺体が入らないようにする。すると再び銃声がなり近くにあった車両に銃痕がいくつも作っていった。

 

「敵襲!」

 

「皇女殿下を守れ!」

 

護衛官たちが、銃を取り出し銃撃してくる襲撃者に対して、車や街路樹などを盾にして反撃をする。護衛官は、ハンドガンとサブマシンガンで対抗するが襲撃者は、アサルトライフルなどを中心にして武装しているので火力で差が出ている。

 

「閃光弾!」

 

護衛官の一人が車の中から閃光弾を撃つピストルを取り出し、それを空に向けて放つ。すると発射された弾は、光を放ちながらゆっくりと落下してくる。閃光弾の光を受け道路を挟んだ反対側に複数人の人影が浮き上がる。その人影の中に筒状の物を持っている人間がいる事にダスコは、気付く。

 

「RPG!」

 

ダスコの叫びと共に襲撃者の一人がRPGを発射する。放たれたロケット弾は、真っ直ぐに護衛官達が盾にしている車に向かい大きな爆発を起こす。

 

「ぐあぁあ!」

 

爆発に巻き込まれ吹き飛ばされる護衛官の叫び声が辺りに響く。さらに燃え盛る車から放たれる光によってダスコや護衛官たちの位置が襲撃者に丸分かりになってしまう。

 

「車はまだか!?」

 

「現在応援と共にこちらに向かっております!」

 

「ぐっ、あと何分で到着する?」

 

「あと7分です!」

 

護衛官たちの会話を聞きながらダスコは、思案する。如何にしてカリーヌを助けるか。このままでは、ジリ貧でカリーヌを守りきる事は出来ないだろう事は、明白であった。そんな時、ふと視線を向けた先にこちらをジッと見ている人影に気付く。

その人影は、全身を覆う外套にフードを目深に被った人物だった。身長的にまだ子供の部類だろう。襲撃者たちの中で唯一武器を持たず攻撃をしてこない様子からダスコは、そのフードの人間が襲撃者のリーダー又は連絡員だろうと予想をつける。あのフードの人間を撃てば襲撃者たちは、撤退してくれるだろうか…。

 

「ぐっ!?」

 

「なんだ貴様!?」

 

突如、襲撃者たちの方から叫び声が聞こえてくる。ダスコがよく見ると、襲撃者たちの中に真っ白な外套を纏い、金色の刃を持つ大剣を振るう大男が見えた。その大男の登場に護衛官たちは、歓声を上げる。

その大男は、帝国では知らぬ者なしと言われる帝国最強の騎士ビスマルク・ヴァルトシュタインであった。

 

「ヴァルトシュタイン卿!」

 

「クレルモン、皇女殿下を連れて離脱しろ!此処は、私が食い止める!」

 

「しかし!?」

 

「目的を履き違えるな!卿の任務は!?」

 

「!」

 

「行け!」

 

「イエス・マイ・ロード!」

 

ビスマルクからの叱責を受けてダスコは、自身の主君を姫抱きにして移動を始める。ダスコに続いて護衛官たちも移動を初めて襲撃者たちから距離をとる。そしてビスマルクが連れてきた護衛たちと合流して撤退を始める。ダスコたちは、ビスマルクが向かっていたジヴォン家に向かい保護されることとなる。

それからビスマルクによって襲撃者たちは、悉く討ち取られ事件は終息する。

その遺体の中にフードを被った外套の人間は、含まれていなかった––––––––––––。

 

 

––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

 

襲撃事件の現場から少し離れた場所にある路地を進む一つの影。その影は、襲撃現場にいた全身外套に包まれフードを目深に被っている人物である。その人物は、暗闇の中で携帯を使って会話をしていた。

 

《やぁ、首尾はどう?》

 

「目標を始末する事は、出来なかった様だ」

 

《そっか、なら仕方ないね。ごめんね態々ユーロから来てもらって》

 

「気にしていない。それより此方こそ余り役に立てなくて済まない」

 

《それこそ構わないよ。元より脅し半分だからね。それに君には、だいぶ役立って貰ったから感謝してるよ》

 

「そうか。済まないがもう戻らないといけない」

 

《うん、分かってる。後は、彼が上手くするだろう。…帰る前に一度こっちに寄れるかい、アキトにもお土産が必要でしょ?》

 

「分かった」

 

《なら待ってるよ、おやすみシン》

 

「あぁ、おやすみレナ」

 

そう言って後にシンと呼ばれた男は、携帯を閉じポケットにしまう。その後一言も発せず暗闇の中に溶けていった。

 

帝都の狂乱は、まだ終息する気配を見せていない––––––––––––。

 




次回
『帝都狂乱-急』

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今後とも宜しくお願いします!

<人物>
●ダスコ・ラ・クレルモン
・カリーヌの選任騎士
・双貌のオズでは帝都に落とされたフレイアからカリーヌを救った騎士
・オルフェウスとも数度戦った仲

<建物>
●ホテル・グレートペンドラゴン
・ブリタニア帝国の帝都ペンドラゴンの5つ星ホテル
・本作オリジナルホテルです

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