コードギアス転生って誰でもハードモードじゃね!?   作:女神

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第14話 帝都狂乱-結

皇歴2014年 神聖ブリタニア帝国 帝都ペンドラゴン

 

神聖ブリタニア帝国の中枢、ペンドラゴン皇宮謁見の間。

その場所には、普段から多くの貴族役人達が皇帝の歓心を買おうと思って集まっている。そんな中で注目を集めている人物が二人。

一人は、今日謁見を求めて来てそれが叶った下級貴族当主オイアグロ・ジヴォン。もう一人は、先日ナイトオブワン"ビスマルク・ヴァルトシュタイン”に斬りかかって謹慎処分となり今日解除された第17皇子レレーナ・ヴィ・ブリタニアである。

 

そして今、謁見の間は、響めきが起きていた。オイアグロがレレーナに対して決闘の儀を申し込み皇帝に許可を願い出たのだ。当日に皇帝の裁可を得ようとするのは、異例であるがそれ以上に下級貴族が皇族に決闘の儀を申し込む事は、異例な事であった。

 

さらに周囲を困惑させたのが、レレーナが決闘の儀を拒否したのだ。自分に利益が無いと、にべもなく断ったのだ。

オイアグロは、レレーナはオルフェウスを取り戻す為に受けると思っていたが、それが叶わなかったことに驚いた。レレーナは、オルフェウスの事を取り戻そうとしないのかと疑問に思いながら、このままではマリーベルとオルドリンが危ないと 必死にレレーナへ決闘の儀を申し込むも取り付く島もない。

いっそ周りが哀れむ程、オイアグロは焦燥していた。レレーナが自分を見る目は、道端に転がっている石ころを見る様などうでもいいと言わんばかりで、決闘の儀にもこれぽっちも興味を示さない。

ギネヴィアやカリーヌがオイアグロに味方する形で決闘の儀を受ける様に言うも嘲笑で返される。オイアグロの心は、少しずつ絶望に染まって行く。

 

尊敬する姉を殺す事になり、せめて娘のオルドリンと息子のオルフェウスを救いたいと思うもその手段が自分には無い。二人の為だと少し強引に事を運べばオルドリンとマリーベルを危険に晒し、殺す対象であるレレーナに懇願するしかない状況となる。オイアグロは、自身の弱さを呪うしかなかった。

 

 

––––––––––––––––––––––––––––––––

 

 

オイアグロの焦燥した顔を見ると少し心がスカッとした。僕の抗議を無視してエウリアを悲しませた元凶の一人。

万事予定通り、アレクセイにマリーベルとオルドリンを誘拐させ解放の条件に僕と決闘の儀をして殺す事を提示した。僕の方から決闘の儀を申し込んでもオイアグロが受けるとは、限らない上にオルフェウスを賭けるとも思えない。ならば向こうから賭けてもらう必要がある。

 

結果は、上々。オイアグロは、必死に決闘の儀を受けて欲しいと懇願してくる。愉悦だったが、同時に不快でもある。

オイアグロは、未だにオルフェウスを賭けてこないのだ。企業の利権やお金、騎士の名誉と言った僕にとっては、どうでも良い事ばかり賭けてくる。その上、ギネヴィアやカリーヌが騎士ならば挑まれた決闘は、受けるのが礼儀だと宣ってきた。

 

「僕は、騎士ではなく皇族であり機情局の諜報員ですから、それには当てはまりませんね」

 

「あんたそれでも男なの!?」

 

「女は良いですねぇ。襲撃されても自分は泣いとけば良いのですから。楽なお仕事ですね」

 

「なんですって!」

 

「弱肉強食のブリタニアに弱い皇族は必要ないでしょう。さっさと皇族など辞めてしまわれた方がよろしいのでは?」

 

「あんただってジヴォン卿の挑戦を受けないなんて臆病者じゃない!」

 

「何故メリットも無い試合を受けねばならないのです?時間の無駄ですよ」

 

本当にあぁ言えばこう言うとお互いに思っているだろうけど、部外者が口を挟むな!これは僕とオイアグロの真剣勝負なのだから–––––––。

 

「レレーナ殿下。どうか、どうか伏してお願い申し上げます」

 

オイアグロがとうとう謁見の間で土下座までしてお願いしてきた。これはちょっと驚いた。ここには、多くの皇族貴族が居る。そして皇帝の御前でもある。これは、ジヴォン家の名誉に関わる事だ。

しかしそれだけこの男にとってあの二人、もといオルドリンとオルフェウスが大事なのだろう。それだけは、認めてやる。

 

「レレーナ。ジヴォン卿が此処までしておられるのだから、受けて上げられないかな?」

 

「そうだな。レレーナ、卿の騎士では無いと言う事は尤もだが、皇帝陛下の御前で此処までしているのだから受けてやらないか?」

 

シュナイゼルとコーネリアまで参戦してきた。これじゃまるで僕が悪者みたいだ。

皇帝の御前でこういった揉め事は、よく無いのだがシャルルもビスマルクも何も言わない。二人は、これが茶番である事を知っている。僕は、決闘の儀は受ける。それは、決定事項なのだ。ただ条件は、吊り上げないとね。やられた分は、倍以上にして返すが僕のポリシーだよ。

 

「そうは言いましてもお二人共、何故ジヴォン卿が此処まで決闘の儀に拘っているかご存知ですか?」

 

「…いや私は知らないが、兄上は?」

 

「いや、私も知らないな」

 

シュナイゼルとコーネリアは、ギネヴィアとカリーヌの方を見るが二人はオイアグロの方を見ておりシュナイゼル達の視線に気付いていない。

 

「ジヴォン卿、皆様にお教えに成っては如何ですか?それともギネヴィア姉上かカリーヌが説明されますか?」

 

まぁ当然3人共黙りである。そらそうだろう。

皇族を守るべき貴族が自身の後援する皇族を守れず、他の皇族を害そうとしているとは言えまい。そしてそれを利用して僕を排除しようとしていたとも言えない。テロリストにしてやられた貴族とテロリストを政争に利用しようとした皇族、これは皇帝の前で言える者は帝国広しと言えど居ないだろう。実質テロリストに屈したなど弱肉強食のブリタニアで認められる訳が無い。

 

「では代わりに私が説明しましょう」

 

「!?」

 

オイアグロが目を見開いてこちら見る。

 

「そもそもの原因は、昨日の午前にマリーベル姉上とジヴォン家次期当主オルドリンが何者かに誘拐された事です」

 

そう言えば謁見の間に響めきが起きる。シュナイゼルやコーネリアはおろか、シャルルやビスマルクも驚愕の表情を浮かべている。当然この情報は、極秘でありジヴォン家は限られた者にしかこの情報を伝えていない。機情局は、ジヴォン家にもモグラを送っているのであっさりとこの情報を入手する事が出来た。

と言うよりも誘拐は、僕が命じた事だから始めっから知ってたけどね。

 

「誘拐犯は、ジヴォン卿に決闘の儀で僕を殺せば二人を解放すると言ったそうです、だからこそジヴォン卿は、急遽僕に決闘の儀を申し込んで来た」

 

「!?」

 

「なんだと!?それは本当かジヴォン卿!?」

 

「…」

 

コーネリアに問い詰められても何も言えないオイアグロ。それを見て本当だと皆が悟った。

後援する皇族と姪っ子の為に他の皇族を殺す。それに納得できる人間が何人いようか。テロリストに抗して守るべき皇族を見殺しにするか、屈して別の皇族を殺すか。どちらにせよ皇族が死ぬ。テロリストからすればどちらでも良いのだろう事は、誰でも分かる。それが分からぬ皇族貴族は、この場には居ない。

 

「…僕は、命を賭けるんだよ?それに対してお金や名誉?そんなチンケな物で僕が釣れると?随分と安く見られたものだ」

 

「…申し訳有りません」

 

「何を賭ける?」

 

「私の命を「要らない。そんな安物」っ!?」

 

「父上の御言葉にもあるだろう。人は、平等ではない。僕と君の命が等価?有り得ないよ」

 

命なんぞ賭けられても何の得にもならない。せめて自分の全てとかにしろよ…。

 

「勿論、オルフェウスだけじゃ足りないよ。元々僕のモノなんだから」

 

僕が欲しいのは、僕の命に似合うものだよ!

提示出来ないなら、僕が要求しちゃうよ。

 

「出せないかい?」

 

「…」

 

「なら僕が要求しよう。決闘の儀を受ける条件は、オルフェウスとジヴォン家の次期当主の座の二つで手を打ってあげよう」

 

「!?」

 

再び謁見の間で響めきが起きる。

ジヴォン家の次期当主の座。一見下級貴族の当主の地位だと思われるかも知れないが、その実ブリタニア皇族の為に破壊、諜報、暗殺などを行う特殊部隊『プルートーン』の隊長を務めているのがジヴォン家の当主なのだ。つまりジヴォン家の次期当主の座を寄越せとは、プルートーンを自らの指揮下に置かせろと言う事である。僕が欲しいのは、それだよ。ブリタニア国内で権力争いをするならば、プルートーンを抑える事は絶対必要であろう。

 

「そんな事認められる訳が!?」

 

「父上の裁可があれば問題無いのでは?」

 

「っ!?」

 

ギネヴィア、此処は専制君主国家で、皇帝が決めた事は絶対だ。勿論無茶は出来ないが、決めてしまえば何も言えまい。

 

「父上、この二つの条件を認めて頂ければ決闘の儀を受けようと思います」

 

「…オイアグロ・ジヴォン、貴様はどうする」

 

「…っ。承知しました」

 

「ジヴォン卿!」

 

オイアグロがジヴォン家次期当主の座とオルフェウスを賭ける事に承諾すると、ギネヴィアがオイアグロの名を叫ぶ。

 

「良かろう。神聖ブリタニア帝国皇帝シャルル・ジ・ブリタニアの名の下に、レレーナ・ヴィ・ブリタニアとオイアグロ・ジヴォンの決闘の儀を行う事を認める!」

 

『イエス・ユア・マジェスティ』

 

シャルルが宣言すると僕とオイアグロは、シャルルに礼をする。

オイアグロ。先ずは君からオルフェウスを取り戻すとしよう。そろそろ本当にエウリアを見るのが忍びない。僕も寂しい。

 

 

––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

 

謁見の間での出来事の翌日。午前より決闘の儀の開催地となる競技場(スタジアム)には、既に観戦希望の多くの観衆が集まっていた。今度の決闘は、ブリタニア帝国の歴史の中でも珍しい皇族対貴族の闘いなので注目度が非常に高い。又皇族や大貴族の中には、今回の決闘の裏側を知っている者もおり、レレーナ・ヴィ・ブリタニア殿下の命とマリーベル・メル・ブリタニア殿下の命が天秤に掛けられている状態でどちらの皇族が死ぬ事になるのかを見ている者も存在した––––––––––––––。

 

 

–––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

もう直ぐ僕とオイアグロの決闘が始まる。既に僕もオイアグロも競技場中央に向かい合って闘い合図が出るのを待っている。

オイアグロは、二本の剣を帯剣し目を閉じ集中している様だ。オイアグロの心中は、穏やかではないだろう。なにせどちらが勝っても皇族が死ぬという結果に変わりない。テロリストからしてみれば何方でも良いのだ。それはオイアグロも分かっている、既に彼は負けているのだ。だからこそこれ以上負ける訳にはいかないのだろう。

 

一応僕の予定通り。これで少しはお灸を据えれただろう。後はこの決闘で勝ってオルフェウスとジヴォン家当主の座を手に入れて宴は終わる。

でも大丈夫だよオイアグロ。君は最後、僕に感謝する事になるんだから。

 

僕とオイアグロが、向かい合いその中間地点に審判役の男が立つ。

 

「これより”決闘の儀”を始める!両者前へ!」

 

その声と同時に僕とオイアグロが中央へ近寄る。

 

「両者!正々堂々一本勝負!始め!!!」

 

審判の宣言と同時に僕は、全知全能(The Almighty)の『ザ・スピード』を使用してオイアグロに高速で近付き剣を振り下ろす。それをオイアグロは、二本の剣を顔の前でクロスさせ受け止める。一太刀で決められるとは思っていなかったが、あっさりと受け止められるとは思わなかった。ちょっと悔しい…。

 

オイアグロは、僕の剣を受け止めた後に右手の剣を横一文字に振るう。それを僕は、鍔迫り合いの勢いで反動をつけて後ろに下がる。僕が飛び下がり地面に足が着いたと同時に、オイアグロが左手の剣で僕に斬りかかって来る。それを両手で持った剣で受け止める。

大人と子供の体格差があり、どうしても僕が飛び下がる距離よりもオイアグロの踏み込んで来る距離の方が長く逃げきれない。そして力でも大人と子供の差が出て来る。しかしそれを覆す力を僕は、持っている。オイアグロが斬りかかって来た際に『ザ・パワー』を用いて受け止め押し返す。その後オイアグロが後ろに下がったと同時に今度は、初撃を上回る速度で僕がオイアグロに斬りかかる。何度も何度も角度を変えて打ち込む。但し打ち込む剣の位置は、必ず同じ場所だ。

 

僕が、攻勢に出てオイアグロが防戦一方になる。

それでもオイアグロも一流の騎士。防戦になりながらも的確にカウンターを行なってきて、あと一歩踏み込ませてくれない。

その事は、さすがと言う他ない。

 

ギアスを用いて自身のスピードとパワーを上げて、更に未来線を読む。これほどドーピングを用いてもオイアグロを押し切れないのだから、この世界の騎士という生き物は怪物だとつくづく思う。

 

「くっ」

 

僕の剣がオイアグロの頬を少し掠める。

今のは少し入ったと思った。

 

オイアグロは、少し距離を取る為にバックステップで後ろに下がる。

 

「これ程の実力とは…」

 

お互いに打ち合いの中で相手の力量を把握し、これからの戦い方を思考する。オイアグロは、僕の力量に驚いている様子だ。そして此方を油断なく見据えてくる。恐らく僕がギアスを使用している事に、薄々気がついているのではないかな。

 

「やっぱり強いね」

 

「恐れ入ります」

 

オイアグロは強い。これは認めざるを得ない。

だけど僕は、ここで勝たなければいけない。オルフェウスとエウリアの為に僕が目指す理想郷を作る為に。

腕の立つ相手には、精神面での攻撃が有効だと誰かが言ってたから試すしかないね。

 

「これだけ剣が立つんだから、さぞ姉の存在は不愉快だったんじゃないかい?」

 

「…そんな事は、ありません。私は、姉の事を尊敬しておりました」

 

「なのにその尊敬していた姉を君は、殺した」

 

オイアグロの姉オリヴィア・ジヴォン。

オルフェウスとオルドリンの生みの母親であり、その実力はナイトオブラウンズに勝らずとも劣らないと評される程であった。

そんな彼女が死ぬ事になったのは、ある事件が切っ掛けであった。

 

「あの爆弾テロ事件が起きたせいで、君の姉は心を壊す事になった」

 

「っ!?」

 

フローラ・メル・ブリタニア。

マリーベル・メル・ブリタニアの母であり、数年前に爆弾テロによって命を絶たれたブリタニアの皇妃の一人だ。

この事件は、爆弾を持った子供を一人の少女が離宮内に招き入れた事によって起きたとされており、その招き入れた少女がオリヴィアの娘オルドリン・ジヴォンだとされたのだ。故に特務局は、プルートーンの隊長であり母であるオリヴィアに娘オルドリンを殺害するように命じたのだ。しかしオリヴィアは、真相を知っていた。いや真相というには、余りにも小さい事だろう。

 

特務局の報告書では、爆弾を所持した子供を離宮内に招き入れたのはオルドリンとされていたが、実際にはマリーベルであり皇女の過失によって引き起こされたのだ。事実を隠す為にシャルルは、マリーベルの役を別の人間にさせるように命じたのだ。

 

「守るべき皇族の為に、娘を生贄に捧げるように命じられた君の姉は娘を殺すことが出来ず、使命と情の間で翻弄され心を壊した」

 

「何を」

 

「君の姉もあんな死に方をする事になるとは、思ってもいなかっただろうね。家の伝統に則って息子を捨てたのに、その上娘までも…哀れなものだ」

 

「貴方に何が…!?」

 

僕の剣が再びオイアグロを捉える。今度は、左腕を掠める。

オイアグロ。僕の全知全能(The Almighty)の中には、アニメ版マオの『心を読む』ギアスも含まれている。君の心は、手に取るようにわかる。

後悔、悲しみ、虚しさ、そして憤りが君の心を占めている。

 

「姉を助けたかったんだろう?」

 

「!?」

 

「壊れていく姉が惨めで苦しそうで、何より変わり果てていく姉を見たくなかったんだろ?」

 

「くっ」

 

「たとえその後オルドリンに恨まれたとしても、二人を守りたかったんだろう?」

 

オイアグロは、本当は優しい性格なのだろう。苦しんでいる姉を見ていられなかった。

僕には、出来ない事をした彼を僕は非難しないしむしろ賞賛すらするだろう。自分が後悔すると分かっているのに、姉と姪を助ける為に実行に移したのだ。それでも利用させて貰うよ。僕の勝利の為に–––––––––––––

 

「でも本当は、疎ましく思っていたのだろう。男であるが故に当主になれなかった。実力はあるのに–––––––––」

 

「っ!?」

 

「だから殺したんだろう。君の独りよがりの為に、娘から最愛の母を奪った訳だ」

 

「このっ!?」

 

オイアグロが集中を乱して右手に持っている剣を大振りで横一文字に振るう。

 

「!?」

 

僕は、それを左手で持った皇族用にデコレーションされたゴテゴテの鞘で受け止める。オイアグロの剣は、木の部分にめり込み金属の装飾品に当たって止まっていた。それに少し動揺を見せるオイアグロ。当然その隙を見逃す手は無い。

 

「隙だらけだよ」

 

「しまっ」

 

僕は、右手で持った剣を上段から振り下ろす。それをオイアグロは、左手で持った剣で受け止めようとする。しかし僕の剣は、オイアグロの剣を叩き折ってオイアグロの左肩から胴体を切り裂く。決闘が始まってから同じ場所ばかりに打撃を与え罅を入れて折れやすくしていたのだ。まぁこんなにうまく折れてくれるとは、思わなかったが…。

 

オイアグロは、斬られた箇所から血飛沫を上げて前のめりに倒れ込む。その目には、僅かな光しか宿っておらず、まるで何かに懺悔するかの様な瞳であった。

 

「咄嗟に半歩後ろに下がった様だね。もし下がってなかったら左肩から下を切り落としてたのに…」

 

「うぅ」

 

「ごめんねジヴォン卿。僕は、勝つ為なら何だってする。…僕、君の姉の事は殆ど知らないんだ。だからごめんね」

 

「…」

 

「オルフェウスは、返して貰うよ。それじゃ」

 

そう言って僕は、倒れ臥すオイアグロに背を向けて出入場口へと向かう。

 

「しょ、勝者!レレーナ・ヴィ・ブリタニア殿下!…救急隊急げ!」

 

審判の声が会場に響き渡る。これにより僕とオイアグロの決闘の儀は、閉幕する。そして帝都での騒動も終わりを告げることになる。

 

 

––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

 

決闘の翌日に司法省広域捜査局が、マリーベル・メル・ブリタニア皇女とオルドリン・ジヴォンを無事保護した事が伝えられる。また広域捜査局は、今回の皇族貴族襲撃事件の首謀者として警護騎士団(ガース)の団長である“アレクセイ・アーザル・アルハヌス”を指名手配した。

後日機情局からの情報提供を元に広域捜査局が、潜伏先を突き止めその場所へ踏み込んだ。しかし既にアレクセイは、毒を服用し死亡していた。

捜査の結果、自ら毒を服用したと思われ逃走の末に自殺したものと見られる。その為広域捜査局は、被疑者死亡の状態で送検する事となった。

これにより皇族貴族襲撃事件は終息し、後に『帝都狂乱』と人々に呼ばれる様になった。

 

 




次回
『狂乱の裏側とその後』

コメント、誤字報告、評価ありがとうございます!
今後とも宜しくお願いします!

新型コロナ(コビット19)が猛威を奮っていますが、皆様健やかにお過ごし下さい。

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