創作です。
皇歴2015年 アゼルバイジャン 首都バクー
僕の乗っている黒塗りのワゴン車は、首都バクーのイスティックラリヤット・ストリートを大統領府に向けて走っている。車両の前方には、黒塗りのセダンと赤と青のランプを屋根に付けた白塗りの車体に青い文字でY・P・Xが書かれているパトカーが先導している。後方には、黒塗りのワゴン車が走行している。
僕が乗っている車も前後の車も、警察の車両にもギアスを掛けて僕の支配下に置いている。唯一ギアスが掛かっていないのは、同じ車両に乗っているオルフェウスだけ。運転手も国防相もギアスの管理下だから何も話さない。お陰で車の中では僕とオルフェウスの二人だけが淡々と会話をしている。
「大統領府に着いたら予定通り地下司令部の制圧を第1目標として建物周囲はα隊、裏口はβ隊に処理させる。目標は15分以内が望ましい。15分が経った場合、無条件でΖ隊は正面車寄せにトラックを入れて例のモノを準備してもらう。15分以内で制圧出来た場合は、その時点でトラックを車寄せに運ばせる」
「了解。だがα隊だけで正面戦力は足りるのか?」
オルフェウスは、α隊の戦力で大統領府の正面戦力を排除できるのか疑問に思った様だ。実際α隊だけでは戦力不足だろう。大統領親衛隊と警察が警備についており、襲撃を受けた場合20分以内に軍の特殊部隊が救援に駆けつける仕組みになっているからだ。α隊は約20人の部隊で、大統領親衛隊と警察は合わせて100人前後居るだろう。軍の即応部隊も合わせれば150人は超えるだろう。しかし…
「大丈夫だよ。その為の民兵だから」
「ホテルの客やスタッフだろ?役に立つのか?」
そう。流石に機情局の局員だけでは戦力が足りないので、その分を補うものとして利用するのがホテルの客やスタッフ、周辺にいたアゼルバイジャン人たちである。彼らをギアスで支配下に置き即戦力として大統領府や議会、首都バクーの主要道路に配置しているのだ。
しかし当然ギアスで操っている素人などまともに戦えるはずも無い。そんな事は、百も承知。
「役に立たさせるさ。それが指揮官の役目だからね」
どんなに使えないカードも要は使い方次第だ。人数による圧迫、同時多発的に起きるテロ、肉壁、逃走経路の遮断など戦えなくとも活用できるやり方は存在する。
「さぁ。さっさと
「口が悪くなってるぞレナ。それから忙しいのは趣味に時間を掛けて書類仕事を後回しにしてるからだろう…」
おっといけない。王子様口調、王子様口調。こういう事は常日頃から気を付けていないと、ふとした瞬間に失敗してしまうかも知れないからね。気を付けなきゃ。
あとオルフェウス、趣味じゃ無いよ。新技術と新システム、新兵器の開発は趣味じゃ無いよ。開発は趣味じゃなくて仕事でしょ!仕事イコール趣味のワーカーホリックじゃ無いよ僕は!?仕事は仕事と割り切ってるよ?自分が生き残る為の創意工夫だよ?それは、軍の為になっているのだから立派な仕事でしょ!違うの!?
「新技術や新システム、新兵器の開発は、立派な国家への貢献でしょう?」
「確かに開発そのものは凄いんだがなぁ」
オルフェウスが何か言いたそうな目で僕を見てくる。
––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
黒のワゴン車の車列が大統領府の正面車寄せに到着し、ワゴン車に乗車していた国防相と護衛に扮したレレーナ達が下車する。それを出迎えたのは、大統領府正面玄関の警備責任者である親衛隊員の中佐である。
「お待ちしておりました、国防相。お怪我は?」
「あぁ、大丈夫だ。この勇気ある少年達が助けてくれたからね」
中佐の気遣いに、国防相は薄っすらと赤く染まった瞳をレレーナ達の方へと向ける。それにつられて中佐もレレーナとオルフェウスの方へ視線を向ける。
「オズ・ランペルージ准尉であります!」
「レナ・ランペルージ士官候補生であります!」
オルフェウスとレレーナはそれぞれ敬礼をし、中佐に嘘の自己紹介を行う。二人は兄弟の設定で、開戦によって動員された新人と学徒であると偽った。そして爆撃によって灰燼となった国防省参謀本部から国防相を救出した事にしたのである。
と言うのも流石に警備の厳しい大統領府に侵入するのは、ギアスを使っても難しい。どこに行っても人、人、カメラ。その上、大統領を含む要人達は地下司令部にいるので騒ぎを起こすと地下司令部に侵入するのに手間が掛かり、共和国の増援が来てしまう。増援が到着するまでの所要時間は15分であるから、それまでに制圧するには地下司令部を落とさなければならない。
となれば、まず地下司令部の鍵を内側から開けてもらう必要がある。そしてその際に一緒に中に入れる様にしなければならない。国防相と一緒であれば入る事も容易だろう。
「そうですか、しかし規則ですので、大統領府に立ち入る際には身元照会を行わさせて頂きます」
親衛隊の中佐が国防相にそう言うと、僕とオルフェウスの方を向いてそれでいいねと確認してくる。当然確認される事など予想済みである。
だから–––––––––––––––––––––––
「勿論です!」
僕がそう答えて自身の偽造した身分証を提示したその時、『ドン!』とけたたましい大きな音と強烈な光、熱風が正面玄関に居た僕達を襲う。それは、僕の乗車していた車が爆発した時に出た音と光、衝撃だ。
「あっつ!?」
爆発した車のすぐ側にいた僕は、爆発で発生した衝撃と熱風をもろに受ける事になった。
確かに「派手にしろ」とは言ったが、何も僕の側の車を爆破する事はないじゃないか。まさか僕の事を狙ってやった訳じゃないよね?ギアスで操っている筈なのに、まさかV.V.の部下でも紛れてるんじゃないだろうな?
「一体なんだ!?」
「シルヴァンシャー宮殿方向のあの建物の屋上からだ!」
「早く!大臣を中に避難させろ!」
ヒューという音と共にミサイルが再び車の車列に向かって来る。それが車に命中し、大きな音と衝撃波を放つ。
「だから!危ないって!?」
「大臣!こちらです!」
「撃て撃て!反撃しろ!!!」
突然の強襲によって警備の者達は、混乱に陥ってしまう。僕の声は、警備の人間には聞こえていない様だ。よかった。
しかしそこは大統領府の警備を任せられた者達、直ぐに状況を分析して体制を立て直す。最優先に国防相の身の安全を確保する為に、国防相を大統領府内に避難させる。その際に、僕とオルフェウスも護衛の人間と共に奥へ進む。既に身分照会の事も忘れられ、そのまま奥へ地下司令部に繋がるエレベーター前に到着する。
エレベーターに乗るのは、国防相と僕、オルフェウス、共和国兵に扮した機情局員2名、大統領親衛隊員1名である。大統領親衛隊員の一人以外全員がブリタニア側の人間が乗っているエレベーターは、真っ直ぐと地下司令部に向かって降りていく。勿論、大統領親衛隊員の一人も局員二人に抑えられ僕のギアスの支配下に入りました。
エレベーターが地下司令部に着き、扉が開く。少し廊下を歩いた先には、アサルトライフルを携えた二人の護衛官が立っている。ただその二人以外に廊下に立っている者はいない様なので、素早くギアスを掛ける。そして地下司令部の扉を開けてもらう。
「国防相が到着しました!」
「おぉ、ご無事でしたか!」
「ご無事で何よりです!」
「怪我の具合は大丈夫なのか!?」
瓦礫の山と化した国防省より生還した国防相、地下司令部に詰めていた閣僚や職員からは拍手を以って迎え入れられた。拍手をしている者の中には、初老の白髪に薄水色の瞳、グレーのスーツを身に纏った男性も加わっていた。アゼルバイジャン共和国の大統領である“イリハエル・ハリエル”だ。
「ご無事で何よりです、国防相」
「ご心配をお掛けしましたが、この通り健在でございます大統領」
「今は戦時下なので大変ですが、貴方の力も貸してくれ」
「勿論です大統領!戦争に勝つ為に微力ながら私も協力させて頂きます!」
「おぉ!」
大統領は、ブリタニアからの侵攻に対してE.U.や中華連邦、ジルクスタン王国などからの助力を得て戦争に勝利するか、せめてブリタニアとの休戦協定を引き出す事を目指しているのだろう。そう言う意味で「力を貸してくれ」と言ったのだろうけど、国防相の方はあくまでブリタニアが戦争に勝利する為に僕へ協力すると言っているのだ。二人の会話は、ズレている。しかしそれに気付けていないのが大統領、貴方の負けた原因だよ。他者の協力などあったらいいねぐらいの物で、基本的には自分で出来る様にしておくべきなんだよ。
「さぁ、さっさと終わらせよう」
「?何だね君は?」
体感時間の停止ギアス。アニメR2において登場したギアス嚮団からの刺客ロロの使用するギアス。結界型のギアスで、範囲内に含まれた人間の体感時間を停止させる強力な力だ。ただ使用中に使用者の心臓が止まってしまうと言うリスクがあるが、これはギアスを発現する際に影響があると思われる体内のR因子の量が影響しているものと思われる。実際僕が使用する際には、心臓が止まると言うリスクは存在しなかった。まぁ心臓の動きが、ゆっくりになるせいで疲労することには変わりないけど…。
このギアスの結界に地下司令部の人間を全員含めて、動きを制して警備の人間を全員射殺し武器を奪っておく。反撃されると危ないからね。そしてギアスを解除する。
「…っ!?何だこれは!?」
ギアスの解除を受けて動き出した大統領達は、目の前で一瞬にして現れた惨状を見て驚愕する。当然だろう。彼ら視点で見れば、一瞬にして司令部内にいた兵士達が胸から血を流しながら倒れ込んでいるのだ。仮にギアスの存在を知っていたとしても驚くだろう。そして同時に自身の身の危険を肌で感じるだろう。死神がその手に持つ大きな鎌で自らの命を刈り取ろうとしているのを感じ、それでも何も出来ずにただその時を待つしかない。絶望と恐怖に打ち震えながら最後のその瞬間を。
でも僕は、優しいからそんな思いをさせないよ。君達には、何の恨みも憎しみも持っていないからね、一瞬で楽にしてあげよう。
「時間が惜しいから手早く済ませるよ。レレーナ・ヴィ・ブリタニアが命じる!君達は、我が奴隷となれ!!!」
「あ…」
僕の絶対尊守のギアスで、ハリエル大統領を含む地下司令部の要員を支配下に置く。ここまでの所要時間は、12分29秒である。大統領府襲撃から凡そ20分で緊急時即応部隊と呼ばれる特殊部隊が大統領府へ到着するとの事なので、あと7分30秒程時間がある。
しかし幾ら地下司令部を制圧しても大統領府の中を完全制圧した訳ではない。今も正面玄関や裏口では、機情局の部隊とギアスで操った民兵達が大統領親衛隊や警察と銃撃戦を繰り広げている。その様子は、地下司令部のモニターからも確認する事が出来る。あと7分で敵の増援が来るので早急にこの敵を排除する必要がある。
勿論その計画は用意しているが、その為には最低限制圧しなければならない場所が複数あるのでこれから短時間でそれを成し遂げる。
まずは、地下司令部より偽の情報を流して警備の人間を分散させ正面戦力を減衰させる。
「地下司令部より!テロリスト達が南側外壁から5Fに侵入!速かに対処されたし!!!」
《第3小隊、了解!》
機情局の部隊にも直接僕が指揮を取ろう。
「α1、1時の方向にスモーク弾射出」
「α4、α6、ポイントS8に移動、移動後10時の方向階段下の部屋にグレネード」
「α11、α17、α18は、中央階段を登り北側通路に向けて一斉射」
《イエス・ユアハイネス!》
「β3、南側5Fに向けてRPG」
「β10、β12、β16、β19は、非常階段から7Fへ迎え」
《イエス・ユアハイネス》
このようにして兵士一人一人に対して指示を出して作戦を優位に進める。
勿論、モニター越しに兵士配置を見ているとはいえ、全てを把握できる訳では無いのでギアスの力を使っている。“ナイトメアナナリー”に登場するルクレティアの地脈や物理的構造を把握するギアス『ザ・ランド』とサンチアの周囲の生命の気配を読むギアス『ジ・オド』の二つのギアスによって、建物内の構造と内部の人間の動きを全て把握して作戦を指示しているのだ。そこにレレーナ自身の頭の回転の速さを用いれば原作のルル兄様の様な事も出来る。ただ時間が無い以上、目標を最低限に設定して対処に当たる必要がある。
「殿下、正面ロビーの敵の排除が完了しました」
「よし、Ζ隊に例の物を正面玄関前まで運び込ませろ!」
「イエス・ユアハイネス」
僕が指示を出すと共に外部から侵入した機情局員が答礼をして無線で作戦本部へ連絡をする。すると大統領府近辺で待機していたΖ隊のトラックが移動を開始して大統領府正面車寄せにトラックをつける。
「じゃぁ後は台本通りにお願いしますね大統領?」
「はい。分かりました」
僕の問いに僅かに瞳を赤く染まらした大統領がそう答えるのを聞いて、僕とオルフェウスと機情局の二人は地下司令部を後にする。
エレベーターが上がり、地上に出て扉が開くと、そこはまだ戦場であった。その為、僕は再び体感時間の停止ギアスを使って共和国側の動きを封じ、拳銃で一人ずつ頭に弾丸を打ち込み沈黙させる。そしてギアスを解除して悠々と正面ロビーへ向かう。
正面ロビーを抜けて玄関の車寄せには既にΖ隊がトラックを到着させており、中からブリタニアが誇る軍事力の象徴が現れる。
神聖ブリタニア帝国軍が開発した革新的戦術兵器
サザーランドは、新型機なので今回の侵攻作戦にも少数しか配備されていない。バクーに用意した2機を含め、ラチェット将軍とアーニャ、アルガトロ混成騎士団長のホッジ辺境伯、ジェレミア辺境伯の6機しか配備されていないのだ。それぐらい開発ほやほやの新機体を、今回僕が使う。
と言うか、やっとサザーランドだよ!長かった。今世15年でようやっと原作アニメで出てきた主力KMFが登場した。
正直、紅蓮とかランスロットとか知っている身としてはサザーランドなんて大した事ないよなと思わなくもなかったが、グラスゴーとは違うよ。グラスゴーとは。機動性能と言い、精密動作と言い第4世代のKMFとは一線を画す性能だよ。
グラスゴーは、僕が自分用に改造したから何とか操縦できたけど、操縦するには些か苦痛を感じるものだった。パイロットへの配慮が足りないんだよアレは。
その点サザーランドは、パイロットに対する配慮も欠かさない。これならもう少し楽に戦争が出来そうだ。
そんな事を考えながらサザーランドに乗り込む。すると大統領府内で戦闘をしていたα、β隊が当初の作戦目標を制圧した事を報告してきた。それと同時にアゼルバイジャンの緊急時即応部隊が間も無くこの場所に到着する事が伝えられた。
戦力は、E.U.で開発された対地攻撃用
「オルフェウス!敵の地上部隊の増援は任せるよ。航空戦力は僕が受け持つよ」
「あぁ」
オルフェウスは、そう答えるとサザーランドの1機に搭乗して地上部隊の迎撃に向かった。僕は、もう1機のサザーランドに搭乗して大統領府の壁面をスラッシュハーケンを用いてよじ登り、屋上で敵の航空戦力の迎撃の準備をする。すると程なくして6機のVTOLがこちらに向かってくるのを確認する。
「さーて、もう一踏ん張りしますか」
大統領府の屋上を登ったサザーランドのコックピット内で両手の指を絡めて腕を伸ばしながら背筋を伸ばす。背筋を伸ばした後に首を回して首筋と肩をほぐす。その後、アニメ版マオの人の心を読むギアスでVTOLの搭乗員達の思考を読みながら、VTOLの動きを未来視で観る。するとVTOLのパイロットと思われる人物達の声や思考が読める。
《司令部、アタッカー目標接近》
《了解、大統領の安否は不明である。早急に安否確認を》
《了解》
可哀想に。まだ大統領を助けられると思っているんだね。
もうとっくに僕の手に落ちているのに。…マオのギアスって通信相手の会話内容まで把握出来るんだね。驚いた。あくまで範囲内の人物の思考であるが、相手の会話内容を理解する為に一度内容を思考するのでマオのギアスでも把握出来るんだね。
《目標に接近。屋上に何かあります》
《確認した。…KMF?》
どうやら僕の存在に気づいたようだ。
《KMF!?何故、テロリストが…まさかブリタニアか!!!》
《司令部!目標屋上にKMFを確認!指示を!!》
《KMF?数は?》
《1機のみです》
1機?あぁ、彼等の位置からはオルフェウスの機体は見えなかったのか。
《司令部より、KMFを破壊し作戦を続行せよ》
《アタッカー了解。これより作戦を開始する》
アタッカーと言うのは、コールサインみたいなものかな?
《アタッカー1より各機へ。これより作戦を開始する!敵KMFに注意せよ!!!》
《了解!!!》
敵のVTOLが作戦空域に入る。それは同時にサザーランドのアサルトライフルの射程に入ったと言う事。
さぁ、最後の戦いの幕開けだ。
《屋上に接近!》
《アタッカー2、アタッカー5は北側へ。敵KMFの注意を引きつけよ》
《アタッカー2、了解》
《アタッカー5、了解》
6機の編隊の中から2機が離脱して建物北側で移動する。残りの4機の内1機は南側へ向かい、3機は真っ直ぐ此方へ向かってくる。
僕は、排除する順番を瞬時に決めて対処する。サザーランドの左手に握られているアサルトライフルを此方に接近しているVTOLに向ける。そして火器管制レーダーを照射する。所謂ロックオンというやつだ。
《!?ロックオンされた!》
《回避行動!》
パイロットがそう言ったすぐ後に、僕のサザーランドの銃口が火を噴く。ダダダダダと重低音がコックピット内に響く。まぁ実際は、リニアライフルなので火を噴く事は無いのだけれど…。そしてアサルトライフルから射出された弾丸は、敵のVTOLへ向けて真っ直ぐに進む。VTOLの編隊は直様回避行動を取るが、1機に弾丸が複数弾当たりバランスを崩す。
《アタッカー5、被弾!メーデー!メーデー!!》
アタッカー5と自称したVTOLは弾丸が機体に命中した事により体勢を崩して、大統領府の車道を挟んで反対側の国立美術館へ墜落してしまう。
《アタッカー5が屋上からの攻撃により墜落》
《アタッカー4はカバーに回れ》
《アタッカー4、了解》
《ターゲットを破壊する!屋上を集中攻撃!!》
《了解!》
各機がその命令に呼応して、VTOLの左右の短翼の下に装備されている空対地ミサイルを僕に向かって発射する。しかし当然この建物はアゼルバイジャン側の建物であり、未だに大統領をはじめ多くの警察、軍人、官僚などが滞在している。その為、建物を壊すかも知れない強い兵器を使う事は無い。ミサイルに関しても威力が最も低い物を使う事は予想できていた。そしてそんな威力の弱いミサイルなど処理する事は容易である。
僕は、サザーランドをこの狭い屋上の中で動かしミサイルを回避する。回避しきれない物に関しては、アサルトライフルで迎撃する事で自身へのダメージを最小限にする。
《なっ!?躱された!》
《なんて奴だ!》
僕のサザーランドが行なった回避行動に相手側が驚愕した一瞬の隙を突いて、再びアサルトライフルを発砲する。
発射された弾丸は、空中を浮遊するVTOL一直線に向かう。そしてコックピットの窓を貫通しパイロットを貫く。そしてパイロット席の後ろに座っていた乗員すら貫いて機体に穴を開ける。当然パイロットを失った機体は、操縦されることが無くなりそのまま墜落する。
《アタッカー3が墜落》
《アタッカー4は背後に回り込め。アタッカー2は作戦を変更、南東方向へ移動し側面から攻撃せよ》
《アタッカー4、了解》
《アタッカー2、了解》
《アタッカー6は、高度を上げて上空から攻撃せよ》
《アタッカー6、了解…クソ!高度を下げろ!!!》
アタッカー6が高度を上げ始めた直後に、サザーランドの弾幕がアタッカー6を襲う。それを受けて慌てて高度を下げるアタッカー6。
VTOLのパイロット達の通信を僕も聴きながら未来視のギアスで彼等の動きを観測する。何処にVTOLが来るのかが見えているので弾を当てるのも造作もない。ミサイルやミニガンを交わすのだけは、凄く気を遣う。特にミニガン。この狭い屋上でミニガンの弾幕を躱し続けるのは、本当に骨が折れる。正直、屋上担当になったのを後悔している。
…いや。オルフェウスがして怪我でもしたら大変だから、僕が担当になってよかったのか…はぁ。
あっそこ。
《アタッカー4、被弾!》
《アタッカー4、屋上より高度を下げて退避せよ》
《アタッカー4、了解》
アタッカー4は、高度を下げて屋上の死角である低高度へ移動する。しかし突如してアタッカー4は爆散する。
《アタッカー4が墜落》
《なんだ!?》
《遅いぞレナ》
アタッカー4が屋上の死角に入った直後にアタッカー4が爆散し彼方側が驚愕している時に、僕のサザーランドのコックピットの上部モニターにはオルフェウスの顔が映し出されていた。画面越しに見てもイケメンだ。それよりもオルフェウス早くね?もう終わったの?
《こっちは終わった》
「早いね」
《建物の仕込みももうじき済むらしい》
「そう。ならこっちも終わらせようかな」
僕とオルフェウスがそんな会話をしている頃アゼルバイジャン側は、地上にいたオルフェウスの機体に気付く。
《もう1機居たのか!?》
《残り3機です》
《編隊を組み直す。アタッカー1が先頭する》
《アタッカー2、了解》
《アタッカー6、了解》
残り3機となったVTOLの強襲部隊は、編隊を組みなおし此方に挑もうとしてくる。しかしその直後––––––
《司令部より作戦中止!地上部隊が全滅!繰り返す!地上部隊が全滅した!直ちに作戦を中止し撤退せよ!!》
《…アタッカー、了解。全機作戦を中止、当空域を離脱せよ!殿はアタッカー1が担当する》
《…了解》
どうやら彼らの方は、地上部隊がオルフェウスによって全滅した事で作戦を中止させ撤退するようだ。ふむ、このまま撤退させてあげても良いけど、やはり今後の事を考えてインパクトは大事だよね。
–––––––ごめんね、逃さないよ。
撤退行動に入り此方から距離を取ろうとしている機体。まず一番離れている機体に向けてアサルトライフルを放つ。此方に背中を向けた状態では、回避するのは難しいだろう。当然のように射出された弾丸は、敵機体に当たる。その中の1発が噴進機に命中し機体を制御出来ずに墜落した。
《アタッカー2、墜落!》
《クソ!》
殿を務めている
《しまった!?》
そして指揮官機の上に飛び乗り、そこを起点にもう一度飛び上がる。跳び上がった先には、VTOL編隊の最後の1機が飛行してる。その最後の1機を右腕に装着されたスタントンファーを展開し叩き付けて撃墜した。更にハーケンに引っ掛かった指揮官機も踏み台にされた事で地上に墜落した。
結果、緊急時即応部隊は僕とオルフェウスによって全滅する事となった。
その直後に大統領府が凄まじい爆音を響かせ大爆発を起こし、崩壊していく。アゼルバイジャンは、事実上この瞬間に敗北した。そしてだめ押しとばかりにアゼルバイジャン全土に大統領府地下司令部に居るハリエル大統領の無条件降伏宣言と自決の映像が放映される。
瓦礫の山と化した大統領府の瓦礫の上には、レレーナの駆るサザーランドの威容が
「これで
–––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
緊急事態省
アゼルバイジャンの首都バクーにある緊急事態省。大統領府や議会、国防省などが機能不全に陥った為に臨時防衛司令部が設置された場所である。その省内の大会議室では、軍人や文官などが今後の事に関して話し合いをしている。
「緊急時即応部隊は全滅。大統領府は瓦礫の山と化しブリタニア側によって占拠され、議会も同様にブリタニアに占拠されている状況」
「ハリエル大統領は、無条件降伏を宣言し自決。駄目押しとばかりにブリタニア軍が南方より接近している」
「もはや勝ち目はあるまい」
「E.U.は主力部隊?」
「アルメニアの国境を超えた際にユーロブリタニアの聖ミカエル騎士団によってトルコ州を強襲され撤退した」
「…議会を占拠しているブリタニア側に降伏する旨を伝えなさい」
大会議室で行われている話し合いを纏めるのは、現状この場にいる最高位の初老の女性であった。彼女は、断腸の思いで降伏する事を正式にブリタニアへ伝える事を命じる。そしてこれからの祖国の行く末を案じずにはいられなかった。
次回『バトルオブブリテン』
4000人記念話『ルルーシュの受難』は、12月17日公開とさせて頂きます。
大変遅くなり申し訳ありません。
お気に入り登録者数が5000人を超えました!有り難うございます!!!
5000人記念話も書きたいと思っていますので宜しくお願いします!
コメント、評価、誤字報告有難う御座います!
今後とも宜しくお願いします!
■作中用語■
●ガゼル
・E.U.が開発した対地攻撃用
・乗員1名、乗客4名
・全長 :9.53m
・巡航速度:220km/h=M0.18
・航続距離:670km
元ネタ:フランス軍で運用している攻撃ヘリコプター
●屹立/きつりつ
・高く、大きく聳え立つ姿
・例)国境に屹立する山々