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皇歴2012年 Cの世界
そこは、夕暮れ時の様な陽の光がさす天空の神殿。この神殿は、人の心と記憶が集まる世界に存在する。V.V.たちはこの世界を"集合無意識""Cの世界"そして"神"と呼んでいる。
V.V.とその双子の弟シャルル・ジ・ブリタニア、その妻マリアンヌたちは、『神を殺す』計画の為にこの神殿の形をした『アーカーシャの剣』を長年掛けて開発したのだ。
その"アーカーシャの剣"に二人の影が延びる。
一人は、世界三大勢力の筆頭『神聖ブリタニア帝国』の第98代皇帝"シャルル・ジ・ブリタニア"。
身長190cm以上で恰幅が良く威厳のある顔、そして何より特徴的なのが白髪の
一人は、超常の力『ギアス』を研究し歴史の裏に隠れる秘密結社"ギアス嚮団"の嚮主を務めるV.V.。
皇帝シャルルの双子の兄にしてレレーナの伯父にあたる。しかしその姿は、未だに10代前半に見える。シャルルを皇帝にする為に数多の暗躍を行い、弟を守る為に人為らざるモノになる事を躊躇わなかった生粋のブラコン。
二人は、アーカーシャの剣の上で並んで佇んでいる。
「兄さん、宜しかったのですか。レレーナを嚮団から出して」
シャルルは、V.V.が自身と亡き妻マリアンヌとの子供を嚮団から出すと決めた事が不思議であった。
シャルルは、知っていた。
V.V.がマリアンヌを殺した事を、そしてレレーナを使ってギアスの研究を加速させようとしていた事を。V.V.は、マリアンヌ暗殺の事は何も知らないと嘘をついていた。嘘のない世界を作ろうと約束したにも拘らず。そうまでして何かを望んでいたのだろう。
だからこそ不思議であった。
V.V.がレレーナを嚮団から出そうとする事に、一体どんな思惑があるのかと。
「うん。僕は、レレーナを甘く見ていたみたい」
「…」
「これ以上レレーナを嚮団に置いておいたら、嚮団を乗っ取られかねない」
「それ程ですか!?」
シャルルは、V.V.のレレーナに対する評価の高さに驚く。V.V.は、ブリタニア皇族故か不老不死のコードユーザーであるが故か、他者に対して見下した様な見方をする事が多い。そんな兄がレレーナの事を評価している。
「僕がレレーナにあげたギアス『
「確か
「うん。僕も初めはそう思ってたし、レレーナ自身もそう思っていた節がある」
「でも本当は、レレーナが想像した力を発現させる力だった」
「!?」
シャルルは、レレーナのギアスの力を聞かされ驚愕する。ギアスの力は、本来一人につき一つであり能力はその人の本質や願いを表すと思われる。だからこそレレーナのギアスが異常である事がわかる。
シャルルは、過去を変えたいと願った。
C.C.は、他者に愛されたいと願った。
レレーナは、一体何を願ったのか、何を願ったら想像した力を発現する力を発現できるのか。
「…想像した力を発現するとは、どういったものなので」
「正確には、嚮団の子供達のギアス能力を使えたり全く知らない能力を使えたりとかかな」
「…」
「少なくともロロやクララ、オルフェウス、アリス、サンチア、ルクレティア、そしてシャルルとビスマルクのギアスも確認できているよ」
「!?」
まさか自身やビスマルクのギアスをコピーされているとは。
いつの間にどうやって自分達のギアスを知ったのかと言う思いを抱く。
さらに複数のギアスを使えると言う事実。複数のギアスを使えるという事は、あらゆる超常の力を使う事ができるという事。
それは、まさに––––––––––––––
「…全能」
「そう。神にも等しい力を持った怪物」
「兄さん、何故レレーナを本国に返す必要があるのです」
シャルルは、考える。確かにそれほどの力を持ったレレーナを嚮団へ置き続けるのは、危険だろう。しかしだからと言って帝国本国へ返しても本国で力を付けてしまっては、それはそれで危険である。一思いに嚮団で殺してしまった方が自分達の計画の為には、良いのではないか。むしろV.V.ならば適当な理由を付けて暗殺をし事後報告だけして来るのではないかとすら思える。
何故…。
「…」
言ってはいないが、V.V.自身実際にはレレーナを何度か暗殺しようとした事がある。しかしレレーナのギアスの前には、全てが無駄であった。
基本的にレレーナの使っている"未来を改変"する力は、不特定多数の未来を見て最も自分の為になるもしもの未来を選択出来る力でありそれは、未来を見る事が出来るのと同義なのである。
自分が死ぬ未来を見たらそれを回避する未来を選択し生き永らえ、ヤバい薬を盛られそうになればその薬を未来で壊し自分に盛られない様にして、さらに薬を盛ろうとした研究員を
「さっきも言ったけどこれ以上嚮団へ置いておけば嚮団そのものを奪われ僕達の計画も達成出来なくなる可能性が高い」
「…」
「そしてレレーナを暗殺しようにも未来を選択し改変できる能力の前では、あらゆる暗殺方法が無意味になる」
「兄さん自身であればレレーナのギアスであったとして未来を見る事も改変する事が出来ないのではないですか」
シャルルは、コードユーザーであるV.V.であればギアスが効かないのではないかと提案してみる。
実際にレレーナのギアスをもってしてもV.V.の未来を見る事は出来ない。
しかし–––––––––––––––
「確かにレレーナのギアスでも僕の未来を見る事は、出来ない。でもレレーナ自身の未来を見る事は、できる」
つまりいくら暗殺者であるV.V.の動きを察知出来なくても、自身が死ぬ未来を見る事が出来る。そして自身が殺される際に下手人の姿を見られればその人物に対して警戒を行い下手人を先に殺せばいい、見る事が出来なければ見れないギアスで見れない相手–––––コードユーザー–––––––を想定すれば良い。という事になって一度も暗殺は成功しなかった。
成功していればレレーナの帰国の話はないのだけれど。
「ならば遅効性の毒や致死率の高いウイルスを用いれば良いのでは?」
「レレーナの未来を見る力は、力の一端であって全てじゃない。レレーナの未来を改変する力は、複数の未来を見た上で自分にとって最も都合のいい未来を作り選択出来るもの」
「…」
「わかりにくいよね。簡単に言うと致死率の高い毒を盛られたとしても、何かしらの事象によって助かる未来とそのまま死んでしまう未来がある。
『右手でリンゴを掴み食べる未来』と『左手でリンゴを掴み食べる未来』の様に。
仮に右手に毒を塗られていれば『右手でリンゴを掴んで食べる未来』を選択した瞬間にTHE ENDとなる。しかし『左手でリンゴを掴んで食べる未来』を選択すれば毒を喰らう事はなく、その時はTHE ENDとなる事はない。これがレレーナの未来を見る力。
そして仮に毒を盛られて体を蝕まれたとしてもレレーナは、『毒の耐性を奇跡的に持っていて重体にならない』と言う未来を作り選択出来る」
「!?」
「レレーナを殺す事は、事実上不可能なんだ」
「な、何か弱点の様なものは、無いのですか?」
「分からない。正直僕じゃ手に負えない存在だよ」
シャルルは、思う。"兄さんの手に負えない"存在をどうやって自分は手懐ければいいのだと。
「でも心配しないでシャルル。レレーナは、扱いを間違えなければ大丈夫だよ」
レレーナが聞けば「僕は危険物か!」とツッコミを入れるであろうセリフをV.V.が口にする。
「扱いですか?」
「そう。今回嚮団を出る際に強請られてね、ギアスユーザーを二人引き抜かれる事になってね」
「ギアスユーザーが二人…」
レレーナ一人ですら受け入れに右往左往しそうになっているのに、他に二人もギアスユーザーがブリタニア本国へ。その上自身の住むペンドラゴン皇宮へ来ると言う事にシャルルは、らしくなく自身の顔が引き攣るのが分かった。
「一人は、自身の姿声を他人に誤認させるギアス。暗殺任務に向いている能力者だね」
「暗殺…」
シャルルは、自身がレレーナに好かれていないであろうと思っている。彼の母をみすみす暗殺された挙句、暗殺者であるV.V.に対して何も出来ないでいるのだ。その上彼の
そんなレレーナが暗殺技能を持った仲間と共に本国へ帰ってきた場合、間違い無く自分に対して暗殺者を差し向けて来るだろう。
ギアスユーザーの暗殺者など悪夢以外の何物でも無い。
「大丈夫だよ、シャルル。レレーナは、そんな短絡的な事をするような子じゃ無い」
「…」
「情けは味方、仇は敵也」
「?」
「レレーナが以前言っていた言葉なんだけど、あの子は恩を仇で返すような子じゃ無い」
「しかし…」
「だからこそ今回あの子が嚮団を去る際に二人のギアスユーザーを引き抜く代わりに、僕が指定した人間を10人暗殺してくれる事になった」
「10人暗殺ですか」
「うん」
「だからシャルル。レレーナの事宜しくね」
V.V.は、弟シャルルの方を見上げて楽しそうに笑う。
それを見てシャルルは思う、自分の兄は少し見ぬうちに変わったと。レレーナに関わって変わったのだと思った。レレーナに対して少し嫉妬した。自分の兄に対して影響を与える事が出来た事に。そして気付く。
マリアンヌを殺され嘘を吐かれ、兄に対して失望した。憎悪した。それでも自分は、兄を家族として大事に思っているのだと。
兄が楽しそうに笑っている。
これからレレーナが帰って来る。
シャルルは、密かに願う。自分が11人目の
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