皇歴2013年 革命暦224年 E.U.
レレーナが、E.U.総合工科大学へ編入して4日が経った。僅か11歳の子供が入学して来たことに、大学中が驚愕に包まれた。
何せこの大学史上最年少合格者であったからだ。ただ最年少合格という栄誉な称号は、レレーナの価値を上げるものであると同時に周りからの妬み嫉みの感情を向けられる事になった。
その為、大学でレレーナは、浮いた存在となり大学内での交友関係を広げるのに苦慮する事になった。
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「はぁ」
ふと、溜息が出る。大学へ編入して4日が経過したにも関わらず、未だに友人を作る事が出来ず交友関係が広がらないのだ。これでは、学生を使って政治家や官僚、そういった人物に接触できる人物に出会うという目的が果たせない。
そんな事を考えながら大学内の廊下を歩いている。大学での勉強は、そこまで難しくない。ブリタニアで学んだ事が大半である。ただ唯一違うのは、民主主義についてとそれに伴うブリタニア帝国についての事である。
E.U.でのブリタニア帝国は、すごい極悪国家として語られている。まず皇族や上級貴族が格下の貴族や平民を蔑み、中級貴族は平民を慰み者にし、下級貴族は平民を区別し、平民はナンバーズを見下して自分達の優位性を示している。こういった歪みが帝国を侵略国家へと誘っているのだと声高々に批判している。さらに帝国では、皇族などの後援貴族が軍需企業の役員であったり会長である場合が多く企業利益を求めて他国へ侵攻しているのだと書かれている。帝国臣民の皇族・貴族への不満を外へ逸らしてさらに企業利益を貴族が求めて侵略戦争をしているのだと教科書に書かれている。これを読めばブリタニア帝国は、ひどい国だと思う。尤も皇帝以外は、そういった考えがあるだろうから否定出来なくて苦笑いするしかなかった。
本当に酷い国だよブリタニアという国は。
「さてさて本当にどうしようか」
E.U.の上層部に繋がりを持つには、それ相応の身分の子供が必要なのだ。しかし相応の身分の子供と会う事も難しい、接触出来なければギアスも掛けられない。何処の国でも身分ある人間と言うのは、勿体ぶる事が好きなようだ。
これからの予定を考えながら歩いていると廊下の角を曲がった際に誰かにぶつかった。そしてそのまま後ろに倒れそうになった時に誰かに腕を掴まれ倒れずに済んだ。
「えっと、有難うございます」
僕の腕を掴んだ人は、青い瞳に青い髪で後ろで三つ編みをしたイケメン。顔を見た時に「あっ」と声が漏れた。
日向アキト。
『コードギアス亡国のアキト』の主人公でヨーロッパ生まれヨーロッパ育ちの日本人(人種的な意味)である。彼の一族は、ギアスに関わりのある一族であり、兄である日向シンは髑髏と契約する事でギアスを得て一族を皆殺しにしてしまう。本来であればアキトも死ぬ筈であったが、何故か生き残ってしまったと言う設定だったか。
アキトの能力は、高く優れた戦況判断能力と身体能力でKMFを携帯用対物火器で倒してしまうほどであり、KMFの操作技術に至っては特殊な状態とは言え、四大騎士団のエース級やアシュレイから「化物」「死神」と呼ばれるほどである。彼を味方に引き込めれば非常に強力な戦力となるだろう。
「すみません。考え事をしていて確り確認をしていませんでした」
取り敢えずぶつかってしまった事を謝罪する。
「いや、此方も気付かなかった。すまない」
アキトは、そう言うと僕に頭を下げて謝罪して来た。そして僕が怪我をしてないか確認してくれた。
どう見てもまだ子供だけど、確かアキトは、皇歴2017年の段階で17歳だから今は、13歳という事になる。だけど対面しているアキトの様子は、大人びていてクールな感じがする。
なんか少女漫画みたいな出会いだな、これ。
「いえ、本当に此方こそすみませんでした。僕"レレーナ・ランペルージ"と言います。後々何かあれば連絡して下さい」
「日向アキト。分かった、じゃぁ」
「っ!?」
僕が頭の中でアキトの評価とこれから彼をどうするかで悩んでいると、彼は早々にここを去ろうとしてしまい焦って彼の腕を掴んでしまった。
正直アキトに会えた事で僕は、少し興奮していた。色々言われているが僕自身『亡国のアキト』は、結構好きでアキトとレイラを推していた。イケメンと美女、メシウマだったなぁ。
おっといけない、これは人によるんだった。
「…何」
「…いや、ちょっとお茶でもしない?」
なんで僕は、初対面の人間をお茶に誘ってるんだ…。これじゃ、ナンパじゃん。ダメだ、思った以上に僕は、アキトに会えて冷静さを欠いてる!
落ち着け!レレーナ・ヴィ・ブリタニア!アキトの僕への印象を良くしておかないと!!!
「…その歳でナンパか?」
「ちがっ!?」
「すまない。俺は、そっちの毛色はないんだ」
「僕も無いよ!!!」
誤解だ!
クソ、不味いぞ!これじゃ第一印象酷いだろ!どうする!?
「ふっ、冗談だ」
なん…だと…。
無表情で鼻で笑われた。
僕は、アキトに遊ばれたのか…。コイツ、焦る僕を見て楽しんでいやがったな!
「お茶しに行くのか?」
「…うむ」
「うむって、揶揄って悪かった。だから機嫌を直せ」
クソ!こんな子供でイケメンだから微笑む姿すら様になってやがる!気が立って口が悪くなったね。フゥ、落ち着こう。
と言うよりもアキトってこの段階で、こんな性格なの?
レイラ達と出会ってから性格が明るくなった訳じゃないのか、どうなってるの?
「お詫びにお茶を、奢るよ」
「自分の分くらい出すよ」
「子供なんだから無理するな」
「君もでしょ!」
「お前よりは、年上だ」
「ぐぬぬ…」
このイケメン、ルル兄様やオルフェウスとは、また違うイケメンだ。真顔でツッコみどころのある様なない様な事を言いやがる。
全く仕方ないから奢られる事は、納得しよう。しかしアキトのこの性格は、どうなっているんだろう。それにこのアキトをどうやって此方側に引き込むかと考えながら、アキトと大学の中にあるカフェへと向かう。
「それで、どうして俺を誘った?」
「迷惑だった?」
「いや。だが不思議には、思っている」
そう言ってアキトは、視線を周辺へ動かす。それを見て気付いた。ここは、E.U.の大学であるから西欧人が多い。しかしアキトは、日本人であり黄色人種であるので正直目立つ。しかもアキトは、名前から日本人である事が分かっている。そして現在日本人は、ブリタニア帝国によって祖国を占領されイレブンと呼ばれている。
E.U.でも何故か日本人は、敵性国民とされ既に差別の対象にされている。意味が分からないが、大方E.U.の国民の憂さ晴らしの為の生け贄なのだろう。そして今アキトは、周辺の人間に嫌な目を向けられている。
僕も見た目は、E.U.の人間と同じで白人系だからそっちと同じに思われているのかも––––––––––
「ぶつかったお詫びとボッチ卒業かな」
「ボッチ?」
「僕、ブリタニアから来た上にこの年齢だから誰からも相手にされないんだよ」
「ブリタニア?」
「そう、お家争いでこっちに送られたんだ」
嘘は、言ってないぞ。皇位継承権争いで後援貴族のいない僕が力を持つには、自分で力を付けなければいけない。その為に機密情報局へ送られたのは事実だ。それで任務でE.U.へ派遣されたんだから。
「貴族だったのか」
「貴族じゃないね。貴族じゃないけど偉い人の息子だよ」
「…そうか」
そんな話をしていたらカフェに着いた。窓側の席に向かい合う形で座りメニューを注文する。
「それでボッチのレレーナは、一体こんなイレブンに何の用だ?」
「ボッチ言うな!」
人が気にしている事を…自分で自虐として言うなら兎も角他人に言われると心穏やかじゃないぞ!
全く、無表情で目だけ楽しんでやがる。アキトってこんな性格だったのかなぁ。確かにレイラを揶揄って楽しんでいた事もあったかも知れないけどなぁ。
「ふぅ、あと僕がブリタニア人だからってイレブンなんて言わなくて良いよ」
「いや、イレブンでいい。E.U.で生まれて育ったが、E.U.人ではない。そして日本人とも言えない。何者でもないんだ俺たちは」
法律的には、彼らはE.U.の人間だろう。民族的には、所謂日本人なのだろう。ハーフとかダブルとか言われる混血の人達にも当てはまる事もあるだろうけど、日本人であって日本人でない、E.U.人であってE.U.人でないそんな中途半端さが本人と周りに壁を作り、本人の帰属意識を曖昧にしてしまう事もある。自分が何者なのか分からなくなっているのだろう。
ただ話的に重いよ…。そもそも子供に話す内容じゃないだろう、それ。
「この大学に来ているんだから分かるだろ」
「心を読むな」
なんで機情の諜報員の僕が、子供に心を読まれているんだ。ダメじゃん!
「目は口ほどに物を言うというやつだ」
「日本の諺だね」
本当に気が緩んでるな。ちゃんと引き締めないと、此処は敵国、下手したら死ぬ。
それからアキト、日本の諺を使ってる時点で日本人だと思うよ。
「これくらいの諺は、誰でも知っているだろ。お前だって知っているじゃないか」
「僕は、日本が好きだからね。それから「お前」じゃなくてレレーナ・ランペルージだよ。親しみを込めてレナと呼んでくれ」
「レナか、ブリタニア人なのに日本好きとは、変な奴だな」
「ブリタニアの国是は、差別ではなく弱肉強食だよ。日本だからどうのって言うのは、国是を曲解している奴だけだよ」
実際個人の技量に関わらずブリタニア人だからと言って自分まで日本人よりも優秀だと言う輩は、多い。しかし日本人の中にも優秀な人間は、多い。そもそも人種や国籍に関わらず優秀な人は多いんだ、小さい事で国益を損なう事は無いだろうに。
自信を持って言える、有能人間は人種や民族に関係なく登用すべきであると!!!
「本当に変わった奴だなレナは」
そんな感心した目で見られると照れるなぁ。
「感心した目は、向けてないぞ」
コイツ…。
「まぁ、これから友達としてよろしく」
僕って分かりやすいのかなぁ?でもそれだと諜報活動とか無理じゃね?どうすんだよ、これ––––––––いやアキトが異常に他人の心を読むことが出来るんだろう。そう言う事にしておこう。
そんな事を考えながらアキトに向けて手を出し握手を求める。
「今日会って友達か?」
「何事も"始めまして"があってその先があるんだよ。いつ会ったかは、友達になるのに関係ないよ」
「…そう言うものか」
アキトが一瞬周囲を見た。僕やアキトを「子供の癖に」や「生意気だ」とか「イレブンが」などと陰口を言って妬み嫉みの視線を送ってくる。正直いい気はしない。
そしてそれを見たアキトを見て何と無く分かった気がした。僕もアキトも此処に居場所が無いんだと。努力しても認めて貰えず差別され余計に嫌われる。心が少しずつ蝕まれていく感じである。人の悪感情に長く晒されると心が荒むんだよ。だからそんな無表情になるんだ…。
僕もブリタニアのペンドラゴン皇宮で皇族や貴族達と過ごしていた時は、あいつらの陰湿な嫌がらせや陰口で殺したくなる事が結構あった。
アキトは、ただでさえ一族が皆殺しになっていて精神状態が良好とは言えない上に、こうやって差別に晒されてきたなら心を閉ざすのも分からなくない。
「仲良くしよね!アキトくん」
「アキトでいい」
フッとアキトが笑い、僕の手を握り返してくれた。うん、やっぱりこの歳でもアキトは、イケメンだ。アキトと友達付き合い出来るのは、楽しみだ–––––––––
次回
『諜報活動始めました』
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