皇歴2013年 革命暦224年 E.U.総合工科大学
アキトと友達になって数週間。今僕は、大学内にある8畳程の教室にいる。その教室の入り口から右手奥の壁側に机があり机の前の壁にモニターが数台掛けられており、そのモニターに株価やE.U.内の政治・経済・軍事ニュース、ブリタニア帝国のニュース、ユーロブリタニアのニュースなどが映っている。僕は、その机の前に座りPCとモニターを比べながら今後の計画を立てていた。
この教室は、元々ある教授のゼミ用の教室だったが教授は今部屋の隅で黙って自分の仕事をしている。その両目は、薄っすらと赤く光っているから僕の邪魔になる事は、ない。
2日前に僕とオルフェウスが拠点にしていた場所がE.U.の"国内治安総局"と"対外情報総局"と呼ばれる情報機関に家宅捜索を受けた。しかも一箇所だけでなく、複数のダミーの拠点も押さえられたのだ。
具体的には、7つあった拠点の内6つが押さえられた。正直言ってかなり焦ってしまった。何せその6つの拠点は、其々本国の機密情報局、帝国国防省国防情報局、ユーロブリタニア参謀情報部に伝えていた拠点なのだ。そして残った1つの拠点がオルフェウスと二人だけの拠点だった。
情報局や情報部に報告していた拠点が全て制圧されたのが偶然かそれとも誰かが意図的に情報を漏らしたのか分からないが、少なくとも用心に越したことはないと少し調べてみたら、案の定情報のリークがあったようだ。
ユーロブリタニア参謀情報部から対外情報総局へ情報が送られ、其処から国内治安総局へ情報提供が行われたらしい。
ただ今回のリークに機密情報局が関与していることは、ほぼ確定している。
如何にE.U.の情報部が優秀であろうと皇帝直属諜報機関にスパイを入れるのは、不可能であろう事は明白だ。当然、本国と対立構造を持つユーロブリタニア系の人間も機情局に殆ど配置されていない。それこそ僕と同じ前線勤務の者ぐらいだろう。しかし機情局の情報が流出した事は、間違いない。
となると考えられるのは、
1それぞれの情報機関からE.U.へ情報が流れた
2機密情報局内にスパイがいて国防情報局と参謀情報部の情報にアクセスして情報を流した
3国防情報局内にスパイがいて参謀情報部へ情報がリークされてそれがE.U.へ流した
4参謀情報部内にスパイがいてそれぞれの情報を不正に取得しE.U.へリークした
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などの色々な可能性があるが、一番可能性があるのは機情局内にいるスパイが参謀情報部を通してE.U.へ情報をリークしていた線だ。ただしスパイは、E.U.のスパイではなくブリタニア本国のスパイだろう。
正確に言うなら反ヴィ家の皇族・貴族だろうと。僕の情報をリークする所はそこぐらいしか無いと思う。実際如何に皇帝直轄であろうと、そういった皇族や貴族の皇位継承争いに無関係でいられる者は少ない。機情局の幹部の中にも他の皇族の後援をしている貴族が存在する。当然そうなると皇族・貴族達からしてみたら皇位継承権を持つ後ろ盾のない僕は、サクッと暗殺出来る程度の存在だろう。そういった貴族が皇族の意思か皇族への忖度かで僕の情報を売ったのだろう。僕をE.U.に始末させる為に…。
そう考えると物凄く不愉快だ。
背中から刺されたような感じ、裏切られた気分だ。まぁ実際どうかは、まだ分からないが何かしらの事があったのだろう。だから此方も何か対応をしないといけないだろう。
だけど今は、まだ何もできない。こんな屈辱を味合わせられて何も出来ない事が歯痒いが、今は暗殺任務とキャリア形成の為にこの任務を遂行しなければいけない。
だけど情報をリークしたクソヤローは、いつか必ず見つけ出して地獄へ落としてやろう–––––––––––––––––
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皇歴2013年 ウズベキスタン共和国カシュカダリヤ州カルシ カルシ・ハナバード空軍基地
日も沈み辺りが真っ暗となり目視では、数m先も見通す事は出来ない。そんな暗闇の中を二つの陰が動く。
「やっとここまで来れた」
「流石に時間が掛かったな」
僕とオルフェウスは、ウズベキスタン カシュカダリヤ州にあるウズベキスタン共和国軍の空軍基地に潜入している。
何故ならこの基地に僕がV.V.から出された指令の暗殺対象が、来る事が分かったからだ。暗殺任務は、好きではないがこれも致し方ない。
「ターゲットは、何処だろう?」
「基地司令部庁舎3階西側の角部屋らしい」
「今回も簡単かな」
「帝国貴族逹よりかは、難しいだろ」
数年前にボワルセル士官学校在籍中に暗殺したブリタニアの貴族は、愛人関係のメイドにギアスを掛けて毒物を飲み物に盛り毒殺した。別の貴族院議員を暗殺する際には、議員と対立していた議員の秘書にギアスを掛けて両議員諸共自爆させた事もあった。用心深く欲深い軍人を暗殺する時は、車の運転手にギアスを掛けて谷底へ車ごと落ちて貰う等して徹底的に自分が表向き関わらない形で暗殺を実行していった。
「ターゲットと繋がりのある人物を探すのは大変だね」
「直接やるか?」
「しょうがないね。関係ない人間に一々ギアスを掛けても無駄だしね」
そんな事を言いながら基地司令部庁舎の見取り図を見て侵入ルート決める。
「僕は、変装して正面から行くよ。警備室を抑えて監視カメラを無効化したらオルフェウスには、ターゲットに化けて貰って時間を稼いでもらうでいい?」
「構わない、時間は?」
「5分」
「了解」
僕が言った時間にオルフェウスが応答する。なんかスパイみたいでカッコイイ!
スパイは、僕なんだけど。
まぁ今回も簡単に片付くでしょ–––––––––––––––––と思っていた時期が僕にもありました。
現在僕は、オルフェウスと一緒に基地内の廊下を走っている。背後から機関銃を撃ってくる兵士に追い掛けられながら。
「なんでこんな事になるの!?」
僕は、叫ぶ!そして走る!背後から近づいて来る敵兵から逃げる為に!
「レナが遺体を目撃されるのが早過ぎたんだ!」
「いやぁ、遺体を隠すのに時間が掛かっちゃって!」
「全く!油断するなよレナ!」
「ハーイ!左の角から7秒後に3人!」
「了解!」
僕は、オルフェウスと話しながら全力で走る。その際にギアスで先を見て敵がどこから出て来るか見て、オルフェウスと対処しながら脱出を目指す。しかし集中してギアスを使えないので、未来を見る事ぐらいしか出来ないのが惜しい。
「折角ターゲットをスムーズに始末したのに」
「仕方ないだろ。次失敗しない様にしよう」
「うん。次の角を曲がった先に6人!」
「手榴弾だな」
そういってオルフェウスは、手榴弾を僕に渡す。受け取ったそれをピンを抜いた状態にし角に目掛けて投げる。手榴弾は、壁に当たり角を曲がった先に弾かれ転がっていき敵兵の足元に辿り着く。
「手榴弾!?」
「退避!!!」
角の先でそう言った叫び声が響く。その直後、角の先で大きな爆発音と黒い煙、火薬の匂い、焦げ臭い匂いが周囲に広がった。僕たちは、その角を通り過ぎ倉庫に辿り着いた。倉庫の扉を閉めて鍵を掛ける。
倉庫の中には、見覚えのある兵器が鎮座していた。
「なんだこれ?」
オルフェウスが鎮座している兵器を見て首を傾げる。イケメンだ。
違う!そんな場合じゃ無い。
鎮座している兵器は、戦車の車両部分に胴体が乗せられ両腕が大砲になっている一人乗り用の新型機動兵器の試作先行機『パンツァー』である。これは、E.U.が対ブリタニア戦におけるグラスゴー対策として開発している兵器で所謂KMF擬きだ。
コイツの情報は、僕も持っている。E.U.の情報機関に拠点を抑えられた際に情報収拾をし、その中にコイツの情報が入っていたのだ。
恐らく今後E.U.の主力になるであろう『パンツァフルメン』の旧型と言った所だろう。ちょっと形が似ているし…。
「パンツァーだね。E.U.の次期主力兵器だよ」
「これでKMFに対抗しようと考えているのかE.U.は!?」
「そうだよ」
「品位を疑うなコイツは」
兵器に品位もへったくれもないでしょ。まぁ確かにKMFの方が遥かにかっこいいけど!
いつか僕らもKMFの専用機を貰える様に頑張るけど!今はこのダサいKMF擬きでこの状態を脱しないといけないんだからね!
「まぁ、コイツでどうにかするか」
「そうだよ、オルフェウス」
そう言ってオルフェウスとそれぞれパンツァーに乗り込み起動する。正直初めて乗る機体なので操作が心配だがなんか感覚的に出来るだろうと思った。操作方法は、一応パンツァーのデータを手に入れた時に見て覚えた上に今も敵が入って来る前に操作方法をいろいろ試している。
オルフェウスも今の内に操作を完璧にするつもりだろう。マニュアルすら見ずに動かし始めているのだから流石オルフェウスだ。
と言う事でオルフェウスも大丈夫だろう。
さてさっさと終わらしてE.U.へ戻りたいね–––––––––。
次回
『諜報活動始めました-後編』
やっぱ頭脳戦見たいのを描くのって難しいですね…。
感想、評価、誤字報告して下さった方々有難うございます!
今後とも宜しくお願いします!
<E.U.組織>
●対外情報総局
・国内外で他国及びテロリストの工作諜報活動を妨害し、また他国及びテロリストへ工作諜報活動を行う
・国防省の直轄組織
※フランスの対外治安総局をモチーフにした本作オリジナルです
●国内治安総局
・国内での広域捜査や防諜活動を主任務とする
・内務省の外局
※フランスの国内治安総局をモチーフにした本作オリジナルです
<ブリタニア帝国組織>
●帝国国防省
・ブリタニア帝国の陸海空軍を傘下に収め、陸海空軍の各省の統括組織
※米国国防総省をモチーフにした本作オリジナル
●国防情報局(DIA)
・帝国国防省の諜報機関で主に軍事情報を専門に収拾、調整する機関
・国防情報局長官は、バスクチャ宮にある軍統合本部の偵察作戦支援を担当する幕僚である
・帝国国防省の内局