黒揚羽   作:松田駅

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よろしくお願い申し上げます。


1、黒石晴希

現実は小説よりも奇なりみたいなことを良く聞く。

うんこに顔からダイブし、窒息死したり、おっさんに筋肉バスターをくらい、挙句にうんこにダイブしたり。

ともかく、俺が言いたいことはただ一つ黒揚羽は一匹残らず乱獲だ。

ふざけるなと言いたい。

俺は本来なら来月から大学生だったのだ。

必死に友人と入試対策をし朝昼晩地獄の日々を乗り越え、やっっと大学生になっていた筈なのに、高校生に逆戻りである。

しかも、JKだ。笑い話にもならない。

きっと俺の目は死んでいることだろう。友人にも「お前目隠したら?」と言われたくらいだ。母さんと父さんは「貴女はやっぱり女の子の方が似合ってる」

と、壊れた人形みたいに連呼していた。

 

気楽なもんだな、と思ったりもしたがまあ、死んでもないし息子が娘になったのだからこういう反応なのもしょうがないと思う。

ただ父、てめーは露骨に態度豹変させたから許さぬ。

 

とまあ、長々と話したが結局の所、女になって高校生に戻り、能力を身に付けただけだ。

そして俺の能力と言うのが、ワープ能力である。

 

ワープホールを出現させ、あらゆる物体、物質、現象等を指定した場所に移動させることがある。

例えば、現在進行形で居眠り運転しているおっさんのトラックが俺に突っ込んで来ているが、俺の意識とは関係なく目の前に穴、つまりはワップホールが瞬時に出現しトラックを吸い込む。

 

なので俺は事故に遭うことも、風邪をひくこともなく日々を過ごすのだ。

 

つまりは、今から行く場所にはこんな奴らが居るわけだ。

ちなみに能力にはランクがあり、俺はAランクだ。

高いは高いがめちゃくちゃ高い訳ではない。

あれだ、勉強出来るけど、天才ではない。

 

話は変わるが、友人は茄子が嫌いな癖して肉は大好きというワガママ野朗なのだ。

好き嫌いはしょうがない、誰にでもあることだ、しょうがない。

だが、鼻をほじりながら「茄子はないっすわぁ晴希さぁん。何年付き合ってるんだ? まじ勘弁だわあ」とソファに寝そべりながらこっちに屁をしてきた行為については当然許さないし、鼻フックした上でワープホールに投げ込むのはこれもまたしょうがないことだと思う。

ちなみにワープ先は俺の実家の物置だ。

 

せいぜい暗闇に怯えるといい。

10分くらいしたら自動的に元いたソファーに戻る設定にしているから安心だ。

 

違う、献立の話だ。

友人の話しではない、誰得だ。

俺しか得していない。

やはり、麻婆茄子と適当なサラダとほうれん草の味噌汁にしよう。

と、考えながら無駄に豪華な校門を通りすぎ、そのまま昇降口に向かう。

 

その辺で笑い声や話し声が聞こえてくるが俺は無表情で上履きに履き替えて教室に向かった。

 

 

教室に入ると、クラスメイト(仮)達が机に座ったりなんなりしながらゲラゲラ笑いながら駄弁っていた。

 

 

「おー、黒石おはよー。ちょっと見てくれよ! キャベツ丸当たったんだよ! やばくね?」

 

「おう。というかキャベツ丸ってなに? それ絶対強くないよね? 」

 

 

たった今、挨拶兼自慢してきたこいつは火田翔子という奴だ。

茶髪で目付きが非常に悪いが決して悪い奴ではないし、反応が薄い俺にも気さくに接してくれる。

 

だが、たまになんか闇を見せることがある。弟の話しになると豹変するのだ。

3時間4時間は当たり前で、もう永遠と話し続ける。

というかキャベツ丸ってなんだよ。なんでキャベツにおっさんのリアルの顔描写されてんだ。気持ち悪いし、嬉しくねーよ。

 

俺は火田と少し話した後、自分の机に向かう。

 

 

「フゥゥゥ〜。なあ、黒石、人生ってなんなんだろうな?」

 

知りません。そこまで至っていません。

 

隣の見た目が中学生並みに幼い人がタバコを吸いながら涙を流し、俺に話しかけてきた。

あー、いつものやつか、今回はなんだ? と、内心ため息を吐く。

 

「せっかく….せっかく息子と話せるようにっ! 一緒に風呂とか釣りとか親子らしいことが出来るようになったのにさあ…。こんなのってないじゃないかあ」

 

 

そして最後に号泣である。

もうタバコを握り潰して号泣である。

最初は周りのやつらもびっくりして駆け寄ってきたりしたが、最近はもう無反応である。

 

わんわん泣いているこの人の背中をさすりながらタバコの残骸をワープホールに突っ込む。

 

 

「もう、めっちゃ気まずいよ。息子高校生だよ。俺も高校生だよ。訳わかんないよ。会社も辞めたし、なあ、分かるか? 息子に肩車された時の気持ちが、コンビニでビール買う時に年齢確認された時の気持ちが! 絶対許さないからなあ糞野郎がっ!!」

 

 

タバコ以外に酒の臭いもするし、この人来る前に酔うほど飲んでるな。

 

涙が止まらないクラスメイトの背中をさすりながら、俺は「そうですね、辛いですね」としか言えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

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