ハリー・ポッターと透明の探求者   作:四季春茶

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真実薬(ベリタセラム)は偽らない

 反応に困るというのは、まさしくこの事に違いない。

 

 かつては無愛想だ無表情だと言われた時代もあったが、今は最低限の対人スキル程度なら習得出来ていると思っていたけど、どうやら何らかの不備があったらしい。……実は少し凹んでいる。

 私としては、普通に挨拶しただけのつもりだったのだが。何が不味かったのか。廊下でルーナを見掛けたから声を掛けた事までは普通だった。ただ、ルーナと一緒にいたグリフィンドール生のお友達──赤毛の感じとかを見るに、恐らくウィーズリー少年の妹さんだと思われる子のリアクションが普通じゃなかった。

 

「……えぇと。私、何かしましたか?」

 

 私と目が合うや否や彼女はぴゃっと飛び上がり、そのまま顔を真っ赤にして走り去ってしまった。私は呆気に取られつつ少女の後ろ姿を見送っていたが、我に返って若干助けを求める様にルーナの方を見た。ルーナはというと友人が去った方向を眺めつつ、何て事もない様に言ってのけた。

 

「メグはハリー・ポッターと似ているから、ジニーも恥ずかしくなったんじゃないかな」

 

「え、えぇ?似てる?私が?かの有名なミスター・ポッターと??髪と瞳の色以外、共通点すら無いと思いますよ……?」

 

「髪よりも瞳がね、凄くそっくりなの」

 

「……似てますかね?それを言い出したら黒髪緑瞳のイギリス人はみんな兄弟姉妹って事になりそうな気もしますけど」

 

 それに、瞳が似ている(らしい)他人であれだけのリアクションを露呈するって、それはもう本人を前になんてしたら気絶でもするのではなかろうか。まして、さっきのジニーなる子の所属はグリフィンドール。ポッター少年と同寮の直下の後輩とあらば、グリフィンドールとの合同授業が無いレイブンクローの私よりも遥かに接点が生じると思われるが。大丈夫なのだろうか。

 まぁでも。出会い頭の初対面で嫌われるよりはまだ良いかもしれない。私の事を相手がどう思おうが構わないし、知った事でもないが、一般的に第一印象が悪いというのは余りよろしくない。

 それにしてもポッター少年と似ていると言われたのは初めてだ。良いとか悪いとかじゃなくて、予想外過ぎてどう反応して良いか分からない。そもそも、似ている実感が皆無だ。

 

(そういえば、前に知人の方と私が似ているって、ミスター・ポッターに訊かれた事ありましたね……その絡み辺り、ですかねぇ)

 

 その知人が彼の親戚なのか、親しい方なのかまでは知らないが、もしも親戚だったならば私も……という事になるのだろうか。仮にそうだった場合、何親等に相当するのかはさておき、否応なしに私の実の両親の存在にも行き着いてしまう訳で。

 両親、と言葉には出さずに口内で転がした。……どうでもいい。興味無い。今も昔も、これからも。でも彼らは──私を捨てた。

 

「メグ、大丈夫?」

 

「え?あぁ、大丈夫です。ちょっと思考の海へと沈んでいました。……きっとラックスパートが飛んでいたんですね」

 

 軽く首を傾げながら私の顔を覗き込んだルーナに、私は慌てて笑顔を浮かべ、ボーッとしていたのだと、そう返答した。無縁の他人に感傷を抱くなんて、私らしくもない。

 血の繋がりの有無なんて、些細な事。「両親」など私の人生には必要が無かった、それだけの事。それ以上もそれ以下も無いのだ。

 

 

 ハロウィンが近付くにつれて、パーティーの話題がちらほらと増えてくるのは去年と変わらない。けれども、今年は去年以上に盛り上がっている様子だった。

 

「ねぇ知ってる?今年のハロウィンパーティーに『骸骨舞踏団』が来るんだって!」

 

 興奮覚めやらぬといった面持ちで話すサリーに、驚嘆の声がちらほらと上がる。何の話なのかピンと来ない私にアミーが解説してくれた。

 

「骸骨舞踏団っていうのはね、魔法界でかなり歴史ある音楽団なのよ!黒死病の流行とかはマグルの史実でもあったと思うんだけど、その時に景気付けの為に魔法使い達が始めたのが元になっているとされているわね」

 

「へぇ……。あ、もしかしてリストの『死の舞踏』とかと同じ起源だったりします?」

 

「そう!その系統のマグルの芸術作品は、彼らがモデルになっているのも結構あるらしいって言われているわよ!」

 

「なにそれ超見たい!」

 

 それは凄い。リストの「死の舞踏」なら私もブラスバンドの交流会で演奏した事がある。当時は交流会の演奏メンバーに抜擢された事よりも、そのお祝いで自分のホルンを買って貰える事になった事の方が嬉しかった記憶がある。それはもう自分でも笑ってしまう程の舞い上がりっぷりを披露しながら、材質やらマウスピースやらに拘りまくってマイホルンをカスタマイズしていた。肝心の楽曲の印象はというと、実は先生の趣味ってよく分からんと思っていた以外あんまり覚えていないのは内緒だ。だが、それもこうやって巡りに巡ってくるとなると、改めて興味深いと感じるのだから面白い。

 そう思ってワクワクしていた私に、サリーが困った様な笑顔を浮かべながら残酷な現実を突き付けた。

 

「でもメグ……ハロウィンの日は魔法薬の試験を受けに行くって言ってなかったっけ?」

 

「!!!そうでした、試験日……あああ……」

 

 その事実を思い出してガックリとしょぼくれた私の肩を、ドンマイと言いながらアミーとサリーが両側から叩く。好きな事の為の外部受験自体は全然構わないのだが、流石に骸骨舞踏団の話を聞いた直後では何というタイミングの悪さだと嘆きたくもなる。

 

「大丈夫、骸骨舞踏団なら見れるチャンスがまたあるわよ!それよりも、あたし達レイブンクロー生なら試験と付く物は如何なる時も一世一代の大勝負、でしょ?」

 

「試験帰りでヘトヘトになった頭に糖分補給出来る様に、ハロウィンのご馳走とお菓子を用意しておくね!何か希望ある?」

 

「……それなら、飛びっ切り特大のカボチャパイを所望します!」

 

 若干やけっぱち気味にパイを要求した私に、アミーとサリーは顔を見合わせるとにっこり満面の笑顔で答えた。

 

「任せて!一番大きいのを確保するわね!」

 

 

 

 1992年10月31日

 

 そんなこんなで迎えたハロウィンもとい試験日当日。レイブンクローの友人達に見送られながら、私は試験会場へと出発した。

 

 試験会場に移動が可能になる時間や点呼が始まる時間との兼ね合いで授業一つを欠席せざるを得なかったものの、幸運にも休むのは闇の魔術に対する防衛術だったから、何の心置きもなく欠席届けを提出してきた。ここまで心が痛まない欠席も多分無いと思われる。

 本来なら今回の試験への付き添いは寮監のフリットウィック先生か、受験手続きをしたスネイプ先生が妥当なのだが、ハロウィンパーティーで各寮が慌ただしいタイミングではどうしても抜ける訳にはいかないという事で、今回の付き添いはマグル学のチャリティ・バーベッジ先生が担当して下さる運びとなった。

 

 二年生の私では縁が無いと言っても差し支えないマグル学のバーベッジ先生は、言うまでもなく直接お話するのも初めての方だ。若干どぎまぎしながら「よろしくお願いします」と挨拶する私に、バーベッジ先生は気さくな雰囲気で応じた。

 

「こちらこそ今日はよろしく、ミス・ノリス。さて、早速移動……と言いたい所だけど、まずは会場に入る前に昼食を済ませてしまいましょう。いつもよりは少し早いと思うけれど、このタイミングを逃したら試験終わるまで食事抜きになってしまうわ」

 

「は、はい」

 

「さてと……場所的に一番最寄りにあるのはマグルのカフェになるのね。仕方ない、お店にいる間はローブを預かっても良いかしら?制服だけならともかく、ローブは悪目立ちしちゃうのよ」

 

 流石はマグル学の先生。その辺りはしっかりしていらっしゃる。私も二つ返事でローブを預けると、とりあえず適当なパブリックスクールに通うマグルの学生に見えるかどうか一通りチェックした。……うん。これなら大丈夫そうだ。レイブンクローのネクタイカラーがマグルの制服でも汎用されている紺色に近いのもあって、街中に溶け込める見た目になっている。バーベッジ先生もパンツスタイルとセーターというマグル側から見て極一般的かつ常識的な格好なので、同じく綺麗に溶け込んでいた。

 それにしても、まさか休暇中以外でマグルの市中のカフェで食事する事になるとは。モーニングなのかランチなのか微妙な時間帯故にシンプルな卵サンドとカプチーノというチョイスの昼食を味わいながら、私は魔法界特有の奇抜なギミックも何も無い普通のありがたみを改めて実感する。

 

 軽めの昼食タイムは普段の大広間の喧騒を思うと静かで、けれでも和やかな雰囲気だった。

 バーベッジ先生は私の緊張を解そうと色々と話し掛けてくれる。何というか、完全に私の中で先生のイメージが気の良い民俗学者さんという感じに固まった。何よりマグルの常識がある程度通用するっていうのは、実家の安心感に通じるものがあって落ち着く。

 

 

(いよいよ試験が始まります……!)

 

 お腹を満たしつつ、ある程度リラックスした所で遂に試験会場入りとなった。バーベッジ先生からローブを返して貰う際に、頑張ってという言葉と共にキャンディを渡された。会場内で食べられるかは分からないが、先生の心遣いがとても嬉しい。

 試験の流れは、筆記試験と実技試験、面接の三種類だ。大会場で筆記を行った後にそのまま実技を行い、そこから面接……となる。聞いた所によると、どうやら面接は直前の実技の完成度が合格ラインを満たした者のみ進む事が出来て、最後に筆記の点数と併せて合否判定されるという。

 

 つまり、実技の出来映えが一つの鍵となる訳だ。

 

 最初の筆記試験の座席に向かうと、他の受験生の魔女や魔法使い達がギリギリ最後まで追い込みをしてやるという勢いで分厚い本を復唱していた。うん、こういうのも受験ならではの光景だ。これだけでもかなり威圧感を感じるし、一歩間違えたら会場の雰囲気に呑まれてしまうだろう。つくづく自分が形式こそ違えど受験経験者で良かったと実感するばかり。

 

「──それでは只今より『危険薬・毒薬取扱者資格』の筆記試験を開始します」

 

 いつの間にか入室していた壮年の試験監督が無表情にそう言った瞬間、さらに緊張感が膨れ上がるのを如実に感じた。指示されるがまま、机の横に設置されているカンニング防止用の箱に荷物を全て入れると、箱が一瞬で掌サイズの真っ黒なキューブへと変化した。確かにこれならカンニングのしようが無い。

 そして、学校での試験でも使ったカンニング防止の羽根ペンとインク瓶、試験の問題用紙と解答用の羊皮紙が全員に配られると、試験監督は相変わらず抑揚の無い声で号令を掛けた。

 

「それでは回答、始め」

 

 問題用紙を見る。内容は確かに学校での魔法薬学の試験よりは高難易度の薬品名がずらりと並んでいるが、慌てる事なく解答を埋めていく。正直、体感としてはスネイプ先生が作成した対策問題集の方が遥かに難しかった。大丈夫、これならいけそうだ。

 筆記試験の解答を何度か確認し終えたところで終了の合図。羽根ペンが即座に問答無用で集められた事に驚いていたら、間髪入れず解答用紙も回収される。非常にせわしない。そして、一息つく間もなく実技試験の会場へと受験者達は移動させられた。

 こういうのは本当に気持ちの切り替えが大事だ。私も何度か深呼吸を繰り返して、頭の中を一旦リセットさせる。

 

「続きまして、実技試験を行います。試験内容は『安らぎの水薬』の調合です。制限時間は──」

 

 淡々と試験監督が指示を出す。私は態度にこそ出さなかったが、内心でガッツポーズした。勝つる!これも一番最初の追加講習のみならず、試験対策の講習でも出題される可能性の高い薬の一つとして念入りに練習したやつだ!

 冷静に、慎重に。自信のある時ほど油断せず、確実に。何度も何度も繰り返した手順を正確にこなしていく。最後にクリスマスローズのエキスを七滴入れると、軽く銀色の湯気が立ち上った。よし、完成。焦らず、慌てず、落ち着いて指定の提出用のクリスタル瓶に薬を入れ、しっかりと蓋を閉じる。この瞬間、私は少なからず面接には進めると直感で確信した。

 

 

「ミス・マーガレット・ノリス。面接室に入って下さい」

 

 自分の直感通り面接に進めた私は、点呼されるがまま入室する。きちんとノックと一礼も忘れない。

 面接官は先程までの無表情な試験監督に加えて、柔和な微笑みを浮かべた老婦人も一緒であるらしい。それは良いのだが……何故か小さなスツールがあり、その上に水差しとコップ、そして無色透明の液体の入った小瓶が置かれていた。

 老婦人の面接官は、にこにこと人好きの良い笑顔のまま私に着席する様に指示を出した。

 

「貴女がミス・ノリスですね。これから『危険薬・毒薬取扱者資格』の面接を開始致します」

 

「はい。よろしくお願い致します」

 

「それでは早速……と行きたい所ですが、その前に一つよろしいかしら?そこにある小瓶には真実薬(ベリタセラム)が入っております」

 

「っ!?」

 

「勿論、任意ですよ?事実、毎年この試験において罪人でも無いのに飲むのは我慢ならないと拒否する受験者さんも少なくありません。けれでも、もし御同意頂けるなら、適量飲んだ上で面接を受けて下さいませんか?」

 

 まさかの真実薬(ベリタセラム)の服用要請に、思わず私は怯んだ。幾らなんでも面接でこういう展開があるなんて夢にも思っていなかったのだ。

 面接官は小さくため息をついて、言葉を続ける。

 

「わたくしどもとしても、こんな事申し上げるのは心苦しいのですけれども。何せこの資格で扱える薬は軒並み厳重に規制されるものばかり。それ故に資格を扱う責任者としては、殊更慎重にならねばならないのですよ。とはいえ、これを拒否したからといって試験を不利にさせるという事は一切致しませんのでご安心を」

 

 面接官の説明に、面食らっていた私も覚悟を決めた。飲むとどうなるのか怖いものがあるし、私は毒物に魅せられている部分があるのも事実。が、疚しい事は何も無い。拒む理由なんて無い!

 コップに水を入れ、真実薬(ベリタセラム)を三滴垂らす。そのまま彼らの目の前で一気に飲み干してみせた。

 

「まぁ、御同意ありがとうございます。それではまず、まだホグワーツの学生である貴女が何故この資格を取得しようと思ったのか。お聞かせ頂けますか?」

 

「……私は将来薬剤師になりたいという夢があります。その夢をかなえるにあたって、魔法薬学分野においてはこの資格が役立つだろうと感じたからです」

 

 おお、自分でも気味が悪いぐらい言葉が滑らかに出てくる。これが真実薬(ベリタセラム)の偽らざる効果なのか。ちょっと興奮してきた。

 

「薬剤師、という職業は確か魔法薬調剤師のマグル版だと記憶しております。身近にその手のご職業に就いている方がいらっしゃるのでしょうか?」

 

「はい。私の保護者である養父が医者、マグル版の癒者です」

 

「なるほど。ですが薬を調剤するだけなら、毒薬も危険薬も必要ないのでは?」

 

「いいえ。医薬品……マグルの薬は全て毒と紙一重です。魔法薬こそ境目がハッキリしているだけなのです。今、魔法界とマグルの世界の交差が広がるのと同時に、薬品の多様性が広がっています。それは即ち、薬の調剤においても同様に幅が広がっているのと同義です。ならば、その可能性を考えて毒薬や危険薬の取り扱いを視野に入れる事は当然の流れだと考えます」

 

「……毒薬を患者に使うという事かしら?」

 

「その問いに対してはイエスともノーとも言いかねます。癒学では毒は毒、薬は薬と分けてありますからそう思われるのは無理もありません。ならば実例を上げましょう。私が薬と毒の境界線における可能性と魅力と浪漫の根拠の一つとしている、ジギタリス。ご存知だと思いますが、全草に猛毒がある植物です。それこそ魔法薬でも毒として定番のトリカブトと遜色の無いレベルの危険性を孕んでいますが、マグルの医学ではジギタリスは心不全に対して適応のある立派な薬なのです。私が調べた限り、魔法界では心臓の病気となると単なる『死病』として十把一絡げに扱われていますが、ジギタリスの毒はそんな患者達を救う可能性が多々秘めています。私はその可能性についてもっともっと深く考えて、限界を知りたいのです」

 

 私の自制も自重も関係無しに、普段の何倍も饒舌に語る。真実薬(ベリタセラム)の強烈さを我が身で体感しつつ、まだまだ止まる気配をみせない。こうなったら、もうどうにでもなれという感じだ。

 

「毒薬だから危ない。危険薬だから規制すべき。それは私とて重々理解しています。でも、だからといって患者を見捨てるのでしょうか?少なくとも私は、必要とあらば毒だろうと何だろうと利用してでも救うべきだと考えています。けれども、不用意に危ない目に遭わせたい訳ではありません。私は薬剤師になりたいのであり、断じて殺人者にはなりたくありません。取り扱う物が医薬品だろうと、魔法薬だろうとそれは同じ事です」

 

「なるほど。貴女はその信念に基づいているからこそ、資格を習得したいと考えた訳ですね?」

 

「はい。勿論、資格があるからといって何でも調合出来る訳では無いのは理解しています。けれども、いずれ私が調剤する立場となった際に、どんな選択肢でも選べる状況でいる為には正式な資格が必要なのです」

 

 私はそうハッキリと断言して、面接官達に微笑んでみせた。

 

 

「ミス・ノリス!お疲れ様、というより大丈夫?」

 

「……バーベッジ先生、お待たせしました……」

 

 ふらふらと試験会場から出てきた私に、バーベッジ先生が走り寄ってくる。どうやら、色々と凄まじい面接をしている間にとっぷりと日が暮れていたらしい。

 私は緊張感と真実薬(ベリタセラム)の影響でヘトヘトに疲れ果てていた。……我ながらべらべら語り過ぎた。

 

「この時間だと学校のハロウィンパーティーはお開きになっているけど、どうしましょうか?一応、外出許可の中には夕食まで含まれているけど……」

 

「いえ……友人達が私の分のご馳走を確保しておいてくれるそうなので、ご飯は寮で食べます。というより、若干燃え尽きていますので、帰りたいです……」

 

「うん、そうね。見るからに疲労困憊だもの。ここは真っ直ぐ学校に帰りましょう」

 

 先生に連れられるがまま、付き添い姿くらましを経て学校へと舞い戻る。私の様子からバーベッジ先生がそのままレイブンクロー寮まで送り届けてくれた。私の頭が若干寝ているのか、深く考えていなかった。

 

「本当に今日はお疲れ様。私から帰校の報告を済ませておくから、ミス・ノリスはもう休みなさい。……ご馳走もほどほどにね?」

 

「はい……今日はありがとうございました……」

 

 先生に挨拶をすると、寮の階段を上がる。ぼーっとする頭ながら条件反射みたいな感じで鷲ノッカーを突破して入る。……ここで初めて学校の空気がおかしい事に気付いた。試験とは全く違う緊張感に満ちた雰囲気に、半分寝ぼけ気味の頭が瞬時に覚醒する。

 

「あ……メグ!おかえりなさい」

 

「ただいま戻りました。……何かあったんですか?明らかにパーティー直後の雰囲気では無いみたいですが……」

 

 私に気付いたアミーとサリーにこの空気が何事か訊ねると、二人は困った様に顔を見合わせた。何だろう、とても嫌な予感がする。

 アミーが些か硬い表情のまま、口を開いた。

 

「……実はあたし達も何が起きているのか、正確な事は分かっていないの。ただね──」

 

 

 ──“秘密の部屋”が何者かの手によって開かれたらしいわ。




微妙にメグに巻き込まれるフラグが立った!
真実薬で饒舌になったメグが試験で大暴走!
疲労困憊で学校に帰ったら事件が起きてた!

……以上、今回のラインナップです。メグの語りが想像以上の長文になって笑ってしまった作者であります。何はともあれ、遂に秘密の部屋騒動が始まりました!
あと、試験の面接で真実薬はやり過ぎな気もしますけど、扱う物が物なので悪用する恐れが無いか念には念を、という事で任意使用の設定になっています。


【設定の端書き】

・メグのホルン
ゴールドブラスの太ベル、巻きがクルスペ型のフルダブル。
マウスピースはV型ダブルカップ、音色調整とアレルギー対策で銀とグリーンゴールドの下地にプラチナメッキを掛けている。
重厚感ある深めの音色がお好み。奏法の工夫も楽しんでいる。

……一応は調べて設定したものの、流石に音楽学校の物語じゃないのでバッサリ削除しました。明らかに話が脱線し過ぎるのと、本編で現ナマ的な話はちょっとアレだったので。
メグの研究者気質は薬学のみならず趣味でも発揮されるという事と、生育環境がハリーと比べて相当恵まれている事の補足説明でした。楽器なんてファイアボルト買える位の金額は軽くしますし。
何でもかんでもでは無いものの、好きな事をして伸び伸びと生活しているメグをハリーの境遇から見た場合、完全に考え方から根本的に違うお嬢様って事になります。良いか悪いかはともかく。
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