この素晴らしい天才物理学者に祝福を!!   作:血の一族

2 / 41

『てんさぁい物理学者の桐生戦兎は地球外生命体エボルトとの死闘の末に新世界を作り出す事が出来たが気がついたらその姿はめぐみんと呼ばれる少女になっていた』


『めぐみん、桐生戦兎って誰?貴方はめぐみんでしょ?やっぱりお医者さんの何処に連れて行った方が良いんじゃ』


『ちょっと待てよゆんゆん、此処はあらすじ紹介の場だからあまりそういうツッコミはして欲しくはないんだけど?』


『あらすじ紹介?何言っているのかは分からないけど、今のめぐみんを放って置く事は出来ないわ!さぁ、病院に行くわよ!』


『俺は別に頭がおかしくなってないっての!これからやる2話で分かるからちゃんと見て』





新たな出会いに祝福を!!

 

桐生戦兎がこの世界に転生してから2年が過ぎた。この2年の間に戦兎は自分がいた世界とこの世界とでは常識というのが大分違う事を改めて実感した。まずこの世界ではエリス教、アクシズ教と呼ばれるふたつの宗教組織が存在しており、そしてそのふたつがこの世界における主要な宗教組織である。しかし実際のところアクシズ教よりもエリス教の方がこの世界における最もポピュラーな宗教というのが一般的な認識となっていた。そしてエリス教でご神体として祀られている女神エリスはこの世界の通貨の名前にも使われている程の人気の女神である事を戦兎は文献で知る。それに対するアクシズ教はエリス教とは正反対の戦兎達の世界でいうカルト組織で信者達も奇人変人、乱暴者、独善かつ自己中心的な者が多く、多くの者に煙たがられていた。その為世間からは『機動要塞デストロイヤーが通った後はアクシズ教徒以外、草も残らない』と並のチンピラやモンスターよりも恐れられている。 そして紅魔族とは優秀なアークウィザードの一族であり。その一族の出身者の多くは前線で活躍する超一流の魔術師が多い。それだけならば普通の一族なのだが紅魔族はカッコイイ名乗りや自分がもっとも輝くタイミングでカッコよく登場する事に拘る所謂厨二病な一族であり、名前にも紅魔族のセンスが目立っている。その為周囲の人達からはアークウィザードとしては重宝される一方そのセンスや性格が災いし周りから浮いたりトラブルが絶えずにいるという良い意味でも悪い意味でも目立つ一族なのだった。

 

 

「よし…今日はこんなところかな?」

 

 

戦兎…めぐみんは父親の工房の一角に併設された自分の研究スペースで手作りの端末…パソコンを開発している途中であった。紅魔の里では明らかに戦兎の世界における現代兵器が存在しており、そんな兵器の一つであるレールガンが紅魔の里で物干し竿として使われているところを初めて見た時めぐみんは腰を抜かす程驚いた。そしてゆんゆんからこの世界には勇者候補と呼ばれる人間が時折現れると言う話を聞いためぐみんは彼らの持ち込んだと言われている技術や知識から彼らが異世界からの転生者である事を知った。つい最近では魔剣の勇者と呼ばれている青年との間で情報を交換したばかりだった。

 

 

「姉ちゃん!お母さんがご飯だって!今日は夕食はジャイアンドトードの唐揚げだって!」

 

 

めぐみんの研究スペースに妹のこめっこがはしゃいで様子で入って来てそう言う。2年前までは固形物はたまにしか食べられずに同年代の子に比べ痩せ細っていたこめっこだがこの2年間で顔色が良くなり体型も同年代の子どもに負けないぐらいになった。それもこれもめぐみんの開発品のおかげである。めぐみんは前の世界の記憶と自分の技術でこの世界には無い便利アイテムやちょっとした生活用品を開発してそれを販売していたのだ。当初は父親であるひょいさぶろーの反発が大きかったがめぐみんの作るアイテムの売り上げを見たゆいゆいの鶴の一声によりひょいさぶろーの反論は封殺されめぐみんのアイテム開発と研究は認められる事となった。ゆんゆんとは良き友人関係を結んでおり学園生活でも良きクラスメイトとしても交流している。そしてこの2年間で一番変わった事といえば一族と学園におけるめぐみんの立場であった。2年前の事故が原因なのか桐生戦兎としての記憶が宿ったのが原因なのかは不明だがめぐみんの中から魔力が消え去っていたのだ。めぐみんのアークウィザードとしての素質は非常に高くこのまま行けば歴史に名を馳せるレベルになれる筈だっためぐみんの魔力喪失は色々な人に衝撃を与え何度か魔力を回復させる方法が試されたが一向に効果は無く周りの人々も次第に諦めの境地へと至りめぐみんの魔力復活を諦めてしまった。紅魔族始まって以来の優等生であるめぐみんは一転して紅魔族随一の劣等生になってしまったが、めぐみんは其れを気にしている様子は一切なく代わりに研究やアイテムの開発へと没頭する様になりめぐみんは別の意味で一族から浮いた存在になってしまったがめぐみん本人には関係のない話であった。

 

 

「ふぅ…今日もお腹いっぱいご飯が食べられて幸せ〜」

 

 

膨らんだお腹をさすりながらこめっこはしない床で横になっており、めぐみんはそんなこめっこに呆れた表情を見せると

 

 

「こめっこ、食べた後直ぐに横になると豚になりますよ?」

 

 

「だって、ご飯が美味しすぎて沢山食べちゃうから何時も食べ過ぎて動けないんだもん〜」

 

 

幸せそうな表情を見せているこめっこにめぐみんはそれ以上強くは言えずにめぐみんは研究スペースへと戻って行く

 

 

「姉ちゃん、また開発の続きをするの?」

 

 

「ええ、もう少しで開発に一息つきそうなのでその後に寝るつもりです」

 

 

めぐみんはそう言うと研究スペースへと戻り再び開発作業へと取り掛かる、2年間の研究の末にこの世界の魔力を利用したあるアイテムが完成直前の為に今夜中に一気に仕上げるつもりなのだ。めぐみんは気合いを入れると一気に開発作業を進めていった。

 

 

 

 

 

「ここは何処でしょう?私は確か研究スペースでアイテムを開発していたはずですが…」

 

 

めぐみんはいつの間にか暗い空間で椅子に座っており、自分は何故こんな所にいるのかと困惑しながら周りを見渡しているととある少女の声が聞こえた

 

 

「お待ちしていましたよ。めぐみんさん…いや、桐生戦兎さんと言った方がよろしいでしょうか?」

 

 

この少女は自分の正体を知っている?めぐみんは桐生戦兎としての表情を見せるとその少女の事を睨み付ける

 

 

「あんた一体何者なんだ?何故俺が桐生戦兎だと知っている?あんたの目的はなんだ?」

 

 

めぐみん…戦兎の強い視線に対してその少女は顔色ひとつ変えずにしっかりと戦兎を見つめる。戦兎は少女の自分に対する視線から敵意を抱いていない事を確信し今の状況そしてゆんゆんから見せて貰った女神エリスの肖像画。そして少女が纏っている神聖なオーラから戦兎はとある可能性にたどり着く

 

 

「ひょっとして貴方が女神エリス様って奴なのか?」

 

 

「はい、私はこの世界で幸運を司る女神エリスです。本来ならば死んだ人物のみ此処に来る事になるのですが今回は特例です」

 

 

「特例?それはどういう意味だ?」

 

 

「私は貴方の戦いの事を知っています。貴方が巨悪を倒した後パンドラボックスで新たな世界を作り出した事も知ってます。しかしその所為で本来ならば起こり得なかった異変が起きているのです」

 

 

「異変?それは一体何の異変なんだ?」

 

 

「本来の歴史ならばめぐみんさんは魔力を失う事はなく、アークウィザードとして旅立ち、アクセルの街でとあるパーティに加入し、いずれは魔王討伐に貢献する事になっていました。しかしこの世界のめぐみんさんは魔力を失いそして桐生戦兎さんの記憶が宿った事で本来の歴史からかけ離れた人物となってしまったんです」

 

 

「成る程、つまりエリス様は俺がこの世界に現れてしまった所為で異変が起きたから、その異変を俺自身の手で何とかして欲しいと言いたいんだな?」

 

 

「簡単に言えばそうなります。戦兎さんには辛い話かもしれませんが…」

 

 

「いや、貴方が気にする必要は無い。俺が原因で起きた事ならば俺自身でカタをつける。それに俺が現れなければ自分の人生を歩めたかもしれないめぐみんの為にも」

 

 

「ありがとうございます!私は普段天界に居るので余り手を貸す事は出来ませんが貴方に女神エリスの祝福を授けます。貴方に女神エリスの祝福を」

 

 

エリスが戦兎に祈りを捧げると戦兎の身体が一瞬淡く光り不思議な力が自分の肉体に宿った事を感じる。その後戦兎の足元に魔法陣が現れ戦兎は光と共に上空に開いたゲートの中に消えていった。そしてひとり残ったエリスはボソと呟いた

 

 

「頼みましたよ…桐生戦兎、いや、悪魔の科学者葛城巧(かつらぎたくみ)

 

 

そんな意味深なエリスの呟きに気づく者は居なかった。

 

 

「ん…朝か…どうやらいつの間か眠ってしまったらしいな」

 

 

めぐみんは自分がいつの間にかうつ伏せの状態で眠っていた事に気付くと固まってしまった身体を伸ばし、顔を洗う為に洗面所へと向かう。顔を洗っている時にめぐみんは昨日自分が見たアレは夢でエリスは夢の中で自分に会いに来たという、普段ならば考えもしない方向に思考が及ぶ、それだけ自分はこの世界に染まってしまったという事だろう。そんな事を考えながらめぐみんは苦笑いを浮かべるが夢の中でのエリスとの邂逅は間違いなく実際にあった事だと確たる確信を持っていた。

 

 

「めぐみん、今日も開発を手伝いに来たわよ!」

 

 

顔を洗い終えためぐみんは服を着替え洗面所から出てくると玄関の方からゆんゆんの声が聞こえて来る。めぐみんはゆんゆんを出迎える為に玄関へと向かうと赤い顔でモジモジとした様子でゆんゆんが立っていた。相変わらずゆんゆんは人見知りで内気な性格をしているがめぐみんに取ってゆんゆんは今のめぐみんが家族以外で心の其処から信頼出来る出来る数少ない存在。大切な友人だと思っていた。その為休みの日などはこうして研究や発明を手伝って貰っていたのだ。

 

 

「今日も手伝ってくれてありがとうゆんゆん」

 

 

「て、手伝うのは当たり前でしょ!だ、だって私とめぐみんはし、親友なんだから!」

 

 

真っ赤な顔でそう言うゆんゆんにめぐみんは思わず庇護欲をそそられていると今日は朝から大事な用事がある事をめぐみんは思い出した

 

 

「ゆんゆん。申し訳ありませんが朝は私に会いたいという人がいるので私がお客と応対している間、居間でお茶でも飲んで待っていてくれないか?」

 

 

「分かったわ、応対が終わったら声をかけてよ。直ぐに研究スペースに向かうから」

 

 

 

そう言うゆんゆんと別れるとめぐみんは客が待っている工房の入り口へと向かって行く

 

 

工房の入り口に到着すると非常に肌が白く、まるで死人の様な顔色の女性がめぐみんの事を待っており、女性が歩いてくるめぐみんの存在に気づくと笑顔を浮かべながらめぐみんの元へ近づいて来た。

 

 

「貴方が最近紅魔族の中で有名な魔道具職人のめぐみんさんですね!わたしはアクセルの街で魔道具屋を営んでいるウィズと申します」

 

 

「アクセル?アクセルっていったら駆け出しの冒険者達が集まるというあの街の事ですよね?何故そんな街の人がわざわざ紅魔の里まで来たんですか?」

 

 

「最近アクセルの住人や冒険者さん達の間でめぐみんさんの作った魔道具や不思議な道具が大人気なんです。でも、その魔道具やアイテムを売っているお店は何処にもないのでもしよければ私のお店で売らせて貰えればと思いまして…」

 

 

どうやらウィズと名乗った女性商人は自分の作った魔道具や生活用品を自分の店で売らせて欲しいようだ。確かに自分が作った物の数々は時折訪れる冒険者達や商人達には大人気なのは理解している。ウィズはそれに目をつけたのだろう。めぐみんは特に断る理由もないのでそれを了承するとウィズはめぐみんの両手を握きると、とても嬉しそうな表情で礼を言った。

 

 

「ありがとうこざいます!これからもめぐみんさんとは末永いお付き合いをしていきたいです!あああ…これで日々の食事や家賃に困る生活から解放されるんですね…」

 

 

どうやらウィズはかなり苦労した生活を送っていたらしい、めぐみんは同情の視線をウィズに送ると、めぐみんはある事を思い付き、其れをウィズに交換条件として提示する事にした

 

 

「ウィズさん、貴方のお店に私の商品を売るのは構いませんが代わりに私の頼みをひとつ聞いて貰えますか?」

 

 

「めぐみんさんにはこれからお世話になるので私に出来る事ならなんでもやらして貰いますよ?」

 

 

めぐみんの言葉にウィズは快く了承してくれたのでめぐみんは遠慮なく交換条件を提示する

 

 

「学園を卒業した後私はアクセルの街へと旅立つつもりです。私がアクセルの街に到着した暁にはウィズさん貴方のお店で住まわせてくれる事それが貴方のお店で私の魔道具やアイテムを売る条件です」

 

 

ウィズはめぐみんの提示した条件が意外だったのか素っ頓狂な声を上げた

 

 

「え?そんな事で良いんですか?」

 

 

「ええ、それで構いません。まぁ、売り上げの一部は家に仕送りをさせて貰いますがそれ以外は住まわせてくれるだけで良いですよ。もしかして迷惑なのですか?」

 

 

「と、とんでもないです!それぐらいは全然構いませんよ!それでめぐみんさんの魔道具やアイテムが販売出来るならば幾らでも住んで構いません!」

 

 

「良し、なら契約は成立ですね。これから末永いお付き合いをお願いしますよウィズさん?」

 

 

その後契約書にサインをして貰うとウィズはウキウキした様子でアクセルの街へと帰っていった。めぐみんは思わぬ形でアクセルの街に行くキッカケを掴めた事に内心安心すると期日までにウィズの店に下ろす魔道具の開発に取り掛かるのであった。

 

 

 

 




第2話の終了です。これでめぐみんはアクセルの街へと行く理由が出来てウィズとの繋がりを持つ事が出来ました。めぐみんが旅立つまで後に2.3話程かかりますがお付き合いしてくれると嬉しいです。

評価、感想をしてくれると嬉しいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。