それはとある日の暖かい昼間の話だった。
「ウィズ、お店の調子はどうですか?」
「はい。めぐみんさんのお陰で売り上げの方は良いのですが…」
何故が歯切れが悪いウィズ
「めぐみんさんの発明品はよく売れるのに私が仕入れた商品は全く売れないんですよ!私のお店なのにめぐみんさんの商品しか売れないというのは複雑です…」
「確かにめぐみんの商品以外にこの店で売れているのを見た事はないよな?」
「ひ、酷いです!私だって一生懸命やってるのに…」
一緒にいたカズマがつい本当の事を言ってしまった所為でショックを受けて地面に両手をついて落ち込むウィズ。
「だ、大丈夫さ!めぐみんの商品以外にも良い商品は沢山あるだろ!たとえこの小瓶に入っている薬はポーションだろ?戦闘の時に重宝するじゃないか」
「あっ、それは強い衝撃を与えると爆発しますから気をつけてくださいね」
「何でそんなモンが売ってんだ!?」
カズマはウィズの言葉に驚くとその瓶を棚に戻し隣にある瓶を指刺すと。
「そ、それじゃあこの、飲むと魔力が回復すると書いてあるコイツは…」
「それ、蓋をあけると爆発しますよ?」
カズマが無表情その隣の瓶をもつと。
「…この薬は?」
「水に触れると爆発します」
とうとう無言でひとつの瓶をウィズに見せると。
「じゃあこの高級そうな薬は?」
「温めると爆発を……」
「そんな危険物を店頭に並べんじゃねぇぇぇぇぇ!!」
「きゃあぁぁぁぁぁ!? ごめんなさぁぁぁぁぁい!?」
流石のカズマも遂にキレる。そりゃあ必死にフォロー入れようとしているのに置いてあるのかどれも危険物だったらそうなるわな。
「こんなん売れる筈ないだろ!つうかそんなモンを街中で売ってんじゃねぇよ!!」
カズマはウィズにそう怒鳴っているがカズマまだ知らない彼女の恐ろしさを。
「因みにウィズ。このアクセサリーの効力は?」
「はい。付けると魔力が増大するアクセサリーですよ!魔法職の方にはオススメです!まぁ…つけたら自分自身の魔力に耐え切れずに身体が飛散するという小さな欠陥があるんですけどね…」
「全然、小さくねぇよ!?」
「このペンタンドは?」
「はい。そちらのペンダントは愛する者を守ってくれる物でカップルに売れるんですよ!」
「ほうほう、それで?どんな風に愛する者を守ってくれるですか?」
「それはですね。装備者が敵対者に襲われて瀕死になった時、愛するものを敵対者から守るために自爆して守ってくれるんです!」
「敵対者は勿論守るべき者もろとも吹き飛ぶだろうが!!何処が愛する者を守ってくれるペンダントなんだよ!!」
「それでは最後にこの水晶について教えて下さい。」
「それは2人1組で魔力を注ぐことで互いの恥ずかしい過去を映像として暴露させ2人の絆を深めるという大変徳の高い水晶なんですよ」
「そんなん絆どころか溝が深まるわ!!」
ウィズの商品紹介に悉く突っ込みを入れまくるカズマ。見ている分にはとても面白いコントであった。
そう、ウィズの商人としてのセンスは少し、いや、かなりズレているのだ。仕入れてくる商品ははっきりと言ってガラクタ同然の物ばかりであり、使えそうな物があったとしてもとんでもない欠陥がある物ばかり。まともだとしても高すぎて初心者ばかりの街では買えない物ばかりなのだ。
その為、売り上げなどは全くなく、日々の食費や家賃に困っている有様だったのだが俺と契約を交わし便利グッズや発明品を売る事でそれは解消されたのだが商才の無さは変わらない為、売り上げの殆どは役に立たないアイテムの仕入れに消えているのだ。とはいえ以前の様に家賃や食費に困る事はなくなったのが唯一の救いと言えるだろう。
「なぁ、ウィズ。お前、本当に只の善人な店主なんだよな?実は悪人だとか役に立たないアイテムを売る事で遠回しにアクセルの街を潰そうとしているんじゃないよな?」
「そ、そんな事はしていませんよ!!それに私は何処にでもいる普通の魔道具店の店主です!!」
カズマのジト目にドキッとしながらもウィズは必死で元冒険者である事を自分は善良な市民である事を訴えていた。
…因みにウィズがリッチーである事を知っているのは俺とゆんゆんだけだ。カズマやアクア、ダクネスはまだこの事を知らない。
「あーーーー!!!」
すると突然耳を貫く大声が聞こえ後ろを振り返ると其処にはいつから居たのかゆんゆんとそしてアクアがプルプルと震えながら立っていた。
「どうしてこんな場所にクソアンデッドがいるのよ!?しかも貴女はリッチーね!?まさかリッチーがお店を経営していたなんて…女神である私の目が黒いうちは貴方の好きにさせないわよ!さぁ、神の名のもとに大人しく罪を懺悔しな…いだいっ!?ちょっ、めぐみんやめてっ!?痛い!」
俺はウィズに飛びかかろとしているアクアの頭をわしづかみにすると手に強い力を込めた。
「アクア、仮にも一宿一飯の恩義のある相手に対して一方的過ぎませんかね?少しは話を聞いてあげようとはしないんですか?」
「ごめんなさい!大人しくするから離して!」
アクアのその言葉を聞くと俺は手を離す。するとアクアは余程痛かったのかそのまま頭を抱え蹲り動かなくなった。
「カズマにアクア、黙っていてすいません。ウィズは確かにアンデットですが別に人間に危害はいませんし、人間に対して友好的な姿勢を保っているので安心してください」
「めぐみんがそう言うならば問題はないか」
カズマは俺の説明に納得したのかウィズに対する警戒を解いてくれた。
因みにウィズはアクアの所為なのかとても怯えていた。
「あ、あの粗茶です。よろしければ....」
ウィズはアクアだけではなく俺達にもわざわざお茶を持ってくる。必要ないのにしてくれる辺り、ウィズの人の良さを感じた。
「なぁ、カズマ、お前ウィズからリッチーのスキルを教えて貰うのはどうた?丁度ポイントにも余裕が出来たって言ってたろ?」
「ブッ!」
俺の話を聞いていたアクアが飲んでいたお茶を吹き出した。そして吹き出したお茶は向かい側に座っていたゆんゆんに思いっきりかかる。
「何するのよ!おかげで顔がびしょびしょじゃない!」
「だ、大丈夫ですか!」
心配したウィズがゆんゆんにタオルを持ってきてくる。ゆんゆんはそれで顔にかかったお茶をふき取る。
アクアはカズマがリッチーのスキルを覚えようとするのが余程気に食わないのか今にも飛び掛かって来そうだ
「ちょっと何を考えているのよめぐみん!カズマにリッチーのスキルを覚えさせようとするなんて!そもそもリッチーのスキルなんて碌なものじゃないのよ!そんなものを覚えてみなさい、覚えたら最後ナメクジやカエルみたいな暗くてじめじめしたところが大好きな連中にすかれるわよ!リッチーなんてそいつらの同類なんだから!」
「ひ、ひどい!」
「リッチーのスキルなんてそうそう覚えられる機会なんてありませんし、それにパーティーに3人の仮面ライダーがいるとはいえ万が一の事態に備えて私達のフォローできるスキルをカズマには覚えて貰うと非常に助かるのです」
「女神の従者がリッチーのスキルを覚えるなんて見過ごせないんですけど」
「いつから俺達がお前の従者になったんだ?」
思わず戦兎として突っ込みをしていると
「あのう…アクアさんが今言った女神って?まさか…アクアさんって本物の女神だったりするのですか?」
流石はウィズ。リッチーなだけあってアクアが本物の女神だと見抜いたようだ。そしてアクアは女神と久々に認められて嬉しいのか胸を張って堂々と言った。
「そうよ、私こそアクシズ教団が崇める水の女神アクアよ!控えるがいいわ、リッチー!」
「ヒイッッッ!?」
ウィズが恐怖からか叫び声をあげるとお前の後ろに隠れた。流石は女神、リッチーであるウィズをここまで怯えさせるとは。
「ウィズ、確かにアクアは女神ですがそこまで恐る必要ありますか?まぁ、アンデットが女神を恐れないのはどうかとは思いますが…」
「いえ、そうではなくて…世間一般ではアクシズ教団の人は頭のおかしい人が多いからかかわり合いにならない方がいいと言うのが世間の常識でして…そのアクシズ教団の元締めの女神様と聞いて....」
「なんですって!」
「ご、ごめんなさい!」
このすば!!
「では、一通り私のスキル見せますので好きなものを覚えていってください。普段お世話になっているめぐみんさんの頼みですし何より先程アクア様から守って頂いた恩返しですから…」
とウィズはそこまで言いかけると何かに気づいたかのように俺とアクアを交互に見ておろおろし始めた。
「ウィズ。どうかしました?」
「いえ、私のスキルは相手がいないと使えないものばかりでして、つまり、そのう...」
なるほど。そういうことか、ならアクアが適任だな
「そう言うことならば問題はないですよ。丁度ここに実験台がいますから」
「もしかしなくても私のことよね?アンタ、女神を何だと思ってるの?一度天罰受けてみる?まあ、いいわ。リッチーごときがこの私を傷つけられるわけないんだし」
そういうとアクアはウィズを睨みつけ威嚇する。それに怯えながらもウィズは話を続ける
「そ、そうですね…ドレインタッチなんてどうでしょう?これは相手の体力や魔力を吸ったり逆に魔力を分け与えることができるスキルです」
成る程、攻撃にも回復にも使えるとは中々に便利スキルだ。こういったスキルは俺達のパーティーにはありがたい。
使い方によってはベルトの調整やフルボトルの生成に役にたつかもしれない
「...では、アクア様、実演よろしいでしょうか?も、勿論、ちょっとしか吸いませんので!」
慌てたように早口になったウィズに対しアクアは何か碌でもないことを思いついたのかにんまりと凶悪そうな笑みを浮かべていた。
それを見て女神と悪魔の立場が逆転していると思ったのは俺の気の所為だろうか?
「いいわよ?いくらでも吸ってちょうだいな。さあどうぞ?」
「では失礼します......」
アクアはすんなりと自分の手を差し出します。ウィズがその手を取る。するとスキルが発動したのか手が淡く光り始めた。しかし...
「?…あれ?あ、あれ?」
「ほらほらどうしたの?私から吸うんじゃないの?自称、ノーライフキングであろう者がドレインもできないなんて聞いてあきれるわね」
「あ、あれええ―――!?」
余裕たっぷりに勝ち誇っているアクアと対照的にウィズはどんどん涙目になっている。どうやらアクアはドレインに抵抗しているようだ。
「やめんか」
俺はアクアの脳天にツッコミ用に作っていたハリセンを食らわせた
「痛いっ!?ちょっとめぐみん、邪魔しないでよ!これはリッチーと女神の戦いなのよ!私だって女神の端くれ簡単に吸われたまるもんですか!」
「話が進まない上にリッチーを退治に来たんじゃないだろ。とっととドレインされろっての」
アクアは俺の言葉に渋々ながら納得したのかウィズの手の光が少しだけ強まった。
「はい、これで良いはずですよ」
カズマはそれを聞くとすぐに冒険者カードを出しカードを操作した。どうやらスキル習得に成功したのか嬉しそうな笑みを浮かべていた。
「あ、あのう、アクア様?」
カズマが冒険者カードを懐にしまうと後ろからウィズの困ったような声が聞こえてきた。
ふたりの方向をみるとアクアはウィズの手を繋いだままだった。
「アクア様?もういいですよ?というかアクア様と触れていると手がピリピリするのでそろそろ離していただいてほしいのですが... 」
ウィズの言葉を聞いたアクアはにっこりと笑うだけで手を離そうとはしないばかりかウィズの手にもう片方の手を重ね離されないようにガッチリ握りしめた。
「アクア様、なんだか熱を帯びてきているような....あの痛いです、痛いんですが!私の身体、アクア様の魔力を吸うごとにどんどん浄化されっていっているんですが……私、消えちゃう!?消えちゃう、消えちゃう、消えちゃいます!」
「やめんか!」
「あぶし!?」
俺はドサクサに紛れてウィズを浄化しようとしているアクアの頭に再びハリセンを食らわせる。
アクアは芸人の様な声を上げるとウィズの手から手を離した。
「ドサクサに紛れてウィズを浄化しないで下さい。ウィズは確かにアンデットですが私の仲間です、危害を加えるつもりならばアクアだろうが容赦しませんよ?」
俺が睨みを利かせてそう言うとアクアは俺の眼光にビビったのか大人しく引き下がる。
そしてため息を吐いてからカズマの方向を見るとカズマはいつのまにかチョーカーを持っていた
「それは願いが叶うチョーカーですね、カズマさんはそれで一体どんな願いを叶えるつもりですか?」
アクアの神気を受けた為に身体を薄くしたウィズが涙目で商品について説明する。
それにしても願いが叶うチョーカーか…ウィズの店にしては意外にもまともな商品を置いてあるな…確かに現代社会にもそういったラッキーアイテムや風水グッズというのは人気があった、その辺りはこの世界でも同じって事か。
「めぐみんはこういった物とかには興味はないのかよ?」
「興味ありませんね。そんな物に頼らずとも自分自身の力で願いは叶えてみせますよ」
カズマは俺の言葉にそうか、と答えるとそのチョーカーを自分の首に身につけた
「カズマ、どうしてチョーカーを身につけるんですか?」
「いや、おしゃれなチョーカーだったし、幸せになれるから試しても良いかなぁと思って...」
「そんな物に頼るなとは言いませんが商品を勝手につけるのはどうかと思いますよ?」
「か、カズマさん!?」
俺がそう突っ込んでいると先程のアクアの攻撃から何とか立ち直ったウィズがやけに焦った声でカズマの名前を呼んだ。
「そ、そそそ、それ...」
「あそこの棚に置いてあった願いが叶うチョーカーですよ?あ、やっぱり勝手に付けたのは不味かったですか?」
商品を勝手に付けた事に怒っているのかと思ったが、ウィズがやたらと切羽詰まった表情をしているのが気になった俺はウィズにチョーカーについて問い詰める。
「ウィズ。このチョーカーを付けると一体どうなるんです?嘘偽りなく正直に全て話して下さい」
俺の圧に怯えたのかウィズは正直にそのチョーカーについて話し始める
「そのチョーカーは一度つけたら願いが叶うまではずれない上に、日を追うごとに徐々に締まっていく魔道具でして...」
「呪いのアイテムじゃねぇか!!」
カズマの突っ込みが冴え渡る。つうか、なんでそんな危ないもん売ってるんだよ。何も知らずに一般人が買ったらどんでもない事になるだろ。
「違います、女性に人気の商品なんです!死ぬ気になれば絶対に絶対に痩せられるって...」
自力で叶えるならばそんなの願いが叶うチョーカーとは言わないし、そもそも願いを叶える為には命がけで、失敗したら死って…そんなの本末転倒じゃねぇかと思う。
「それで?カズマ、貴方は何をお願いしたんですか?」
「そんなの一々覚えてないねぇよ!!ていうか、こんなんで死ぬとなったら末代までの恥じゃねぇか!!」
いや、既にお前は末代までの恥な死に方をしてるだろうと突っ込みたくなったがカズマの精神衛生的に突っ込むのはやめた
「このままだとチョーカーはゆっくりと締まっていって四日後にカズマさんは…」
「こんな馬鹿馬鹿しい死因は嫌だぁぁぁぁ!!」
「私のせいですね...あの時私がちゃんとカズマの事を見ていれば...」
「いや、勝手につけた俺が一番悪いんだ。めぐみんの所為じゃない」
「一番悪いのは私です!!私がこんな危険な商品を店に並べていたのがいけないんですから...」
「「「・・・」」」
と、アクア以外の全員はそう言ってるのだが、この状況でアクアだけは謝らない。その辺りの図々しさというか厚かましさだけは流石だと思った。尊敬も感心もしないが、俺がそう考えているとウィズが俺とアクア、そしてカズマの手を取ると
「カズマさん。なんとしてでもそのチョーカーを外してみせますから安心してください!」
「私も協力する事にしましょう。カズマに死なれるのは気分が悪いですからね」
「わ、私は何も悪くないわよ!でも一応言っておくわ。ごめんね!もし死んだら、ちゃんとリザレクションかけてあげるから安心しなさい」
「俺、今度死んだら生き返るのは辞める。人生をストライキするわ」
「カ、カズマさん。冗談よね?魔王討伐はどうなるのよ?カズマさんが魔王討伐してくれないと天界に帰れないんですけど?」
カズマが冗談を言っている訳ではない事を知ると涙目で慌て始める。
「だったら真面目にやって下さい。一応は女神なんですから」
「わ、わかったわよ!やればいいんでしょ!やれば!!」
こうして俺達によるカズマ救出作戦が始まった。
**********************
その後俺の連絡を受けて地下にあるラボへと集合した、ダクネス、ゆんゆん、ミツルギの3人はカズマが置かれた状況に驚くと共にカズマからチョーカーを外す為の作戦を一緒に立ててくれる事となり、取り敢えずはカズマが満足しそうな事を片っ端から試してみる事になった。
「カ、カズマさん?こ加減は如何でしょうか?」
「ウィズの太ももはひんやりしてて悪くない、あととても柔らかい。そしてウィズが恥ずかしがっている様子もとてもいいです」
「そ、そうですか。それは、あの...どうも!」
願いが叶うチョーカーを外す為ならば何でもやるとウィズはカズマに言ってしまったたので、早速カズマはウィズに膝枕をさせていた。
そしてそんなカズマにミツルギが飲み物を持ってきてくる。
「サトウカズマ。飲み物はいるかい?」
「いただきます。でも飲ませるのはウィズに頼むからな」
「は、はい...」
赤い顔をしたウィズにストローを持って貰い飲み物を飲んでいるカズマは幸せそうな表情を見せている
「サトウカズマ…状況が状況とはいえこれは…」
「いいだろう、貴様が何を望むか知らないがこの私がすべて受け」
「お前は鎧を脱いで腕立て伏せ100回」
カズマの発言にダクネスは喜んでいたがもう突っ込まない。そしてフルプレートで出来た鎧を抜いたダクネスはそのまま腕立て伏せを開始する。
「流石はダクネス…俺の見込んだ通りだったか」
カズマの視線はダクネスの胸に釘付けだ。因みにミツルギも顔を真っ赤にさせながらもダクネスの胸を見ていた。
「あんなけだもののような視線に晒されている上に逃れることも出来ないとは...恐らく奴らの頭の中ではもっとあられもない姿に剥かれ...や、やめろー!!私は騎士として屈するわけにはいかないのだ!!」
そう言いながらも腕立て伏せを止める事はないダクネス。
「ねぇ、めぐみん。ダクネスさんが言ってる事全く理解が出来ないんだけど….」
「ゆんゆん。世の中には理解しなくていい事が理解してはいけない事があるのですよ?」
「な、なんてこと。この男ここぞとばかりに美しい私たちに欲望の限りを尽くすつもりね!」
「おまえはダッシュで焼きそばパン買ってこい」
「なんでよー!!」
「アクア様ー!」
アクアは泣きながら焼きそばパンを買いにいく。(その時ミツルギはアクアの後を追いかけ行った)普段カズマは散々アクアに苦労させられているからなのか、今までの鬱憤をここぞとばかりに晴らしているのだろう。…それにしても少々調子に乗りすぎなのでは?
そう思い庭に移動したカズマを追いかけると
「あのカズマさん?膝枕って向きが逆なのでは?」
「俺が生まれた国にはこういう膝枕もあった」
「そ、そうですか」
そう今のカズマは顔をを太ももの方に向けているのだ。つまりカズマの顔面にウィズの胸が当たっている事になる訳で…
其処にカズマに言われた通りに焼きそばパンを買ってアクアとミツルギが帰って来る。
「かってきたふぁ!」
「遅い!!あと買ってきましただろ!」
「きまふぃた!」
なんかアクアの声が変だ。そう思った俺はカズマと共にアクアの顔を見る。
「…アクア。お前、半分食っただろ」
「ふ、ふってない!」
「隠すならばせめてそのリスみたいに膨らんだ頬を何とかしろ!!」
頬を膨らませた状態で口をもごもごとさせているアクア。カズマは呆れた表情になると諦めたのかゆんゆんの方を見ると
「次はアクアとゆんゆんで野球拳だ」
「なっ!?」
「野球拳?」
「アクア説明してやれ、ウィズはそのまま膝枕で」
「サトウカズマ!!流石にアクア様とゆんゆんさんが可愛そうだ!!」
ミツルギの言葉にカズマは首元を撫でるとミツルギは何も言えなくなってしまう
「それじゃあ終わったら呼んでくれ、それじゃあウィズ続きをお願いします!」
今度はウィズの太ももを堪能し始めるカズマ。はっちゃけ過ぎだろう…
結果から言うと勝負はアクアの惨敗であり、真っ裸で座り込みすんすんと泣いているアクアをゆんゆんが必死で慰めていた。
********************
そして2日目、この日もカズマのチョーカーを外す為周りはカズマの願いを出来る限り叶え続けた。ウィズとゆんゆんの胸の上に頭を置きながらワインを飲んだり、ふたりの太ももを楽しんだりとやりたい放題であり周りもカズマの命がかかっている為に逆らえなかった。
因みにダクネスにはスクワットをさせていた。その理由は1日目に腕立て伏せをやらせていた理由と同じである。
「はぁ、はぁ、良いぞ!この身体の心地いい倦怠感!!めぐみんもそう思うだろう!?」
頬を上気させながら俺にそう言うダクネス、こいつの息が上がっているのは嬉しさなのかわからない。いや多分嬉しいんだろう、だってコイツ、瞳の奥がよろこんでるもん。
その後調子に乗りまくったカズマをゆんゆんがスリープで眠らせるまでそう時間はかからなかった。
********************
3日目、今度はウィズ、ダクネスと共にお風呂に入る事になったカズマだがその願いは段々と過激になっている。
「私は体を洗っているだけでいいのか?」
「あああ、頼む。でも優しくな」
「かゆいところはないですか?カズマさん」
「問題ない」
ダクネスは背中をウィズは右腕をそれぞれ洗っていた。
因みにアクアは風呂掃除を命じられている。こんな時にまで異性と認識されていないアクアには同情を禁じ得ない。
「ふたりにはお願いがあるんだ…今度はそのたわわに実ったその胸で洗って欲しい!!!」
「えぇっ!?」
カズマの願いに驚いた声をあげるウィズ、カズマも味を占めたのか要求が其方の方向に振り切れ始めていた。…あいつチョーカーが無事に外れた後の事を考えてんのか?
…えっ?ダクネスはどうしたって?いつものように俺の隣で羞恥心と性的興奮で悶えているが?
「アクア、お前は天然温泉掘り当てろ、出来るだろ?あ、ミツルギはその手伝いな?」
「は?どうして私がそんな事をやらないといけないわけ?」
それまではカズマの要求を渋々聞いていたらアクアだったが流石にカズマの言葉の意味が分からないのかカズマの方を見る。
「水の女神と呼ばれたお前ならば温泉のひとつやふたつの掘り出せるだろ?それともお前は見せかけだけのなんちゃって女神なのかよ?」
「言ったわね!言いじゃない、やってやるわよ!!女神の実力見せてやるわ!」
「アクア様!?流石に挑発に乗り過ぎじゃないですか!?」
安い挑発に乗り庭へと飛び出して行くアクアとミツルギ。うわぁ…カズマの奴、明らかに邪魔者は居なくなったって顔をしてやがる。
「かゆいところはないですか?カズマさん」
「うーん...とくにはないかな、そのまま続けてください」
「はい」
「うんっ...」
「どうしたウィズ?」
「いえ...」
うわ…カズマの奴、ドサクサに紛れてウィズの胸を弄り始めたぞ。
「そうだ、ふたりにはその胸で俺を挟んで貰ってそのまま胸で洗って貰おうかな?」
二人が驚いたような声をあげるが、カズマは気に止めず
「ほら、ほら!!」
カズマが急かすように言うと羞恥心に顔を真っ赤にしたウィズとダクネスが震えながらカズマに近づいていく。
「きたー!!」
「カズマさんの…ケダモノーー!!!」
ゆんゆんのそんな声が聞こえたのと同時にカズマの頬に思いっきり握り拳で殴りつけた
「んぎゃーーーー!!!!!!!???」
吹っ飛んだカズマはそのまま床に頭を打つと目を回すとそのまま気絶してしまいそのまま3日目が終了した。
**********************
遂に4日目になってしまった。未だにチョーカーを外す事が出来ていないカズマは居間にみんなを集めるといきなり土下座をし出す
「ありがとうみんな。俺、幸せだったよ」
「えっと、カズマさん?」
「もういいんだ。今まで付き合ってくれてありがとう、本当にありがとう」
ウィズが困惑しているがカズマはまた頭を下げる。ここ数日の欲望の限りを尽くしていたカズマはどこに行ったのだろうか?
「わ、私は筋トレして体を洗っていただけだぞ!もっとえぐい命令...を?」
興奮しているダクネスだが、カズマの表情を見た瞬間冷静になった。なんせそう言っているカズマの表情は完全に死んでいたのだから。
「恥の多い人生を歩んできました。欲望のまま振舞っても、虚しさが残るだけでした」
確かにこの3日間は欲望のままに動いていからな、充分に恥の多い人生と言えるだろう。
「俺が死んだらこのジャージをもらってくれ。俺がこの世界にいたせめてもの証のために...」
「ちょっと待ちなさいよ...」
普段の態度が嘘の様にしおらしいアクアはカズマに近づく
「アクア、お前が買ってきた焼きそばパンとしゅわしゅわ。大変おいしゅうございました」
手を合わせて遠い目をしだしたカズマ。
「「カズマさん...」」
「カズマ」
「サトウカズマ…」
そんなカズマにこの3日間振り回されたウィズにアクア、ゆんゆんそしてダクネスが感極まった様子で近づいていく。ミツルギもそんなカズマの様子を見て深い悲しみを顔に浮かべていた
「カズマ、私と一緒に魔王を討伐するんでしょう?こんなところで居なくなるなんて言わないでよ…」
「カズマさんは死なせたりしません...もっと何でも言ってください」
「カズマ、諦めるのはまだ早い。きっと助かる方法がある筈だ」
「サトウカズマ、君はこんなところで諦めるような奴ではないだろう?」
カズマはアクア達の言葉に涙を浮かべており
「だったら最後に謝りたいことがあるんだ...ゆんゆん、ウィズ。二人と話している時、俺の視線はいつも胸のところに固定されてたんだ。ウィズは豊かだしゆんゆんは歳の割には発育がよくつい目が行ってしまったんだ…でも俺は自分が悪いとは思わずにそんな体をしているお前たちが悪いんだといつも思っていたんだ、ごめんな。ダクネス、屋敷で一緒に暮らし始めてからお前にはおっぱいしか求めていない。お前はおっぱいだ、おっぱい。ごめんな。アクア、ごめん。どんなに頑張ってもお前をヒロインとして見る事が出来なかったよ、ごめんな」
「「「ごめんっていえば何でも許されると思うな!!!」」」
カズマの謝罪になっていない謝罪を聞いた女性陣からの怒りの声が上がる。謝罪にかこつけて今までのセクハラ紛いの行動を自白し始めたのだから当然だろう。
「諦めないでよカズマさん!諦めないでよー!おねがい、お願いだからカズマさん!」
アクアが涙を流しながらカズマを揺さぶりながらそう懇願する
「これでもう思い残すことはない、ありがとうみんな」
カズマがそう言った瞬間、チョーカーがカズマの首からポトリと落ちた。
「あれ...なんで?」
いきなりの事に混乱しているカズマと女性陣+ミツルギ、その様子を見た俺はふとカズマの発言を思い出した。
「そういえばカズマは幸せになると思ってこのチョーカーをつけたと言いましたよね?それってカズマが満足したと幸せだと言えば外す事が出来たのではないですか?」
俺の言葉に周りの空気が凍りつくのと同時にアクア達の目線がゴミグスを見る目に変わり、それをカズマは顔面を蒼白にして震えていた
「…ねぇクソニート、もう一度このチョーカーつけてみなさい。大丈夫、優しいみんながきっとあなたを助けてくれるわ」
そう言ってカズマの首にチョーカーをつけようとしたアクアの手を俺は掴んで止めた。
「悪いがソイツをさせる訳にはいかないな。幾ら蘇生出来るからといって死なせていい理由にはならない」
「めぐみん…」
カズマが潤んだ目で此方を見てきた。俺は其れを横目で見るとアクアの手からチョーカーを奪い取った後
「まぁ、半殺しぐらいならば全く問題ないがな」
「めぐみん!?」
俺の言葉を聞いた女性陣は笑みを浮かべるとカズマにゆったりと近づいていく。
「ミ、ミツルギ!頼む、助けてくれ!!」
カズマは近くにいたミツルギに助けを求めるが
「悪いけど、今回は助けるつもりはない。しっかりと反省するといい」
「この薄情モン!!!」
ミツルギの言葉にカズマは怒りの表情を浮かべたが
「ギャーーーーーー!!!」
そのすぐ後にカズマの悲鳴がラボに響き渡ったのだった
そしてラボの外へと移動した俺は手にしていたチョーカーを空に放り投げるとカイゾクハッシャーで其れを貫く
「やっぱりどんな状況でも自分の欲望のまま生きるのは良くないよな」
そう口にすると俺は騒ぎがまだ続いている魔道具店へと戻っていく、その後カズマは女性陣にフルボッコにされた上に包帯だらけで暫く放置されてしまったのは余談である。
コロナの影響で私生活がかなり忙しくなってしまった為に通常更新に戻るまで時間がかかりそうです。
なので今回は特別に2話連続更新です。
楽しんでくれると嬉しいです
評価と感想をお待ちしてます。