「キールのダンジョンの探索クエスト?」
俺が何時ものようにギルドでクエストを探しているとルナさんからこのクエストを受けて欲しいという要請を受けた
「キールのダンジョンって言ったら、練習用のダンジョンで探索はし尽くされているのではありませんか?」
キールのダンジョンとはアクセルの街から山道を半日ほど歩いた場所にある駆け出し冒険者達の練習用ダンジョンのことをいう。練習用のダンジョンである為に山麓の入り口近くに『避難所』と書かれたログハウスも建てられているのが特徴だ。
その昔、とある貴族の令嬢に恋をした国一番の魔法使いキールがここを作り、立て篭ったという伝説がある。
当の昔に攻略されつくしたダンジョンの筈だが…
「実は最近そのキールにダンジョンにて隠し通路が発見されたのです。しかも通路の中にはレベルの高いモンスターも何体か確認されたので、こうして特別クエストを当ギルドで設定したのですが、中々引き受けてくれる方も居なかったので…」
成る程、だから俺にそのクエストを消化して欲しいというわけか。確かにデストロイヤーの破壊とベルディアの討伐による報酬で多くの冒険者達の懐は潤っている。わざわざ危険を犯してクエストに行く奴はいないよな
「分かりました。そのクエストをお受けしましょう」
「ありがとうございます!そのクエストで何か財宝を見つけたとしてもそれはめぐみんさん達が受け取って貰っても構いませんので、どうかお願い致します!」
俺はルナさんからクエストの用紙を受け取ると簡単な食料を持ってキールのダンジョンへと向かっていった
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「んで?どうしてお前達までついてきてんだ?」
「最近新しくスキルを覚えまして、そのスキルを試してみたいと思っていたんです」
「私はお宝があるなら何処にだって行くわよ!!」
同行者であるカズマとアクアが張り切った様子でそう言ってくる。
「まぁ…今回行くダンジョンは練習用のダンジョンだからそんなにレベルは高くないし問題はないだろう」
ふたりもやる気を出しているしここでアクセルの街へと追い返すのもアレだと思ったのでそのまま3人パーティーでキールのダンジョンへと向かった
やはりというか何の問題もなくキールのダンジョンに辿り着けた俺達はそのままダンジョンの奥へと向かい地図に記された場所を弄ると隠し通路へと続く階段が現れ、俺達は階段を降りて行く
「中々に暗いな…足元に気をつけてくれ」
「ここは俺に任せて下さい。『敵感知』!」
カズマが新しく覚えたスキル『敵感知』は所謂危険なものや安全なものを見分けることの出来るスキルだ。カズマ曰く視界はサーモグラフィーのような状態になっており、危険なものは赤く光って見えるという因みに習得に必要なスキルポイントは冒険者で1である。
「冒険者の他の職業のスキルを全て覚えることの出来るメリットはやはり大きいな」
冒険者はタンク役から後方支援に回復役といった幅広いフォローが可能だ。本職に比べたら威力も劣る上にスキルポイントもかかるがそれでもメリットの方は大きいと言えるだろう
「カズマさんも結構色々と考えているのね」
アクアが関心した様子でカズマにそう言う
「冒険者である以上はその職業のメリットを最大限に生かす方法を考えないと行けないだろ?何でもかんでも戦兎さんに頼るわけにはいかねぇよ」
「カズマは兎も角アクアもわざわざついて来なくても良かったんだそ?」
俺の言葉にカチンときたのかアクアが詰め寄ると
「ねぇ、めぐみん。私が誰なのか忘れたのかしら?私は水の女神アクア様なのよ?スキルなんて使わなくもこんな暗闇私の目には真昼のようにはっきりと見えるのよ!」
胸を張ってそう言うアクア、別に胸を張って言うことではないと思うのだが…
「えっと…アクア、お前さっき暗闇でも普通に見えるって言ってたよな?」
先頭を歩いていたカズマがアクアの言葉に急に立ち止まるとそんなことを口にする
「言ったけどそれがどうしたのよ?」
「それってつまり…前に馬小屋で一緒に寝てた時もずっと見えてたわけ?」
俺はカズマの言わんとしていることに気づいてしまった。見かけだけならばアクアは美少女な上にカズマは多感な年頃の男子高校生だ
「見てないわよ?ゴソゴソと音がしたら反対の方向をみて寝るようにしてたから」
それがどうかした?という表情でカズマを見ているアクア
「……ありがとうございます。アクア様」
真っ赤な顔をしてアクアに礼を言うカズマに俺は元男としての同情を覚えた
それから俺達はカズマの敵感知と千里眼を駆使して先にある空間が安全なのかを確認しながら先に進む。ダンジョンらしく通路には幾つかのトラップもあったがそれもカズマの罠感知により難なく突破していると
「にしても随分と手ごたえがないダンジョンね?そろそろアンデットモンスターの一匹や二匹が出て来ても良いんじゃないかしら?」
ダンジョン探索に飽きたのかアクアがそんなことを言い出す
「馬鹿!!お前はどうしてそうフラグを立てるんだ!!」
アクアのフラグとも言える台詞にカズマが律儀に突っ込みを入れているのと闇の中からモンスターが襲い掛かるのとほぼ同時だった。
「これはグレムリンね。ダンジョンには下級の悪魔が住み着いたりするのよ」
俺が倒したグレムリンの死体を見下ろしながらアクアはそう口にする。
「やはり簡単には先に行かせてはくれないのか…」
俺は溜息を吐くとそう口にする。あくまでも俺達が特殊なだけで冒険というのは本来はこのように苦労して先に進むものなのだろう、そう気を取り直すとドリルクラッシャーを構えながら通路の先に進む
「これは…」
俺は言葉を無くした。俺の目の前には途中で力尽きたのだろう、白骨化した冒険者の死体が転がっていたからだ。
「このまま放って置くのもアレだし何とか埋葬してあげたいけど…」
カズマの言う事は最もだ。この世界では人の命というのは俺達が考えている以上に軽い、だからと言って死体を放っておくのも気分が悪い、どうしたものかと悩んでいると
「ふたりとも少し退いてくれるかしら?」
「アクア?」
カズマがアクアの言葉に首を傾げているとアクアは優しげな表情で死体の近くに屈むと手をかざし
「志半ばで倒れた哀れな魂よ。安らかにお眠りなさい…」
アクアが優しくそう言うとアクアの手から光が溢れ冒険者の死体を包み込むと冒険者の死体はその場から消えた
「さて、先に行きましょうか?」
そう言って先に進んでいくのアクアに珍しく女神としてのオーラを感じた俺達は何も言わずにそのままアクアの後を追って奥に進んだ
その後何度もアンデット達の襲撃を受ける俺達。その度にドリルクラッシャーとカズマの初期魔法によるサポート、アクアの浄化魔法などで撃退して行くと遂にダンジョンの最奥地へと到着する
「ここが最奥か…行き止まりだな」
俺達の目の前には壁しかなく先にはもう何もないことがわかった
「まさか、ここで終わりなのかよ?他に何かないのか…っておわ!!」
カズマがそう言って壁を弄っていると何かに触れたのか壁が消えカズマはその奥へと倒れ込む、そしてカズマが倒れ込んだ部屋の奥から謎の声が聞こえて来る
「おや…数百年ぶりのお客さんだねぇ。初めまして私はキール。その昔貴族の令嬢を攫った悪い魔法使いさ」
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その昔、キールという名のアークウィザードは偶然見かけた貴族の令嬢に一目惚れをした。たが、彼はその報われることのない恋心を押し殺しながら魔法使いとしての修行を続けた。
そして月日が流れキールは遂に国一番のアークウィザードとなりその国に大きな貢献をする。その後王は彼に尋ねた。貴殿の功績を称えどんなものでも一つ望みを叶えよう。と
その問いにキールは答えた。
世にたった一つ。どうしても叶わなかった望みがあります。それは、虐げられている愛する人が幸せになってくれる事、私が望むのはそれだけです
「そう言って、私は貴族の令嬢を攫ったのだよ」
久しぶりに人と話すことが楽しいのがはしゃいだ様子でキールはそう言っている
「そして攫った後にプロポーズをしたのさ、そしたら見事に二つ返事でオッケーをもらえてねぇ、あの時の感動は今でも忘れられないな。その後、令嬢を攫った罪で指名手配されてね、何度か王国軍とのドンパチをしたのさ、いやぁ〜あの時は楽しかったなぁ〜」
俺は問答無用でキールに襲い掛かろうとするアクアをカズマとふたりで抑えながら話を聞いていた
「そしてこのベッドに眠っているのが私が攫ったお嬢様さ。見てくれこの骨の白さを。惚れ惚れとする美しさだろう」
「済まないが骨の美しさはよくわからないんだ」
俺が冷静にキールの言葉にそう言っているとアクアが彼女の白骨に近づき
「安心しなさい。お嬢様は何の悔いもなく成仏しているわ、生前はきっと幸せに過ごせたのね」
アクアは優しげな笑みを浮かべておりキールはそんな俺達を見ると部屋の奥へと歩いて行き
「君達がここまで来たのはあそこにある財宝が目的なのだろう?」
キールが指さした先にはこのダンジョンのものと思われる財宝の他に電車と海賊船が描かれたフルボトルが2本あった
「アレは…フルボトル!?それに2本も!何故こんなところにあるんだ?」
「それは私と彼女が大陸中を旅していた時に手に入れたものさ、まぁ…何に使うものなのかはわからなかったかね。もし、必要としているならば君達にあげるよ?そこにある財宝も含めてね、その代わりに私の願いを聞いてはくれないか?」
そこまで言うとキールはアクアの方を向き
「どうか私を浄化してはくれないか。君はそれができる存在なのだろう?」
アクアがキールを浄化する為の魔法陣を床に書いている間、俺達はキールからこれまでの人生?について話を聞いていた
「いやぁ、本当に助かるよ。彼女が亡くなった後の無限に続くような時間はとても苦しいものでね。このまま朽ちるまで眠り続けようかと思っていたんだが、とても強い神気を感じてねぇ…こうして目が覚めたというわけさ」
キールはお嬢様の手に触れながら嬉しそうにそう呟いていた。
かつてキールはお嬢様を守りながら戦った際に重傷を負い、彼女を守るために人であることをやめてリッチーになることを選んだらしかった。…大切な人を守る為に人間であることを捨てる。ウィズにしろキールにしろその強さというのは心の底から尊敬できるものだった
「大切な人を守る為に人の身を捨てリッチーとなった魔導師キール。水の女神アクアの名の元に貴方の罪を…許します」
普段と全く雰囲気の異なるアクアが魔法陣の中心に居るキールに手をかざしながらそう言っていた。
「誰だろか…この人は?」
カズマが静かにそう呟いた。確かに普段のアクアは呑んだくれだしトラブルしか生まないから当然と言ったら当然の反応なのだか、そんな扱いにほんの少しだけ同情を覚える。アクア本人には絶対に言わないが
「次に貴方が目を開けた時にはエリスという胸が不自然な女神がいるでしょう。もし、貴方がもう一度彼女に会いたいのならば、例え恋人同士じゃなかったとしてもどんな形でも良いから彼女に会いたいのならばエリスに願いなさい。もう一度彼女に会いたいと、きっとエリスは貴方の願いを叶えてくれるでしょう」
「女神様…私は彼女を…妻を幸せにすることが出来たのでしょうか?」
キールは不安そうにそう言う。自分の所為で彼女に苦労させたんじゃないのか、彼女は自分と居て本当に幸せだったのか、彼のそんな不安が苦悩が言葉から伝わってくる
「…『セイクリッド・ターンアンデット』」
アクアはキールの言葉に何も言わずにニッコリと笑うとキールを浄化する。
「妻よ…今行く…」
その言葉を最後にキールの姿はその場から消えた
その後俺達はキールの財宝とキールがくれたふたつのフルボトルに残留していた魔力を回収するとキールがいた隠し部屋から出ると出口へと向かう
「なぁ…あのお嬢様は本当に幸せだったのかな?」
出口に向かって歩いている時カズマがふとそんなことを口にする
「さぁ?私にそんなこと分からないわよ。でも、彼女の魂は何の未練も無く成仏していたわ。それが答えじゃないのかしら?」
「そうか…そうだと良いな」
カズマもアクアの言葉に何かを感じたのか黄昏るようにそう言っていると
『ぎゃおおおおおおおお!!』
突然闇の奥からアンデットのものと思われる叫び声が聞こえて来た
「またかよ!?一体どうなってんだ?いくらなんでもモンスターの襲撃が多すぎるだろ?こんなの初心者向けのダンジョンじゃないだろ!」
「そう言えば…キールの奴が言ってたよな?強い神聖な力を感じて目が覚めたって、もしかしてその神聖な力の持ち主って…」
そう言うと俺はアクアの方を見る、カズマも俺の言いたいことに気づいたのか一緒にアクアの方を見る
「そう言えば…行きの時もやたらとアンデットに襲われたよな?もしかしなくても俺達が襲われ続けた原因はお前じゃないだろな?」
カズマの鋭い突っ込みにアクアは冷や汗をダラダラと流しながら固まる
「そ、そんな訳じゃない…た、多分」
「おい、多分ってなんだ」
アクアの言葉に突っ込んだ俺はカズマと一緒にアクアから距離を取る
「ね、ねぇ。どうしてふたりして私から離れようとするの?ダンジョンは暗いし危険だから一緒に居た方が良いと思うのだけど…」
しかし俺達はそんなアクアの言葉を無視して更に離れようとすると
「いやぁぁぁぁぁ!私をひとりにしないでぇぇぇ!!」
涙を流しながら俺にしがみ付いて来た
「大声出すな!引っ付くな!逃げれないだろ!」
そんなことを言っているとカズマがひとり距離を取るのを視界に捉えると俺はすかさずカズマの襟首を掴んで逃げれないようにする
「馬鹿!引っ付くんじゃねぇ、潜伏使えねぇだろか!!」
「カズマ、自分だけ逃げるじゃないよ?潔く一緒に地獄に行こうぜ?」
「なんていう清々しい笑顔!!」
そうこうしている間に闇の中から大量のアンデット達がこちらに向かって群がって来るのが見えた
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「チキショウ!こうなりゃヤケクソだぁぁぁぁぁぁ!!」
「まとめてかかって来いやぁぁぁぁぁぁ!!」
俺達の三者三様の悲鳴が通路に響いていた…
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「ヒック…エッグ」
「…何があったのか聞いて良いですか?」
クエストに行った俺達を追って来たゆんゆんが見たのはダンジョンの入り口前で泣いているアクアとボロボロな状態でいる俺達だった
「もう二度とアクアとはダンジョンには入りません」
「し、仕方ないじゃない!私がアンデットにたかられるのは生まれつきなんだから!!謝って!私と一緒にダンジョンには行かないと言ったことを謝ってよ!!」
「開き直ってんじゃねぇよ!置いていかれなかっただけでもありがたく思え!!」
「そうは言ってますけどカズマは一度私達を見捨てて逃げようとしましたよね?」
そんな醜い言い争いを見ていたゆんゆんが俺達にパラライズを使ったのはそれから数分後のことだった。
「そのキールのダンジョンで何かあったの?あったのは宝物だけじゃなかったんでしょ?」
パラライズが解けて何とか動けるようにようになった俺が立ち上がるとゆんゆんがそんなことを聞いてくる
「そうですね。ダンジョンの奥にいたのは愛する人の為にひとりでずっと生きていたひとりの『人間』がいただけですよ」
そう言うと俺はダンジョンの奥であったことをゆんゆんに全て話した。そして話を聞き終えたゆんゆんは優しげな表情を浮かべ
「その人は絶対に幸せだった筈よ?同じ女性としてそこまで大切に思われたんだから未練なんて絶対にないわよ、断言しても良いくらいに」
「そうですよね…きっと、そうに違いないですよね。未練なんかなかったですよね…絶対に」
ゆんゆんの言葉に夕焼けに染まる空を見上げるとふたりがいつか再会出来ることを心の底で祈った
その夜ギルドにて大規模な宴会が開かれることになった。
俺達がお宝を手に入れたことが漏れたのか冒険者連中から奢れコールを受けたカズマが気を良くしてギルドにいる全員に奢ることになり今に至る
「全く…カズマらしいと言ったらカズマらしいですが後で後悔しても知りませんからね」
呆れたように俺はそう言うが、カズマのそういうところが周りから好かれる要因であることを俺はちゃんとわかっているのだ
その後調子に乗ったカズマがゆんゆんにスティールを仕掛けると案の定パンツを奪い取ってしまい、周りの女性冒険者達にボコられ、そしてアクアの宴会芸が炸裂し何時もの夜以上にアクセルのギルドは賑やかなのであった。
「呑気なものだなねぇ…ま、束の間の休息ってのを精々楽しんで置くんだね」
そんなことを言っているのはギルドの扉に寄りかかっているクリスだ。
しかしクリスの言葉はこの場にいる人間の耳には届くことはなかった
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