『クロックタワー3』 の続編(?)なんぞを考えてみた   作:蜜柑ブタ

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サイトあげていた、プロローグから、1~3までの話を一つにしました。


流血、殺人表現あり。


注意!


クロックタワー3続編ネタSS お試し短編

 

ROUND1 「学生寮(昼)」

 

 

 

 

 

 

 

side:アリエラ

 

 

 

 

「あ…あの」

 

 あ~あ…、また来たわ。本日4回目かしら、ペース早いわね。

 それでも優しい優等生の顔を被って、「どうしたの?」って振り向く。

 

「こ…これ、お兄さんに!」

 お決まりのセリフと同時に手渡してきたのは、これがまたお決まりの可愛い封筒に入った手紙…いわゆる恋文ね。

 私が受け取ると、その子は踵を返して走って行ってしまった。これもお決まり。もう見飽きたわ。もうちょっとバリエーションないのかって思う私の方が贅沢なのか…。

 

 私の名前は、アリエラ・ハミルトン。もうすぐ15歳。

 こう見えてもいいところの学校に通う優等生。

 自分で言うのもなんだけど、ママ似の美人だと自負する。言葉通りモテてるし。でも付き合ってる人はいないわよ? だって面倒だし、中々好みの人っていないんだもん。はあ? 贅沢? うるさいわね! 理想があったっていいじゃない!

 

 ……話がそれたわね。

 そうそう、私には同じ学校の同じ学年に血を分けた兄弟が通っているの。

 名前は、アジーン。二卵生の双子の兄。オカルト趣味とモデルガン収集とかの趣味さえなかったら、文部両道の非の打ちどころのないとはこのことみたいな男だ。

 

 さっきもそうだけど、あいつは私から見てもうっとうしいぐらいモテ男で、そのくせ堅物で、来る女は全部お断りしちゃってる。

 そこがいいっていう子も少なくないから、腹が立つのよ。

 べ、別にアジーンは変な性癖があるわけじゃないのよ! ただ興味がないだけで…。

 

「アリエラっ」

「っ!! ちょっ…、びっくりしたじゃない!」

「授業は終わったんだろ? 用がないなら部屋に戻れ」

「いちいち言わないで。大体なんで違う錬のクラスなのに迎えに来るわけ!? しかもここ最近毎日じゃない!」

「……」

 う…、またその顔。

 アジーンは、何を考えてるのか分からない顔してることが多いから、何といえばいいのか…眼力があるのよ。

 特に心配事とかあると、こういう顔をする。言葉にできないけれど、強い意志だけは感じ取れる。

 思い当たることなんて、一つしかない。

「…何も知らないわけじゃないんだから、大丈夫よ」

「ダメだ」

「馬鹿兄っ」

 廊下を二人で並んで歩きながら、私は軽く肘でアジーンの横腹を突いた。

 

 アジーンの心配事は、私と、家族全員。

 

 私の血には、ルーダーと呼ばれる女勇者の血が流れてる。

 アリッサママから継いだもので、私はそのことについてママから教えてもらってた。どう戦うべきなのか、何ができるのかとか、色々教わってた。

 もうすぐ私は、ルーダーの力が一番強くなる15歳になる。

 15歳のルーダーの心臓は、ルーダーの宿敵である魔のモノにとって最高の供物だから、だから警戒しているの。

 ママも…15歳の時に狙われて辛い思いをしたらしい。

 私のこともだけど、私の心配の種は、私達よりもずっと下の三つ子の妹達のことだ。

 あの子たちは、もうすぐ小学校に入るくらい幼いから、いきなり襲われるなんてことはないだろうけど…。

 つまり兄弟の中で、男はアジーンだけ。アジーンは男だからルーダーの力はない。

 はず…なんだけど。

「…ねえ。ひょっとして、まだあの夢見てるの?」

「……」

 否定しないってことは、答えはYESね。

 アジーンは、予知夢みたいなことができる。それにすごい勘がいい。

 男だからって、ルーダーのサラブレッドの家系なんだから、ひょっとしたら少しそれっぽい力があるのかもしれない。

 アジーンが、頻繁に見る夢は、私と妹達が15歳の誕生日を迎えた日に、不幸になるという内容。具体的に何が起こるのかは分からないらしいけど。

 ルーダーの性質を考えると、繰り返し見るということはそれだけ警戒しろというフラグでしょうね。

 無愛想に見えて、アジーンはすごい家族思いだから、こうしていちいち隣の建物まで妹を迎えに来て、女子寮まで送るのである。

 ……別に、嫌じゃない。

 守ってくれるのは嬉しいと思うけど…。だけど…。

 

「戸じまり、気をつけるんだぞ」

「分かってるわよ。それと、ハイ、これいつもの」

「……」

 とりあえずこれで私の恋の架け渡しの役は終わったわ。

「さっさと誰かと付き合っちゃえば面倒じゃなくなるのに」

「…生涯添い遂げれるって思えた相手じゃないと」

 うわっ、クサ。たまにこんなこと言っちゃうのよね。これじゃ余計に女が寄り付くわよ。

「じゃあね」

 そう言って部屋の扉を閉めようとした、その時。

 

「ああ! ここにいた!!」

 教員の一人が大慌てで駆けてきた。

「アジーン君、アリエラさん! ととととととと、とにかく落ち着いて、ね、落ち落ち着いて…!」

「先生が落ち着いてください」

 冷静な突っ込みもアジーンならでわよね。

「何があったんですか?」

 私が聞いても、先生はただ職員室に来るようにと言っただけだった。

 私とアジーンは、顔を見合せることしかできなかった。

 

 職員室に行くと、警察の人がいた。

 そして、アジーンの予知夢は当たってしまった。

 

 妹達の誘拐という形で、長い悪夢の幕が切って落とされたのだ。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

side アジーン

 

 下の妹…三人が送迎バスの横転事故に乗じて何者かに誘拐された。

 アリエラばかりに警戒をしていから、それは予想外だった。

 あの子たちは、まだ6歳にもなってない。契約の儀式に使うには、まだ9年も先の話だ。

 今のうちに生贄の確保を? 考えそうな手だが、随分と気が長い相手だと思った。

 だからと言って、まだ魔のモノの犯行だと決まったわけじゃない。単純に幼女誘拐が目的かもしれないが、俺にはその可能性の方が圧倒的に低く感じられた。

 それならば、妹達に危害が及ぶことはないだろう。現時点で何の力もないただの幼子に価値はない。

 しかし、15歳間近のアリエラに魔の手が伸びないという保証もない。

 こちらは引き続き警戒をしておかなければならないだろう。

 ふと見ると、俺の隣に座っていたアリエラが俺の肩にもたれかかってきていた。

 微かに震える体を、俺はその肩を抱き寄せた。

 アリエラは普段強気だが、不安になったり、辛いことがあると、俺に甘えたり縋ったりしてくることが多い。

 アリエラの不安が少しでも軽くなるように、優しく背中を擦った。

 ぎゅうっと俺の腕にくっついてきたら、今度は頭を撫でてやった。

「……大丈夫…よね?」

「……」

「言ってよ! 大丈夫だって! 分かるんでしょ?」

「………ああ」

 それは大丈夫だ。

 何故なら…。

 

 俺が…、この命に変えてでも…。

 

 その時、何か寒い空気が過ったのを感じた。

 ……やはり下の妹達だけじゃ物足りないか。

「アジーン?」

「…寮長に、俺の部屋にアリエラが泊まってもいいように頼もうと思うんだが…」

 …出来うる限り最善な手だと思ったんだが、何故かアリエラは顔を真っ赤にして、バカ!っと張り手をしてきた。

 何故?

 

 

 こうして俺達の長い悪夢は、始まった。

 

 

 

***

 

 

 

ROUND2 「学生寮(夜) その1」

 

 

 

 

 

 その夜。

「……ア、ジーン?」

 ふと目を覚ましたアリエラは、異変に気づいた。

 床に布団を敷いて寝ていたアジーンの姿がない。

 窓の外で、カラスが騒いでいるのに一瞬びくりとしながらも、意を決したアリエラは起き上がって枕もとの自分のカバンを探った。

 そして取り出したのは、母アリッサからもらった精霊の瓶。

 ルーダーの武器であり、水を入れることで魔のモノや幽霊を払う聖水を作ることができるハミルトン家に伝わる物。

 手早く服を着替えたアリエラは、精霊の瓶と様々な護身装備を入れたポーチを腰に巻いて準備を整えた。

 その時、扉を乱暴に叩く音が響いた。

 こみあげてくるものを持ち前の強気で押えて、ゆっくりとアリエラは扉に近づき、ノブを攫んだ。

 そしてふと足元を見たとき、扉の隙間からわずかな血が部屋に流れ込んでくるのを見た。

 扉が何者かに無理やり押されて開かれ、飛び込んできたのは…、恐らく見回りの警備員の人間だった。

 ただし、すでに息絶えた…。

 アリエラは、悲鳴をあげそうになるのをどうにか堪え、血の匂いが充満する中、折れそうになる膝を懸命に奮い立たせてしっかりと立ち、深く深く息を吸って吐いた。

 

 戦いの幕は、すでに切って落とされている。

 

 母から聞かされていた、試練の時が来たのだ。

 アリエラは、落ち着きを取り戻すと、最初の犠牲者となってしまった警備の人に心の中で冥福を祈り、部屋の外へ出た。

 真夜中の廊下を窓から降り注ぐ満月の光だけが照らす。

 いつでも瓶と護身用の装備が使えるようにして、アリエラは誰もいない…、たった今人が一人死んだにも関わらず、全く人の気配がない学生寮の廊下を歩いて行った。

 これは明らかに人ならざる者の仕業だ。

 今どんなに叫んでも、電話や非常ベルを使っても無駄だろう。

 ここを支配した者を倒さない限り。

 生き残る道はない。

 表情を引き締めたアリエラは、しっかりと前を見て力強く歩いて行った。

 その時。

「----っ!」

「まて、俺だ」

 その声を聞いて、アリエラは振りかけようとした聖水を直前で止めた。

「…どこ行ってたのよ! レディを置き去りにして!」

「すまない。恐らく、敵の幻覚か何かだと思うんだが…やられた」

 申し訳なさそうに俯くアジーンに、アリエラはそれでもいじけた。

「だからって何も言わないで出ていくってどうなのよ」

「起こすのは悪いと思ったんだ」

「今はそれどころじゃないわ!」

「!」

「?」

 するといきなり、アジーンがアリエラを自身の背中に隠した。

「---あれ? アジーンに、アリエラちゃんじゃないか!」

 そこに来たのは、同級生の一人だった。

「どうしたのよ、こんな時間に?」

「それはこっちが聞きたいよ! そんなことよりなんか寮全体がおかしいんだ!」

「そんなことは分かっている」

「だったら…」

「っ! 後ろ…!!!!」

「えっ?」

 アリエラが声をあげたが、すでに遅かった。

 背後から振り下ろされた巨大なハンマーが、同級生の頭部に振り下ろされ、床に大量の血が散らばり同級生の体がそこに沈んだ。

「くっ…、走れ!」

 アジーンが、アリエラの手を取って反対方向に走り出した。

『グハハハハハハ! 逃がさんぞ!!』

 獣のような野太い声が背後から聞こえ、重たい足音が追ってきた。

 鍵が掛っていなかった用具入れの倉庫に逃げ込むと、ほどなく扉を蹴破ろうとする音と衝撃がきた。

「どうするの!?」

「下がってろ!」

 ついに扉を蹴破って侵入してきた巨漢…ハンマー男に向け、アジーンが開封したての粉末洗剤を投げつけた。

 ハンマー男がそれを自前のハンマーで薙ぎ払おうとすると、中身が宙を舞い、ちょっとした煙幕のようになった。その隙に、アジーンがハンマー男にタックルを食らわし、積み上げられた箱の方に倒して、倒れてきた箱がハンマー男の体に降ってきた。

 その隙に、二人は部屋から脱出した。背後でハンマー男が起き上がり、雄たけびを上げるのを聞きながら。

 寮の端まで走ったところで、息を切らしたアリエラがその場に膝をついた。

 まだまだ体力が余っているアジーンは、階段を確認した。

「これから…どうするの?」

「さっきの用具室で鍵を見つけた。たぶん掃除時間に返すのを忘れたんだろう。運がよかった」

 そう言って、自分達がいる錬のマスターキーを指で弄んだ。

「けど、それ、この寮でしか使えないじゃない」

「分かってるさ。だが何か脱出に使えそうな物が見つかるかもしれない」

「あ、そうか…」

「さて…と、どこから攻めるか…」

「ねぇ、いっそのこと二手に分かれるってどう?」

「…敵は真っ先におまえを狙うぞ?」

「私が囮になっている間に、アジーンが探索するのよ、その方が安全じゃない。いいと思わない?」

「あのな…」

「あのね。私は、あっさり殺されるほど、か弱くないの・よ?」

 アリエラが胸を張って言うので、アジーンは頭を抱えて溜息をついた。彼女の負けず嫌いはいつのものことだが…。

「…分かった。だが絶対に無理はするな。やばいと感じたらすぐ逃げて、俺を呼べ」

 こうなっては、YESという以外ない。

「極力呼ばないようにするわ」

 流し目をよこしながら、アリエラは悪戯っぽく笑って暗い廊下を歩いて行った。

 その後姿を、アジーンが見守り、やがて鍵を握りしめて階段を駆け下りていった。

 

「さあ…、勝負よ」

 

 アリエラは、強い意志を宿した目で暗闇を睨み、不気味な満月に照らされた廊下の奥に向かって挑発するように言った。

 

 

 

***

 

 

 

 

ROUND3 「学生寮(夜) その2」

 

 

 

 

 

 

 アリエラは廊下を走っていた。

 背後にハンマー男が迫って来る。だが見るからに重量であるハンマー男はアリエラに追いつけずどんどん距離を引き離されていく。

「(体力づくりしておいてよかったわ)」

 アリエラは密かにガッツポーズをした。

 だが階段を降りようとした時だった。

「キャアッ!」

 暗いため床に零れていた水に気付けなかったアリエラは、転倒して階段を転がり落ちた。

「うっ…」

『グハハハ! 間抜けだな、アリエラ!』

「うるさいわね!」

 階段の上から下賤な笑い声をあげるハンマー男に、体の痛みを堪えてアリエラが気丈に叫んだ。

 ハンマー男が動けないアリエラに迫ろうとした、その時。

 

「オイ。ハンマー野郎っ」

 

 アジーンの声がハンマー男の上の方から聞こえ、ハンマー男がそちらを見た瞬間、ハンマー男の顔面にロープが括りつけられたバケツがヒットした。

『グア! 小僧!』

「よそ見してる暇はないぜ?』

『!?』

 ハンマー男が鼻を押さえて上の階にいると思われるアジーンを見上げた時には、アジーンはすでにハンマー男の横に来ていて…。

 

 ゴキッ

 

 背後からハンマー男の首を掴んだアジーンは、目にもとまらぬ速さでその首をありえない方向に曲げてしまった。

 ハンマー男は、アジーンが手を放すと倒れた。

「大丈夫か?」

 アジーンが階段を降りて倒れているアリエラの処に来た。

「ごめん…、助かったわ。あ、ありがとう…」

『ウググ…グゥ…』

「ちっ。この程度じゃ死なないか。立ててるか?」

「大丈夫。行けるわ」

 アジーンの手を借りて立ち上がったアリエラ。

 二人はハンマー男が復活する前にその場から退散した。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 職員室に駆け込んだ二人は、音をたてないように戸を閉めた。

「さすが魔のモノの配下…、ルーダーの力じゃなきゃ始末できないか…」

「だったら私の出番ね」

「…そうだな。けどアリエラ…、おまえルーダーの力使えるか?」

「っ…」

 アジーンに言われ、アリエラは思わず体を固くした。

 アリエラにはトラウマがあった。幼い頃のことだが、ある事件をきっかけにルーダーの力を恐れるようになってしまっていたのだ。

 アリエラの反応を見て、アジーンは、フウッと息を吐き。

「だったら無理に戦う必要ない」

「でも、あいつは私じゃなきゃ! ルーダーじゃなきゃ倒せないのよ! 我儘なんて言ってる場合じゃないのよ!」

「それで隙ができてやられたら元も子もないんだ。俺がやる」

「あんたね…。ルーダーは、女しかなれないってママから聞いてるでしょ? 男のあんたがどうやってあの化け物と倒すわけ?」

「そこんとこだが、俺も、よーわからん」

 アジーンの言葉にアリエラはずっこけた。

「分かんなくて言ったわけ!? ばっかじゃないの! 馬鹿よ! ほんとに馬鹿!」

「まあ、聞け。これはあくまで俺の直感と、憶測だが……、たぶん俺にも奴らと戦える力はある」

「……証拠は?」

「ない」

「じゃあダメでしょ…」

「だから言っただろ。直感だって。それに…、歴史の古いルーダーがいつまでも女だけってのも味気ないし、そろそろ方向転換してもいいと思わないか?」

「そんなのアジーンの言い分でしょ? 現実は違うわ」

「俺と、おまえは、双子だ。二卵性だが、血の繋がりは、親より近い」

「だから?」

「ひょっとしたら俺にも使える可能性があるってことだ。たぶん、二人同時は無理だが、片方が力を発動するってことはできるかもしれない」

「だから…、もう…、言っても無駄よね。仮にあんたの言いたいことが正しかったとしてもよ、ルーダーにはそれぞれ武器があるのに、あんたはどうするわけ? まさか…素手とか…、……ハンマー男の首をあんなことにしたぐらいだからありえるわね」

「俺は、物心ついた時から、普通の人間より勘が良いとか、予知夢とかができた。アリエラにルーダーの力が発言するよりも前からな…。直感って言ったが、本当は、直感じゃなく、”確信”だ。アリエラ、おまえだけが戦わなくていい。母さん達が背負ってきた重い試練と使命は、俺という革命で軽くしてやれると考えている」

「それって妹達のためでもあるんでしょ?」

「そうだな。これから育っていく次の世代のためにも、俺は確かめなきゃいけない。俺がルーダーの力か、それに等しい力を使って魔のモノと戦えるかどうかをな」

「じゃあ、アジーンがハンマーを倒す気なの?」

「…そうしたいところだが、困ったことが分かったんだ。話すタイミングを間違えたな」

「なに? 何か問題が起こったの?」

「寮全体に張られているこの異様な空気…、これは魔のモノがやったものじゃないてことだ」

「どういうこと?」

「あくまで俺の推理だが、妹達を攫った奴の仕業だ。ハンマーの野郎もそいつが生き返らせたんだ」

「何か証拠を見つけたわけ?」

 アリエラがそう言うと、アジーンは手招きして、職員室に並べられている机のひとつの前に来ると、その下の床を指さした。

 そこには魔法陣のようなものが描かれており、生贄にした思われる小動物の死体が置かれていた。

「嘘でしょ…。なんなのよこれ、どうしてこんなところに…」

「学校内に刺客がいたのか…、もしくは夜の間に忍び込んですごい早業で仕掛けたのか…、どっちにしろこれを解除しないとルーダーの力は封じられたままだ」

「そんなことも分かるの?」

「何のためにオカルト資料を読み漁ってたと思ってる?」

「あ~、なるほど、こういう時のためだったのね。オカルトマニアに没頭してたわけじゃなかったんだ?」

「それでだ」

 アリエラの言葉を軽くスルーしたアジーンは説明を続けた。アリエラはそれを少し不服に思った。

「簡単に寮内を見て回ってきたが、呪式自体は強力な割に構造自体は簡単だ。アリエラが持ってる聖水で壊れる。または、物理的に破壊するかすればいい。ただな…」

「ただ? なに?」

「術の力の源は、あのハンマー野郎……、言い方を変えれば魔のモノの配下ってことだ」

 アジーンは、アリエラの顔を見た。

「つまり?」

 アリエラは、アジーンが言いたいことを察しながらも一応そう聞き返した。

「いくつもあるこの魔法陣みたいな仕掛けが破壊できれば封じられたルーダーの力が戻るんだが…、術に回されていたエネルギーが魔のモノの配下に戻ることになるから魔のモノの配下を中心に異空間が一時的に発生する。奪われていたエネルギーが急に戻ってきたことによって発生する密閉空間。そうなると内側に閉じ込められたら出られないし、外から入ろうとしても入れなくなる。この暴走は魔のモノの配下自身でも制御できない。更に、術が破壊された時の衝撃でパワーを奪っていた術の最後の部分を壊した奴がこの暴走に巻き込まれる。つまり術を破壊した時に発生する異空間には引きずり込めるのは二人の内ひとりだけ。俺か、アリエラ、どちからが魔のモノの配下と戦うことになるってことだ」

「……マジ?」

「マジだ。だから魔のモノの配下と戦えるのは、どちらか一方になる。一方を殺し終えたら、次はもう一人をって流れだな。だが俺達は二人で生き延びなきゃならない。妹達を取り返すためにも、アリエラの心臓を狙ってやがる輩を潰すためにも。どうする? これから手分けして呪式を破壊をすることになるんだ、最後の仕掛けを壊した方が敵と一対一で対決になる。戦えそうか?」

「……んどうだわ」

「ん?」

「面倒だって言ったのよ! 誰よ、こんな面倒くさいことやったの!? 正々堂々かかって来いって話よ!」

「術師は基本的に前衛向けじゃないからな…」

「私の心配なんてしなくていいわ! ここで昔の事なんて気にしてたら、私は永遠にこのままだわ、そんなの絶対イヤ! ルーダーとか関係ない、私は私の戦いをして、そして勝つわよ!」

「…ああ、それでこそアリエラだ。安心した」

「べ…、別にあんたのためとかじゃ…」

「ところで、コレ、拾ったからやる」

「なによ? 矢? 霊木の矢ね。これって確か魔のモノの配下に効くんじゃなかったかしら」

「そうだ。だからおまえが持っておけ」

「それじゃあ、私の方からも、コレっ、あげる」

「マガタマ? こんなもの拾ったのか」

「こんなものって失礼ね。勝手に人の部屋で拝借したのは…、あれだけど、そんなこと言ってられないし、これ、お土産屋さんで売ってるようなちゃちな物じゃないわ。あんたならよく分かるでしょ?」

「ああ、確かにこれには霊的な力がある。本物だ。それも何かしらの神聖な儀式を経て力を込められた、身につけとくか、投げつければ多少は使える。ありがとう」

「べ、別にお礼なんていらないわよ!」

「反対意見がないなら、さっき言った通り、分担して封印をぶっ壊しに行くぞ。もしやばくなったら…」

「ムチャはしないわよ。そっちこそ気を付けなさいよ」

「それと、封印が最後の一つになったらのことだが、最後のを壊した方がハンマーと戦うことになる。その場で決断できなかったら合流してどっちが戦うか決める。怪我したとかで戦えそうにないなら戦える方が戦う。それでいいな?」

「ママはなんの事情も知らないまま戦う羽目になって生き残ったのよ。ママの真似ってわけじゃないけど、頼り過ぎていざって時に一人で戦えなくなったらいけないから極力そうならないようにするわ」

「母さんは母さん。俺達は二人って利点を生かすべきだぞ。負けず嫌いなのはいいが俺達二人が生き残る確率が高い方がいいに決まってる」

「うっ…」

「おまえのこと、頼りにしてしてるだぜ、これでも」

 アジーンが微かに笑みを浮かべるとアリエラは、カーっと顔を赤くさせてそっぷを向いた。

「もちろんアリエラの言い分も理解できる。お互いに依存し過ぎていざという時頼れない状況に陥ったら死ぬ確率はグンと上がるだろう。きっとハンマー野郎だけで終わらないだろうから、俺達は俺達の戦い方というものを見つけていかなきゃな」

「うわ…、ママの話で聞いた魔のモノの配下全員と戦わなきゃならないってこと? 下手すると増えてたりして?」

「たぶんそれはない」

「なんで言い切れるのよ」

「勘だ」

「勘って…、あんたねぇ…。まあ、アジーンの勘は良く当たるから信じるわ」

「さて、話はここまでだ。ここからは、分担して封印を壊して回ることになる。不安なら二人で行動するってもありだがハンマー野郎の追跡を掻い潜るのに二人だと不利だ。もし袋小路に追い詰められたり、隠れる場所が一か所しかなかったらお終いだ」

「じゃあ、分担で行きましょ。私、女子寮の方にするけどいい?」

「自分が詳しい場所を選べば追跡を回避しやすくなるだろう。俺は、特に異論はない」

「それじゃ、アジーンは、男子寮をお願いね」

「分かった。必ず、生き残るぞ」

「分かってるわよ」

 長い話し合いを終えた二人は、ハンマー男と決着をつけるため動き出した。まず職員室にあった封印の一つをアリエラが持っている聖水で破壊し、職員室前でハンマー男が待ち構えている可能性が高いので、アジーンが椅子を掴んで持ち上げ、アリエラが壁沿いに戸に手をかけてアジーンと顔を合わせて頷きあい、アリエラが指で戸を一気に開けた途端、予想通りハンマー男が待ち構えており廊下と職員室の間すれすれのところにハンマー男が雄叫びと共にハンマーが振り下ろした。その隙をついて、無防備になったハンマー男の頭にアジーンが全力で椅子を投げつけハンマー男を床にダウンさせた。

 二人はその隙に職員室を脱出し、途中で二手に分かれた。

 アリエラは、女子寮へ。

 アジーンは、男子寮へ。

 

 

 

 

続く?

 

 




クロックタワー2のふたりの主人公の分岐をイメージ。

まあ、こっちのネタは、ボス戦などで戦い方と、台詞が変わるって感じですね。


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