続けられたら続けますっ。
流れる汗を服の裾で拭いながら目の前にある機械を弄る。こんなことができるの日本じゃあ犯罪だなと遠い故郷を考えながら。
そうして銃のメンテナンスを終えて、倉庫の大半を占拠しているであろう機体を触りながら異常がないか、一つ一つ確認していく。
こういったまめな作業が好きなのは前世からの癖のような気がする。まぁ前世なんてこっちで生活を始めてから思い出すのも難しくなってきたけど
ふと作業を中断し、倉庫を見渡す。埃っぽい空気の中で俺がここで生まれてから集めたガラクタや飛空挺のパーツが乱雑に置いてある。
いい加減ここも手狭になってきたと考え、中を見渡していると
「おーい、フルトォ!機械弄ってねぇで畑の手伝いきてくれー!」
親父の声がどこからか聞こえてくる。もう少しだけ弄っていたかったんだけどなぁ。無論、純日本人の自覚というか記憶がある俺がこんな名前で呼ばれているのには深〜い理由がある。嘘ですそんな大した理由じゃないです。はい、転生しちゃいました(テヘペロ。
なんだかんだもうここ17年くらいこっちの世界で過ごしちゃってる自分が怖い。人間って慣れる生き物なんだなぁ。
「違うぞ!親父ー!先っちょだけ触れてただけだよっ」
とりあえず言い訳として返事をすると遠くから俺を呼んでいた親父はそれを弄っているって言うんだろとか呟きながら家の持つ畑に向かっていく。
俺もこのオイルと金属臭が充満した倉庫から出て、手伝いの準備をするために家に向かうことにした。
ほんとにここは良いところだ。気候も温暖、住民も気さく、産まれてから不自由なんてしたことない。 まぁ自販機やらコンビニやらがないがそんなのはなれちまえばどうってことないし。下手したらここは日本より住みやすいとさえ思っている。そう思いながら太陽の日差しを感じて歩いてるとなんだかスキップしたくなるな。
「うわっ、兄貴くっさ!なんで毎回倉庫に行くのよ!バカっ信じらんない!」
おっと道すがらでいきなり暴言を吐いてくる不届きものがいると思ったら俺の愛しの妹じゃないか。こいつ反抗期か?
「そんなに怒んなよ、我が妹よ。お前にはロマンってもんがわかんねーのか?それと最近あたりきつくね?」
「洗う労力に比べたらロマンなんかクソくらえよ。それにこの島で二人しかいない大馬鹿野郎たちに優しくしたらきっとつけあがるからこのくらいが十分なんですぅ」
まったく最近になって態度がきつくなってきて困るぜほんと。俺は知ってんだぞ、自分の下着と親父と俺の下着を分けて洗うために自分から洗濯を進んで受けてることをなっ。まぁ俺は千葉のお兄ちゃんじゃあないからとやかくは言わねーけど(偏見)
「はいはい、すんませんねー。これからは善処しますよっと」
「まったく兄貴がそういってやめたことないじゃない。もういいから早く手伝いに行ってよね」
手のひらをひらひらと振りながら応答したら、もうっと怒りながらすれ違っていく。
「そうだ、兄貴」
妹が顔だけ振り向きながら付け加えた
「家によるついでにこの島一のお空馬鹿に余った野菜届けておいて」
「はぁ、ついでねぇ・・・りょーかい」
ほんと素直じゃないねぇこの妹は。まぁ可愛げと言えば可愛げなんだろうけど。走り去る妹を眺めてから家のある方向に向き直る。
気持ちのいい風がふき、身体に流れる汗を乾かしてくれる感覚に浸りながら空を見上げる。今日もお空は快晴、見事なまでの群青だ。
ただ一点、問題があるとすれば
ここザンクティンゼルなんだよなぁ泣