ポートブリーズ
甘酸っぱい(酸っぱさ強め)出発になったが燃料不足なんてこともなく無事ポートブリーズに着くことができた。
離陸の時にあんまりにも心配させたせいか着陸時にも何回も大丈夫なのか確認されてしまった。グランやカタリナはまだわかるがルリアにまで心配されたのは殊の外きいたぞ。大体不時着なんてのは燃料計算もできないど素人のやることだからそれはないって言ってんのに。俺の艇がそうならないのはなにも俺の実力ってわけじゃないから自慢気に言うことはできないけど。
もっとも最初の目的地はそこまで遠いわけでもない。カタリナさんには少し反対されたが目指す場所はポートブリーズ群島、主島であるエインガナ島だ。そうしないとグランサイファーにもラカムにも会えないし!
桟橋に騎空挺をとめる。カタリナさんが言うにはポートブリーズ群島は貿易が盛んな場所らしい。言われて思い出した。そういえば原作だと墜落した形でついたんだった。その流れで当面の旅の準備をする算段だったな確か。
よし、なんとか細部まで思い出していけるようにしないと思わぬところでうっかりなんてあるから怖ーな。
「悪いが俺は艇を別の場所に避難させておくわ。グランたちは食料とか諸々用意しておいてくれ」
「あれ?フルトは下りないんですか?」
ルリアが首をかしげるがカタリナはどうやら得心がいったようだ。
「確かにその方がいい。帝国に反抗的なポートブリーズであっても追手がいないとは限らない。念を入れすぎるということはないだろう。グランはどう思う」
「僕も賛成かな…だけどフルト、お前はどこで合流するつもりなのさ」
「郊外にある見つからなそうなところに停泊してから町に向かうさ。合流するときはそうだな。おそらくだけどシェロカルテっていうやつの商店に行ってもらえば問題ねーよ。あそこなら何でも揃うだろうしな。もしかしたら騎空挺とか操舵士にもわたりがつくかもだ」
「なんだフルト、その人と会ったことあるの?」
「いや、地元の商船から部品をお取り寄せしてもらう時に名前をよく聞いてるだけで面識はないな。曰くよろず屋ってやつみたいだぞ」
まぁこういうところは少しくらいズルしてもいいだろ。別に遅かれ早かれ知り合うんだろうし時間短縮は良いことだし!面識がないってのも嘘じゃない。
「何でも屋か。だがそういう相手に対して我々の情報をおいそれと教えてもいいのだろうか」
「別に深く教える必要もないよカタリナさん。むしろ商人の方がそういうことには口が堅いと思うけどな」
「まぁ大方の当たりはつけられるとおもうけどな」
「そこはしょうがない。商人にとって大事なのは信用だろ?フルト。じゃあシェロカルテさんの所にまずは行ってみようか」
それから四人と別れて船を飛ばす。飛んでみて分かってきたけど時々風が強い。計測器がときたま高い数値を出してるからもうティアマトの暴走は始まってるんだろうな。
ほんとよく考えたら旅の最初からとんでもないやつが相手だよ。なんだよ星晶獣が相手ってどうなってんだ。どうなってんだ(絶句)
そんなことを考えて帝国に見つからないよう雲の間に入りながら目的の場所を目指しているとクレイから話しかけられた。
『不可解…あまりマスターらしい選択ではないと判断』
「お、話せるくらいの余裕ができたか。ちょっと寂しかったんだぜ」
『通常時の飛行支援に加えて定員オーバーによる機体調整、飛行時の気流予測、また目的地への安全なルート演算を同時に行っていたため言語機能を案内音声のみに限定』
「あーうん。お疲れ」
確かに夜を徹して調整したとはいえ飛行艇の改良は完全とは言い切れなかった。俺も壊れた装備の部品を代替できるものがないかと修理しながらだったとはいえだ。やはり相当な負荷をクレイにはさせてただろうな。
「悪いな、もしかしなくてもかなりの負担だったか?」
『いえ、当機は貴方の支援を今は第一優先事項としています。艇にある補助演算機器を使用すれば対応可能。それよりも質問の回答を求めます』
「おう、お前の予想通り本来ならグランたちと街に行った方が安全なんだけどよ。
『了解、マスターの思考を完璧に理解。つまり貴方らしく述べると当機、いえこのクレイが大好きっ、ということでよろしいですね?』
「いやどうしてそうなった」
俺ちゃんと目的を話したよな?そんなに脆弱なはずはないと思いたいがこいつちょっと負荷がかかりすぎておかしくなったか?それと後半部分を俺の声で再現すんじゃねぇ。
『なぜ疑問?クレイが万が一、壊されないようにということでは?そうしなければマスターは10年以上の付き合いの相棒を失い心身共に不安定になり、支援がないままではただの一般モブ以下の活躍しかできない能無しになることは自明の理であると算出』
「ひっでぇ言いようだなおい。馬鹿にすんじゃねーよお前なんかいなくたって俺はある程度こなせっから(笑)」
『・・・・・・飛行支援解除』
「クレイさん!?」
◇
なんとかクレイの機嫌を取りつつ、人目のつかない場所に艇を止めることができた。単純に見つかりづらい所と言ってもある地点の付近という限定条件で探したもんだからこれまたクレイには文句(本人?はそうとは認めないが)が出たけどな。
装備を整えて、少し歩いたところで目的地に着くことができた。目の前には文字通り墜落したと思われる騎空挺がそこにはあった。
「これがグランサイファーか。それにしても生で見ると感動すんなぁ」
『解析開始。…終了。報告、当該船は修復されてはいますが損傷有り』
「ま、だろーな。見てれば素人目にもわかるぞ。それで飛べるのか?」
『今の解析では飛行の是非不明』
隣でふよふよ浮いている丸い機械、クレイと話しながら近づいていく。クレイが飛行艇から離れて主機でついてくると言った時はびっくりしたけどな。故郷では必要最低限しか出てこなかったんだがなぁ。
それにしてもラカムがいない。ここに来れば手っ取り早く会えると思ってたんだが少し当てが外れてしまったなー。このままただ待つってのもあれだし、折角グランサイファーにお目見えできたんだからちょっとだけ中を覗かせてもらおうかね。
「うし!そんじゃあ見学させていたただきますか!暇だし」
『荒らす、の間違いでは?』
「そうとも言うかもな。少しだけ覗かせてさせてもらうだけだ診察だよ診察」
腰につけていたハンガーをクレイに預ける。いいよね、こういう時に浮いて移動できるってのは。
クレイは丸い機体からハンドを出してハンガーを甲板に持っていく。ワイヤーの伸びが止まる。上からクレイが自身の点滅で作業終了を伝えてくると同時に腰の装置を固定させてこれ以上伸びないように切り替える。
生憎と自動で巻き上げる機能はないのでワイヤーを頼りにグランサイファーに登っていく。こんな状態で襲われるなんてことはなるべく避けたい。頑張れ!俺の二の腕ェェ!
「うおぉぉ、自分でやっといてアレだが結構くるなこれ」
故郷で仕事をサボるために親父との逃亡訓練がここで活きるとは。やっぱ人生なにが役立つかわかんねーな。なんとか登りきることができたが体が痛い。
「甲板は傷はあるけど大丈夫そうだな」
グランサイファーの中を順に見て回る。老朽化は多少あるがほとんどのところは問題ないみたいで動力部をクレイと確認することにした。連結部や動力機関を一通り触ってみたがどれも正常だ。機械特有の油の匂いが心を落ち着ける。俺にとってはこの瞬間がやっぱり一番落ち着く。確認をし終えたあとクレイに精密に解析もしてもらったし。
「ここもまったく問題ないな。うん、飛べるんじゃないかこれ」
『総合的に飛行には問題ないと判断。次はこの船の耐久試験を実施しますか?最初は貴方の微威力魔法から行うことを提案します』
「それ本来は中からやることじゃないからな!それとそこはかとなく俺の努力を馬鹿にするな」
『ファイヤ、アイス、シャイニング』
「なんだよ」
『ファイヤ、アイスに至っては当機が直撃したとしてもそこまで痛手にはならない威力と記録』
「オッケーよく言った。表にでようぜ。まず初めにお前の耐久試験から始めてやるからな」
異常はないと確認できたし、クレイとの会話(物理)をやってやるか!
「その必要はねぇわな。動くんじゃねーぞ、この艇に手を出した理由を言え。変な動きをしたら…撃つぜ」
あ、オワタ
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