さて我が家自慢の野菜たちを届けにきました。今日もいつも通りおうちにはいない模様。いっつも剣の修行してんもんなー、あいつ。
グランを呼びにいかなきゃいけないんだろうなぁ、嫌だなー行きたくないなー、はぁ帰りたい。
それにしても籠いっぱいの野菜はこれ食いきれんのか?あの一人と一匹じゃあ一週間くらい野菜尽くしになりそうだわ。うちの母ちゃんは食べ盛りだからとか言ってるけど、この量は明らかにグランをベジタリアンにしたいのかってレベルだ。
よっこらせっと荷物をグランの家の脇におき、グランがいそうな所に向かうことにした。
しばらく探していると林を抜けたひらけた草原に二人を見つけた。というか一人と一匹だな
「おーい!グラーン!それとビィ!野菜を持ってきたぞー」
先にビィが気づいたらしく、こっちに飛んできてくれた。
「おーう、あんがとなぁフルト~。いっつも助かるぜぇ~親父さんたちにありがとうって伝えといてくれよな」
「気にすんなよビィ。俺たちじゃあ食べきれないから野菜を譲ってるだけだしな。お前も見てるだけとはいえ疲れたろ?ほいっ、差し入れ」
嘘は言っていない。母さんは百パー善意だしな、ということで食いきれない量ということは黙っとこ。
「へへっあんがとなってこれトマトじゃねぇか!これもうまいからいいけどよ、差し入れはリンゴにしてくれよなっ」
やれやれ、困ったトカゲだぜこいつは。今年のうちのトマトは流石にリンゴには劣るが程よい甘さとみずみずしさがあるというのに。
「ビィよ~く味わってみろ?野菜本来の甘さを感じられるだろ、どうだ?」
「ハグッ、、まぁ感じられるぜ」
「それはリンゴより確かに甘くないかもしれねぇ、だけどな?そのトマトにはリンゴにはない甘さがある。これは野菜ならではだぞ、ビィ。そう思うと段々リンゴより美味しいと思わないか?」
「た、確かにリンゴよりうまいかも・・・ってそんなわけねぇだろ!」
残念、洗脳するにはうちの野菜ではまだ不十分らしい。そんなふうにビィと戯れてると後ろから聞き慣れた声がかけられた。どうやら今日の修練は終了らしい。
「フルト久しぶり!最近めっきり会えなかったから心配だったんだ。まさかとは思うけど調子でも崩してたの?」
「おうグラン、3日ぶりが久しぶりの範疇なら久しぶりだな。ちげぇよ家の手伝いとかで忙しかったんだよ、悪いな」
「機械バカなフルトが手伝い?今回もサボりにこっち来たんじゃないの?」
「そんなことも多少はしてきたが今回は違うんだなぁこれが。お前の家にお裾分けだ、ありがたく受け取れ」
おいそこの赤いトカゲ、多少?みたいな目で見てくるんじゃない
「おじさんとおばさんには頭が上がらないなぁ。ならせっかくもらったものだからフルトも一緒に食べないか?」
「そうしたいのも山々なんだが、これから用事があるんで戻らせてもらうわ」
確かにあの量をこいつらで食べるのは無理がある。うちの親父の畑仕事をしなくて済むという利点を考慮したらやぶさかじゃあない。以前の俺なら一も二もなく乗っていただろうな。
しかしだ、冒頭でも思った通りおれは最近のグランとはあまり長くいたくないのだ。というか避けているまである。
なぜなら
「そっか、うーん仕方ないか。この前の話についてもう少し話し合いたかったんだけど」
「話し合いの余地なんざないね。俺はここを出るつもりはないからな」
「フルトが一緒に来てくれると嬉しいんだけどなぁ。ちょっと行ってみない?イスタルシア」
「お遣い行くノリで言うんじゃねぇ・・」
なんかすげぇ誘われるんだよなぁ泣
グランってどんな感じなのかわかんねぇ