きくうしって…マジ?   作:わら味噌

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旅立ち1

帰って糞して寝て、朝である。昨日の夜、両親にグランと一緒に行くという話をすると親父はだろうなとあっさりうなずき、ミイナはため息をついて呆れられた。曰く舌の根が乾かないうちによく言えるねと小言をたくさんいただいた。そして母さんには泣かれた。

 流石に文句の一つ二つは覚悟していたが母さんが泣いてしまうとは思っていなくて正直に言っちゃうとかなり動揺した。どうすればいいのか分からなくてとりあえず土下座しちゃうくらい。まったく今世でもなにかと土下座に頼ってしまうのは日本人の性なのだろうか。親父がなんとかするといって連れていってくれたから助かったんだがどの道謝らなくてはいけないのにそれが先延ばしにされただけなので実は全然うれしくない

 

 そんなわけで気分を上げるために今日は朝一番に起きて倉庫に逃げ込みもとい俺の小型騎空挺の調整にきている。ぜ、全然母さんと顔合わせるのが気まずいとかじゃないんだからねっ。

 思わずツンデレ風味な感想が出てきてしまったがもちろんそれだけが理由じゃない。というのもカタリナさんが用意している船を見たところなにかまずい着陸でもしたのか故障がみられたからだ。村のみんなに単純作業を手伝ってもらっても今日完全に直すのは難しい。というかあいつら昨日グランたちを見送る会みたいなものを開いていて男どもは絶賛夢の中だ。くそったれめ

 

 それに万が一今回の故障で別のところに影響を受けていた場合、みんなとお別れを惜しんで旅立ったはいいがその場で墜落という事態になりかねない。なにそれ格好がつかなすぎる

 以上の判断から俺の船に出番がとうとうきたというわけだ。まぁ俺の船の方が出力もデザインも全てにおいて勝っているからな!たとえ用意された船が万全でも無理やり変えていたけどな!ガハハハ!

 

 問題なのは俺の船は二人分の荷重計算で設計していたという点だ。操縦席は詰めれば全員入れるスペースはある。出力を上げれば三人までは問題ないだろうが俺を含めて四人乗る。しかもカタリナさんは鎧をつけているとなれば流石におも・・・今凄まじい悪寒がしたので言及するのは避けるが、調整する必要があるというわけである。ちなみにあのトカゲは人数にカウントしたところでさして影響がないから問題ない。おおよその計算で検討はつけたので後はコンデションチェックと詳しい演算確認をしに来たというわけである。

 

 「で、どうだ。クレイ、計算結果は出たか?」

 『解、入力されたデータでは判断不可』

 

 今機械的な電子音で返答してきたのが頼りにしているコンピューターであるクレイだ。ちなみに流石にこれほど高度な機械を1から自作できるほど俺は天才じゃない。ちょうど6歳の誕生日にしゃべる機械が欲しいといったらプレゼントされたのがこいつだった。今となっては色々と不安定な時期だったのもあって心配していた親父が騎空士時代の伝手で用意してくれたのだと予想できるけどな。

 それを少しいじって騎空挺のサポートプログラムとして活用させてもらった。といっても元からこいつは高性能で、高い演算機能があった。何故か意図的に機能を抑えられていたから解除しただけで活用できたのが幸いだった。

 親父には必死にプレゼントしたものがいじくられて使っているなんて口が裂けても言えないから黙っているけど。

 

 「それじゃあ今日の風向、天気、風力を考慮した上でどれくらいの推力と燃料が必要か計算してくれ」

 『了解・・・計算結果まで3分を要求』

 「十分だ、その間に俺は船の整備続けておくわ。あ、ついでに重量超過による船体のバランス計算も頼んだ」

 

 『・・・・了解』

 

 さて調整もあと少しといったところだ、動力部のリミッター上限を少し上げる必要もあるからそこらへんもいじらないとな~。ルンルンリルルン♪

 

 

 

  ◇

 

 「で?フルトは僕の家でなんで朝飯食べてるの?」

 「あまりにも憂鬱で、来ちゃった」

 「うへぇフルト、その言い方気持ちわりぃぞ?」

 「黙っていなさいトカゲは」

 「おうおう、ママが怖くて顔合わせたくないやつにトカゲって言われても痛くもかゆくもねぇ」

 

 「あァ!?」

 

 「おォ!?」

 

 「二人とも食事中は落ち着きたまえ。こらフォークをそんな風に突き合わせるんじゃない、まったく」

 

 チっ、カタリナさんに感謝するんだな。てめぇのおかずが残っているのはそのおかげだぞ、、あ、ビィの野郎俺のベーコン取りやがった!

 整備の後にグランの家によったのはカタリナさんとルリアに会うためだ。なにせ俺は知ってるけど向こうは俺のことは知らないしな。これから一緒に行く仲間がどんな奴かわからないのは追われる身である二人にはあまりいいこととは思えない。それに万が一疑われた場合俺に対抗する手段は皆無に等しいからな、つまりは保身でもあるっつーわけである。

 「それにしても君も治りが早いな、昨日の今日にも関わらず随分と元気になったものだ」

 「鍛えられましたからね、そこにいるやつに。訓練相手として一時期毎日付き合ってたからじゃねーですかね」

 「ふむ、フルト君もグランと同じくらい腕がたつのか?君は足元にも及ばないと言っていたが」

 「なんだかんだフルトはさばくのが上手いからいい訓練相手だったんですよ。それとフルトの治りの速さは元からだろって、あ!フルトお前僕のベーコンとったな!」

 「なんのことか知りません。恨むんだったらビィを恨め、負の連鎖は続くのだ」

 「つまり?」

 「尊い犠牲だった。あと美味しかったです」

 

 そんなおふざけをしていると向かいの席でくすくすと笑い声が聞こえてきた。目をむけるとルリアがこらえるように笑っている。前は遠目にしか見えなかったから改めて見るととんでもない可愛さだなこの子。こんな子に笑ってもらえるなら悪い気はしない。むしろアリでは?

 「はわわ、ご、ごめんなさい。・・・ば、ばかにしたわけじゃないんですよ?」

 「安心しな、ルリアちゃん。そんなことで怒るようなら俺は食事のたびに怒られることになっちまう」

 目を向けられたぐらいでこんなにも申し訳なくされたら俺の心が傷ついてしまうわ。それでも不安そうな顔をするルリアにできるだけの笑顔でこたえてやろうじゃないの。

 「それに仲間と一緒に食べることが嬉しくないわけないだろ?これからはこれが当たり前だからさ、俺やビィみたいな騒がしいやつと食べるのも慣れてもらえるか?」

 「オイラはフルトと一緒にされたくねぇなぁ」

 黙ってろこのトカゲェ!抵抗すんじゃねぇ頬を引っ張りにくいじゃねーか!かみついてくんなっ。

 

 「フフッ!はい、慣れるようにしますねっ」

 

 あ~かわええんじゃあ~、うちの妹もこんくらい素直に反応してくれたらお兄ちゃん頑張っちゃうのに。いや待てよ?ミイナにこんなしぐさをされたら俺の意識が危ない。つまりミイナは俺のことを慮ってあえて反抗的な態度な可能性がある。なんだやっぱりうちの妹は最高じゃないか

 俺がこの世の真理にたどり着いているとグランがおもむろに口を開いた。

 「フルトって子供に対して態度変わるよね。もしかしてロリ」

 「ロリコンと言いたいのだろうがそれは少し誤っているなグラン。俺はどちらかというと年上の方が好みだ。それぞれの成長したその肢体で自らのアイデンティティーを模索し存分に磨きあげたその美と努力に俺は魅力を感じる。まぁ幼い時分の純粋な原石でのかわいらしさというのも否定はしないがな?だが個人的にはそこからの成長を期待するわけで間違ってもその成長を害する、ましてや途中で摘み取るよるようなことはしない主義なんだよ。つまりなにが言いたいかというと淑女は口説くべし、少女は愛でるべしということだ」

 「なるほど」

 わかってくれたか!グラン。やっぱり持つべきは友だな!

 「全然分からない!」

 一刀両断された。信じられねぇお前は年上スキーだと思っていたのに!

 「わ、私は子供じゃないですっ」

 むくれてるルリアもカワイイナー。だからカタリナさん、そんなに警戒しないでくれ。その眼光は仲間に向けるものじゃないですよ!

 まったく困ったな、長年付き合いがあるグランも混乱しているみたいだし、ビィやっぱり最後に頼れるのはお前だけみたいだ。視線だけでビィに助けを求める。どうやら向こうも気づいたみたいだな

 (頼むぜビィ)

 (しかたねぇなー)

 

 「フルトがロリコンなことは否定してない気がするぞオイラ」

 

 「カタリナさん!話し合おう、とりあえず剣から手を放すんだ!」

 

 覚えてろ!ビィ!

 

 

 

 色んな意味でにぎやかだった朝飯を終えてグランたちとは一回別れることになった。俺もそろそろ戻らないといけないしな。するとカタリナさんが近づいてきた。

 「どうしました?まださっきのことで怒っていたり?」

 「いや先ほどのことはそこまで気にしていないさ。ルリアの緊張をほぐすための冗談だったんだろう?むしろ感謝しているくらいだ。まぁそれにしても些か過激ではあったが」

 肩をすくめて苦笑しているその姿がこれ以上なく似合っている。

 「ははは、昔から加減をしらないって怒られているんすけどねーなかなか治らないんです」

 俺の女性観はまったく冗談ではないのだけれど、ここは否定しないでおく。学ぶ人間なのだ俺は

 「さぞや君の両親は苦労しただろうな。そして君のことを大事にしているのだろう」

 それ故にとカタリナは続ける。

 「追われる立場の私が言うのもおかしなことだが君が引き返すなら今しかない。我々がこれからする旅は普通の騎空団とは何倍も危険なものだ。命の保証はとてもじゃないができない。グランはもう引き返せないところまで巻き込んでしまった。しかし君ならまだ巻き込むことはない。よく考えてみてほしい」

 なるほど、流石はカタリナさんだ。これからの旅がどんなものかを知らせてどれほどの覚悟がいるかをこの場で諭してくる。俺が思ってるよりもカタリナという人物は義理堅くて優しいんだろう。だけど誤解してるところがある。そこは正しとかないといけない

 

 「これからどれだけ危険かなんてグランと一緒に行くと決めた時点でわかりきっていますよ。まったく怖くてしょうがないです」

 「ならば!」

 「だけど俺はグランとビィをそんな危険に向かわせることの方がよっぽど怖い」

 カタリナの機先を制する。この優しい騎士に俺の意思を正しく伝えきれていない。だから俺はふてぶてしく見えるように空に指を差す。

 

 「それにあんた達が巻き込んだんじゃないぜ?カタリナさん。正しくは()()()()()()()()()()、だ。運が悪かったな。なんと言ったって俺たちが目指すのは空の果てなんだから」

 カタリナさんは面食らったように目を瞬かせている。やべーそんな反応されるとすごい恥ずかしくなるからなんか反応してほしい。

 

 「・・・フ、フフフ!いやすまない。そのように顔をしかめないでくれ。そうか、私たちが君たちに巻き込まれた、か。なら私たちは相当厄介なことに巻き込まれてしまったということかな」

 「そーゆーことです。ま、せいぜい俺にできることはサポートをするだけですけどねー。それに自慢じゃないですけど俺はあんま強くないのであんたみたいな達人がいてくれた方が安全なのは間違いなしですし!」

 「わかった、ならこちらから改めて旅の同行をお願いしよう。よろしく頼むフルト」

 「おうよ、こっちこそ頼りにさせてもらいますよカタリナさん」

 差し出された手をしっかりと握る。ようやく俺はこの騎士に認めてもらえたみたいだ。

 「あ!カタリナ!ずるいですっ私もフルトと仲良くなりたいのに」

 「んじゃルリアも改めてよろしく~」

 「はいっ、よろしくお願いします!」

 ん?どうしたんですかカタリナさん、俺とルリアの間に体を入られたら握手できないっすよ。え?なに、離れてくれ?やっぱりさっきのことかなり気にしてるじゃないか!

 俺たち仲間じゃないんですかっ。こんなのあんまりだ!

 

 

 抗議の結果、カタリナさんの拳は予想以上に痛かったです。

 

 

 

 

  ◇

 

 村の男どもをたたき起こして騎空挺を開けた場所に移動させたあと、俺たちはそれぞれに別れの挨拶をすることになった。カタリナさんはここの村長に感謝の礼をしていて、グランやルリアは激励の言葉や別れを惜しむ言葉を受け取っている。む、あそこにいるのはアーロンじゃねーか。俺には声かけなかったくせしてグランの方行くなんて薄情な奴め。この前、新作の試し打ちさせて脱臼させちまったのまだ気にしてんじゃねーだろうな。

 さて俺も会わなきゃいけない人がいる。どこにいるのか探しているとちょうどむこうから来てくれた。母さんは親父と少し話して親父はこちらをちらっと見て下がっていった。こちらに近づいてくる母さんにもう昨日のような動揺はみられない。いやむしろ動揺しているのは俺の方かもしれない。

 「フルト、おはよう・・でいいのかしら」

 「おはよう母さん。ミイナは?」

 「ミイナはグランに挨拶しにいったわ」

 「あーなるほど。まぁ最後に会えてよかった、このまま会ってくれないんじゃないかと思ってたからさ」

 「そんなことはしません。たとえ親不孝者のばか息子でも会わなければ一生後悔してしまいますからね」

 「手厳しいなぁ母さんは」

 「当たり前です。どれだけ私を心配させたかあなたはわかっていないのでしょうね。そんなんだからミイナが反抗的になるのですよ」

 うぐっ、思い当たる節が多くてなんも言えねぇ。目線からすさまじい圧を感じるううう。

 「約束を破ったのは本当にすいませんでした。すげー反省してます」

 「それでも行くのでしょう?」

 「うん、ほっとけねぇんだ」

 「ならフルトのしたいようにしなさい。私は悲しくて寂しいので怒ってますが止めはしません」

 やっぱり怒ってんじゃん。

 「ですがこのまま送りだすのも癪ですからフルトにはこの旅で1つ母からのお願いを聞いてもらいます」

 「え、嫌です」

 しまった、なんか反射的に断ってしまった。はわわ、やべぇよやべぇよ。母さんからすさまじいオーラががが。

 「き・き・ま・す・ね?」

 「はい、なんなりとどうぞ!」

 「安心してお母さんもそこまで鬼じゃないわ。フルトなら簡単にできるわよ」

 なに?そんなに簡単なのか。なら喜んで受けるとしようじゃないか。

 「それで母さんの気が収まるなら安いもんだよ。なんでも言って今回のお願いは絶対に破らないからさ」

 母さんはにっこりと笑って・・・あれ?なんかこのパターン、前もあったような気がする。

 「彼女を連れてきなさい」

 

 

 「・・・は?」

 

 「交際相手を連れてくるのです。わかりましたか?」

 「母さん、言語としては受け入れられるんだけど意図がまったく分からないです」

 何を言ってるんだ、この人。あ、そういえば俺の母だったわ。

 「聞きなさいフルト。あなたは小さい頃から機械に夢中でした。そして作ったもので色々やんちゃをした結果、この島での娘達のあなたへの評価は『面白いけど付き合いたくはない男』になっているのですよ」

 ぐはっ!今、俺にすさまじい言葉の刃が刺さりまくってる。し、仕方ないやん!

 「ええ、過ぎたことはこの際目を瞑りましょう。この村であなたに惚れる子を探すというのは望みが薄い。そこで私は閃いたのです。広い空ならあなたを受け入れてくれる人がきっといるはずだと」

 「なんでそんな変な方向に閃いちゃたのかなぁ」

 「連れてこなければ家の敷居は跨がせませんから。いいですね?」

 「えぇ、、」

 「なんでも聞くのでしょう?」

 「なるべく善処していきたいと」

 「返事は?」

 「はい」

 「よろしいです」

 旅は長いんだしのんびりやっていくとしよう。見つかれば良いなぁ(震

 「ま、母さんからの頼みなら仕方ねぇな、いっちょ頑張ってきます」

 「はい、頑張ってきなさい」

 やべーやべーそろそろ予定通りいかないと離陸に影響が出ちまう。急がないと。

 

 「フルト」

 

 と行こうとしたところで母さんから静かに声がかけられる。振り向くと母さんが微笑んでいた。

 「いってらっしゃい」

 いつも出かけるときのようにその声色に、その言葉が聞けて良かった、その表情が見れて。その笑顔に応えるように俺も手をあげて精一杯の声をあげる。

 「いってきます!」


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