チートで転生!イレギュラーくん   作:Colore

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標的IV 最強の家庭教師来る!

 いつもと変わらない目覚まし音で目を覚ます。清々しい朝とは裏腹に、疲労が残っている俺の身体は重く鈍い。まだ眠い目をこすって、重たい頭を持ち上げ、身体に鞭打つように支度を始めた。

 

 月の炎という存在を知ってから、俺は毎日欠かさず死ぬ気の炎を燃やす訓練をしていた。それと同時に、基礎体力作りにもせいを出している。これから先、月の炎を持っていればいつか逃げなければ、戦わなければならなくなることがあるかも知れない。そんな思いもあって、学校終わりには出来うる限り訓練をしている。

 そうして忙しなく毎日を過ごしていると、時間が経つ感覚も随分と早くなった。気がつけばもう六月の半ばにもなろうとしている。

 あの恐ろしい存在が来るのはそろそろなんだろうな、と綱吉の家を一目見やる。最初の方は俺に引きずられるように学校へ来ていた綱吉も、段々とつまらなさそうな表情になり、不登校気味になっていた。俺がいた程度じゃ綱吉の不登校の未来を変えられなかったと少し後悔する。そもそも、綱吉が不登校になるなんてことは忘れていたのだが。

 

 今日も綱吉のいない学校を終え、家に帰る途中に再び綱吉の家を見やった。二階の窓の奥には綱吉の部屋が広がっている。しかし今日はどうやら様子が違うようで、赤ん坊がこちらを見ているのに気づいた。

 目が合った。直感的にそう思って身体ごと視線を逸らす。できるだけ早足ぎみに家に帰って、今日は炎の訓練を休むことにした。彼に目をつけられて無理矢理勧誘、何て体操な想像はしていないが、第九の属性を持つ者として勘付かれるのは、今の俺にはまだ怖かった。この炎の扱いもよく分からない、もしかしたらボンゴレや世界にとって危険因子になるかもしれない。その可能性は捨て切れなかったからだ。もし仮にそうなってしまった場合は、あらゆる人脈の下存在を抹消されてしまうかもしれない。

 体力づくりにだけ勤しんで、今日は他に体力を使う事無く布団へ入る。もしかしたら、リボーンがファミリー勧誘に躍起になっている間はこの力を使わない方が良いのかもしれない。決まれば早いと、俺は綱吉のただの友人として、隣の席の奴として生活することを決めた。

 

 綱吉が変態になったり、とんでもないことやらかしたり、転校生がガン飛ばして来たりもしたが、何の障害も無くこの世界の物語は進んでいるらしい。俺は綱吉が疲弊しているときに、そっと愚痴を聞いてやる。それこそ、親友のなせる業だろうと思っていた。

 俺はあくまでも、ただの綱吉の親友でいるために、リボーンや獄寺が怪しい発言をしていたとしても無視を決め込んだ。綱吉はそんな俺に安堵しつつ、一般人の友達として扱ってくれる。俺にとってもそれは都合が良かった。

 たまたま、赤毛のお姉さんや牛の子を見かけても、関わらないように全力で避けた。あれらに関わってしまったが最後なのは俺も良く知っている。だから、昔は沢山お互いの家で遊んだ仲だった綱吉とは、学校以外では会わない。綱吉もそれを望んでいるように思えたから。

 

「お前、十代目のなんなんだよ」

 

 しかし、運悪く守護者と遭遇してしまうことはあるわけで。特に俺を目の敵にしてきた獄寺と、綱吉の家の近くで出会ってしまったのだ。出切るだけ避けてはいたけど、人の気配を察知できない俺が咄嗟に回避できるわけでもない。

 

「十代目ってよく言ってるけど……綱吉のことだよね? 俺は綱吉の友達だよ。獄寺くんもよく知ってるでしょ」

 

 そうやって顔に笑みを貼り付けやり過ごそうとするが、獄寺は満足しなかったようで俺に敵意をむき出しにする。所謂殺気と呼ばれるものなのか、先ほどから俺の肌がピリピリと反応して気持ちが悪い。獄寺レベルでこんな不安になるんだから、俺は相当弱いんだなと再認識する。

 

「るせぇ。お前が一番十代目が心許してる奴だというのが気にくわねぇ」

「そういわれても……幼馴染だからじゃないかな。最近の綱吉は、俺といるよりも獄寺くんや山本くんたちと仲良くしてる方が楽しそうだけど」

 

 俺といるよりも、という言葉に反応したのか、獄寺は少し表情を軟化させ、俺を睨む。この程度のチンピラにビビるくらいだ、俺は裏社会なんて目指さない方が良いのかもしれない。

 そうやって意識を他にそらすと、獄寺はつまらなさそうに俺を睨みつけ、綱吉の家へと向かっていった。よかった、喧嘩に発展したら勝てるか分からない。俺は独学で鍛えているとはいえ、習う師がいるわけでもなく、実践だって一度もやったことがない。所謂動体視力が足りないだろうし、反射神経も鍛えられていない。そんな俺が、通り名が付くほどの相手に立ち向かえるとは到底思っていなかった。

 

 

 

 獄寺や山本が綱吉の回りにいることが多くなり、綱吉と俺との距離は自然と離れていった。……いや、俺からゆっくりと離れていったというのが正しいところだと思う。現に、綱吉は時々俺を気にしている。俺も綱吉を気にしている。それでも、俺が綱吉を守ると決めたのはマフィアになるまでのことで、マフィアに関わってからは俺が守って上げられるほど弱くないし、強力な味方もいる。よく満身創痍にはなっているが、驚きの回復力によってその笑顔を絶やさなかった。

 あまりにも過激なために、リボーンを疑問視したこともあったが、着実に綱吉の肉体が鍛えられているのが分かったし、離れていった俺から言う事は特に無いだろう。どうせ口を出したところで軽くあしらわれて終わるのは目に見えていた。

 

 そうして月日は巡り、10月がやってきた。今月は綱吉の誕生日がある。……同時にリボーンの誕生日があるのは、前世知識である。綱吉が可哀想だったのを、今生になって強く思い出す。

 

 リボーンの分の誕生日プレゼントとは別に、綱吉のプレゼントを選ぶ。綱吉は何が嬉しいだろうか。少し悩んで、全く浮かばないことに気づく。綱吉の友達を長年しているが、中学生で買える範囲で浮かぶものが無い。ゲームカセットは……リボーンの目に入ったらまたツナが扱かれそうだ。なら、と以前流行していたものを思いだす。お菓子でリュックサックでも作ろう。コレで綱吉へのプレゼントは決まった。

 次はリボーンへのプレゼントだが、彼の好物といったらコーヒー以外浮かばない。実は俺もコーヒーが好きで、たまに飲んだりもしている。しかし、コーヒーも奥が深く、高級豆であっても味の違いで好みが分かれる。現に、俺は酸味のあるコーヒーが苦手だ。リボーンは酸味のあるコーヒーを好みそうだし、俺が選らんがコーヒー豆を美味しいと思ってもらえる自信が無い。なら、お茶請けを。俺はケーキと合わせるのがすきだが、誕生日ケーキが用意されてると思うので、日持ちするお菓子が良いだろう。たしか、近所のケーキ屋で真空パックのブラウニーを置いている店がある。そこそこ賞味期限も長いし、もってこいかもしれない。

 俺は買うものを決めて、まずは商店街へと足を向けた。

 

 

 

 工作は意外と難しいもので、思わぬところで手こずるものである。接合しようとした箇所が上手くされなかったり、動かせるように余裕を持たせたはずが余裕が足りなかったり、四苦八苦しながら4日が過ぎた。完成は綱吉の家に持って行くギリギリになってしまったが、一応当日に完成したのでよしとする。

 俺は作った作品を持って、意気揚々と綱吉の家へと繰り出した。

 

 どたばたと最近は騒音の耐えない綱吉の家に足を運ぶのは久々のことで、なぜか緊張してしまう。何とかインターホンをならすが、胸の鼓動が激しくなっているのがよく分かる。緊張自体は、このプレゼントが正解だったかどうかも含まれているだろう。

 

「はーい。あら、俊夫くん! お久しぶりね、元気してた? 今丁度リボーンちゃんとツッくんのお誕生日会してるのよ。上がって上がって」

「お邪魔します」

 

 昔と変わらず、可愛らしい笑顔で迎えてくれる奈々さんと軽い挨拶を交わして、正直入るのが躊躇われる綱吉の部屋の前へ立つ。綱吉から距離をとり始めてから来てなかったので、半年以上はもう来ていないかもしれない。……というのは理由の一つだが、正直殺し屋ばっかりいるこの空間に足を運ぶ気になれないのだ。身の危険を全身で感じるから。

 意を決して三回ノックする。

 

「はーい。何、かあさ……俊夫くん!」

 

 出てきたのはやつれ気味の綱吉だった。目をいっぱいに見開いて驚いているのがなんだかマヌケで、少し笑ってしまう。

 

「一日早いけど、お誕生日おめでとう」

 

 そう言って俺は部屋の前でお菓子のリュックサックを渡した。今の俺の最高傑作で、俺の夢とロマンをつめた作品だった。喜んでもらえると俺も嬉しいが、綱吉はどう反応してくれるのだろうか。

 

「え……俺に? えー!? ありがとう! こんな凄いの作ってくれたの……? なんかずっしりしてるし中にも入ってるのかな? 嬉しいよ!」

「俺も喜んでもらえて嬉しいよ。さ、右についてる紐があるだろ? 引いてみて欲しい」

「え? うん」

 

 不思議に思いつつ紐を引いた綱吉。俺の作戦通りで、やっぱり綱吉は俺に対して警戒はしていなかった。お菓子のリュックサックがみるみる姿を変えていくと、それは綱吉の上半身を覆うように変形した。一部はその身を腰に巻き、変身ベルトのようにパイの果実とアポロ11号チョコが飾られている。このプレゼントの名は。

 

「リュックサック型変形ベストプラスベルトだ」

「なにこれーーーーー!!!! 何!? 重かったのは変形用のパーツ!?」

「そうだよ。何気に作るのに4日以上かかって」

「4日で作れるもんなのーーーー!?」

「かっこいいです十代目!」

 

 思ったとおり大げさに反応してくれる綱吉と、持ち上げる獄寺の様子が面白くて思わず笑ってしまう。あまりの意味不明さにみんなも笑い始め、綱吉の部屋は笑いで満たされることとなった。俺もここまで気に入って貰えると作ったかいがあったというもので、心から嬉しく思う。

 

「これで身を守りつつ食糧問題が解決するな。俊夫に58点だぞ」

「守れないし解決しないよ!!!」

「なんかよく分からないけどありがとー」

 

 一生懸命脱ごうとしている綱吉を尻目に、リボーンからの評価を受け入れる。自分から積極的に関わって生きたいとは到底思えない存在だが、最強の家庭教師様から褒められるのは純粋に嬉しい。はにかみながら、俺はもう一つのプレゼントを差し出す。

 

「これはリボーンくんに。近所のケーキ屋のチョコブラウニーなんだ。良かったら貰ってよ」

「サンキュー。旨そうだな」

「俺のオススメだよ」

「そうか。俊夫にプラス20点で」

 

 リボーンが満足してくれたようで俺も嬉しい。やることは終わったので、いち早くこの場から逃げ出そうと一歩身を引く。

 その姿を漆黒の瞳で見つめてくるリボーンがなんだか怖くて動きづらい。たじろいでいる俺を、綱吉が見つけて不思議そうな顔をする。

 

「あれ、もう帰るの?」

「うん。プレゼントを渡しに来ただけだったから」

「気をつけて帰れよ。ところで一つ良いか?」

「何? リボーンくん」

「俺の誕生日のことはいつ知ったんだ?」

 

 一番触れられたくなかった核心を突かれる。それはそうなんだ。俺は一度もリボーンから誕生日の話を聞いていない。それを思い出してしまったのはチョコブラウニーを買った後だったんだ。買ってしまったものの、人にあげるつもりで買ったものを食べる気は起きなかったし、どさくさに紛れて渡したらいけるかなと思ったのも事実。しかしこの三日間で考えた取って置きの嘘があるんだ。

 

「獄寺くんや山本くんが話してるのをちょっと聞いてしまって。どうせだから買って来たんだ」

「そうか。わざわざありがとな」

「どういたしまして」

「俺のプレゼントも……なんか物凄くびみょーな気分だけど、美味しく頂くよ。ありがとう!」

「それじゃ、また学校で」

 

 何とか切り抜けて、恐ろしい二階の部屋を去る。赤髪のお姉さんがあの中で一番何も隠してなくて怖いので、早々に逃げるに越したことは無い。

 

 今日は清々しい気分だったので、明るい気持ちで家に帰り炎を灯す訓練をする。リボーンも誕生日会ということで向こうに集中しているだろうし、万が一というのはあまりなさそうだ。そう思いながら、自分の決意をリングへ灯す。

 未だにくすんで小さい炎しか宿らないそれは、今日はいつも以上に小さいままだった。それが意味するのは、今まで以上に死ぬ気の覚悟が鈍っていることと同義。……原因には身覚えがあった。

 今日のバースデーパーティを見たとき、確かにこの優しくて平和な日常が命がけでも死守したいと心の底から思ったのは本当だった。誰かが死んでしまうというのなら、絶対にそれを阻止したいとも思った。しかし、目の前にいる職業の殺し屋。彼らに殺意を向けられたら、俺は脚がすくんで何も出来なくなってしまう。その恐怖が帰ってから己の身を支配していたからだと思う。

 たまに見かける、綱吉とお姉さんの実践鬼ごっこ。おかしな色をしたその料理がぶつかった後には、どろどろに溶けたり綺麗な断面になっているところが多く存在した。あんなもので襲われたら、俺はたちまち絶命するだろう。

 リボーンもそうだ。綱吉を殺す気は無いとはいえ、本物の銃を向けている。あの銃口が俺に向いたら。リボーンがやってきて初めて見ることの出来た重い質感は、俺を恐怖させるのに十分だった。

 恐ろしい。それ以外の感想が抱けなくて。死ぬ気の覚悟が鈍っていくのは、炎に灯さずとも分かる。

 

 こんな経験をしても、何かを守るために強くなれる綱吉は本当に凄い人物だと理解した。俺はこうして関わらないようにしているにも関わらず震えているのに、何とか真正面から立ち向かおうとする綱吉は俺よりも何倍も素晴らしい人間なのだと気づかされる。己の未熟さ、小物さに嫌気がさす。

 

 気づけば、静かに灯っていた炎も、俺を見捨てるように消えていた。




リボーンのことだから読心術で分かっていそうだけど、スルーしてくれるリボーンの優しさ。あると思います。

小説中の文章量についてですが、心理描写に傾いているため多くなってしまいがちです。このままの量で進めても良いか、減らすか、アンケートにご協力ください。

  • このままでもいい
  • もう少し一文を短く
  • 減らして、会話文を入れテンポ良く
  • SSレベルに無くす
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