「行くぞ…バルバトス!」
三日月の声に呼応するように緑のカメラアイが光る。レバーを押し切り、前進。使徒のATフィールドに阻まれるが、
「バルバトス!」
バルバトスも自身のATフィールドを展開。中和していく。そのまま右手に構えたメイスを押し込む…が、
「…足りない」
「質量が足りないようね」
「あの程度の殴打武装ではまだ太刀打ちできない、ということか」
リツコとミサトはそれぞれ違った面持ちで、しかし見るものは変わらない。それはガンダム・バルバトス。
「前にあの鳥を倒したときは…もっとでかいやつで…あ」
三日月は再びオルガの、初号機の方を向いて声を漏らした。
「いいのあんじゃん、借りるよ」
操縦を諦めてたオルガは急な借用要請に戸惑う。「おいミカ、俺も別に武装があるわけじゃねぇぞぉ…」
「違うよ」
「え?」
「オルガを借りるよ、って」
「は?正直ピンと…」
言い終わらないうちにバルバトスは初号機の左足首をむんずと掴んで二、三度素振り。死後硬直(?)が始まってたオルガと初号機は左腕を上げた倒れたままの姿勢を維持している。
「うおおああああ」と初号機内でシェイクされてるオルガに構わず三日月は満足そうな表情をうかべる。「うん、ちょうどいい。これなら殺しきれる」
初号機を構え再び突撃。まず一撃。使徒はよろけるが倒れるに至らず。続いて二撃目、三撃、四撃。
使徒が機械とも生物ともつかない叫び声を発した。もう限界なのだろうか、これは断末魔か?
「…やばいな」
特に具体的な危機を感じた訳ではなかった。しかし歴戦を潜り抜け、それこそ死ぬまで戦った彼の野生本能は使徒に起こった変化を見逃すことはなかった。
「往生際が悪いね」
咄嗟に彼がとった行動は投擲。武器の投げ。
武器?
オルガ・イツカである。
「は?待ってくれ待ってくれうおおおああああああああ」
投げられた初号機に対し、使徒は自身の身体を粘土のように変化させ、その初号機に組みつく。
「勘弁してくれよ…」
大爆発。使徒が最期にとった行動の正体は、自爆であった。
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『第4の使徒襲来とその殲滅、そして3番目の子供の接収、及びEVA初号機の初起動。概ね既定通りだな』
真っ暗な部屋。どこから天井でどこが床なのか、そしてどこが壁なのかすらわからない暗闇の中に、7つのモノリスと2人の人間。
『ガンダムタイプが一機出撃したと聞いたが、計画に支障はないな?』
『所詮量産機だ。問題ない。碇にアレを任せたのは我々だ』
「ご安心を」と、碇ゲンドウ。
「初号機の修理もめどが立っています。パイロットも無事です」
『無事、か…そうでなくてはわざわざ鍵を使った意味がないからな』
「とにかく、計画の遂行は予定通りではあります」口を開いたのは先ほどまで黙って聞いていたマクギリスである。
「我々の悲願は人類アグニカ計画。そこへ辿り着くならどんな回り道をしたとて許されるものではあるでしょう」
『そうだな…バエルゥ…』
『バエルだ』
『アグニカ・カイエルの魂…』
『そうだ、正義は我々にある…』
『フフフフ…』
ゲンドウは何かをにらむように黙っていた。
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「俺があんたと?」
「そうよ」
初号機から降り、ブリーフィングルームで一服ついていたオルガは怪訝な顔で葛城ミサトを、今さっき共同生活を提案してきた主を見る。
「ミカは」
「三日月・オーガスくん?そうね、彼も一緒に住むことにしましょうか、何?もしかして女の人と住むの緊張するんだ?」
「いや…俺はべつに…」目線を逸らしたオルガを見て、わかりやすい子ね、とミサトは思う。
「だから荷物とかまとめておいてね…あ、もしかしてあの時」
「荷物なんかハナから持ってねーよ、悪いが何着か買わせてもらうぜ、金もない」
「そっか、家族と連絡はしたの?」
ミサトの問いかけにオルガは一瞬詰まって、ふっと空気を吐きながら続ける。
「家族か…あんたらの言うような血の繋がりはもってねーよ。父親も母親も兄弟も知らねー、ミカもだ」
「そっか、ごめんね、変なこと聞いちゃって」
「気にしないでくれ、別に悲しくもなんともないしな」
その時ブリーフィングルームの扉が開いて現れたのは三日月。
「オルガ、ここにいたんだ」
「ミカ…よう、久しぶり」
「うん」
「あーミカ、今この葛城ミサトっつー人とお前と三人で暮らすってことになっちまったんだが…」
「別にいいよ、おれはどこでも」
「三日月くん…あなたがガンダムのパイロットだったなんてね」
ミサトが三日月の方へ向き直る。
「てっきりファリド准将のお友達かなにかだと思っていたわ…よくあの機体を動かせたわね」
「別に?普通でしょ、阿頼耶識があるんだし」
「阿頼耶識?」
「背中のこれだよ、これをバルバトスのコックピットと繋げるんだ」
三日月はミサトに自身の背中を見せて説明する。ミサトの表情に戸惑いが浮かんだ。
「これは…こういう手術を行なったの?」
「俺もあるぜ」
オルガが口を挟む。
「マルドゥックにあった特殊手術痕…このことだったのね」
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オルガと三日月はマクギリスに呼び出され、例の応接室のソファに腰掛けている。マクギリスの背後には石動・カミーチェが佇む。
「つまり、だ」
マクギリスはふたりを順に見ると再び口を開いた。
「我々の住んでいた世界の住人がこの世界にもいくつかいる…司令室のタカキ・ウノ、実働隊のライド・マッスなどは君たち鉄華団の構成員だろう?しかし彼らに私たちの記憶はなかった。この世界で生まれ、この世界で育って、今ここにいる。」
「つまり現時点で俺たちと同じ記憶を持っているのは」
「オルガ団長、三日月・オーガス、私と石動…こんなものか」
「つまり」
「それってさ、みんな前の世界で死んだ人じゃないの」
三日月がこちらに首だけ向けて言う。
「ああ、私もそう考えている…オルガ団長が来て決定的になった」
「それでよ、マクギリス。いつか俺たちは元の世界に帰れるのか?」
「元の世界、か…」
マクギリスはソファから立ち上がって窓の方へ歩く。ブラインドの隙間から差し込むオレンジ色の光が眩しい。
「オルガ団長、君がもし世界を好きに作り変えれるとしたら、どうする」
「世界を?何言って…」
「そうだな、すまない…今回はこの街を守ってくれて感謝するよ。オルガ・イツカ、三日月・オーガス…今後も現れるMAの討伐に尽力してほしい」
「ああ」「うん」
「そしてすべてのMAが倒された暁には…」
「?なんか言ったか」
「いや…なんでもない」
マクギリスが窓から向き直ってほほえむ。
「葛城二佐とともに暮らすのだろう?彼女が待っている」
「ああ…邪魔したな、行くぞミカ」
「うん」
ふたりが出て行った部屋にはマクギリスと石動だけが残される。石動は表情の見えない自分の上司に言葉をかける。
「准将、彼らは…」
「かつての厄災戦を終わらせたのがアグニカ・カイエル…」
「?」
「しかしアグニカの民、リリンは原罪を負ってしまった。それを浄化し、再びアグニカ・カイエルを理想にするにはリリンの力ではもはや足りない」
「彼らの協力が必須、ということですか。我々だけではなく」
「そうだ、ゼーレとリリン、そして私たちと、最後のシン人類」
マクギリスは再び窓の外を眺めると最後に一言、こぼす
「正しい、世界を」
ちょっとペースあげないとまずいので