仮面ライダートリガー   作:辰ノ命

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皆さんご無沙汰しております。

宣言通りラッシュに入りますよ〜。
前回、フミヅキを倒し残りの幹部は後8人。果たして次の幹部は…

それではどうぞご覧下さい。


第12劇「五感」

「孝四郎さぁぁぁぁん! そーろそろ俺にもフィガンナイフ作ってくれてもいいんじゃなぁい???」

 

「別に構わないけど、やっぱり兆くんは自分で製作した方が完成度高いと思うよ?」

 

「僕は孝四郎に作って欲しーの!! で、今誰の作ってるの?」

 

「…………… シェリフ」

 

「そんなぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」

 

 

 最近自分だけ新たなフィガンナイフがない為か、駄々をこねる兆である。孝四郎の考えでは、トリガーとシェリフの戦力差を同じにするべくやっているのだろうけれど、兆はそれをわかっておらずこの有様である。

 

 

「それにそろそろ限界が来てるんだよ」

 

「え?」

 

「兆くんに教えて貰った通り、セイブドライバーのデータを解析して、それに対応するフィガンナイフを製作していたんだけど。それが残り3本って事がわかったんだ」

 

「残り3本… この流れで行くと、俺あと1本で終わり…?」

 

「そうだね。そうなるよ」

 

「マジかぁ… それなら残りは自分で作ろうかな久しぶりに」

 

「いいと思うよ。僕も参考にしたいし」

 

「よしてくれ。孝四郎さんの方ができると思うぜ?」

 

「いやまだまださ…… あ、課長。お疲れ様です」

 

 

 買い出しに行っていた巧也と永理が帰ってきた。明らかに量がおかしい方があるが、それらを空いてる机の上にドズンと置く。音もおかしい。

 2人は椅子に座り一息付くと、佳苗がお茶を持って全員に配る。

 

 

「はい。みんなお疲れ」

 

「あぁ、ありがとう」

 

「こうしてゆっくりするのも久々ね」

 

「確かにな。ここの所、色々あり過ぎた」

 

 

 あれから3日は経つが、特にこれといった情報も入っていない。だが、巧也は次のターゲットを既に決めていた。

 

 

「みんな飲食しながらでいいから聞いてくれ」

 

「ん? もう次っすか?」

 

「あぁ。みんなに休んでもらっている間、俺は単独で調査を行なっていた」

 

「えぇ… 巧也さん体持つのかよ…」

 

「こうしている間も人々はウォンテッドに苦しめられている。ゆっくりとしていられない。そこで今回向かうのはエリアHとエリアIだ」

 

「エリアHはハヅキの所だな。もう一つは行ったことはあるけど、幹部にはあったことないな… それにあそこ随分くたびれていて、まるで人の気配がなかったな」

 

「エリアIに関しては我々でも容易に踏み入れる事ができない… 人を盾にしているからな」

 

 

 以前、エリアIに踏み込んだRIVERSの隊員たちは撤退を余儀なくされた。理由はそこに住う人々を文字通り盾にし行手を阻んだ。先に進めたとしても、人で溢れ返り手を出す事すらできなかったという。

 永理はその話しを聞いて腹を立てた。非人道的な行いは、誰しも許せることなどできるわけがない。

 

 

「許せません。絶対に…!」

 

「俺もそうだ。今、RIVERSの他メンバーはまともに動ける状態じゃない。そこでエリアHは兆と永理。エリアIは俺が向かう」

 

「1人は危険ですよ!!」

 

「確かにそうだが、今回ばかりは1人の方が動きやすい。何かあれば連絡する。撤退も考えている。では各員、準備が出来次第で任務開始だ」

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>>

 

「あーちょっと? ガタガタ道走らないでくれる? 手元が狂っちまうよ」

 

「今やらなくてもいいんじゃないですか? それにさっき準備が出来次第って課長言ってたじゃないですか」

 

「時間は有限だぜ? こうしてた方が効率いいだろ」

 

「どうでしょうねー」

 

 

 車内でフィガンナイフを製作する兆を乗せ、永理はエリアHに向かっている。巧也はこのエリアについて詳しいことを話してはいなかったが、同乗する兆が内部を知っている素振りなので、説明を省いたのだろう。

 永理はバックミラー越しに兆に話しかける。

 

 

「兆さん」

 

「んーー?」

 

「エリアHってどんな所なんですか?」

 

「あ? あぁ、あそこはうるせーぞ。年中祭りが開かれてる」

 

「ま、祭りですか?」

 

「そ、ただ従わない奴は即刻死刑」

 

「え、えぇぇぇぇぇ!? それって酷くないですか!?」

 

「── だけど、死刑はまずされない」

 

「えっと、どうしてですか?」

 

「全員記憶を奪われているからだ。生まれたての赤ちゃんのように何も知らない状態になれば、元がないから元を植えつけてやればいい。そうするとどうなるよ」

 

「… それが普通。過去から現在まであったものとして記憶が上書きされる」

 

「そういうこと」

 

 

 やはり幹部は他とは違う。とてつもない野望や理想を叶えようとして、その力を人のためではなく、自分自身の欲求のためだけに使用する。ただサツキだけは違ったが、共通するのは、ウォンテッドのボスに力を託されていること。記憶を集めて、彼は何をするつもりなのだろうか。

 そんなことを考えながら運転していると、目の前に町が見えてきた。

 

 

「着いたな」

 

「着きましたね」

 

 

 車から降りると、辺りに警戒しながら町へ近づくとすぐに祭囃子が聞こえてきた。兆の言った通り祭りが行われているようだ。

 

 

「さて、ハヅキにも一回負けてるんだよな」

 

「だから色々知ってるんですね」

 

「まぁね。だけど今回は出来立てホヤホヤのこいつがある」

 

 

 兆は先程完成させたフィガンナイフをくるくる回しながら見せつけてくる。それを軽く流し、徐々に音のする方へと向かって行くと、大きな神輿が見えてきた。その1番上に法被を着た男が大声を出して盛り上げている。

 

 

「あれだ」

 

「あれですか」

 

「どう見てもただのおっさんだろ」

 

「そうですね。ただのお祭り大好きのおじさんに見えます」

 

「じゃ、早速行くか」

 

「え、ちょっと兆さん!?」

 

 

 人の間を潜り、神輿の目の前に兆は仁王立ちで現れた。それに気づいた町の人たちは避けるよう言うが、全く動こうとはしない。追いついた永理も一応どっしり構えておく。

 すると、神輿の上から笑い声が聞こえてきた。幹部ハヅキの声だ。

 

 

「ようっ!! トリガーじゃねーか!!? 久しぶりだなぁ!!」

 

「声だけは一丁前にでけーなじじい!!」

 

「ハハハッ!! 久しぶりに会っておいて、挨拶でもなくじじいと来たか!!」

 

「んな事はいいんだよ!! さっさと降りてこい!!」

 

「… ったく、しゃーないの」

 

 

 普通なら飛び降りれば骨折する高さから、なんの迷いもなしに飛び降りると、多少痺れたのか脚をさすり、その後何もなかったかのように立ち上がる。

 

 

「悪いなみんな!! 儂はしばらくこいつらと話して来るぞ!!」

 

「……」

 

 

 随分慕われているようで、皆は笑顔で手を振り彼を見送った。それからハヅキに連れられ、古ぼけた家まで来た。

 

 

「ま、上がって茶でも飲め」

 

 

 永理は今までにない対応に少々戸惑っていたが、一方の兆はなんの素振りも見せず、言われた通りにホイホイと家に上がり込む。

 和室に入って2人が座ると、急須と湯呑みが運ばれてきた。

 

 

「熱いうちに飲みな」

 

「え、あの」

 

「毒でも入ってるんじゃねーかって? 随分警戒してるな」

 

「と、当然です!! ここは敵地で、更にあなたは幹部の1人!! 警戒しないわけありませんよ!!」

 

「そっちの兄ちゃんは何も言わずに飲んでるけどな」

 

「えぇ!?」

 

 

 兆は出された茶を一気に飲み干すと、太ももに膝をついてハヅキを見る。言いたいことを察したハヅキはすぐに本題に入った。

 

 

「… やめろ。と、言いたいんだろ?」

 

「あぁ、その通りだ」

 

「前にも言ったが無理だ」

 

「言うと思った。だけどあんたがやっていることは普通じゃねーよ… 例えこの町の人たちがどれだけ楽しんでいたとしてもだ」

 

「わかってる。わかってはいるんだ…… けれどもう、後戻りはできんよ。儂は罪を侵したんだ」

 

「あんたはまだやり直せるし、それにこんなこと、あんたの奥さんは喜んじゃいねーだろ」

 

 

 2人の会話を聞いていると、因縁があるという風には見えない。寧ろ、親しみのある仲のような印象を永理は覚えた。

 

 

「前も言われたな… わかっとるよ… そこの姉ちゃん」

 

「は、はい」

 

「儂は妻を亡くしてな。あいつが大好きだった祭りをこうして開いてるんだ」

 

「え、ということはこれは全部、奥さんの為…?」

 

「あぁ、しかしな。昔からの祭りをこの町の者たちは拒んだ。うるさいだの古いだのと、その祭りを指揮してる儂らを罵しり、果てはここのお偉いさんまでもが中止しろとまで言い出した」

 

「そんな…ひどい」

 

「抗議に出た儂らだったが、そりゃ聞いてくれるはずもない。ついには家にまで悪戯が出たよ。それが続いて数週間後に妻は死んだ」

 

「警察には相談したんですか?」

 

「いいや。それよりもあの頃の儂は復讐に燃えていた。いつかこいつらを全員地獄に落としてやると… そんなある日、ある男に出会ってから全てが変わった」

 

「ウォンテッドのボスですね」

 

「あぁ、この力でこうして儂はうまくやってる。だからもうこのままでいたい。今が幸せなんだ」

 

「でも… それは人の人生を奪っている行為なんじゃ…!!」

 

「わかってる!!!!!」

 

「…!!」

 

「そんなこと、儂が1番よくわかってる…」

 

「ハヅキさん…」

 

 

 すると兆は立ち上がり、ハヅキの肩を徐に掴む。そして外へ出るように指を銃の形にして誘導し、その後ろを黙ってついて行く。

 外へ出ると、ちょうどいいスペースの広場まで行くと、兆は腰にセイブドライバーを巻きつける。

 

 

「トリガー… やるのか」

 

「やる。あんたがやられた仕打ちに関しちゃ俺も腹が立つし、あんたの言い分もわからないこともない。だけど、人の自由まで奪って幸せと言えるのか? 記憶を上書きして、ただの人形となった人たちを思うように動かしてやる祭りが、あんたの1番したかったことなのかよ!!?」

 

「…… 儂はもう戻れない。ここでお前を殺してでも、儂はこの祭りを続ける」

 

「止めてやるよ。祭りもあんたもな」

《FIVE》《SET》

 

「来い。あの時のように返り討ちにしてやろう」

《ワン・キル》《ハヅキ》

 

「変身ッ!!!!!」

 

 

 セイブドライバーのハンマーを起こし、引き金を引くと、巨大なガトリング砲が現れ、アーマーを片っ端から撃ち抜いて行き、兆に装着されて行く。

 

 

《フィフスガンアクション!! トリガー!! ファランクスガトリング!!》

「── 今日がお前のあの頃の思い日だ」

 

《シ・ザイ・キリング・ウォンテッド!!イーディアー!!》

「相変わらず意味がわからんフレーズだなッ!!!」

 

 

 早速、突っ込んでくるハヅキ。大振りの攻撃にいつもなら避けられるトリガーであったが、その攻撃をまともに食らってしまう。

 

 

「き、兆さん!!? 何してるんですか!!」

 

「いつつ… まだ時間かかりそう」

 

「時間?」

 

 

 その後もゆっくりと動くトリガーに、嵐のように銃弾が飛び続ける。しかし未だに彼は防御を取ることにもやっとのようだ。

 それからハヅキはデリートガンナイフをもう一度押し込み、引き金を引くと、巨大なレーザーがトリガーを襲う。

 

 

「うわぁぁぁぁっっっ!!!」

 

「兆さんッ!!!!」

 

 

 トリガーは大きく吹き飛び地面を転がる。あの攻撃をまともに喰らえばひとたまりもない。ハヅキは勝ちを確信していた。

 しかし、かなりのダメージを与えたはずのトリガーは立ち上がった。よく見ると、痛がってはいるが、装甲にはまるで傷が入っていない。更には先程のようなゆっくりした動きはなくなり、普通に動けている。あくまで先程よりは早くなった程度ではある。

 

 

「あの攻撃を耐えられたというのか!?」

 

「…… よし、55秒経過したな。これでようやく動けるぜ」

 

「だけど、少し速くなった程度だ。それだけで儂には勝てんッ!!!」

 

 

 ハヅキの素早い蹴りがトリガーの脇腹を捉えたが、その瞬間に万力のような力で脚を掴み離さない。そして掴んだままハヅキに1発パンチを入れると、その破壊力に大きく吹き飛んでしまう。

 

 

「グホォッッ…!!!?」

 

「ただ単純な破壊力だけ追求したこのフィフスガトリングにそう簡単には勝てねーよッ!!!」

 

「なるほど… 再戦を持ち込んで来たのはそういうことがあって… だがッ!!!」

 

 

 今度は蹴りを入れようと近づいたトリガーだったが、スルリと避けられ顔面に1発もらってしまう。

 

 

「ぐっ…! な、なんだッ!?」

 

「これが儂の本気だッッ!!!」

 

 

 まるでスライムのように、体を自由自在に変形させてトリガーの攻撃を避け始める。フィフスのスピードでは追いつかないし、逆に相手の攻撃を貰うだけの良い的になり始めていた。

 

 

「儂は勝たなければならん!!! だからここで死んでくれッ!!!!」

 

「悪いけどじじいよ。そいつはできない」

 

「何をッ!!?」

 

「俺はあんたに勝って今日も掴むぜ、勝利をなッ!!!」

 

 

 ガーツ、ライトニングウエスタン。そしてサードポンプを取り出すと、それらを全て組み合わせてガトリング砲のような形へと変形させる。ガトリング砲、改めフィフスウエスタンを構えると、デタラメに自分の周囲を撃ち続ける。その弾の嵐に体の変形が追いつけず、いつしか避けられず何発もその身に当たる。

 

 

「ははっ! どうよこれ!」

 

「どうよじゃありませんよ!!! 危ないじゃないですか!!!」

 

「ちゃんと調整したよホントだよ。トリガー嘘つかない」

 

「絶対嘘です!!!」

 

 

 ゆらゆらと立ち上がるハヅキは再びデリートガンナイフを押し込み構える。トリガーもフィフスウエスタンにフィフスガンナイフを差し込んでから、脚を大きく開いて、力一杯に銃を握りしめる。

 

 

《ガトリングゴガーツ!! フィフスメイシューティング!!》

 

「こんなもの…ッ!!!!」

 

 

 先程ハヅキが放ったレーザーが、更に巨大化しトリガーに放たれる。一方、トリガーの放った無数の銃弾はレーザーとぶつかり少しずつ押して行く。

 

 

「儂の… 儂の… 理想はッッッ!!!!!」

 

「終わらないッ!!!」

 

「なに…ッ!!!?」

 

「祭りは終わらねーよ!!! だってまだあんたがいるだろうが!!!」

 

「儂が……?」

 

「今は罪を償ってくれ!! そしてまたやればいいさ!!」

 

「だが、記憶が戻れば皆は……!!」

 

「拒まれねーよ。いや、させない。この俺がッ!!! あんたの心は俺が守ってやるッッッ!!!」

 

 

 その力強い言葉に押され、手元から一瞬力が抜けてしまい、そうして全ての銃弾を食らって爆発を引き起こす。

 

 

「── 今日の俺も勝利の日」

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>>

 

 ハヅキは罪を償う為、自首をした。聞けば町の人々に死人は出ていなかったらしい。というのも、彼はただ守りたかっただけであり、恨みを持って人を殺すようなことはできなかったらしい。

 そしてその後、町は年に一回祭りが開かれるようになった。まぁ元々やる意見の人達もちらほらいたようで、今回の一件からみんな考えを改めたらしい。なんか微妙な感じだけど、多分あの光景見たら彼は喜ぶと思う。何せ笑顔で溢れかえっていたんだから。

 

 

「ふぅ。いつもの後語り終わりだ」

 

「ここに来るといつも独り言ですね」

 

「まぁいいじゃないの。伝わりやすいじゃん?」

 

「そうですかね… あ、コーヒーのおかわりを」

 

「ついでにミルク」

 

 

 BAR TRIGGERで疲れを癒す彼らは何かを忘れている気がした。そう。何かを。

 

 

「…………あ」

 

「どうしました?」

 

「巧也さんどうなったんだろ」

 

「あ」

 

「特に連絡来てないよな?」

 

「佳苗さんに聞いても、特にないって言ってました」

 

「大丈夫かな…」

 

 

 一方、巧也はエリアIにて3日潜伏し、かなり疲れ切っていた。そこで彼はとある人物と出会う事となる。




はい。今回は新フォーム登場ってだけでした。
しかし次回よりようやく進展あり…?

では次回、第13劇「急がば爆発」

次回もお楽しみにで、それでは皆さんさよならで、ありがとうございました〜

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