前回、狩馬の前に兆が現れ、勝負の末に負けてしまう。一方自分の記憶を追う永理は兆と共に、マスターから渡された場所へ行くと幹部のムツキが現れ……?
それではどうぞご覧ください。
ムツキについて気になる事はあるが、それよりもまずは目的である永理の過去が重要だ。そして兆自身の記憶を追うために。
「まず1つはっきりさせておくのが、狩馬の妹は彼女で間違いはない」
「そ、そうですか」
「嬉しそうじゃないな?」
「あ、いや…… ずっと胸にはまっていた何かがぽろっと取れた感じで… その、あんまり実感がないというか」
「それでいい…… これから話すのは彼女にとっては厳しいだろう」
「…… 例えそれがどんなことでも聞く覚悟はあります。そのために来たんです!」
「わかった」
それからムツキは永理について暫し語り始めた。
あれはまだ彼女が小さな女の子だった頃、ヤヨイに家族を殺され、そのまま何処かへ連れていかれた。ここまでが狩馬が話したことだろう。その後、彼女が連れられて行った場所は暗くて何もない部屋。その中に入れられ数日を過ごした。
「どうしてそんな場所に…?」
「ここは仮だ。新しく入った子を簡易的にしまって置く場所だ」
「まるで物みたいな言い方ですね…」
「君の言う通り物だ。ヤヨイにとっては金でしかない物だ」
「つまり私は…!」
「売りに出されたってことだ」
「そんな……」
「…… 続ける」
それから数日が経ったある日、外へと出された。もちろん解放なんかじゃない。人を買うオークションの始まりだった。永理はその後、その場にいた男に買われた。家にまで連れて行かれた。
「……っ」
「だが… ある男が現れ君は逃げることができた。正確には逃げる場所を与えてもらっていた」
「どう言うことですか…?」
「その男は君を家で保護してくれていた。何年とね」
「私の記憶だとそんなこと……」
「警察学校の事しか頭にないはずだ」
「ど、どうしてですか!!?」
「それは君の記憶が抜き取られたからだよ。その大部分が全部。気づいたらそこにいたって感じだろう?」
「は、はい……」
兆は思った。今の話から察するに、その男は何かの目的があって永理を保護したに違いないと。記憶を抜き取るなんて芸当ができるのはウォンテッドだけだが、と思っているとムツキは淡々と続ける。
「その男の詳細は話せないが、永理。君はその男にとって重要な鍵なんだ」
「え、えっと… 詳細が話せないのは何故ですか? それに私が鍵って… どこかに挿すんですか?」
「そういうわけじゃない…… ただ話せないのはこちらの事情もあってだ。今はそういうことにしてくれ。いずれ時が来たら話す。鍵についてだったな。鍵とはその男の目的を達成する為のものだ」
辺りは何か言おうとしたが、その横から兆が入るようにムツキに質問を投げかける。話の中で気になる事があるのだ。
「ちょっといいかムツキさんよ。その男ってのがさ。どーも俺にはウォンテッドの疑惑が浮上してくるんだが? そこら辺はどうなのよ?」
「…… 気づいたか。そうだその男はウォンテッドだ」
ムツキのこれはバカにしているのかと一瞬思ってしまった。普通は気づくだろう。記憶を抜き取るという人間がこの世にいるか? いや、いるわけがない
断言できる。このムツキはわざと教えたのかもしれない。
「話を割って悪かったよ。じゃあ続きお願い」
「あぁ… その目的というのが残念ながら教えることはできない」
「え? な、なんでここに来てそうなるのよ!」
「これでも幹部の人間だ。昔馴染みのマスターから言われたとはいえ、これ以上こちら側のことを話すわけにはいかない」
「な、なんだよそれ!!」
「ただ言える事があるとすれば、記憶を奪った理由はお前の過去を思い出したままだと、あっちにとって都合が悪かったんだろう。過去の記憶が邪魔になり、事が進まなくなるのがな」
それを聞いた永理は別に悲しいだとか、悔しいだとかそう言った感情はなかった。ただどうすればいいのかわからない。そんな感情が頭の中を巡っている。胸に手を当て、表情には出さないがパニックになっている自分を落ち着かせる。
それからムツキは兆を見た。何を話すのかは察しはつく。兆は覚悟を決め、自分の話を聞く事にする。
「それから兆。お前の過去についてだが……」
「やってきました。さぁ、俺は一体どんな大富豪でどんな女性と結婚してたんだ? あ?」
「それに関しては今ここで話すべきじゃないと判断した」
「は…? はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!?? どうしてだよ!! なんで俺の過去だけ話してくれないんだよぉ!!?」
「これを話す事は本当の真実に触れる事だ。お前にはまだ早すぎる」
「よーし!! そっちがその気ならこっちを話してもらうぜ!! お前とマスターの関係は一体なんだ!!? 教えろ! ただの昔馴染みで済むかよこんな話しておいて!」
「そこは嫌でも知る事になるさ。知り過ぎるのはお前にとっても、俺にとっても荷が重い」
「あ、おい!!」
「ただ忠告はする。何があってもお前という存在しているという事だ」
その言葉を最後にムツキはゆっくりと影に消えていった。工場に赤い光が差し込む。気がつけばもう夕方になっている。2人は静寂の中、 RIVERSへとこの事実を話す為に戻って行く。
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「なるほど…… 兆から聞いた話の内容を纏めると、永理がここに来る事はその男の目的の通りというわけか」
「そういう事らしいよ巧也さん。そいつもウォンテッドに絡んでるとなると、今は大丈夫だとして、いずれは永理に何かしてくるだろうね」
「あぁ… 永理もあまり考え込むなよ?」
そう巧也に言われた永理は無言で頷く。整理がついたから思う事が多く出てきた筈だ。こうなればやる事も必然的に決まる。それから巧也は椅子から立ち上がり、命令を下す。
「皆、聞いてくれ!! これから狩馬にこの事実を伝え、彼を… 永理の兄をヤヨイから救い出す!! そしてヤヨイを逮捕する!!」
「さっすが巧也さん! そうと決まれば早速…!!」
「これからと言ったが、今日はもう遅い。明日決行する。それまで十分に体を休めておけ」
「あいあいさー!!」
こうして狩馬救出作戦が決行されたが、この行動は後に悲劇を生んでしまう事だとはこの時はまだ想像もつかなかった。
─── 翌日、メンバーたちはRIVERSへと集まると、準備を終わらせてエリアIへとパトカーで向かっていた。向かったメンバーはもちろん兆と巧也。そして永理である。
「なぁ永理」
「…… あ、はい。なんでしょう?」
「狩馬にこの事実話せば掌返して味方してくれるぜ? また兄妹揃うし、戦力が増えるしもう最高だな!!」
「そうですね… 必ず兄を救いましょう」
「ま、完全にヤヨイの事は端から信じちゃいないだろうし、これ聞けば金が云々なくなるだろうしさ」
「はい…」
「でもその言葉が届くのは永理しかいないわけじゃん? 俺なんかが言ってみなよ? 頭撃たれて説得どころじゃなくなるぜ?」
「…… ふふっ、そうなりそうですね」
「そうなっちゃ困るの!」
それから一向はエリアIに着くと、今までは裏口からだったが、真正面から入っていく。その様子を監視カメラから見ていたヤヨイは驚いた。そしてこれが挑発だということも、その意味も理解できた。本来市民たちが彼らの邪魔をするのだが、今回ばかりは狩馬を行かせた。
「兄さん…」
「…… やっとそう言ってもらえたか。昔はにぃにだったのになぁ」
「聞いて兄さん!! 私たちは事実を伝える為に今日ここにきたの!!」
「事実だって?」
「私の過去はもう全部わかったし、それに兄さんが私の為に頑張ってくれてた事は知ってる…… でも、もう大丈夫だから。もう頑張らなくていいよ? 帰ってきて兄さん!!」
「…… 違うな永理」
「別に吹き込まれたとかじゃなくて本当に聞いて…!」
「お前は信じるさ。お前のいう事は信じる。もちろんだ。わざわざここに来てそういう事を言うってのは察しがつくからな…… だが、それが真実だとしてもこの男だけは信用できない!!」
「どういうこ──」
「トリガー…… お前だけはッッッ!!!!」
キカンドライバーを装着し、伍金チケットとギアナイフを挿し込む。それに続いて兆と巧也もセイブドライバーを装着し、それぞれネクストとアフターを挿し込んだ。
「永理。俺は元よりヤヨイを信用しちゃいない。お前の言うそれが本当ならRIVERSに行ってもいいし、ヤヨイをぶっ潰す側に付いてやるさ。だけどな。このトリガーだけは倒さなきゃいけない!!!」
《伍式!! ギアチェンジ!! キンヨウ!!》
「「変身ッ!!!」」
《ネクストガンアクション!!フォローイング!! トリガー!! イーハーイレブン!!》
《アフターガンアクション!!フォローイング!! シェリフ!! イーハートゥエルブ!!》
先に変身を終えたハントは体が金色に輝き出し、それからトリガーに向かって黄金の拳を振り上げて叩き込む。突然にとてつもない硬さで殴られたトリガーはそのまま後方へ吹き飛ばされる。
シェリフはハントの動きを止めようと、倍加状態にして羽交い締めにする。
「待て狩馬ッ!! 一体どうしたんだ!!?」
「離せ!! こいつを倒さなきゃRIVERSもやべーんだぞ!?」
「何を言って…!!」
シェリフは倍加の限界時間に達し、その隙をついてハントは拘束を振り解く。ギアハンターを構えて、トリガーを追うが既に彼の姿は見当たらない。そしてハントが気づいた時には地面に顔面を打ち付けていた。しかしトリガーは脚を痛がる。その黄金の外装は飾りではなく、見た目通りの硬さを持っていた。
「いててっ… ちょっと荒っぽいけど許してよ。狩馬さん。俺はあんたと争うつもりないし、永理の言う事は正しい。俺がそばにいたんだぜ?」
「なんだと…!? 永理に何もしてないだろうな!!? もし何かしてみろこのやろう…… ぶっ潰すだけじゃ済まさねーぞッ!!!」
「ど、どうしたのよ。さっきから変だって! 永理の件じゃないな… まるで俺を敵として見ているというか… 一体ヤヨイに何吹き込まれたのさ!」
「しらばっくれるなよッ!!」
そう言うと倒れた状態から、トリガーの脚を自分の足を絡めて倒し、仰向けにさせてハントがそこは馬乗りになる。それから首を掴み、マスクの下から見えないが想像はできる。凄い形相であり、その中に怒りと失望がある。
「お前はなんだ!! あの時の事は忘れましたで済ませねーぞこらッ!!」
「な、何言ったんだよ狩馬さん!! あの時っていつの話だよ!!? 口が悪かったとかそういうの!!?」
「ふざけんなッ!! お前、俺を倒す前に言っていた筈だ!! RIVERSを潰すとなッ!!」
「はぁ!?」
トリガーはハントを蹴り飛ばし、後退して両手を前に出す。落ち着けと彼に伝える為であると同時に、何の話だかさっぱりわからないという風に敵意を見せない為でもある。
シェリフも間に割って入り、事情を聞く形になるが、その内容がまるで噛み合わないのだ。
「そういう事だ課長さん。今話した通り、こいつはとんでもねー奴なんだよ! ウォンテッドの仲間で、裏でRIVERSを潰すつもりなんだよ!!」
「待て狩馬ッ!! 意味がわからない。その日の兆はRIVERSにいた筈だ。お前に対しての攻撃は一切していない。それにおかしいと思わないのか? 兆にはその行動理由も証拠もない!!」
「証拠も何も俺が見たんだ!! そしてやられた!! この事実があればいいだろうが───ッ!!!?」
銃声が聞こえたかと思うとハントは吹き飛ばされていた。当然のこの事態に焦らずシェリフはハントの元へ駆け寄ると変身が解除され、気を失ってしまったようだ。トリガーは永理を後ろに避難させ、銃声が聞こえた方に身構える。
すると遠くの方から2人、こちらに向かって歩いている。2人ともその見た目が化け物であり、完全にウォンテッドではあるが、今迄の敵と比べると明らかに異様な空気を漂わせていた。
「ここで誰だって聞くのが正解なんだろうけどよ…… 俺にはわかるぜ? あんたらはウォンテッド。それに幹部クラスだって事が」
「よく分かったなトリガー。いや、わからなければならない。我はウォンテッド幹部シワスだ。そしてこの横にいるのが我の弟であり、名をシモツキ。幹部だ」
「…… んな事はまぁいいんだよ。うん。それであんたらは何しに来たわけよ。俺たちとお茶しながらお話ししましょって訳じゃないでしょ?」
「あぁ、用があってここへ来た。ある事を伝えにな」
「ある事だって……なッ…!」
トリガーが驚いたのはシワスのその速さである。全く動きがわからなかったのだ。気づいた時にはトリガーを通り過ぎ、その後ろである永理を過ぎ、シェリフの元へと歩んで行く。
シェリフの前で立ち止まると、倒れたハントを抱えるシェリフを見下ろす。ハントを下ろし、立ち上がってシワスの真正面に移動する。
「俺に用事のようだな。幹部シワス」
「RIVERSの課長… 巧也だったな。ほう、成長したらしい。昔と比べて随分とな」
「なに? 俺を知っているのか?」
「よく知っている。知り過ぎている。お前の事についてはな。それに今日はお前に用があってきた」
「俺に何の用があるっていうんだ?」
「…… 3年前。お前の両親がトリガーに殺された」
「それがどうした」
「ここだけはっきりさせておこう。お前の両親を殺したのはトリガー… 射手園 兆だ」
「な…… ッッッ!!!」
シワスから発せられたそれは今迄信じようとしなかった事。兆がそんな事する筈がないと思っていたからだ。しかし面と向かって言われ、それは疑惑ではなく、今は確信に変わろうとしてしまった。揺らいでしまったのだ。
だが、それでもシェリフは事実とは認めようとしない。
「嘘をつくな。なら何故記憶がない? 推測ならその頃からセイブドライバーは持っていた筈だ。記憶も奪われる事はないし、それにあいつが理由もなしにやる男じゃない!! もしそれがどうしようもない悪だったとしたら話は別になるだろうが…」
「そのどうしようもない悪だったらどうする?」
「なんだと?」
「その父親と母親がどうしようもない悪であったならどうすると言ったんだ」
「話が見えないな。お前はさっきから何を言いたいんだ」
「エリアCとKが何故ある?」
「なに…?」
「そこを指揮するのは誰だと思う?」
「だからなにを言っている」
「そこの幹部キサラギとミナツキは誰だと思う?」
「いい加減にしろッ!! それ以上俺の両親に何か言ってみろ。今ここでお前を───」
「── お前の両親はウォンテッドの幹部だ」
「…… なに…?」
以上です。
流れが変わりましたね!!
まだ21話ですがどんどんぶっ込んで行きますよぉ!!
次回、第22劇「裏切り」
次回もよろしくお願いします!!