前回、まさかの警視庁が襲われ永理が連れ去られてしまう。そして兆と狩馬に亀裂が入り、巧也も思い詰めてしまい、せっかく直った関係がまたバラバラになってしまった。RIVERSの仮拠点としてBAR TRIGGERでしばらく活動する事になったが、そんな時、狩馬が永理を助けに行ってしまったと佳苗から言われ……
それではどうぞご覧ください。
兆はバオに跨がりエリアIへ向かう。ヤヨイが支配するここに何故来たのか。簡単な話、狩馬が1番に疑うのはシワスでもシモツキでもなく、ヤヨイを真っ先に疑うはずだ。奴らもそれをわかって待っているに違いない。
「あいつらの狙いは狩馬さんもそうだが違う。本当の目的は永理だ。例の鍵ってのが関わっているのかも…」
エリアIへ着くと、さっそく中へと侵入する。所々建物に大きな風穴や瓦礫が落ちており、既に激しい戦闘があった事が窺える。市民も倒れてはいるが、まだ息はあるようだ。狩馬は妹の為に乗り込んだとは言え、市民を巻き込んでまで助けようだとか思わない。だから最小限に済んでいる。
「だけど幹部たちと戦った感じじゃないな。もし幹部を相手にとればみんなを巻き込まずに戦闘なんてできないはずだ。さすがだぜ狩馬さん… だからこそ攻めちゃいけないんだ。この罠に乗ってはいけない!!」
すると、遠くの方から微かではあるが何か聞こえる。よく耳を澄ませると声だとわかった。叫び声が聞こえてくる。とても苦しそうな声だ。
「まさかこれって…… やばいやばいやばいッ!!」
兆は顔を青ざめさせ、再びバオを呼んで跨がり、急いでその声のする方へと走った。念の為、セイブドライバーを腰に巻きつけて、更にスピードを上げさせ、間に合ってくれと心の中で思いながらその場所へと向かう。
── そしてスタジアムのような場所へ辿り着くと狩馬の変身が解けており、見るも無惨にやられてしまっていた。その先にヤヨイが立っており、更に奥には縛られて気絶した永理がスタジアムの客席に寝かされている。
「狩馬さんッ…!! 永理!!! 」
狩馬の元へ駆け寄ると、かなりのダメージを受けており苦痛の表情を浮かべている。しかし狩馬は兆を振り払うと、またキカンドライバーで変身しようとギアナイフを持ち始めた。兆はそれをもちろん止めに為に入る。
「もう充分だ狩馬さん!! あんたはよくやった。後は俺に任せてくれ」
「どけ。邪魔だ兆… 俺は奴を…… この手で仕留め… ぐっ!!」
「だからその怪我じゃ無理だ。それと現によ。あんたの力じゃ奴には勝てないから負けたんだろ?」
「なん… だとッ!!? もういっぺん言ってみろ兆ッ!! 俺が弱いとでも言いたいのかコラァッ!!!!!?」
「弱いから言ってんだよ!!!」
「てめぇッ──」
「── 今、あんたは生かされてるんだ。あのヤヨイに!! あんたを妹の前で痛めつけてあいつは楽しんでるんだ!! 今のハントの力じゃヤヨイの力には勝てない。リミッターも限界を超えかけているはずだ。これ以上やって死んだら完全敗北になるんだぞッ!!! あんたがこの世で最も許せない野郎に嘲笑われながらな!!!」
「…… あぁ、そうだ。わかってるんだよ。だけど俺はこいつをこの手でぶっ潰したい。でも届かない。なんでこんなに遠いんだろうな…… これじゃあ兄として永理に対して恥ずかしい… また同じような過ちを繰り返すのは嫌なんだ。あの日のような事をまたッ!!!」
「あんたがあいつぶん殴ってやりたい気持ちは伝わってくる。だけど今は任せてくれ。弱いなんて言って悪かったけど… だけど今のあんたじゃもう1度同じような事をしては勝てない。だからこそ今だけは耐えてくれ。必ずあんたにチャンスが訪れるからよ」
「なに…?」
意味深な言葉を残してから兆はヤヨイの元へと歩む。ヤヨイは今の一部始終を見て、大きなあくびをして待っていた。それから兆と目が合うと吐くような仕草を行う。挑発のつもりだろうが、それは兆にとっては意味のない事。何故なら既に怒っているからだ。
「終わったか? つまらない劇場を見て、酒呑みすぎた次の日の朝のような気持ち悪さを感じてた所だ。そんな弱い男に何もしてやることはない。昔のような過ちを繰り返し死んでいくんだよ。そいつはそういう運命だ」
「へーそうかい。俺を気持ちが悪いってのは心底腹が立つが、狩馬さんを俺ら以外がとやかく言うのはもっと許せないな」
「ふんっ、仲間を思いやるってのが俺は気に入らない。そもそもいるだけ邪魔なんだよ。俺のやりたいように動けない奴らに一体なんの価値がある? だからこそ使い捨ての駒だって思えば気持ちは楽だろう?」
「…… どうしようもないクソやろうだな。そんなあんたは痛めつけられなきゃわかってくれないだろうな」
《AFTER NEXT》《OVER SET》
セイブドライバーの引き金を引くとアフターとネクストの装甲を纏う。変身を終えると、構える事もなくヤヨイに近づていく。ヤヨイは自分の能力を発動させて、みるみるうちにあらゆる場所からウォンテッドを生み出す。やはりこの男が出す量は尋常じゃないほどであり、スタジアムがウォンテッドで埋まりつつある。
「そのアフターネクストは既に聞いた。昔の俺の駒どもだったら、例えそれが1つだったとしても負けていた…… だが!! 今の俺は違う!! この駒どもはただのゴミではなくなったのだ!! それは既にそこのハントで証明されている」
「喋ってる間に何回攻撃できただろうな」
「… そんなに死にたいか」
ヤヨイが手を挙げると、それを合図として一斉にウォンテッドが襲いかかってきた。津波のように押し寄せる群れを前に、トリガーは首を回して余裕そうな態度を見せる。この行動をヤヨイは挑発だと見なし、自分の能力を最大限に高めた。
「ぶっ潰れろッ!! トリガァァァァァッッッ!!!!」
「そういう言葉さ─── ぶっ潰した後に言うもんだぜ」
そう言ったトリガーをウォンテッドの群れが有無を言わさず押し潰す。さすがのトリガーと言えどこの大群、ましてや強化されてハントさえも手も足も出なかったこれを倒せるはずがない。ヤヨイはそう確信していた。
だが、ドームのようになっているウォンテッドたちの中心部に光が見えてきた。何かが起こりそうなそれにヤヨイは近づくと、突然、群れが花火のように打ち上げられたのだ。
「な、な、なにィィィィィィッ!!!?」
「お前がいくら強化しようと、お前がいくら手下を増やそうが関係ない!! 俺の時間をお前には止められねーよッ!!!」
アフターネクストはそれぞれのフィガンナイフの力を使うことができる。速さと力も個々の時より段違いに上がっているのだ。最大出力でのスペックであるならどんな敵にだろうと負けはしない。
「そんなバカな…ッ!!?」
「喰らえ!! ウォンテッド砲ッ!!!」
「なんだそれぐはぁッ!!!?」
トリガーはウォンテッドを一体掴むと、筋肉を倍化させた状態で叩きつけるように投げる。その速さは適当に考えた名前とは裏腹に、本当に砲弾のような威力でヤヨイにぶつかってスタジアムの端の壁に打ち付けられた。
「まさか… 俺が想像していた以上のパワーを…ッ!!」
「はははははっ!! どうやらこれでゲームセットのようだな? ヤ・ヨ・イ?」
「こ… のガキィィィィィィィ…… ッッッ!!!!!」
「てことで、あんたもここで終わりだぜッ!!!」
セイブドライバーの引き金を引いて、天高く跳び上がり、ヤヨイに向けて一直線に跳び蹴りを喰らわせようと構えた。向かってくるトリガーを前にヤヨイは諦めたくはなかったが、どう足掻いても完全敗北してしまった事実は変わらない。
「ハァァァァァッッッ!!!!!……… ん? ぐはぁッ!!?」
突如としてトリガーの横からエネルギーを帯びた矢が飛んできた。完全な不意打ちであった為、対処することができずに客席の方へと落ちてしまう。腰をさすりながら、反対側の客席を見るとシワスが腕を弓状に変えて矢を放ってきていたのだ。彼以外にもシモツキ。そして… テロスがいる。
「あらあら… これはやばいな。冗談言ってる暇なくなるやつかこれ? ちょっと幹部の方々!!? 本気で俺のことやりに来たのかい!!?… まぁそうだよな。そもそもこうしてくる時点で罠だったし、なにが起きても不思議じゃねーか」
「1番厄介なお前を潰せば、後はどうにでもなる。だが、そのアフターネクストの力の前に、1人ずつかかれば間違いなくこちらが不利となるだろう。だからこそ幹部の力を今ここに集結させてお前を葬るのだ」
「そうかい。やってみろよー…… と、言いたけどさすがにテロス入りだとまずいな…」
「ボスにわざわざ出て頂くまでもない…… 奴は我々にお任せください。あなたに相応しい者は我だと証明して見せましょう」
それから双方は客席から飛び降り、スタジアムの中心部に歩む。相手は3人。シワスはまだわからないが、他2人の能力だけでも非常に厳しい。アフターネクストの時を消し飛ばす力を最大限に発揮したとして、間に合うかどうか不安になる。
トリガーはチラリとボスの方を見ると、白い液体が入ったグラスを持ちそれを飲み干している。きっとミルクだと思うが、随分と余裕そうな態度である。この状況であるなら否定はできない…。
「よそ見をするとは余裕そうだな」
「ちょ、ズルッ…!!?」
またシワスから同じように矢が飛んできた。体をかすった程度だがとんでもない威力だ。ミナツキの弾丸より威力はなさそうではある。しかしトリガーに考察する時間はない。シモツキが避けた所を狙って斬ってきた。
「ちっ…!!」
「さっきは俺をよくも見下したな? その報いは受けてもらうぞッ!!」
ヤヨイの出したウォンテッドが一斉に襲いかかってきたが、また同じことだろうと筋肉を倍化させて殴る。だが、先程よりも吹き飛ばさず残りのウォンテッドが取り囲んできた。
「な、なんだとっ!!?」
「くくくっ… 二回か」
「二回…?」
「あぁ、そうだ!! お前はシワスの矢を二回喰らった!! 終わったな!!」
その言葉の意味は理解できない。二回撃ち込まれていったい何が起こったと言うのだろうか? トリガーは考えようとしたが、シモツキの斬撃を背中に受けてしまった。更に続けてシワスの矢が胸に直撃してしまう。
「うぐぅ…ッ!!」
「三回目だッ!!! 終わったなトリガーッ!!!!」
「な、なんだ…!? ち、力がッ……」
その時やっとこの能力について理解する。トリガーが受けた矢は確かに威力はあるが、ミナツキの物と比べて威力が低い。これだけならまだ耐え切れるほどなのだが、問題は威力じゃなかった。彼の放つ矢は相手のエネルギーを外部へと弾き飛ばしてしまうのだ。
しかし既に遅かった。トリガーはシワスの能力にまんまと嵌められ、いつしか抵抗すらままならなくなってしまった。
「さ、最悪だ… 警戒はしていたが、 この力は予想外だったぜ…」
「我々の勝利だなトリガー。最後に言い残す言葉はあるか? お前は今までに何人もの幹部を葬ってきた。その力を称賛して何か述べさせてやろう」
「…… 戦いってのは最後まで何があるかわからないぜ?」
「ふんっ、最後まで憎たらしい奴だ…… 死ぬがいい」
3人の幹部が構え始めたその時、馬が一頭、幹部たちの目の前を通り過ぎ、反射的に後ろへ下がる。その馬はバオであり、体に何か括り付けてあった。トリガーは立ち上がり、その何かを外して思いっきり狩馬の方へとぶん投げる。急だったので、慌てながらだったがなんとか取れた。
「あぶねーだろ兆ッ!!!」
「それがあんたのチャンスだぜ狩馬さん」
「なに…… ッ!!? これはまさかッ!!」
「それは狩馬さん… ハント専用アイテムだ。ボロボロで悪いんだけどさ。俺ももうバラバラになりそうだから… 手伝ってくれない?」
「兆…… あぁ、やってやる。やってやるぜ!!」
狩馬はトリガーの元へと駆け寄って頷き合うと、ヤヨイを睨みつける。ヤヨイはその表情を見て、スタジアム内に響く声で大笑いし始めた。
「なんだその顔は? さっき俺1人にボコされた野郎がまぁそんな決まった顔で睨みつけてくるもんだな?」
「うるせー… だがよ。確かに俺は負けたが、これで勝っちまえば話は別のはずだ」
「勝つだと? お前如きが俺をどうするって? 夢を見るのも大概にしろ。お前はまた負けるんだよ。何度も何度も、そしてなにも救えず、なにも守れず、最後は妹を連れて行かれてはいさよならだ。これがお前なんだよッ!!」
「ふっ、言っとけよ。お前がいくら犬のように吠えようが知った事じゃねぇ。俺は2度と永理を離さない。同じ過ちを繰り返さない。だが、俺1人じゃそれはできない。だから借してもらうぜ兆。お前の力と俺の力で…… こいつをハントしてやる」
「やってみろよ!!! やれるもんならなぁッッッ!!!!!」
「永理…… 見ててくれ。俺はもう大切なモノを奪われたりはしないッ!!!」
《WEEK START》
狩馬はキカンドライバーを装着し、新たなアイテム… ウィークエンジンを起動させてからドライバーの右側に差し込む。そしてもう一つのアイテム漆曜日チケットを挿し込んで、番式ギアナイフを構える。
「変身ッッッ!!!!!」
ギアナイフを挿し込むと、ハントのシークエンスともう一つ、壱〜陸までの文字が狩馬の背中に円のように浮かび上がる。そしてその真ん中に漆の数字が出ると、機関車が狩馬を通り抜けて徐々に装甲を纏って行く。
《漆曜式!! ギアチェンジ!! スタート!! ニチ・ゲツ・カ・スイ・モク・キン・ドッ!! オールウィーク!!》
「兆。こいつらぶっ倒して、さっさと永理連れて帰るぞッ!!!」
「もちろん。やってやろうぜ狩馬さんッ!!!」
再び双方は構え、その間に何者も入ることができないほどの圧を放ち合う。
「今日が俺たちのッ!!」
「ハント日だぜッ!!」
ハントの新フォーム漆曜式が爆誕!!!
果たして幹部相手に勝てるのか…!!?
次回、第28劇「大切なモノ」
次回もよろしくお願いします!