前回、完全に覚悟を決めた巧也が最強フォーム仮面ライダーシェリフ プリズンハンドレッドに変身し、ミナツキとキサラギを撃破しました。流れに乗った RIVERSでしたが、何やら不穏な空気が漂い始める……
それではどうぞご覧ください。
「うぐぅ……」
RIVERS内の一角で壁を背にして兆は眠っていた。気持ちよさそうではなく、とても苦痛な表情を浮かべ、夢を見ている。
テロスが兆の頭を掴み、偽りの記憶を注ぎ込んで彼の性格や形まで作られ、行動理念までもがテロスによって構築されていく。本当は叫んで誰かに助けを求めたいが、周りには誰もいないし、そもそも声が出ないのだ。
徐々に化け物のように恐ろしい姿へと変わる自分を見て兆は発狂した。
「はっ…!!」
そこでプツリと夢から覚めて、兆は肩で息をしながら周りを確認する。
いつも通りのRIVERSで皆、まだここへは来ていないようだ。外を見るとまだ暗く、時計は0時を指しており、大体2時間くらいしか寝ていないのだろう。
「…ったく、変な夢で俺のねんねタイム妨げやがって…… 0時か。次の日になっただけなのに、今の夢からは嫌な数字だぜ…」
夢の内容をハッキリと覚えているほど鮮明に兆の頭に入り込んでくる。
額に手を当てて必死に忘れようとしたが、これが嫌な所で思い出そうとすればするほど、更に頭の中にくっきりと残ってしまう。
これでは眠れないだろうと、兆は気分転換にRIVERSから出て、近くの公園まで散歩をする事にした。
「トリガーさんは最強〜誰にも負けない〜だから〜らららららら〜♪」
夜中にテンションを高めにして、これまた酷い歌を唄いながら、スキップをしているじゃないか。周りからすればただの変態にしか見えず、一歩間違えればせっかく出てきた警視庁に逆戻りなんてこともあるだろう。
それから無事に誰もいない公園まで着くと、ベンチに座って空を見上げる。今日は星が綺麗に見えており、満月でいつもよりも明るく、兆の心はようやく落ち着きを取り戻していた。
「まぁただ今日が満月か…… なんだろうな。例の夢の後だから素直に喜べないや…」
その時、暗闇から何者かの気配がして、座った状態から周囲に警戒を始めた。
人間のものとは違うこの異様な空気と緊張感は、兆にとっては会いたくないものの1人であり、いつかは倒さなければならない自分の元いた場所。
その何者かは暗闇からヌッと姿を現したが、全身黒いコートで覆われ、フードで顔が見える事はない。
「── テロスッ!」
「こんな夜更けに散歩か。外は寒いというのに風邪でも引かれたら困る。お前は私の大事なモノなんだからな」
「知るかよ! 何が大事なモノだ!…… ちょうどいい、お前には聞きたいことがあるんだよ」
「…… 場所を変えよう」
── 兆たちは誰もいない工場の倉庫へと足を運んだ。人の気配が全くしないため、戦うのならこの場所が最も最適だ。それに一般人を巻き込むこともないし、騒ぎにもならないのなら尚更である。
「あそこでは人々に迷惑をかけてしまうだろう。せっかくの眠りを妨げては酷だ」
「言葉にもないこと言いやがって…… 早速だが聞かせてもらうぞ。例のラストガンナイフは俺の意思とは関係なく、勝手にドライバーに装着された。お前は言ったよな。俺自身が使わなきゃ意味がないと」
「確かにお前自身が使おうとする意思がなければ、発現しないようになっている」
「なら何故だ!! 俺はあんなもん使いたくもないってのに勝手に動いたんだぞ!!? お前が何かしたんだろ!!?」
「お前は大きな間違いをしている。自分の意思とは関係なく? 少なくとも兆、お前自身がラストデイズの力を使いたいと願っていたはずだ」
「思ってるわけッ!! ──」
「カンナヅキとの戦いの中でラストデイズの事を少しでも考えたのだろう? これさえあればこの状況を一変できると。そう考えたはずだ」
「うっ…!!」
「図星か? まぁいい。今度は私の用に付き合ってもらうとしよう」
《ZERO》
「最初からそのつもりだったんだろ? その前にもう一つ教えろ」
《AFTER NEXT》
「言ってみろ」
《SETTING》
「お前そのフードの下は俺なんだよな」
《OVER SET》
「それ間違いだ。何故ならお前が私なのだからな…… 変身」
「その顔ぶん殴って整形させてやるッ!!! 変身ッッッ!!!」
お互いに変身すると、トリガーはガーツウエスタンでテロスを撃つ。
テロスは微動だにせずトリガーの接近を許し、側頭部に倍化させた強烈な蹴りを浴びせられる。
だが、その攻撃全てはテロスの前では0へと変えり、何もかもが無意味になる。これからトリガーが何をしようが結果が変わる事はない。
「わかっているだろう。私にアフターネクストの力は通用しない」
それでもトリガーは時間を消し飛ばして、テロスの死角から蹴りを放ったり、肩の上に乗って頭に銃弾を何発も撃ち込んだ。
これだけやってもテロスにはダメージどころか、ほんの少しの傷すら付かない。
「いくらやっても無駄だ。早く使ったらどうだ? ラストガンナイフを…」
「使うわけないだろ!! あんなもん使わなくてもお前を倒す!!」
やはりトリガーの攻撃はテロスの前では無力に終わる。
まるで子供と遊ぶ大人のように、今のテロスとトリガーの戦いは側から見ればそう見えてしまうほど、天と地の差があるのだ。
そしてテロスは突然ピタリと止まり、それに続いてトリガーも止まる。何故止まったのかはわからないが、彼の視線はセイブドライバーに向けられている。
「ほう…… にも関わらず、お前のセイブドライバーにラストガンナイフが差してあるんだ?」
「何を言って…… なッ!!?」
トリガーのセイブドライバーにはラストガンナイフが差してあった。
あの時のように思ってしまったのもそうだったが、トリガーが1番驚いたのはここにラストガンナイフがある事だったのだ。RIVERSの研究室に置いて来たはずだったが気がつけば差し込まれている。
「…… 何をしたッ!!」
「何もしていない。お前自身がそう願ったからラストガンナイフは応えた」
「くそっ…!! か、体が…!!」
「もう戻す事はできない。ラストガンナイフは既にお前とリンクしている。お前はこのまま記憶を奪い続けるだけの兵器となる。さぁ、本当の終焉がここに誕生する!!」
「ふざけんなよッッ…… なるわけないだろっ!!!!!」
「お前の運命は決まっている。それが真のトリガーの姿。お前のあるべき姿なのだ…」
そして何もしていないはずのセイブドライバーの引き金が引かれ、トリガーの身体の装甲が割れていく。薄れゆく意識の中で最後に見たのは、テロスが不適に笑いながら闇へと消えていく姿だった。
「あ────」
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「佳苗ッ!!! 兆が暴走していると聞いたが本当か!!?」
「え、えぇ… 今日の5時くらいに入ってきてたみたい…」
連絡を受けた巧也は急いでRIVERSに駆け込んだ。話を聞けば兆がラストガンナイフを使用して変身し、すでにエリアAの4分の1が記憶を奪われてしまっていたようだった。
その後、孝四郎と狩馬と永理がRIVERSに入ってきて、巧也は全員来たことを確認してからメンバーに作戦を命じる。
「これから兆を止めに向かう…… メンバーは俺と狩馬。そして永理で行く」
「え? 私ですか?」
「永理なら兆をどうにかできるかもしれない。最後の手段として頼みたい。俺と狩馬で戦闘を行うが、シワスとシモツキの幹部が邪魔に入る可能性がある。その時は狩馬に幹部の方の相手をしてもらうつもりだ」
「いいぜ。ただし巧也。俺がいない間に永理に傷が1つでもあったら許さねーからな?」
「あぁ、心配するな。必ず守る…… RIVERS出動だッ!!!」
RIVERSを出た3人はパトカーに乗り込んで現場へと急行する。
その間に巧也は運転しながら、ラストデイズの行動原理について考えていた。ラストデイズの情報を纏めると、まずこちらから戦意さえ見せなければ攻撃をせず、襲ってくると言っても殺すのではなく記憶だけ奪い取るという事。
つまり朝まで兆の情報がなかったのは、そういう理由から街に被害が出ていなかった。だからこそ一刻も早く彼を止めなければならない。
「……っ! おい!! 巧也見ろ!!」
パトカー内から街を見ると、街はいつも通りでどこも変わっていないように見えるが、人々はそこら中に倒れて異様な光景となっている。
その奥には男性の頭を鷲掴みにして、記憶を奪い取っているトリガーの姿が見えた。
巧也たちはパトカーから降りると、兆の元へと走って行く。するとトリガーはこちらに気づいたのか、或いは戦意を感じ取ったのか。どちらでもいいが、明らかな殺意を放ちながら近づいてきた。
「ここからが問題だ……」
《PRISON HUNDRED》《SET ARREST》
「気合入れて行くしかねーよ。いつも以上にな!!」
《WEEK START》
「「変身ッッッ!!!!!」」
《プリズンガンアクション!! ポリス・エマージェンシーコール!! ハンドレッドテンス!!》
《漆曜式!! ギアチェンジ!! スタート!! ニチ・ゲツ・カ・スイ・モク・キン・ドッ!! オールウィーク!!》
2人は変身し終えるとトリガーに向かって一直線に駆け出す。
そしてトリガーはシェリフを殴りに行くが、それをギリギリのところで回避して、その場でピタリと止めて見せた。彼も動こうとしているようだが、指先一つ動かせない状態だ。
「ホントすげーなそれ…」
「早くラストガンナイフを抜け!!!…… ぐっ!! 長時間抑えるのは… かなり厳しいッ…!!!」
「わかってるよ!!」
ハントはラストガンナイフに手を掛けて、力の限りを尽くして抜こうとしたが、ガッチリと嵌まっておりビクともしない。
それもそのはずである。よく見ると、ラストガンナイフから赤黒いコードが何本も伸びており、セイブドライバーに繋がってほぼ一体化していると言ってもいい状態であった。
「む、無理だッ!! セイブドライバーと一体化して抜くどころの話しじゃなくなってるぞ!!」
「一体化だと!!?」
「テロスへの最終手段として壊そうに壊せなかったが…… こうなったら仕方ねぇ!! ぶっ壊すッ!!!」
「… わかった!! やれ狩馬ッ!!」
「うおぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
今までにラストガンナイフを破壊しようと何度も考えたが、結局テロスへの対抗策がこの一本しかなく、こうして持ち越した結果が今回の暴走を招いた。だからこそ今すぐに破壊した方が、こちらとしてはデメリットになってしまうけれど、兆を助けて市民を守るにはこれしか方法がない。
ハントはギアナイフを押し込んで、拳に全エネルギーを集中させて真っ直ぐに、セイブドライバー諸共ラストガンナイフをぶん殴る。
「ぶっ壊れろォォォォォォッッッ!!!」
その時バキッという音が聞こえ、ついにラストガンナイフは破壊され、トリガーの変身が解除される。そう思っていた。
しかしシェリフは何かがおかしいことに気づく。何故ならトリガーは一歩も動いておらず、ハントの殴った拳が震えているのだ。流石に硬かったから痛がっているだけのかと思ったが、まさにその思った通りであり予想外の光景があった。
ハントの拳の装甲にヒビが入り、ラストガンナイフ及びセイブドライバーには全く傷がついていないのだ。
「うぐっ……!! 嘘だろッ…!!」
「狩馬ッ!!!」
そしてハントは永理を見ると、手を大きく振って後退しろという合図を送る。もうどうする事もできないと悟ったのだろうか。
必死に抑えていたシェリフだったが、ついに限界が来てしまい、トリガーがその場から動き出してしまった。トリガーは2人を蹴り飛ばし、ガーツとライトニングウエスタンを構えて発砲しようとする。
「やはり無理か…… 狩馬!! 永理!! ここは一旦引くぞ!!」
「ですが課長ッ…!!」
「命令だ!!! 今の状態では危険過ぎる!!! 急げッ!!!」
シェリフはセイブドライバーの引き金を引いて蹴りによる一撃を浴びせてトリガーを大きく吹き飛ばす。
そうした後に狩馬は変身を解いてパトカーに乗り、永理も続いてそれに乗ると同時に走らせる。永理は後ろを振り向いてシェリフの遠く離れていく背中を見守り続けた。
「まず市民を安全な場所に運ばなければ……」
残ったシェリフは市民を抱えて場所を移動し始めたが、すぐにトリガーが起き上がり、彼に向かって銃口を2つ向けてきた。
手を挙げて抵抗しない意思を見せても、今の彼にとっては関係のない事。だからやるつもりもないし、かと言って逃げるつもりもない。
「お前は俺に銃を向けるような奴じゃなかっただろ? 兆?」
「…………」
「… と、言っても今のお前じゃなにも答えてくれないよな。わかってる…… かかってこい」
シェリフは腰を深く落として、トリガーの攻撃に備え、ジャッジメントエンターンを取り出して構える。
それからトリガーが発砲すると共に、シェリフも弾丸を放って相殺しながら彼へと向かって走り出す。トリガーの何を見つめて、何を思っているのかもわからないほど、永遠の闇が見える瞳にシェリフが移ると、目の奥がほんの僅かに赤く光り始める。
「ここはいったい… どこなんだ……?」
兆は音も光も見えぬ真っ暗な場所に1人ポツンと佇んでいた──。
ラストガンナイフが兆と一体化…?
そんな彼を止めるためにシェリフは1人立ち向かいます。
次回、第39劇「鍵」
次回もよろしくお願いします!!