前回、悪夢を見たトリガーは深夜に散歩に出かけ、行き着いた公園でテロスと出会う。そして場所を移して戦うもテロスの圧倒的力を前にラストガンナイフを強く思ってしまった。強制的に変身した後に、現場へと巧也と狩馬が止めに来たのだが、完全にラストガンナイフと一体化してしまった彼をどうすることもできない。そう悟った巧也は1人トリガーに立ち向かう……
それではどうぞご覧ください。
── 声が聞こえる。
兆は見渡す限りの闇の中で、1人歩く。もうどのくらい歩いてるのかすら忘れるほど、途方もない道をずっと進み続けている。次第に道なんかないんじゃないかと思ってしまうようになってきた。
「この声は…… 巧也さんか? 」
その声は兆を呼んではいるのだが、他にも苦痛の声が聞こえてきた。
そして自分の身体で感じる。自分が巧也に対して攻撃を行っているんだと、何もない暗闇の中でもはっきりとわかるようになってきている。
兆がそう認識した時、目の前にシェリフを殴っているトリガーの手が見えた。
「(な、何だこれはッ…!!!?)」
「目を覚ませ兆!!!」
トリガーを何度も止め、その度にシェリフは兆の名を叫ぶ。
名前を呼ばれているから答えようと思うが、声は出ず、自身の攻撃を止めようにも身体が言うことを聞かない。自分の身体であるのに言うことを聞かないというのはおかしいところではあるが、兆からすれば強制的に装着された機械で操られている感覚なのだ。
兆の意思とは関係なく、シェリフの顔面を捉えた。
「(こ、巧也さん!!)」
しかしシェリフは殴られたは殴られたがそれを受け流し、トリガーの顔面にカウンターで強力な一撃を叩き込んだ。
予想もしなかったであろう返しをまともに喰らったトリガーは、体勢を崩して片膝を着いた。それも一瞬のことであり、人間で言うのであれば多少立ちくらみがした程度だろう。すぐに立ち上がってネクストの力でシェリフに一瞬にして近づく。
「来たか」
トリガーの蹴りを躱したシェリフは冷静に隙を見つけ、脚に触れてからその場でピタリと止めて見せる。それからシェリフはその手に更に力を込めると、ラストデイズ自体の能力を停止させ、完全に攻撃手段を己の肉体のみにさせたのだ。
「なるほど。停止させるのは1つだけではなく、触れたものは何であっても無力化するらしいな…… 例えそれがラストデイズであっても!!!」
ここに来てプリズンハンドレッドの能力の範囲が出てきたが、いくら停止させようともその圧倒的パワーを抑えているわけではない。
そうしているうちにトリガーの拘束は解かれ、ガーツウエスタンでシェリフを近距離で撃ち放つ。
「うぐッ…!!」
「(何で意識はあるのに動けない!! テロスはこれを狙っていたってのかよ!!)」
トリガーは後退したシェリフに続けてガーツウエスタンを撃ち放ち、シェリフはそれをジャッジメントエンターンを回転させて剣にし、全て斬り捌いて耐えている。
「(能力を止めているうちにベルトを破壊してくれ!! 巧也さん!!)」
兆の想いが通じたのか、シェリフが元々考えていたのか。明らかに後者であることは確実だが、それでもやるべきことに対する気持ちは同じである。
どちらにせよシェリフはセイブドライバーの引き金を引いてトリガーに向かって走り出す。
トリガーに縄が巻かれ、身動きを取れなくさせ、シェリフは彼のセイブドライバーに向かって突き出すように蹴りを放つ。
「これで… 最後だッ!!!」
セイブドライバーにシェリフからの強烈な一撃が叩き込まれる。
バチバチという音を立てて、トリガーのドライバーとラストガンナイフにヒビが入り始める。そのヒビが入った隙間から記憶が抜け出て、トリガー自身も苦しんでいるような素振りを見せている。
「何て硬さだッ…… しかし、あと少しで壊せる!!!」
そしてついにヒビが大きく入り、あと一歩のところまで割っていく。このまま押し切ろうと、更に全身に力を入れ、最後の一撃を喰らわせようとする。
「(よし!! このまま…… なんだ? あれ……ッ!!!? 巧也さん!! 後ろだ!! 後ろを見ろッ!!!)」
その瞬間、シェリフの右側の脇腹に何者かの蹴りがめり込み、防御もできないまま吹き飛んでしまう。
そしてそれはトリガーのドライバーに触れると、せっかく破壊できる手前まで持っていたのに一瞬にして直ってしまった。
「テロス…ッ!!!」
「そのプリズンハンドレッド…… まさか人間がこれほどまでの力を手に入れようなどとは予想外だった。しかし、この力を破壊されるわけにはいかない」
「なら、お前を倒して兆を救うだけだな」
「お前という男がそう言うか…… だが、私とトリガーの2人を相手にどうしようと言う?」
「お前の言うことは聞かないんじゃなかったか?」
「そうだったな… ここまで繋がりが完璧ならば、もう二度と元に戻ることはない。こいつはただの操り人形…… 私の思うがままに動かす事ができる」
「なに…? 元に戻らないだと? 今は冗談を聞く気はないぞ!!!」
テロスは不敵に笑い、セイブドライバーを掴んだまま、更に手から禍々しいエネルギーを入れていく。トリガーはテロスに攻撃をしようとしていたが、徐々に手が垂れていき、最終的には棒立ちのまま動かなくなってしまった。
「お前ッ…!!!」
「くくくっ… これで終焉のトリガーは完全となった。ラストガンナイフと兆は互いを求めた結果、この姿と力を手に入れたのだ。それが運命。運命に逆らうことは決してできない!! 兆は我が元へと帰った!!」
「兆…… なら、無理やりにでもお前の呪縛から解放してやる!!!」
そしてシェリフはジャッジメントエンターンを持って2人に向かって駆け出し、テロスはそれに合わせて手を軽く挙げると、トリガーがシェリフに向かって走り出した。
その光景がはっきりと見えている兆は、幾度となく叫んで必死に抵抗を行った。そんな事は最早意味などなく、シェリフの無謀とも言える戦いが始まる──。
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RIVERSに戻った永理と狩馬はそのまま待機することにした。理由としては前のようにこの状況を使って、警視庁が襲われないかという可能性を考慮したのだ。
狩馬は机を人差し指でトントン叩き落ち着きがなく、他のメンバーも彼同様に落ち着きがない様子だ。ラストデイズの恐ろしさは皆知っている。巧也がただ1人、あそこに残っているとなれば誰しもがそうなってもおかしくはない。
「…… 兄さん。課長は大丈夫かな?」
「安心しろ永理。あいつは簡単にやられるような奴じゃねーよ」
「うん…」
「兆が心配なんだろ? マスクの下でどーせ俺たちのこと笑ってる。いずれ飽きて帰ってくる」
「…… ごめん。私ちょっと出かける!」
「は? おい待て永理!!?」
すると、永理は何かを決めたのかRIVERSから出て行ってしまった。
狩馬はその後を追おうとしたが、佳苗が急いで止めに入る。兆の元へ向かっているはずだから行かせろと言う狩馬に、それは違うから安心しろと佳苗は言う。
「ならどこへ向かったって言うんだ佳苗ちゃん!!?」
「きっとBAR TRIGGERよ。いいからあなたはここにいなさい」
「マスターに会いに行ったのか…? 確かにテロスに1番信頼されてるって言ってもよ。それでなにがわかるんだよ」
「それはわからないけど… 永理ちゃんは自分なりに何かしたいのよ。鍵と呼ばれ、特別扱いされて、でも何もできない。兆くんに助けてもらってばっかりだから少しの可能性があるなら、それにしがみついたでも彼を助けてあげたい… さすが兄妹って感じ。大切な人のためならすぐ行動しちゃう所」
「… そうか。ま、まぁ悪い気はしないがちょっと待て。大切な人ってそれどういう……」
「さ、私たちは巧也の帰りを待つわよ。まだ巧也の反応は消えて…… あら? この反応ッ!!?───」
── それから永理はBAR TRIGGERに足を運んだ。
この状況をどうにかせねばならない。そう考えていたらもうこの場所にしか対処法をわかる人はいないだろうと、必然的にここへと辿り着いた。
バーの扉を開けようとしたが、なんとCLOSEという札が掛けてあり、扉を叩いても誰からも返ってこない。運が悪い事にマスターは留守だった。
「そんな…… 私はどうすればいいの…?」
しかし留守であるなら、兆を止めるために巧也の元にいるのかもしれない。
永理はすぐに切り替えて、次に何をすればいいのかを判断する。確かに危険ではあるが、自分を死なせない為だったらテロスが出てくるだろうと考えた。
「私だってやらなきゃ」
そして永理はバオを呼び出して、兆の元へと走らせた。
兄は全力で止める事だろう。兄じゃなかったとしても皆止めるはずだ。だけど今やらなければ、大事なものが全て消えてしまいそうに思う。
永理は更にスピードを上げさせ、まるで操り人形のように、巧みに乗りこなしながら彼らの元への急いだ。
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「お前もできれば殺したくはない。人間として最高の記憶エネルギー源がなくなってしまうからな」
「そういえば俺も糧だったな……」
「ふっ、後は任せたぞムツキ。殺しはするな。だが、立てないほどには痛めつけておけ」
そう言ってテロスは消え、残ったのはトリガーとムツキのみ。
信頼されているというのは本当らしいが、彼であってもトリガーを止められるのかどうかだ。
今のトリガーはテロスの命令でシェリフを殺す一歩手前まで痛ぶるつもりだろう。ムツキの方はわからないが、喋りはしないが、とにかくなんとかしようと考えているはずだ。
「ムツキ…… どうするつもりだ?」
「………」
シェリフは先ほどからなんとか耐えていたが、やはり2人相手であり、能力を止めてもすぐにテロスが元に戻してしまう為、ずっと苦戦を強いられていた。彼の疲労も限界が来ていることだろう。
それをわかっているのかムツキはトリガーが飛び出そうとすると、肩を掴んで止めて見せた。それから腕をブレードのような形状へと変化させて、トリガーの前へと突き出し、先へ進ませないようにした。
「わかっての通り俺もこいつは止められない。巧也もかなりの疲労が来ているはずだ」
「マスターだったか? 本名は聞いていないからそう呼ばせてもらう…… 兆をどうしたら助けられる」
「ここまで来るとどうすることもできない。兆の意思は完全にラストガンナイフに持っていかれた。つまりこのラストガンナイフこそが兆なんだ」
「なんだとっ…!!? そのことが本当なら破壊したら…!!!」
「……… 残念だが、破壊すれば彼自身を死ぬ事になる…」
「馬鹿なッ!!!」
兆は全て聞こえていたし感じ取れていた。だからこそ破壊してくれと強く願った。死にたいというわけではないが、もう方法がそれ一つだけで、元の自分に戻れないのならば、いっその事ここで倒された方がみんなを守ることができるからだ。
そんなことを思っていたら、遠くの方から兆がよく知る馬が見えてきた。
すぐにバオだと気づき、その背に跨っているのは永理である。彼女はシェリフたちの元へ着くと、トリガーの前へと立ちはだかる。
「マスターさん… 私は鍵と言われていますが、その鍵で兆さんを解放してあげられないんですか?」
「…… 鍵は鍵でも、お前は次元の扉を開く為の鍵だ。言い方を変えれば器なんだ。器が兆を解放することはできない。だからもう兆は助かる道は…ない…」
「なら、器として私が兆さんを受け止めて見せます!! マスターさん!! 何か方法はないんですか!!?」
「何度も言うがないんだ。もうどうすることも──」
「あなたがこの世界に来た理由はテロスを倒す為…… それなら知っているはずです。いや考えていたはずです。ここまで追いかけてきた成果をあなたは既に持っているんですよね?」
「…っ!!…… まさかそれをわかってここへ…… いいだろう。ならこれを君に託す」
ムツキは四角いキューブと兆の帽子を取り出し、それを永理に手渡す。
それからトリガーを押さえつけながら、黒い霧を出し始め、その中にトリガーを入れていく。
「ここは一旦引く。その帽子は君が持っていてくれ… そしてキューブだが元の世界にいた時からラストデイズの制御装置として開発していたものだ。そのキューブの中のエネルギーは無限に回転し続けている。それをラストガンナイフに内臓しようしたが開発に手間取った結果がこれだ…… もう間に合わないのはわかってはいるが、永理という希望にかけてみる事にする」
それからムツキはトリガーを連れて何処かへと姿を消した。
永理はもらった小さなキューブをポケットにしまい、シェリフの元へと駆け寄る。だいぶ息は荒いが変身を解いた後でも目立った傷は見られない。
「今のキューブの話は聞いた… 孝四郎に頼んでフィガンナイフ辺りを開発してもらおう」
「はい!!…… 絶対に兆さんを助けましょう!!」
「永理……」
永理の目はとても真っ直ぐしている。そこ知らぬ覚悟を決めたのだろう。今の彼女に不安はない。
そして永理は兆の帽子を被り、巧也と共にバオに乗ってRIVERSへと戻っていった──。
─── その光景を建物の上からジッと見つめていた2人の影がそこにある。
1人は兄と呼び、もう1人は弟と呼ぶ。そう、幹部のシワスとシモツキだ。
「兄さん。すごいこと聞いたね」
「前からムツキの行動は怪しく思っていたが…… まさか奴らの仲間でボスに歯向かおうとしているとはな」
「早速ボスに報告しよう。そしたら奴の信頼はガタ落ちで兄さんが右腕だよ!!」
「まぁ待て、まずは奴とトリガーの行方を追う。ついて来いシモツキ」
「わかったよ兄さん」
そうして2人はムツキの真相を完全なものにする為に、闇へと消えた後を追う。
一方、RIVERSに到着した永理と巧也は早速、孝四郎にラストデイズの制御装置を開発してもらう事にするが……。
動き出したそれぞれの思惑。皆、自分のたちが思う正解へと進み始めた───。
終わり!!閉廷!!以上!!
マスターついにバレてしまった!!
兆は元に戻れるのか!!?
次回、第40劇「永遠の理」
次回もよろしくお願いします!!