前回、フロンティアフォーエバーの力でテロスを追い込むが逃げられてしまう。暫く待機していると、急な揺れに襲われて外へ出ると、街はほぼ崩壊寸前であった。そこにはシワスとシモツキがおり、テロスはその隙に永理を抱えて何処かへと消えてしまった……
それではどうぞご覧ください。
永理は目を覚ますと、自分にあったことをすぐに思い出して辺りを見渡す。
特にこれといって目立つものはなく、というかそもそも物がないのだから目立つも何もない。そんな何もない部屋の固い地面で1人ポツンと寝ていた。
それから永理は立ち上がり、扉を見つけて開けようとしてみたが、その扉にはドアノブがなく、体当たりして壊そうとするが、永理の力ではまるで馬鹿ともしない。それどころか先ほどの体当たりで気づいた事があり、扉裏側に何か大きく重い物があるようで、例え壊せても逃げる事はできないだろう。
「ここに意外に出口は……」
そう思い辺りを見るが、どうやらこの扉以外、外に出れそうな所がない。窓もない。あるとしたらこの部屋を照らす電灯があるだけだ。
すると、突然どこからともなくテロスが永理の前に現れる。
彼女は逃げようとはしなかった。戦ったところで勝ち目はないし、逃げてもすぐに捕まるだけ。この密室ではどうすることもできない。
「テ、テロス…… 私をどうするつもりですか」
「私はより力をつけなければならない。次元の扉を開くには並行世界でたった1人、お前だけがそれを開ける特別な存在なのだ。扉を開く… 即ち私の力を限界を超えて高める事。その力で私はこの世界の記憶を喰い、そしていずれは全てのありとあらゆる生物から記憶を奪い取る」
「でもそれを行うには兆さん達からより強力な記憶のエネルギーを取らなければならないんじゃないですか? だからこそのラストデイズでしょう? もし私を使って開けたとしても、あなたが無事で済むはずがありません!!」
「承知の上だ。そうでもしなければ今の私に勝ち目はない。しかし…… 耐えきれるという確信はないが、やれるという自信はある」
「や、やめてください…!!」
「いつまでもゆっくりとしていられないな。さて、開くがいい… 私の力の限界をッ!!」
テロスは永理の額に手を翳すと、そこから眩い光が出始め、銀河系のような唸りのあるものが現れる。そこへ徐に手を突っ込むと、凄まじいエネルギーの流れがテロスの身体の中へと一気に流れ込む。流石の彼もそのエネルギーには苦しみの声を上げた。
そして唸りは更に大きさを増していき、部屋を突き抜けて破壊し、テロスを中心にして天を突き刺す光の柱が放出される。
「グオォォォォォォォッッ……!!!!!」
空は次第に赤黒い雲に覆われ、テロスから放たれる光の周りを回転し始める。そのエネルギーはどれだけ遠く離れていようと視認できてしまう。
それから暫く光を放っていたが、突然ぶつりと消えてしまった───。
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「な、なんだあの光の柱ッ!!?」
「空が…… テロスはあそこか!!」
それぞれフロンティア・プリズン・漆曜式に変身し、シワス・シモツキと対峙していたが、その時に遠くの山から光が放たれたのが見え、全員その光の方を向いて立ち止まっていた。
光が消えると、シワスはその光の意味を察してパチパチと拍手をする。シモツキもそれに続けて拍手をして、トリガー達の方を向いてやれやれと首を振る。
「残念だったね」
「… 何が残念なんだ? まさか永理を…」
「成功したんだよ。ついに扉は開かれたんだ!!」
「あれが…? なんでわかるんだよ。失敗してテロス自信崩壊してる可能性だってあるだろう」
「君たちには感じないのか? ほら…… 来るぞ」
瞬間的に全員が押し潰されるような圧をその身で感じる。ただシワスとシモツキだけは別だった。このエネルギーはテロスが、鍵のエネルギーに耐えきれず消滅してできたものではなく、生物的なそういうエネルギーを感じられるのだ。つまりそれは彼が消えずに成功したという証。
トリガー達にもそれがわかった。同時に嫌な予感と恐ろしい事態を予想できる。
「ふふふふふははははははははっっ!!! 我々の勝利は決まった!!! 世界はボスに喰われて消えるのだッッッ!!!」
「嘘だろ… と、とにかく急がないと!!」
「させると思うか!!!」
シワスはトリガーに向かって矢を放つ。ただそれは彼を狙ったわけではなかった。フロンティアの力を知っている為、普通に当てただけではなんの意味もないということをわかっている。だからこそトリガーの手前で矢を分散させ、瓦礫を飛ばして目眩しを行い、他の矢は雨のように降らせて更に視界を遮らせる。それに続いてシモツキも瓦礫を細かく切り刻んで砂ようにし、トリガー達の視界を悪くしてしまう。
「プライドなど最早どうでもいい!!! 全てはボスの為にッッッ!!!」
「戦う気ないのかよ!!…… ん? まさかテロスは順応できていないのか? あのエネルギーは流石のあいつでも取り込むのに時間がかかるはずだ」
それがわかったトリガー達であるが、砂漠地帯のような砂嵐が続く視界の中では身動きが取れない。フロンティアで吹き飛ばそうと考えたその時、ピタリと砂嵐が止まったかと思うと、それは不規則に動きながらシワスとシモツキを襲った。
何故そうなったのかはトリガー達はすぐに分かった。ハントの力でこの2人を地面に拘束したのだ。
ハントはトリガーとシェリフに大声で叫ぶ。
「この2人は俺に任せろ!! お前達は永理のところへ行け!!!」
「か、狩馬さん!!?」
「こんな奴ら俺1人で充分だ。それに俺が行ったところで勝てる訳がない。ただ俺は確実だと思う方に賭けるぜ…… だから行って来い!! もし永理に傷付けてみろ!! 末代まで呪ってやる!!!」
「…… おう!! 任せろよ!! 助けたら奢ってもらうからな!!!」
「なんでも奢ってやらぁ!! さっさと行け!!!」
トリガーは光が放たれた方向へと走り出し、シェリフは一度振り向いてハントへ頷くとすぐにトリガーの後を追う。
「…… 絶対戻って来いよ… 兆… 巧也────」
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「── ぅ…… ん? あ、あれ? 私一体…… っ!!! テロスは!!?」
目が覚めた永理はすぐに今の状況を確認する。
まず部屋がなくなっており、完全に外に出ていると言ってもいい状態だ。空は不気味な雲に覆われ、その雲をよく見てみると、何か浮かんでいるのがわかる。
それは手を広げ、空を見上げている。見た目は変身後のテロスなんだと思っていたが、それが降りてくると永理は凍りついた。
見た目こそテロスなのだが、それはただの名残であろう。完全に別のモノへ… 異形の怪人へと姿を変えていた。今までは違う禍々しさと、とても冷たい眼差し。生物ではあるが、まるで心のない物のように冷たい。
「起きたか… 鍵よ」
「…… その姿は… なんですか!!」
「これが私の求めていたもの… メーデン・テロスとでも名付けさせてもらおう」
「で、でも兆さんには勝てませんよ!! そんな力なんてすぐに無駄に終わるだけです!!」
「くくくっ… それなら良かったのかもしれないが、私の力の前では全て0となるのだ。0は全ての始まりで終わりである。この世界に零を…!!!」
永理はテロスから出る不気味なオーラを受け、兆たちは本当に勝てるのか?と、思わされてしまうほど、彼からは強者特有の余裕さと自信を感じる。
「永理よ… お前はまだ必要なのだ。最終的に世界の記憶を奪った末に次元の扉を開く。用済みではないから安心するがいい」
「けれど結局、物として扱ってるんですね…」
「物として? 何を今更。鍵は物ではないのか?」
「…っ!!」
怒りのままに発言しようとした永理であったが、声が出なくなってしまった。
テロスは笑い始め、天に向けて手を伸ばす。天は裂け、禍々しい雲の深い闇の間から尋常ではない量のウォンテッドが溢れ出した。
それだけに留まらず、両手を広げると、どこからともなく今まで倒してきたはずの幹部たちが現れた。それも驚く事に自我を持っている。
「テロス…… まさかっ…!!」
「死んだという事実… そして過去の記憶…… 全てを零にした」
「そんな… あり得ない!!」
「今、目の前で起きていることが現実だ。不可能を可能にしてしまう力!!これが私の求めていたもの!!」
「さぁ、行くがいい…… 私の下部たちよ。まずはトリガーとシェリフを殺してこい」
テロスが右手を前に突き出すと、幹部たちは一斉に動き出す。人々の記憶を奪い取る為に、ただそれだけの目的で動く人形。
その光景は近づいていたトリガーたちも気付いていた───。
─── 幹部たちがトリガーたちに向かって飛び込んできた。合計9人の幹部が彼らの周りを囲み行手を阻む。
トリガーは構えようとしたが、シェリフは彼を静止しジャッジメントエンターンを取り出して構える。
「俺がここで幹部の相手をする。お前は先に行け、兆」
「巧也さん… 1人で大丈夫なの?」
「心配は無用だ。お前のその力は未来を変えられる力だ。決着をつけてこい。平和の引き金… トリガー!!!」
「あぁ… 行ってくる。任せたぜ、巧也さん!!」
トリガーに群がる幹部をジャッジメントエンターンで撃ち、彼の行く道に立って誰1人とて通らせないように構えた。
今迄の色々な思い出がシェリフの頭の中を過る。これが最後なんだと改めて実感できる。
そして息を大きく吸って吐き、覚悟を決めて幹部たちに向かって駆け出す。
「任せたぞ兆ッ!!!」
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トリガーは次々に襲いかかってくるウォンテッドをフォーエバーピースメーカーで殲滅し、テロスがいる場所まで全力で走る。
そうしてついに山の頂上へと着き、辺りを見渡して永理を探す。そこは本当に何もない場所で隠れるところがまずない。綺麗な円でそこだけがくり抜かれているような感じだ。
それも全て、その中心部の空からどこからともなく現れたこの男に聞けばいい。
「来たぜ、テロス」
「そのまま大人しくしておけば良かったもの…… 何故ここに来た」
「何故だと? そんなもん決まってる。お前という俺を責任持って倒す為だ。この世界を好きにはさせねーぞ…… テロスッ!!!」
「ハハハハハハハハハッ!! いずれにしろ、世界は滅びる運命にあり。お前が私を倒す事は決してない。私の力の前ではな!!」
そう言ってテロスが腕を振るうと、強烈な風がトリガーを襲う。
トリガーの後ろにあった木々は一瞬にして吹き飛び、彼のいる場所以外の地面を抉る。
「やはりそのフロンティアフォーエバー…… この程度ではまるで意味はないか」
「そりゃそうだぜ。お前とは違うんだよ。力の求め方もそれを手に入れる方法も全部。だからこそ俺は負けるわけにはいかない…… 行くぞッ!!!」
そしてトリガーは一瞬にしてテロスに近づくと、1発殴って見せるが、当たる直後に腕を掴んで固定する。
テロスはそのまま投げ飛ばすが、すぐにトリガーはフロンティアの力を使って宙へと舞い上がる。回転の力により飛行能力も手に入れているからできる芸当だ。
「うぉぉぉぉらぁぁぁあッ!!!!」
そのままテロスの頭目掛けて蹴りを放つ。
しかしのその瞬間、テロスは両腕を前に出すと、見えない壁がトリガーの前に現れて近づかせようとしない。更に足に力を込め、フロンティアの回転エネルギーを増幅させる。
するとその壁は破れてテロスを捉える。余裕そうだったテロスも想定外の結果に驚き、そしてトリガーに蹴られて吹き飛んだ。
「ば、バカなッ…!!!」
テロスはすぐにトリガーとの距離を零にし近づいて殴ろうとすると、トリガーもそれに反応して、互いの頬を殴り抜ける。
2人は同じ力で同じように吹き飛び、地面に転がるが、すぐに体勢を立て直す。
「想像以上の力だ…… そのフロンティア… いや、兆。成功作のクローンであるお前こそが1番厄介であったと言うことか…… なんという皮肉だろう」
「子供が親を超えてやったぜ… ありがとうよ。俺を産んでくれた事、感謝してるぜ。こうしてお前をぶん殴れるくらい強くなったんだからよ」
「非常に腹立たしく、これほどまでに後悔という思いを抱いた事はない。必ずここで仕留める────」
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その頃ハントはシワスとシモツキ相手に1人で戦っていたが、特に苦戦するという事はなく、前に相対した時と同じように優勢だ。
シワスは矢を放ち、シモツキは剣で切り裂いて来ようと、ハントに向かって来るのだが、やはりその行為は無駄に終わる。
「さぁて、さっさと決めて周りのウォンテッドやらねーとな」
「…… ふふふっ」
「あ? なーに笑ってやがる? 今から負けるのがそんなにおかしいか?」
「いや、違うな。我は既に敗北などどうでも良いと思っている。全てはボスの為になればいいと」
「何が言いたいんだ…?」
「… シモツキよ。ボスの元へ迎え… 我はボスの為に務めを果たす」
「に、兄さん一体何を…」
シモツキはシワスに近づこうとすると、彼はシモツキに銃を向けて直ぐに行くように促す。
そしてシモツキが居なくなったことを確認した後、シワスは銃をくるりと回し、銃口を自分の側頭部に当てる。
「お、おい!! 何しようとしてるんだお前、正気か!!?」
「言ったはずだ…… 我は務めを果たすと!!! 全ては… ボスの為にッ!!!!!」
それからシワスは何度も引き金を引いて頭を撃ち抜く。
その異様な光景にハントは茫然と立ち尽くしてしまっていた。明らかに自殺行為としか見れない。
やはりと言っていいのか、シワスは地面に崩れ、そのままピクリとも動かなくなってしまった。
「何が…… したかったんだ…? ま、まぁいいか。それよりウォンテッドを…」
すぐに大量に現れたウォンテッドをなんとかしようと動き出そうとしたその時、どこからか心臓の音が聞こえた。この騒ぎの中、心臓の音が聞こえるはずないのだが、頭の中に響くような大きな音で鳴っている。
ハントはまさかとシワスを見ると、その音に釣られたのか呼ばれたのか、次々にウォンテッド達が吸収されていっている。
「おいおい… おいおいおいおい!!! こんなの聞いてねーぞ!!?」
シワスの身体はみるみるうちに、より禍々しい姿へと変貌し、右腕の弓は刃のように鋭くなり、体も少し大きくなっている。見るからに危険な香りを漂わせるその姿からは言葉が発せられる事はない。それがこの姿の代償なのだ。
「それがお前の忠誠心ってやつか。そうまでしてボスを想うその姿、敬意を評してやるが、俺もここで負けるわけにはいかない。さぁ…… ハント開始だッ!!!」
新たな姿のシワスに勝てるのか…?
次回、第43劇「バウンティハンター」
次回もよろしくお願いします!!
最終回まで残り── 3話