前回、ハントが決死の覚悟でパワーアップしたシワスを撃破。逃げたシモツキであったが、テロスの手により強化されトリガーと戦わせ、彼はその場から消え去ってしまった。その頃、シェリフの元には怪しい影が迫っていたが……?
それではご覧ください。
「あ、あなたは…!!」
シェリフが敵に飛び込んでいった瞬間、上空より片腕を剣に変えた異形の存在が降りてきた。ウォンテッドである事は確かだが、前にもよく見たことがある。
「マスター…… さん? ですよね?」
「無理に敬語を使わなくて構わない。それより兆はどこにいる?」
その人物はマスター… ムツキであり、どうやら兆を探しているようだった。ラストデイズを連れて行った時の事を聞きたい所ではあるが、この状況下で悠長に話している場合でもない。
「兆ならテロスの元へ。俺は見ての通りここで幹部と戦っている」
「そうか… テロスは鍵を開いた。ただあれはまだ完全ではない。今なら間に合う」
「永理に渡したアレであるなら対抗できる…」
「アレ…? それならフロンティアガンナイフとなっていたが…」
「なにっ… !!?」
フロンティアガンナイフという名を聞いてムツキは幹部の攻撃を受け怯んだが、すかさず脚を伸ばして鞭のように幹部たちを薙ぎ払う。
やはり彼もテロスと同じように予想外だったらしい。その顔からは何を思っているのかわからないが、とても安心しているのだろうか。少し柔らかくなったような感じがする。
「心配はいらなそうだな… だが、俺は行かなければならない」
「… 何か事情がありそうだな」
「俺は元々ここの住人じゃない。それに償わなければならない事もたくさんある… 責任を果たさなければ…」
「まさかあなた自身も──」
「今は幹部を蹴散らそう。さぁ行くぞ!!」
ムツキが走り出すと、続けてシェリフもその後を追う。
しかし驚いたことにシェリフは彼に追いつけない。シェリフが手を出さずとも、ムツキは次々に幹部たちをねじ伏せていく。
テロスの右腕とは聞いていたが想像以上の実力だ。この実力と普段の冷静さから為させる判断力がテロスの信頼に繋がっていることが頷ける。
「ハァッ!!」
だからと言ってムツキに遅れを取るわけにはいかない。
シェリフはジャッジメントエンターンを取り出し、回して剣に変えると、幹部たちの動きを止めて無防備な状態にしてから斬りつける。続けてムツキが追い討ちで幹部たちを切り刻んで、右腕をハンマーのような形状に変えて纏めて吹き飛ばした。
「この能力は……」
「ムツキとしての能力。形状変化だ。身体を可能であるならその武器に変えられる」
形状変化は今のように己を武器にすることができ、大変応用が効く能力である。近距離武器だけに留まらず、中距離や遠距離も相手にできるよう槍や銃といったものにまだ変化させる。
その能力使い、暴走状態のカンナヅキを剣で頭から真っ二つ切り裂いた。
カンナヅキの巨大さ故に爆発も凄まじく、他の幹部たちを纏めて吹き飛ばす事となる。ただそれが狙いであった。
「巧也ッ!!」
「ウォンテッド幹部… これで最後だッ!!!」
シェリフは高く飛び上がり、ドライバーの引き金を引き、ジャッジメントエンターンを銃にしてから構え、照準を吹き飛ばされた幹部たちに定める。
銃口にエネルギーが溜まり始め、充分に溜まった所では放つと、巨大なエネルギー弾は拡散して9人の幹部たち全員に1つの無駄もなく突き刺さった。
《プリズン!!アレストファイア!!》
全員に爆散し、カンナヅキ以外は地面に倒れて気絶している。
それからシェリフはムツキと共にトリガーの元へと急いだ。兆であるなら心配はいらないとは思うが、やはりテロスが完全覚醒するとなれば状況は一変する可能性が出てくる。
この可能性が現実のものとならないよう、2人は山を駆け上がる────。
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シェリフとムツキが頂上まで辿り着くと大きな爆発音が聞こえる。道中でもかなりの音が響き渡っていたが、やはりこの距離からだと思っている以上に激しい。
目の前ではトリガーとシモツキが戦っているが、彼らにはそれが見えていない。正確にはトリガーは見えているのにシモツキの方が見えないのだ。
「兆しかいない…?」
「どうやらシモツキと戦っているようだな」
「シモツキだと? 地面を蹴る音や何かを引きずる音…剣か? するくらいだけどな…」
「…… テロスによって強化され、風切り音すら聞こえなくなっているようだ。だが、兆は心配はいらないらしい」
先ほど戦っていると述べたが、よく見てみれば戦っているかどうかわからなくなる光景がそこにはある。
トリガーの周りに剣で斬ったと見られる跡があり、何度も斬り付けられてまるで円のようになっていた。明らかに不自然ではあるが、トリガー自体もおかしいのだ。全く微動だにしない。それどころか防御の体制までとっていない。
しかしシモツキはそれが気に入らず攻撃の手を緩めようとせず、更にトリガーを切り刻もうとしていた。
「な、何故だッ!!? ボスにもらったこの力がどうして通用しない!!?」
「…… あのなぁシモツキよ? 隙も与えないほどの連続攻撃はいいんだけど、それ以外の攻撃方法思いつかないんじゃないの?」
「…ッ!! 違う… 僕は更に上がったスピードとパワーでお前を細切れにしてやる!! いずれその不可思議防御を破るくらいまで攻撃を続けてやる!!!」
「おーおーそりゃいい。やってみろよ。お前の剣が擦りでもしたらトリガーさん直筆のサインくれてやるぜ!!」
「貴様ッッッ!!!」
その瞬間、シモツキの身体が地面に叩きつけられた。
全身を止まる事なく無限に駆け巡るエネルギー。常に回転し続ける無限の流れ。何者であろうとその隙間に侵入することは決してできない。
これこそがフロンティアフォーエバーの力である。
「まぁ俺のサインがそう簡単に手に入るかってんだよ。さっさとテロスぶっ飛ばして永理を助けなきゃいけないんだ。ここで立ち止まってられるか」
「お前に勝って認めてもらうんだ…!! 僕と言う存在をォ…!!」
「…… それじゃあ決めさせてもらうぜ──」
「── 兆」
「ん?……… あっ!!? マ、マスター!!? よかった無事だったんだな!!?」
トリガーがトドメを刺そうとした瞬間にムツキが声を掛けると、反射的にそちら側を向いてしまった。
その隙を逃さずシモツキが攻撃を加えようとするが、シェリフによって空中で停止させられる。
「シモツキの世話は俺がしておく。兆、お前はマスターと共にテロスを追え。ここも俺に任せろ」
「… って言ってもテロスがどこへ行ったのか…」
「それならマスターが案内する。お前は決着をつけてこい」
「また任せるね。巧也さん… この戦いが終わったら何してくれる?」
「無駄話は後にしろ…… そういう話は無事に帰ってからするものだ」
「そっか… じゃあ行ってくるよ。ありがとう巧也さん。狩馬さんにも… それから佳苗さんにも孝四郎さんにも伝えておいてくれ」
「そういう言葉を行く前に言うな! 全く… 気を付けろよ」
「おう!! このトリガーに任せてくれよ!! それじゃあ行くぜマスター!!」
トリガーはムツキに案内されながらその場を後にした。
それからシェリフは2人をも見届けると、シモツキが停止した状態で殴る。一呼吸もしないうちに数十発ものパンチをその身に浴びせた。
「ぐはぁッ!!?…ッ動けない…!! なんだよこれっ!!?」
「… 俺は自分の信じた正義の為… そう、人を守る為に戦ってきた。この力を手に入れ、いずれ自分は悪魔になるんじゃないか?… と、そう思っていた」
「は…? 急に何を言い出すんだ…?」
「いくら敵であろうと動けない状態で一方的に痛ぶり、ましてや殺そうなどと言った事は思った事はなかった…… 今まではな」
「お、ま、まさか…!!」
「お前の察しの通りだ。もうこの場に置いて警察の誇りだとか、人間としての常識などというのはいらないと俺は思う。何故なら…… 目の前で非人道的な奴らに対し、今からやる行為は相応のものだと思うからな」
「嘘だ… こんな惨めな敗北があってたまるか…ッ!!!」
「覚悟を決めろ。俺は決めた…… RIVERSの課長として引き受けた仕事は必ずやる。だからシモツキ、お前をここで倒す」
「ひ、ひぃっ…!!」
シモツキは指先だけでもどこか動かせる場所はないかと試みた。
しかし、そのような行為はただ力むだけで終わり、全く無意味な行為となる。動けないという事実に、彼はこれまでになかった絶望感を与えられる。
ふと急に我に帰ると、目の前に拳がゆっくりと迫っていた。当然避けられる事はなく、当たると同時に次々に間隔がないほどの拳の連打が全身にめり込み、もう1発喰らわせて空中に打ち上げる。
「…… ん? い、痛みがない? どういう事──」
「それでいい。痛みがわからないままでな」
《プリズン!! アレストファイア!!》
そして落下してくるとタイミングに合わせて、シェリフはドライバーの引き金を引いてから落ちてきたシモツキを連続で蹴りを浴びせる。絶え間なく続く蹴りに身動きが取れずにやられるだけのサンドバックと化したシモツキ。
シェリフは蹴り終わると、スッと脚を下ろしそのまま振り返らずにその場を後にしようとする。
「ま、待て!! どこへ行く気だッ!!」
「街に溢れた残りのウォンテッドを倒しに行く。もう終わったからな」
「終わっただと…? このまま空中に留めておくつもりか!!?」
「プリズンハンドレッドはなんでも止められる。例えそれが…… 自らの攻撃だったとしてもな」
「つまり… 貴様ッ…ガッ!!… シェェェェリフゥゥゥゥゥッッッ!!!!!」
今まで加えた打撃が一気にシモツキを襲う。感覚が麻痺しそうなくらいの連続攻撃が押し寄せ、その身は耐え切れずに爆散した。
だが、シモツキの人間体は残らず何もかもが跡形もなく塵となった。
「… やはりテロスの力には耐えきれなかったか… 早く終わらせなければな。信じてるぞ、兆」
シモツキが消滅した直後に電話がかかった。出てみると狩馬からであった。
どうやらシワスの方も終わり、今は大量のウォンテッドを1人で相手にしているようだ。
「俺も今終わったところだ。山の方から殲滅して行く」
『おう、頼むぜ! 俺の方は心配すんなよ! こんな雑魚幹部に比べりゃなんともねーよ!』
「ふっ、3人が帰って来るまでに街を綺麗に掃除しておくか」
『もちろんそのつもりだ!…… おぉっと! まだ逃げ遅れた人たちがいるようだからじゃあな!──』
「…… さて、俺も行くか」
ハントはブツリと電話を切ると、シェリフは首を回して街の方へと走り出す───。
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「この先にテロスがあるんだよなマスター」
「あぁ、元は俺たちウォンテッドの本拠地だった場所だ。点々と場所を移動していたが、鍵を開くとなればあの場所の方が誰にも邪魔されず済むからな」
「待ったろ永理… 必ず助けに行くからな!!」
「鍵が開けば彼女もただの人となる。そうなった瞬間テロスに記憶を奪われて捨てられるだろう」
「搾りカスってところかい?」
「そうだな」
「ますます腹立ってきたし、それ聞いて安心した。心置きなくぶっ飛ばせるぜ!!」
トリガーたちが辿り着いたそこは山の奥にある古い建物だった。
それほど大きいというわけではなく見た目は豆腐であり、なんの変哲もない場所ではあるが、ここにテロスがいるとなるとまた違った印象を受ける。
「準備はいいか? 兆?」
「あぁ、もちろんだ…… これが本当に最後なんだよな?」
「そうだ。お前と俺の最後の戦いだ」
「…… よし、決着つけるぜ」
いざ、メーデン・テロスとの決着を──。
最後近いから早いよ〜…あ"ぁ"い。
次回、第45劇「宿命のトリガー」
次回もよろしくお願いします!!
最終回まで残り── 1話。