今回調教する小説は「 仮面ライダートリガー 」
本作は前作と比べると真逆の空気です。
一風変わった…? 本作を少しでも楽しんでくれたら嬉しい限りです。
皆さんは私の小説に耐えきる事ができるでしょうか?
新たなライダーが歴史にその名を刻む瞬間を、それではどうぞご覧ください。
第1劇「今日は俺の誕生日」
「いたぞ!! "ウォンテッド" だッ!!」
「撃てッ!!!」
真夜中の月の光が射し込み街を照らす。そんな街に銃声と人々の悲鳴が響き渡る。
銃を構えた大勢の警察、数で言えば確実に不利な状況にも関わらず、ウォンテッドと呼ばれる者はせせら笑う。
「な、何がおかしい!!」
「あ? そりゃ笑うだろ… 死に損ないどもが、わんさかいるんだからよぉ」
「き、きさまぁっ!!」
声からして男ではあるが、見た目では判断できない。なにせその者は人間とは異なる姿をしているのだから。
そして男は見たこともない銃を向け、ニタリと笑みを浮かべる。
「さぁ、記憶を寄越せ──」
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ここはBAR TRIGGER。
裏路地にひっそりと経営しており、知っている客は僅かであり、その殆ども常連ばかりである。現在いるのは、このバーのマスター、カウンターにガタイのいい男、それとは対照的にモヤシのような男が隣に座っている。
そんなバーに帽子をかぶった男が扉を開け、カラカラと音を鳴らし入ってきた。
「マスター… いつものを頼む」
マスターはサッとジョッキにミルクを注ぎ始める。
帽子の男はカウンターに座っていた、ガタイのいい男の一つ隣の席に座る。
「いつものだ」
目の前に置かれたミルクを、帽子男はそれを一気に飲み干す。その飲みっぷりを見てガタイのいい…… "ガンホーレ" は大笑いする。隣のもやし…… "イッシュウ" も続けて笑う。
「いい飲みっぷりだな兄ちゃん… マスター、ミルクだ」
【 ガンホーレ団 団長 ドン・ガンホーレ 本名:ガンホーレ・オーザン 】
「ここは子供の来るとこじゃないぜぇ?」
【 ガンホーレ団 団員 イッシュウ 本名:本間 一周 】
彼らはウォンテッドが現れてから出てきたお尋ね者である。
ドン・ガンホーレを筆頭に、ガンホーレ団と言われ(自称)、窃盗やら暴力沙汰やらしているそうで。
と、言ったはいいものの世間では然程、騒がれてなければ大きな問題にもなってない。
「それに懸賞金もそんなに高くないし、警察もいたら捕まえとけだし、同情しそうになる」
「… お前さっきから何言ってるんだ…」
おっと、どうやら俺の心の声が出ていたらしい。失礼。
そうして、ガンホーレの目の前にジョッキが置かれる。それをわざわざ滑らせて、帽子男の前で上手いこと止まらせる。
「俺の奢りだ」
「(え? いいの? 飲んでいいの?… あーではお言葉に甘えて」)
すると男はグビッと飲み干す。それを見たガンホーレは馬鹿にするように笑い始めた。否、馬鹿にしている。
「よし、さすがの飲みっぷりだな。マスター、もう一杯だ」
隣でイッシュウがクスクスと笑う。三杯目のジョッキを出されると、わざわざまた滑らせて止める。
流石に三杯目はこの俺でも腹ん中がパンパンだぜ… いやでも、せっかく奢ってもらってるんだから飲まなきゃな。
また彼は一気に飲み干す。途中、ウッとなったが耐えた。
「… マスター、こいつにミルクだ」
「あ、あの団長?」
「なんだイッシュウ」
「あ、いや…」
また来た。目の前に来た。
「遠慮するな。ママのミルクが恋しくなったんだろう?」
「……」
今度はそれを黙って、滑らせてガンホーレに返す。
「… すぅー… おかしいな? ミルクが返ってきたように見えたんだが?」
「… そのミルクは飲めねぇ。あんたが飲みな(もう限界だから)」
「ほう…」
「あんたも思い出せよ。ママのミルクの味ってのをな」
「なにッ…!!」
ガンホーレはカウンターを叩き、乱暴に立ち上がる。イッシュウもそれに続いて立ち上がる。
「てめぇ、舐めたこと抜かしやがって」
「え?」
俺はここのミルクは格別で、本当にママを思い出せるぜ?って意味で言ったんだけどな… どうやら彼は相当ミルクが苦手のようだ。
「表へ出なッ!!」
「え、やです」
「なにッ!?」
「俺は今日、ゆっくりしたいんだよ。疲れてるんだ」
「てめぇ… このやろう!!」
ガンホーレが振りかぶって殴ってくるが、男は流れるように相手を担ぎ、投げ飛ばす。カウンターに当たり、衝撃でミルクが入ったジョッキが落ち、中身が飛び出し割れてしまう。
「だ、団長ォォォ!!」
「ふっ…」
店を出ようとすると、マスターに呼び止められた。
どうやら俺の活躍を見て、お礼をしたいそうだ。
「違う。弁償だ」
「あ、はい」
「… ここはお前の家でもあるんだ。あまり暴れるな」
「はい。すみません」
「全く… 気をつけて行け。"兆"」
【 BAR TRIGGER マスター】
兆と呼ばれるその男は帽子を被り直して、金を置いて店の外へと出る。
路地裏を出て街中を歩き始め、腰に差していた銃をくるりと回して再び差し込む。
「… 今日もいい天気だな」
【 射手園 兆 仮面ライダートリガー】
── これは1人の青年と、その仲間達と、世界の運命を掛けた戦いの物語である。
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「本日より、"RIVERS" に配属する事になりました!! "内嶋 永理" と申します!!」
【 新人警官 内嶋 永理 】
「みんな、彼女が前から伝えていた新人だ。新人だからと言っていびらないようにな」
【 特制課:RIVERS 課長 上砂 巧也 】
警視庁「組織犯罪対策部」対ウォンテッド特別制圧課。通称はRIVERSと呼ばれている。
そしてこの課の課長である巧也は、新人である永理を連れ、仲間に紹介をしている最中である。仲間と言っても部屋には、彼と彼女を合わせて4人しかいない。他の警官達は一階の別部屋で待機しており、ここよりも広い。この部屋はその地下にあり、難関な試験を突破し、実績を積んでいる認められた者しか入ることができない。
それにここは機密情報を回す場でもあるので、容易に関係者でも立ち入ることは許されないのである。
「へぇ〜、新人でここに入るなんて。まぁ、資料見る限りだとあの名門を首席で卒業して、それからすぐに警察学校へ、そこで偶然にもいた課長の目に触れてそのままここに配属と… やっぱり凄いわ」
【 RIVERS 担当:情報収集・処理 當間 佳苗 】
「ようこそRIVERSへ。わからないことがあればいつでも聞いてください」
【 RIVERS 担当:武器開発 片山 孝四郎 】
2人は椅子に座っていたが、立ち上がり永理の元へ行く。
軽い自己紹介をし、永理は部屋を見回すと、大量の資料と機器がずらりと並び、移動できる場所が殆どないことに気づく。
「そういうことでだ… 早速だが、本題に移る。永理、お前の席はあそこだ」
「はい!! 課長、よろしいでしょうか」
「どうした?」
「昼食ってここで食べるんですか?」
「あ、いや、別にここでなくても構わないが?」
「小腹が空いた時、このお菓子の棒を食べてもいいですか?」
「あ、あぁ構わない… なぜその質問をする?」
「もう少しでお昼だったので、お腹が空いてしまい……」
「… そ、そうか…」
巧也はわかっていた。彼女には才能があることを。
だが、彼女はなんでもこなせはするが、致命的に素がアホなのである。天然といったらいいのだろうか、マイペースと言えばいいのか、とにかく大事な部分が抜けているのである。
「では始めー… その棒を下げろ」
「はわっ! つい! すみません!」
「… ごほんっ!!…… 今日、RIVERSのメンバーがウォンテッドに襲われたのは知っているな」
「はい。確か深夜2時ごろでしたよね」
「あぁそうだ。今まで俺たちはウォンテッドを制圧する為に、ありとあらゆる手を尽くした… が、それも今回の事件が起きてからは全て無意味となる」
「… というと?」
「奴らはなんらかの方法で人の記憶を奪っている。何の為に、何が目的なのかさえもわからない奴らだったが、今回の事件でその方法が明らかとなった」
「え?」
「ただ1人、そこから生き延びたメンバーが証言した内容から… ありえない話ではあるが、奴らは普通の人間とは違うようだ。まぁ、今更だが記憶を奪うという事をやってのける時点で普通じゃないがな」
「人間とは違う? 具体的にどういう事です?」
「ウォンテッドが持つ特殊な銃を、自分自身に撃ち込む事で、人間のそれとは全く違う見た目になり、身体能力も向上するようだ。そこにいたRIVERSのメンバーはその1人以外、全員死亡が確認されている……」
「…!」
「15年前にウォンテッドが現れてから被害は増える一方だったが、その15年後、ある仮面の男によって全てが変わった」
「… 重要指名手配 "トリガー" ですね」
「あぁ。知っているとは思うが確認の為、話しておく。24人ものウォンテッドの幹部たちはそれぞれエリアを確立し、国を壊滅寸前にまで追いやった。たが、そこにトリガーが現れ12人の幹部を倒し、危機的状況だったこの国は救われた」
「はい。トリガーの功績は眼を見張るものがあります… なのに何故重要指名手配犯に?」
「…… 奴は罪のない人を殺害している。ウォンテッドと繋がりがある可能性がある」
「え…?」
「俺はこの目で見た… あの日…… と、すまない。とにかく俺たちRIVERSはまず、トリガーを追い詰め、情報を聞き出す」
巧也は机に設置してあるマイクのスイッチを入れると、それに向かって喋り始める。
「これより本格的に、トリガーの捜索に入る。孝四郎、お前は引き続き開発を頼んだ。佳苗、トリガーについて情報があればすぐに伝えろ。永理、お前は俺と来い。いいか? くれぐれも無茶をするなよ? いいな? では、RIVERS出動だ」
「「「了解!!」」」
全員、敬礼を行うとすぐさま自分の持ち場へ着き、作業を始める。
永理は巧也と共に警視庁を出ると、パトカーに乗り、とりあえず街中に行くことにするのであった───。
─── しばらくして、駐車場に車を止め、聞き込みを開始する。これも幾度となくやったことだが、全くその成果は得られていない。トリガーを見たものはいるが、それ以外の情報がまるで入ってこないのだ。
先程、エリアという言い方をしたが、この国は現在12人の幹部がA〜Lエリアというものを作っている。そのエリア内においては彼らが絶対であり、逆らう者には容赦がない。
そして巧也たちがいるここがエリアA。他のエリアとは違い、比較的安全ではある。人々は最初こそ恐れていた者が多かったが、そこは人の慣れという悪い部分が出てくるだろう。皆、次第に慣れて行き、今は普通に人混みができるほどになっている。
「永理。そろそろ時間も時間だ。悪かったな昼食の時間を忘れ…… ん? 永理?」
「…… あぁ! すみまふぇん!! おふれまひた!!」
「お前なんか食ってるだろ」
「はい!! お腹が空いてしまったので買いに行ってました!!」
「いつだ!? さっき俺といたよな!?」
「課長が聞き込みをしている際、どさくさに紛れていきました!!」
「素直だな!!」
ハムスターのような口をして、食べ物を頬張る永理に呆れているわけではないが、先が思いやられそうである。
「ちなみに聞くが、俺の分は?」
「ゴクンッ… あ、忘れてました。食べます?」
「これたい焼きか? 食べますー、って尻尾しかないじゃねーか!!」
「餡子は入ってますよ?」
「そういう問題じゃねぇ!!」
さて、聞き込みでは今のところ進展がない。店員に聞いても見たことはあるが、ここに来たはないと言われるだけ。一旦、切り替えるために飯にでもするか。
「よし、永理。飯に行くぞ… つってもそんな量食えばいらないか?」
「いえ、行けますよ!! 消化したので!!」
「まだ秒しか経ってないんだが… それじゃ行くとするか」
「はい!… あ…!」
「とりあえず蕎麦でも行くか? 上手いところ知ってるんだぞーーどこ行ったぁぁぁ!!! 目を離したあの一瞬でどこ行きやがった!! 周りにはいないな… ったく、連絡するか…… ん? これは永理の携帯…… しまった! あの時、借りて返すの忘れた…!! 本人もあれだと気付いてなかったようだし、俺とした事がぁぁ…… どこだ永理ィィィィ!!! ───」
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兆は職務質問を受けていた。
「あの君ね。いくらこんなご時世とはいえ、銃はまずいでしょ」
「いえ、これはおもちゃです」
「なら、あれをどう説明するのかね?」
警官が指をさした先を見ると、壁に弾丸がめり込んでいる。目撃者もおり、言い逃れはできない。
しかし、兆は否定する。
「俺の推測では、そこにある空き缶を銃の名手が撃って、で、その威力で空き缶を貫通して壁に弾が当たってしまったと。で、その犯人は今も逃走していると」
「あーいや、犯人は目の前にいるんだけどね」
「多分、人違いです」
「あんまり抵抗すると、手荒に行くことになるよ? それと罪も重くなるよ?」
「警察さん。俺を捕まえるのはやめておいたほうがいいぜ」
「え?」
「なんてたって俺はあの!! トリガー!!! ンなのだから!!!」
「な、なんだってーーー… 逮捕だ」
「ちょ、おま、待てよ!!」
そう。兆は自分がトリガーだと言い張っているのだが、実際そうなのだが、普段の言動や態度、そして変身時のシークエンスによって正体がまるでわからないのだ。本人はどうしても知ってほしいらしいが、何かと変身後、解除後に何かが起こり、お預けをくらうのだ。
すると、警官たちの後ろから女性の声が聞こえる。
「ん?… 君は確かRIVERSの…」
「あれ? 同じ課ですか? 初めまして!!本日、配属する事になった内嶋 永理です!!」
「おぉ、よろしく。凄い買ったね…」
中に食べ物が入った紙袋を抱えている。それもかなりの量である。
永理は誰かが押さえ込まれているのを見つける。西部劇に出てきそうな見た目をしており、いかにも怪しい。
「それで… これは一体?」
「あぁこいつが…」
「あぁ!! そこのお嬢さん!! 俺は無実なんだよ。ホントだからね? だだおもちゃの銃を撃っただけで、怖いおまわりさんが僕を虐めるんです!!」
「嘘をつくな!!全く!!」
「そ、そんなぁ」
するとその時、向こう側で子供の悲鳴声が聞こえる。
永理はすぐそれに反応し、警察に紙袋を渡すと、その方角へと走る。
「なっ!? 君っ!! … あ、お前こらっ!!」
「あの子が危ないからこれにて失礼!!」
兆は警察の拘束を振りほどくと、彼女を追いかける。
追いつこうとするのだが、見た目に反して、走るのが速すぎる。
「ちょ、速い速いっ!!」
「あ、あなた!! 罪を犯したら償うべきですよ!! なに逃げてきてるんですか!!」
「お前が危ないからだよ!! いいか? 何度も言ってるが俺は無実だ!!」
「すぐ嘘をつくんです!! 私知ってますよ!! 犯人の俺は無実だは嘘だって!!」
「決めつけんじゃねーよ!! ホントにやめといた方がいい!! 銃の音が聞こえねーか!?」
その方角から銃声が鳴り響いている。RIVERSのメンバーも来ているのだろうか? 違ったとしたら1人で行くのは確かに危険である。
「そこに隠れるぞ」
「あ、ちょっと!!」
兆は永理の腕を引っ張り、ゴミ箱の裏へと隠れる。
そのすぐ目の前に銃を持った男が、男の子に銃口を向けている。RIVERSも来ているらしいが手を出せていない。
「あいつ… "キラーズガン" 持ってやがる…」
「キラーズガン…?」
「あ? 警察なら知ってると思ったけどな… あの銃はそんじょそこらの銃とは違う。使われる前に手を打たないとな」
「…… もしかして人間とは別の姿になるとか?」
「なんだ知ってるのか」
「いえ… ただ、聞いた話によれば、あの銃がもしそれだとしたら、自分に向けて撃つとまるで化け物のような力を手にしてなるとかなんとかで…」
「あぁ… その通りだ。だからやばい」
そして案の定その男は自分の頭に銃を向ける。ニタァとした笑みをこぼしながら。
「ようやくお仲間が集まったな」
「貴様が例のウォンテッドか!!」
「もううんざりなんだよ… こんな理不尽な世の中よ。俺はこの国のせいで職を失った。今じゃそこらで土いじってるのが関の山さ… だからこそ俺は変わる。この銃があればそれは叶う!! さぁて…… 記憶を貰うぞ」
《 キラーズガン 》《 ワン・キル 》
「う、うて!!」 「ダメです!!子供がいます!!」
引き金を引くと、自分に撃ち込んだ銃弾が体の中を駆け巡る。
すると、みるみるうちに姿が変わり、恐ろしい怪人へと成り果てる。
《 シ・ザイ・キリング・ウォンテッド!! 》
「記憶を… よこせッ!!」
子供の頭に手をかざすと、白い靄のようなものが現れ、それを吸収し始める。
「おっと、まずいな… くそ、銃取り返すの忘れてた……」
「…っ!!」
「あ、おい待て!!」
その吸収を始めた瞬間に、ウォンテッドの手前まで来て子供を担ぐと、そのまま全力で走って逃げ始める。
「こいつ…!!」
「今だ!! 撃てェェェ!!!!」
「お前ら… その程度で俺に勝てると思うな!!」
銃を撃つRIVERSの警官たちに持っていた銃を乱射し、数名に怪我を負わせた後、すぐさま方向を変え、永理を追いかける。
「… 全く、ウォンテッドはこれだから嫌なんだよ。あの子供も半分くらい取られてるだろうし、あの女警官もまずいことになるな… 急ぐか───」
─── 街中を走り、やがて大通りに出る。通りは、銃声を聞いたのか周りには人がいない。
ゼーハーとかなり息を切らせながら、永理は子供の無事を確認する。外見上はなんともないのだが、問題は先ほどの白い靄が、記憶の一部だとして、この子は今までの記憶を失ってしまっている可能性がある。
「ねぇ、君? 自分の名前わかる?」
「… わかんない…」
「あ… そっかそっか! じゃ、じゃあ、お母さんとかお父さんの名前はわかるかな?」
子供は悲しげな顔をして、静かに首を横に振る。やはり記憶の断片を持ってかれているようだ。
すると子供は顔を歪ませ始め、泣き始めてしまった。
「わわわっ!!? ど、どうしたの!? どこかぶつけたの!?」
「んーん… 凄く思い出したいのに、凄く大事なことなのにわからないんだ… でも、僕そこに帰りたい… 帰りたいよー!!」
「えぇッ!? だ、だだ大丈夫!! お姉ちゃんが君をしっかり送り届けてあげる!! それから君の大っ事な記憶、あいつから奪い返してあげるから!! だから! ほら、もう泣かない」
「うん…… あ」
「どうしたの …ッ!?」
子供が見る方向に、あのウォンテッドが銃を向けて立っていた。
永理は子供を後ろに隠し、懐にしまっていた銃を取り出す。しかしこれは空砲である。射撃訓練は受けているが、まだ新人ということが相まって実弾の許可をされていないのだ。更に本来であれば、巧也の近くにいなければならなかったが、彼女の悪い部分が出てしまい、状況は最悪のものとなっている。
「警察はいつもそうだ。俺のものを奪って行く。俺がこんなにも一生懸命に、働いて働いて、やっと手に入れた地位なのによぉ…… お前らはそんな俺から職を奪い、親の脛をかじらせた。お前らのせいだ… お前らの…ッ!!」
「動かないでください!! う、撃ちますよっ!!」
「今も俺のものを奪っていった。そのガキを渡せ。命だけは助けてやる」
「いやと言ったら…?」
「そんなチンケな銃で俺を殺せるわけがない。つまり… お前は死で償ってもらう。人のものをとったら泥棒だ」
ウォンテッドは永理の手をはたき銃を落とし、そして首を掴むと、そのまま持ち上げる。
「カハッ…!」
「後でゆっくり取ってやるから… 大人しくしてな」
「お、お姉ちゃん!!」 「に… 逃げて…!! は、早くッ…!!」
「死ね」
銃を向けられ、もうダメかと思ったその時、ウォンテッドの頭にどこからか飛んで来た弾丸が当たり、怯んだところを永理は蹴らを入れてなんとか逃げ出す。
そして、誰かが近づいてきたと思うと、その人は手を差し出す。
「よう、無事か? 女警官さんよ」
「ごほっ!!… あ、あなたは…」
「ハハッ、派手にやられたな」
その手に捕まり、立ち上がると、目の前にいたのは先ほどのヤバい格好をした男… 兆だった。
その手には見たことがない銃が握られている。
「誰がヤバい格好だって!?」
「誰に言ってるんですか… って、それよりもすぐにここから離れてください!! ウォンテッドがいます!! その子を連れて逃げてください!!」
「で、あんたはどうすんの?」
「警官として、あなた方を守ります。す、少しくらいなら時間は稼げると思いますから… 早くッ!!」
「………… やだよ」
「えっ」
「俺は女見捨てるほどダサい男じゃないからな… それにこれは俺の仕事だ。さっさと行きな」
肩をポンと叩くと、ウォンテッドに歩み寄る。もちろん永理はそれを許すはずがない。
「何言ってるんですか!! これは警察の仕事です!! あなたは早く逃げてください!!」
「じゃあ、あんたはここに残ってどうするつもりだ?」
「あなた方を守る為です!! ここに配属される前から決めていました。いえ、警察になる前からずっと… 人を守るためならこの命に代えてでも救うと!! だから…!!」
「自分の命も守れない奴が、誰かを守るとか言うなッ!!!」
「…ッ!!」
「女警官さん。あんたはその子を連れて逃げな… それにここからは俺がクールに、そして華麗にあいつをぶっ倒すからよ」
「一体、何を……」
兆は懐から何かを取り出し、腹部に掲げると、自動的に腰にその何かが巻かれる。
《 セイブドライバー!! 》
「な、何をする気だ…」
そしてもう一つ懐から、ナイフを取り出す。ただし、それは普通のナイフとは違う。
それからナイフの手元の部分にあるボタンを押すと、音声が流れらと同時に、ナイフの背面が折ら畳まれる。その折りたたまれた面には "1" と書かれている。
《 ONE!! 》
それを先ほどの "セイブドライバー" という物の左側に差し込むと、《 SET!! 》という音声が鳴り、見た目がまるで中のような形状になる。
それからすぐに右側についている、銃でいうハンマーの部分を起こす。
どこからともなく音楽が鳴り響き、それにノリながら右の人差し指を、ドライバーの引き金に置き、左人差し指、中指、親指を突き立て、他の指は折り込み、左手を前に突き出す。
「変身ッ!!!」
掛け声と共に引き金を引くと、砂嵐が巻き起こり、それと共に現れた鎧が宙に浮かび上がる。一緒に現れた巨大な銃がその鎧にマーキングを付け、一つ一つ撃ち抜いて行くと、徐々にそれらを見にまとって行く。
《 ファーストガンアクション!! トリガー!! リボルヴリボルバー!! 》
「お前… まさか!!」
「これは…」
砂嵐が止むと、そこには1人の黒い帽子を被った仮面の男が立っていた。顔の両側面には1と描かれている。
目の前に扉が現れ、それをバッと開いて通り抜ける。ちなみにこれはなんの意味もない。
「ト、トリガー!!?」
「え、え… あの男の方は何処へ!?」 「え…?」
「ほう、あいつを何処へやったかは知らないが、まさかお前と相対することになるとはな」 「ちょ」
「なんだかんだ言って結局逃げてるじゃないですか!!」 「ま」
「いいだろうトリガー。お前の実力… 試させてもらう!!」 「… なんでいつもこうなの…」
兆は変身すると、なぜかは分からないが気づかれないのだ。その理由の一つが砂嵐のせいなのである。単純に見えないだけなのか、錯覚作用があるのか未だにわかっていない。
「よーし、なら分からせてやる。行くぜウォンテッド…… "今日は俺の誕生日だ"」
「だからなんだっ!!」
「よっ!」
撃ち込んでくるウォンテッドの銃弾を、なんと一瞬のうちに自分が撃った弾で相殺する。
先程も使っていたこの名は…
「愛銃の "ガーツウエスタン" だ。イカしてるだろ?」
「な、何ッ!?」
「そんなもんか? ウォンテッドさんよ!!」
永理は2人が戦う隙を見て、子供の手を握り、その場から離れ始める。
それに気づいたウォンテッドは追いかけようとするが、トリガーに足を引っ掛かかられ豪快に倒れる。
トリガーはしゃがみ込んで、ニヤニヤと仮面の下で笑う。
「走ると危ないぜ?」
「お、ま、え…ッッ!!!」
「尺もないんだ。今からお前にとびきりの必殺技をかまし…」
「図に乗るなよッ!! このアホがッ!!」
トリガーの両足を掴み思いっきり引っ張ると、ひっくり返って頭を強打する。そして彼女の元へ向かおうと立ち上がるが、膝の裏を蹴り、再び転ばせる。
「おい!! 俺の賢い脳くんが悲鳴あげてんだろうがこのやろう!!!」
「うるせぇ!!! てめぇは黙って寝てろ!!!」
「お前こそ寝てろ!!!」
「クソッ!… なら仕方ない。本当に眠らせてやる… 永遠になッ!!!」
ウォンテッドは銃を、こちらに向け撃ち放つ 。この至近距離で避けられるはずがない。普通の人間であるならば。だが、彼の目の前にいるのはトリガー。
まず当たる訳がない、だろ?
「避けただとッ!?」
「よーし、見とけ! そこにいる… 誰もいないけど、みんな見てやがれ!! これが俺の必殺技だッ!!!」
先ほどのハンマーを起こし、再びトリガー引くと、ウォンテッドに背を向けて一歩。二歩。三歩と歩く。
「1」
「何を背を向けてるんだ?」
「2」
「ふざけたことを…… そんなに死にたいらしいな!!!」
「3」
「ここで死ねッ!! トリガー!!!」
ウォンテッドが近づいたと同時に、振り向いて相手の腹部をストレートに蹴り飛ばす。まるで銃に撃たれたかのように一瞬でその動作は終わる。
吹き飛んだウォンテッドは何とかブレーキをかけたが、体が限界を超え、徐々に熱くなってきている。
「こんな… はずじゃ……ッ!!」
「今日の俺も… 勝利の日」
「ぐ、ぐわあぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!」
しばらく耐えたが、たまらずウォンテッドは爆発し、人間へと姿が戻り、記憶が持ち主のところへ戻って行く。キラーズガンもバラバラに砕け散り、使い物にならなくなる。
「ふぅ… あの人、大丈夫かな? 子供連れてけとは行ったけど、あの調子じゃ絶対無理だろ」
「何が無理なんです?」
「はははっ、なんでいるの?」
「子供は安全な場所へ避難させました… 後はあなたを署に連行します」
「えぇ… ちょっと待ってくださいよ女警官さん。見たでしょ俺のあの活躍!? それで逮捕ってのは… ダメだと… 思うな!」
「永理です」
「へ?」
「RIVERS所属の内嶋 永理です」
「え。え、えぇ? ……えぇぇぇっっ!!? あ、あのRIVERSッ!?」
「そうです! 凄いでしょう!」
「…ってなんだっけなぁ…」
「…… とにかく。あなたを署に連行します… 本来であるならば」
「ん?逮捕しないって?」
「逮捕はします。ただし今回は見逃します」
「… 上司にこっぴどく叱られても知らないよ? 責任とらんよ?」
「いいんです。なぜか… あなたは違うような気がします」
「…… なら、お言葉に甘えさせてもらうか。んじゃ、永理さん…… あ、そうだ」
「はい?」
「俺は射手園 兆。さっきの男と同一人物だからな? いいな? それじゃあお疲れ」
「兆さん、ですか…… ありがとうございました!!」
トリガー… 兆は振り向くことなく、手を振りその場を後にする。
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あの後、あの永理とかいう警察がどうなったかは知らないけど、変なやつだったなぁ。
俺はあんなにかっこよく決めてたんだけどな。
「マスター。いつもの」
指を鳴らして、マスターを呼ぶ。だが、一向に来ない。
「ん? マスター? ちょっとー!!」
帰って早々留守かい。やだねぇー… 夜のミルクはいけないってのかい?
兆は椅子に座っていたが、立ち上がると、奥の扉を開き、自室へ行く。小さいがそれなりのものは揃っている。そこにあるベッドに奉仕を外して寝そべる。
「今日も疲れたなぁ… そして今日も外れ…か」
帽子を手に取り、見つめながらポツリと呟く。
「俺の記憶は一体どこに行ったんだか…」
彼は宿命のトリガーを引く。
仮面ライダートリガーの伝説がここに始まる。
さぁ、ということで始まりました。
こ、去年の10月頃に腐れ縁のやろうと話しをして、色々ありましたけどやっとできました。
そして第1劇。長いので説明不足等があるかも知れませんが、次の話で回収できればと思います。
感想・質問、待ってます!!
質問は後書きの方に記載するようにしますので、よろしくお願いします!!
次回、第2劇「 二丁拳銃 」