前回、 テロスが完全に覚醒したことにより、マスターは殺されてしまい、そして次元の扉がついに開かれてしまいました。数々の想いを背負いトリガーはテロスとの最後の戦いに臨みます。
最後のトリガー。
それではどうぞご覧ください。
世界の記憶を喰らう怪物。それがテロスである。
記憶というものは生き物に元から備わっており、どんなものでも取り込んでしまう。その中は全て良いものではなく、当然悪いものまで取り込む。思い出したくない過去があっても、ふとした拍子に記憶から瞬時に抜き出して表へと出してしまう。
しかしそれが教訓となり、人は成長していく。だからこそ大切な記憶が失われという事はまた0からのスタートとなり、謂わば退化してしまうのだ。
そんな大切な記憶を守る為、トリガーは今、次元の扉の中へと侵入した──。
「── ここが扉の先か」
次元の扉内はまるで宇宙空間のように煌びやかではあるが、美しい風景の中に不気味さも漂わせる。
既に出口がどこかはわからない。トリガーがここへ入ったと同時に消えてしまった。結局、出入口があったところで同じような風景があるのだからわからなくなってしまうだろう。
「どこだテロスッ!! ここにいるんだろッ!!」
そう叫ぶトリガーの周りからテロスの不気味な笑い声が響き渡る。
何処からも聞こえるその声に身構えていると、トリガーは背後に気配を感じて振り返った。
そこにはテロスが禍々しい気を放ちながら立っている。
「兆よ。私は完全に覚醒することができた。後はこの世界の記憶を全て喰らい、そのエネルギーを用いて私は次元を跨ぐのだ」
「散々無理やり奪って手に入れた力で世界を喰らうだか何だか言ってるけどな。そんなのダサいね!! やるんだったら自分の力でやれよ!!」
「何を言う? 私は自らの知恵を絞ってこの結果を生んだ。それはつまり私の力があったからこそ成し得た事ではないか?」
「へっ、理由は何にせよ。お前を倒して世界を救うことに変わりはない。ここでぶっ倒すぜ!!」
トリガーは早速テロスに飛びかかっていくが、テロスを殴る手前で指先1つも動かせなくなってしまった。
何とか動こうとあらゆる部分に力を入れてみたが、まるで自分だけが時間をとめられたかのようにピクリとも動かない。
そんなトリガーにテロスは近づき、胸部に軽く手を当てると、凄まじい力で彼を吹き飛ばした。
「がはぁッ!!?」
バキリと嫌な音を立てて空間を転がる。地面がない分、衝撃は和らぐがそれでも身に受けたものだけはどうしようもない。
そして激しい痛みの中トリガーは驚愕した。あのフロンティアの装甲にヒビが入っているのだ。
「な、なんだと…!!」
「全てを受け流すその力。確かに強力ではあったが、今、神に近き零の力の前ではどうすることもできない」
「… んな事があるかよッ!!!」
「ならば、その身にわからせてやろう。私の覚醒した零の力をッ!!!」
テロスが両手で圧縮するような動作をすると、トリガーの身体は動作に合わせて押し潰される。
この事態に焦るトリガーだったが、まるで人形のように抵抗すらできず操られるがままにメキメキと音を立てながら装甲を破られていく。
「あぁぁぁあぁあぁぁぁぁぁッッッ…!!!」
「ふんッ!!」
そのままテロスは両手を合わせると、トリガーの身体は爆発してしまう。
フロンティアフォーエバーが木っ端微塵に砕けたと思っていたが、爆発の中から黒いトリガーが姿を現した。
「ほう… フロンティアの外装が剥がれても尚、抗おうとするか」
「テロ…… スゥ……ッッ!!」
テロスの力の前にフロンティアは崩れてしまった。だが、崩れたのはフロンティアの部分だけである。
トリガーはラストデイズへと変身し、テロスに飛びかかっていたのだ。
ただし完全に操れているわけではない。少しでも気を緩ませれば理性は吹き飛んでしまうだろう。
「さすがはラストデイズ。終焉の力…… ほんの少し前であるならどうにかできたであろう。しかし私は進化した。お前如きでは砕けぬほどにな!!!」
「うぅ…ぐぅッッッ!!」
それからテロスは目にも止まらぬ速さで、トリガーの身体中に拳が雨のように降り注ぐ。
その連打の後、胸部に手を当て発勁を行い、全身に走る激痛と共に吹き飛ばされ、ラストデイズの変身が解けてしまう。
「こんなんで終わるかよォォォォォォォ!!!」
セイブドライバーにアフターネクストを差し込んで変身し、体制を立て直してテロスの元へと走り出す。
トリガー自身も無謀であるとわかってはいた。この力ではもうどうすることもできないと悟っていた。
「無駄だ」
「くっ…!!?」
既にトリガー自身がテロスに触れる事はできなくなっていた。
何故ならテロスに向かう途中で謎の壁によって遮られてしまっていたのだ。その壁を破壊する事は今のトリガーでは不可能である。
必死に壁を壊そうと奮闘する彼を、テロスは呆れて首を横に振る。
「何故だ。何故そこまで私の元へ向かってくる。既に勝負はついたはずだ…… 最初からわかりきっていた結果であったはず」
「…… 実際のところ、俺にもよくわからないんだよ。もうどうする事もできないって状況なんだけどさ。なぜか勝てるつもりでいる」
「訳のわからないことを……」
そしてテロスは壁を破裂させトリガーを吹き飛ばし、手のひらから黒い球体を出現させ、彼に向かって撃ち放つ。
空間を飲み込むようなドス黒い球はトリガーを包み込み、テロスが指を弾くと何度も爆発を引き起こす。
「ガッ…!!」
やがて兆の変身は解け、膝から崩れ落ちて倒れる。
それからテロスは兆に近づき、触れずに彼を持ち上げて見せた。唸る兆だが、テロスの能力から逃げる術はなく、そのまま頬を鷲掴みにされる。
「勝てるつもりでいる… か。しかしこの状況で同じ事が2度言えるか? 無理だろう。私とお前の差は大きく開いてしまった。あの時、私を殺していればよかったな? 兆」
「俺はまだ負けてない」
「…… あー… なぜだ。わからない。私にはどうしてもわからない点が1つだけある。何故お前は諦めない?」
「そりゃ諦めないだろ? 俺は世界の平和を守る為にここまで来たんだ… まぁでも、確かに絶望的状況で勝つとかなんとか言ってるのはおかしいよな」
テロスは兆を放り投げると、頭上に手をかざしてここにいる2人を軽く飲み込むほどの巨大な黒い球を作り出す。
それを見た兆はゆっくりとではあるが立ち上がる。その目はまだ勝負を捨ててはいない。
「まだ立ち上がるのか…」
「なんだよ。お前のクローンだって言うのにわからないのか? 正義のヒーローは例え目の前に大きな敵がいても何度も立ち上がって戦うもんだぜ。それが無謀だとしても、勝つか負けるかわからなくても」
「勝敗は既に決定している。それ以上でもそれ以下でもない」
「だがな。勝敗はまだわからない。何故なら俺は生きているし、お前は未だに世界の記憶を喰えてはいないからだ。手を抜いているにしてもおかしくないか? さっさとやればいいのにさ!!」
「挑発のつもりか? お前を生かしてやっているのは、お前自身に私の力を教えてやる為だ。いつでも始末は容易く行える…… ならばいいだろう。これが最後だ。その身で絶望を味わわせてやろう」
その瞬間テロスは両手を開くと、兆に凄まじい衝撃波が飛び、今にも吹き飛ばされそうになってしまう。
一歩も前に進めない状態の兆の周りに、空間から100本以上の黒い剣が伸びてきた。
「消し飛ばすというのは面白くはない終わり方だろう? ならば、お前を串刺しにして殺し、その後ゆっくりと消し炭にしてくれる」
「ありがたい話だな… なぁ、俺もこれが最後になるけどいいよな? 遺言ってやつだ。それくらいやっても構わないだろう?」
「遺言も何も結局何もかも零に還る。言ったところで意味もない…… しかし許可はしてやろう。ここまで追い詰めた私からの慈悲だ」
「そうかい。なら一言だけお前に言わせてもらうぜ」
「なに──」
「─── 今日は俺の勝利の日だ」
兆が言い終わると同時に無数の剣が一斉に彼の元へと降り注ぐ。
その剣は兆に隙間なく突き刺さった。見た目は毬栗のようだが、無数の剣でできた墓である。
ようやく全てが終わった。テロスは込み上げる感情を笑いに変えた。何もない空間でテロスの笑い声だけが響き渡る。
「フハハハハハハハハハッッッ!!!!! これでようやく行けるのだ。その先の世界へ… 私がまだ見ぬ世界へ… 喰らってやろう。全てを喰らう。私こそが世界だッ!!!」
瞬間、何故かわからないが、テロスは兆の方を見る。完全に仕留めたと確信したのだから特に何かあるわけでもない。
しかし、おかしな事に血が一滴たりとも落ちてはいない。この目でしかと確認したはずである。兆は現に剣の中で息絶えているはずなのだ。
「…… あり得ない…ッ」
剣の隙間から光が漏れ始め、何もない空間を照らし始めた。
全く予想しなかった光景にテロスはただ呆然と立ち尽くしていた。
「そんな筈はないッ!!!」
光は膨れ上がり、無数の剣を弾き飛ばし、その光の中から兆が姿を現した。
これは何かの間違いだとテロスは思う。こんな奇跡があるはずがないと、そう心の中で思った。
「テロス。これは奇跡なんかじゃない。フロンティアガンナイフは色んな人たちの想いが重なってできた力。そう簡単に壊されるかよッ!!!」
「私の力の前ではフロンティアフォーエバーでさえ無力だった筈… ならば何故今となってそこまでの力が…ッ!!!」
「次元の扉の向こうで伝わってくるんだよ。みんなの想いがこのフロンティアを通して…… だから砕ける事はない。俺は1人じゃない… みんなの想いが俺の力だッ!!!」
するとフロンティアガンナイフとファーストガンナイフが宙へと浮かび上がり、互いに融合して1つのフィガンナイフへと姿を変える。
それをセイブドライバーに差し込み、左手を銃の形にしてテロスに向け、右手でハンマーを起こして引き金に指をかける。
「変身ッッッ!!!!!」
《ファーストガンアクション!! トリガー!! リボルヴリボルバー!!》
トリガーは変身すると同時に地上に残してきた仲間たちの想いが身体中を駆け巡り、今までのファーストとは違ってその装甲は光り輝いていた。
それからトリガーは天高く飛び上がり、セイブドライバーの引き金を引いた。それに続けてテロスも天高く飛び上がる。
互いに凄まじいエネルギーを纏った跳び蹴りが交わり合う。
「全ては零に還るのだッ!!!」
「俺は平和のトリガーだ!! この世界に平和の引き金を引いてやるッ!!! こんな力で負けるかよォォォォォォッッッ!!!!!」
「兆ィィィィィィ…ッッッ!!!!!」
しかしテロスの力は凄まじく、トリガーの方が若干ながら押されてしまっている。テロスもそれがわかっており、このまま消しとばしてやろうと考えていた。
だが、力で優っているはずなのに、トリガーは少しも後退しないのだ。
それどころか徐々にテロスの力は飲み込まれて行く。
「何故だッ!!! 何故押さぬッ!!!!」
「それがお前と俺たちとの想いの差なんだよッ!!!」
「ぐおぉぉぉぉぉッッッ!!!!!」
「これがッ!!! 平和のォォォォ…… トリガーだぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!」
更にセイブドライバーの引き金を引いてエネルギー二重に纏い、テロスのエネルギーを押し除ける。
それからテロスの身体は一気に力が抜けた感覚に陥る。限界を超えた力は彼の身体に完全には馴染んではいなかった。力は超越したが、生き物の限度には勝てなかった。
刹那、トリガーの光がテロスを包み込む。
「私が零にッ……!!! そんな事がァァァァァッ……ッ!!! 兆ィィィイィィィィィィィィィッッッッッッ!!!!!!」
「今日の俺も勝利の日ィィィィィィッッッ!!!!!!」
光はテロスを焼き、その身体をボロボロに崩す。
そして空間内を眩い光が満たし、光が消えるとそこにいたのはトリガーただ1人だけであった。
兆の変身は解けると、糸がプツリと切れたように力が抜け、その場に倒れ込んでしまう。
「か、身体が重い…!」
この戦いの中で、テロスと同じく兆の体は限界を迎えており、今はどこに力を入れようと立つ事ができなくなっていた。
そんな彼に不幸はまだまだ続いた。急に空間内が揺れ始めたのだ。どうやらこの次元の扉は大元であるテロスがいなくなり、その状態を維持できなくなっているようだった。
このままでは兆は空間諸共、この世から消されてしまう。
「なんだよ… 永理に思わせぶりなこと吐いといてここで消えるのか…… いや、みんなには申し訳ないけど、それもいいかもしれないな… 俺は元々テロスの一部だったしよー……」
兆の心の中では消えたくないと強い想いがあった。
しかし、出入口は何処を見渡してもない。彼はここに入った時点で察していたのだ。地上に戻れない確率の方が極めて高いと、最初から覚悟はしていた。
「… もうそろそろ限界だろうな」
空間は崩れ去り、それと同時に兆の身体も崩れようとしていた。
そして兆はファーストガンナイフを取り出し、天に掲げる。このフィガンナイフから全てが始まり全てが終わった事、数々の出会いと別れがあった事を思い出した。
「ありがとう、みんな…─────」
兆は静かに目を瞑る。
それから次元の扉はパッと光を放ち、跡形もなく消滅した───。
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あれから2年後。
世界はあの日以来平和を保っていた。平和と言っても犯罪が減ったわけではない。
今日も今日とで警察は仕事に追われている。
「永理ッ!! お前はいつまで食べているんだ!! 昼はとっくに過ぎただろう!!」
「えーですけど課長。私、食べないと動けないので…」
「まぁまぁいいじゃない。永理ちゃん最近頑張ってたんだし」
RIVERS内には巧也と永理、香苗の姿があった。
そこに狩馬と孝四郎の姿はない。狩馬は元・賞金稼ぎとしての技量が相まって今では新人警官として働いている為、RIVERSにはしばらく来てはいない。
一方の孝四郎は研究室でとある作業をしており、暫く顔は出してはなかった。
「… さて、言わなくても分かっているだろうが、今回も回収に移る」
「キラーズガンですよね… まだまだウォンテッドの脅威が消えたわけではないのが辛いです」
「だからこそ、こうしてRIVERSが再び組まれたんだ」
2年前の出来事により全てが終わったかに思えたが、どうやらキラーズガンの部品を持っているものがおり、複製しているとの話が出てきたのだ。一度は別れた仲間達であったがこうして再び集まり、RIVERSが再結成されたのである。
しかし、他の一般兵達は辞めていく者や他の課に移り変わった者が多く、今ではこのメンバーしかいない。
「そういえば孝四郎さんの研究はどうなったんでしょう…」
「…… 気になるなら入って構わないぞ。邪魔にならないようにな」
巧也の言葉は何処か優しかった。彼女の内心を察してくれたのだろう。
そして永理は研究室の扉を開けて中へ入ると、その中では孝四郎が1本のフィガンナイフをあらゆる機械に繋いでいる。
「孝四郎さん。お久しぶりです」
「── ん? あぁ永理さん。数ヶ月ぶりくらいですかね?」
「そうですね。えっと……」
「このフィガンナイフからは確かに彼が入っています。ただ、この2年何をやってもそこにいるという事がわかるだけで進展はありません…」
そのフィガンナイフとはファーストガンナイフの事である。
それは2年前、兆がテロスを倒し消えてしまったあの日、ちょうど次元の扉の真下に出現したのだ。これを機に警察総出での捜査を行ったのだが、それらしき痕跡も人物も見当たらず断念された。
それから孝四郎はファーストガンナイフを持ち帰り、数ヶ月の研究の末にこのフィガンナイフの内部に兆のデータがある事を発見した。
「確実に言えるのはこれが兆くん本人のデータである事。どうにかすれば彼をここから出してあげる事ができるんだ…… ただ今の技術では無理だよ。データを肉体のあるものに変えるなんて芸当できはしない。それにできたとしても彼が彼でいられるかどうか……」
「… そうですか。でも私はいつまでも待ってますよ。兆さんなら必ずフラッと出てくるに決まってますから!」
「そうですね… では、僕はまた作業に戻りますので」
「わかりました。お願いします」
研究室から出ると、RIVERS内にちょうど良く狩馬が入ってきた。
どうやら時間ができたようでここへ来れたらしい。
「よう永理! 兄さんが来てやったぞ!」
「兄さん。警察としての良い話あまり聞かないけどちゃんとやってるの?」
「まぁー… ボチボチだな。そ、それより今から回収に行くんだろ? 俺も連れて行けよ」
「いいの? だってまだそっちの仕事があるんじゃ──」
「いいから! じゃあ行こうぜ巧也! なっ!」
巧也は狩馬がサボりたいが為に来たのだろうと察しがついた。呆れながらも今回は何が起こるかわからない為、同行を許可した。
それから3人はRIVERSから出て行き、佳苗はそれを見送る。
「さぁて久々に暴れるとするか」
「今回は目撃情報が確定しているからと言って出るとは限らない」
「わかってる。まぁいたはいたで二度とキラーズガンなんてもん使わねーようにフルボッコにしてやる」
「相変わらずネジが外れていてよかった」
「あ?… おい待て! それどういう事だよ!!?」
そんな2人のやり取りを見て永理は笑う。
ふと空を見上げると、晴天のようで雲一つなく空に鳥が飛んでいた。何故かはわからないが、永理はそんな光景が何より尊く感じた。
この世にある記憶は様々だ。
生き物は知恵がある。知恵があるからその小さな脳内に計り知れないほどの情報を入れる事ができる。
だからこそ忘れてはいけない。本当に大切な記憶というものは心の中に大事にしまっておく事。誰もが思う大切なもの。
我々の想いを。
「── 今日の私も笑顔の日」
永理は手を銃の形にして空を指して撃つ───。
平和の引き金。トリガーは永遠に。
仮面ライダートリガー The end
皆様ここまでご覧くださって誠にありがとうございました。
本当によくここまで書いてこれたと自分を褒めたい……えらい(確信)
これにてトリガーは終了です。今までありがとうございましたーーーー
と、言いたい所なのですが、まーだまだ続きます!!
本当の最終回というか続編↓
『仮面ライダーシェリフ』
『仮面ライダートリガー OneDay』を予定しております。
言ってしまえば前編と後編です!
もうしばらく私と仮面ライダートリガーにお付き合いください!!
土曜日になるまでには投稿いたします!!それではよろしくお願いします!!