〔ロッタシティ ポケモンセンター 朝〕
鳥ポケモンのさえずりでイルはぼんやりと目を覚ます。
身体を起こし周りを見渡すと、窓から朝の日差しが差し込んでおり、窓の外で鳥ポケモンたちが元気に飛び回っているのが見えた。
『ブイ!』
近くから聞こえた声にイルの意識が覚醒する。イルが声の方を向くとパートナーのイーブイ“ブイ”がイルの横に座っていた。嬉しそうにイルの顔を見て笑顔で尻尾を振っているところを見ると、イルが起きるのを待っていたのだろう。
「おはよう、ブイ。」
イルがブイの頭を撫でながら挨拶をすると、ブイは嬉しそうに身体を手にさらに押し付けてきた。
ブイを撫でながら、イルは自分のリュックに付けている時計を確認すると、時間はちょうど7時になったところだった。
(そろそろ起きないとな。)
イルがそう思いながら周りを見渡すと、部屋の両端に2つずつ設置された二段ベットにスフレとピカチュウのピカが寝ているのが見えた。スフレとピカはぐっすりと眠っているようでしばらく起きそうになかった。
(2人とも特訓頑張っていたからな。)
イルは昨日、スフレとピカが兄のレツとの特訓を周りが暗くなるまでしており、ポケモンセンターについたころには疲れてフラフラになっていたことを思い出した。
(まだ朝早いし、ゆっくり寝ていてもらおう。)
イルは、スフレが寝ているベッドに近づくと少し捲れてしまっている掛け布団を掛け直した。そして着替えを済ませて、ブイと一緒に部屋を後にした。
『ピィ〜カァ〜。』
身体が揺すられる感覚にスフレは目を覚ます。
「何?疲れているんだから、もう少し寝かせてよ。」
そう言いながらスフレは布団に潜ろうとする。
『ピカピー。』
ピカがスフレの顔の前に時計を持ってきて、スフレに見せる。すると時計を見たスフレは飛び起きる。
「え!もう10時前じゃん!早く起きなきゃ!」
スフレが慌てて起き上がろうとすると二段ベッドの上の段に頭をぶつけてしまう。スフレは頭を押さえ蹲り、ピカは呆れた顔でスフレを見ていた。
「いったぁ〜。あれ、そういえばイルは?」
頭をぶつけて冷静になったのかスフレはイルの寝ていたベッドの方を見る。しかしベッドには誰もおらず、それどころか部屋にいるのはスフレとピカだけだった。
「まあ、こんな時間だし誰もいないか。イルどこに行ったんだろ?リュックはあるみたいだけど。ピカ知ってる?」
『ピ〜カ〜。』
スフレの質問にピカは首を振る。
「ポケモンセンターにはいるだろうから、さっさと着替えて探しに行こうか。」
『ピカ!』
そう言ってスフレは着替え始めるのだった。
スフレが着替えを終えて部屋から出ようとするとちょうど扉が開きイルが入ってきた。
「スフレちゃん起きたんだね。おはよう。」
「おはようイル。ごめんね、寝坊しちゃった。」
「特訓で疲れてたんだから仕方ないよ。」
「悪いんだけどあと少しだけ待っててくれる?すぐに準備するから。」
「うん。じゃあロビーで待ってるね。」
そう言うと、イルは自分の荷物を持ってロビーに向かい、スフレは身支度を整えるのだった。
「イルお待たせ。」
イルがブイといつの間にか来ていたピカと一緒にポケモンセンターのロビーで待っていると、支度を終えたスフレがやってきた。近くに来たスフレは辺りを見渡しながらイルに質問する。
「あれ?イル、師匠はどうしたの?」
スフレはレツに技を教えてもらった際に、レツのことを師匠と呼ぶようになっていた。
「お兄ちゃんなら用事があるからってもう出発しちゃったよ。」
「そうなんだ。じゃあ、私たちも出発しようか。」
「今日はこの町のジムに挑戦するんだよね。」
「うん。挑戦するにはまだ早い気がするけど、師匠が挑戦してみたらいいって言ってたしね。頑張ろうねピカ!」
『ピカ!』
「2人ともやる気充分だね。でも先にポケモンリーグ参加の受付をして行かないと。」
「そうだった。じゃあ早速行ってこよう!」
スフレとイルは受付に向かった。
「すみません。ポケモンリーグの参加登録をしたいんですけど。」
ポケモンセンターの受付をしているジョーイさんにスフレが話しかける。
「ポケモンリーグの参加登録ですね。ではトレーナーカードの提示をお願いします。」
「トレーナーカード?」
ジョーイさんがトレーナーカードの提示を求めると、スフレは首を傾げる。その様子を見たイルは、スフレに話しかけた。
「トレーナーカードは、私たちの身分を証明する時に使われる物だよ。10歳になった時に送られてこなかった?」
ほらこれだよ。と、イルは自分のトレーナーカードをスフレに見せる。
実物を見てもスフレは分からないようだったが、突然思い出したように声を上げた。
「あ!そういえばお母さんから、大事な物だからしっかりと持ってなさいって、貰ったものがあった。」
そう言ってスフレはリュックを確認すると、ある封筒を取り出した。封筒の中身を確認すると、スフレのトレーナーカードが入っていた。スフレはすぐにトレーナーカードをジョーイさんに手渡した。
「これで大丈夫ですか?」
「はい、預かりますね。あなたも一緒に登録しますか?」
スフレのトレーナーカードを受け取ったジョーイさんはイルに問いかけた。
「私は大丈夫です。」
イルが断るとスフレが驚いて話しかけた。
「え!イルは挑戦しないの?」
「うん。私は別にポケモンリーグに挑戦したいわけじゃないからいいよ。」
「まあ、イルがいいならいいけど。」
スフレは渋々といった様子で引き下がる。
「では、スフレさんのポケモンリーグの参加登録をしておきますね。もし、ロッタジムに挑戦するのでしたら、予約も一緒にしておきますか?」
「はい!是非お願いします。」
ジョーイさんの申し出にスフレは勢いよく答えた。
「では、終わりましたらお呼びしますので、しばらくお待ち下さい。」
「はい。」
スフレとイルは受付から離れると、スフレが話しかける。
「待ってる間どうしようか。」
「少し早いけどお昼ご飯を食べようか。スフレちゃんとピカは朝ご飯食べてないからお腹空いてるでしょう。」
「そうだった。ポケモンバトルの前にしっかりと食べておかないとね。ピカ、食堂に行くよ。」
『ピカ!』
スフレとピカは急いで食堂に向かって行ったので、イルとブイが追いかけて食堂に行くのであった。
昼食を食べ、ポケモンリーグの参加登録を終えた2人と2匹は、ロッタジムを目指して歩いていた。
「それにしても、ポケモンセンターって本当に便利だよね。」
「うん。ポケモンの回復やポケモン関係のサポートだけじゃなくて、宿泊施設やレストランとかも無料で使えるからね。トレーナーからしたらなくてはならない施設だよね。」
「まさか、ジムの予約もしてくれるなんて思わなかったよ。」
「そうだね。確か予約の時間は2時だよね。まだ時間があるけどどうしようか。」
「う〜ん。あまり早く行っても良くないよね。」
イルとスフレが話しているとスフレがあることに気づいた。
「あれ?何かいい匂いがしない?」
「本当だ。何の匂いだろう?」
『ピ〜カ?』『ブイ〜?』
「あっちの広場の方からだ。ピカ、イル、ブイ、行ってみよう。」
「待ってよスフレちゃん!」
『ピカ!』『ブイ!』
スフレは広場に走って行き、イルと2匹はスフレの後を追いかけた。。
スフレたちの入った広場はどうやら運動公園のようだった。
スフレが入ってきた入り口近くにはテニスコートがあり、その一つでは、トレーナーとエテボーズがテニスの練習をしており、ランニングコースがあるのか、エネコロロやゴマゾウなどのポケモンたちがトレーナーと一緒に走っている様子が見える。
また憩いのスペースとして噴水のある広場などもあり、大きい公園だということが分かる。
スフレが近くにあった案内板を見ると、他にもポケベースの球場などもあることが分かる。
そうこうしているうちにイルたちがスフレに追いついてきた。
「スフレちゃん置いて行かないでよ。」
『ピカピカ!』
ピカは置いて行かれたことを怒っているようだ。
「ごめんごめん。」
「案内板を見てどうしたの?」
「別に大したことないんだけど。広い運動公園だなって。」
「ロッタジムが格闘タイプのジムだからか運動施設が充実してるみたいなんだ。フラウ地方の有名なスポーツ選手の人たちもよく利用しに来るらしいよ。」
「へえ〜。」
「そういえば、いい匂いが何か分かったの?」
「あ、忘れてた。この辺だと思うんだけど。」
スフレが周りを見渡してみると、噴水のある広場に一台の移動販売車が止まっており、その周りにいくつかの机と椅子が置かれているのが見えた。
「多分あの車だよ。みんな行ってみよう。」
「うん。」『ピカ!』『ブイ!』
移動販売車の近くに来てみると、車のサイドが販売用窓になっており、店員の女性が作業しているのが見えた。その上に看板には[LUCKY CREPE]と書かれている。
「イル、クレープだって食べて行こうよ。」
「うん、そうしようか。」
「ジム戦前に腹ごしらえしないとね。」
「こっちの看板にメニューが載ってるよ。」
「こんなに種類があると何にしようか迷うよね。」
「うん。どれにしようかな?」
「こういう時は店員さんにオススメを聞くに限る。イル、早く並ぼう。」
イルとスフレが販売車に近づくと、見覚えのある少女がクレープを選んでいた。
「う〜ん、マゴの実を使ったクレープもいいな。ですが、ブリーの実も捨てがたいですし、新商品のソクノの実のクレープもたべてみたいからな、どうしようかな。」
「あ、リーナ!」
「え?」
スフレに名前を呼ばれ、リーナはスフレたちに気づき顔を向ける。
「スフレさん、イルさんこんにちは。」
「リーナさん、こんにちは。」
リーナの挨拶にイルが挨拶を返すと、リーナはばつの悪そうな顔でスフレに話しかけた。
「スフレさん昨日はすみませんでした。」
「え、何が?」
「昨日、スフレさんを傷つけるような事を言ってしまって。」
「別に本当の事だし気にしないで。」
「ですが。」
「あたしも改めて考えるきっかけになったし、あたしたちなりに答えもでたからね。」
「そうですか。」
「どうしても謝りたいっていうなら、この店のオススメのクレープを教えてよ。それで一緒に食べようよ。」
「そんなことで良いんですか?」
「私たちにとって大事なことだよ。ね、イル?」
スフレに話を振られて、イルは頷く。
「うん。どのクレープも美味しそうで迷ってたんだ。教えてくれると嬉しいな。」
「そういうことなら喜んで。ちなみに、ポケモンも食べれるクレープも売ってますよ。」
「じゃあ、ブイやピカにも買ってあげないとね。」
「そうだね。じゃあ、早くクレープを買おうか。」
イルとスフレ、そしてリーナはクレープを選び始めた。
「それで?どれがオススメ?」
「そうですね。定番はブリーの実のクレープですし、ナナの実を使ったクレープも美味しいですよ。でも新作のソクノの実のクレープも食べてみたいですし。」
「本当にいろんな種類があるんだね。」
「はい、きのみだけでなく、チョコレートとかメイプルとかもあって選ぶだけでも大変なんですよ。」
「そうみたいだね。」
「じゃあ3人で分けっこしようよ、それなら3種類食べることできるよ。」
「それいいね。」
「はい、そうしましょう。」
イルの提案に3人が盛り上がっていると、店員が3人に話しかけた。
「盛り上がるのは結構だけど、そろそろご注文いいですか?お客様?」
「「ご、ごめんなさい。」」
「すみません、クレアさん。」
3人は慌てて店員に謝る。
「冗談よ。今は他のお客さんはいないからゆっくり選んでね。」
「はい、ありがとうございます。」
イルが店員に返事をする。
「リーナ、店員さんと仲良いなの?」
「はい。クレアさんとはよく話をしたりしています。」
スフレがリーナに質問していると、店員が3人に話しかけた。
「そう、私が[LUCKY CREPE]の店長のクレアよ。そして、この子はマスコット兼味見係のペロッパフの“クリーム”よろしくね。」
『ペロ〜!』
クレアが自己紹介すると、カウンターの下からペロッパフが飛び出いてきた。
「この子がペロッパフ、初めて見た。」
「居たの気がつかなかった。」
イルとスフレがそれぞれの思いを口に出す。
「そういえばリーナがよく来るってことは、よくここで営業しているの?」
「いいえ。数ヶ月毎にきて一週間ぐらいしかやってないんです。だからあんまり色んなクレープを食べることができないんです。」
「へぇ、そうなんだ。」
「そう!フラウ地方をグルグル回りながら営業しているからね。出会えたらラッキー、だから[LUCKY CREPE]ってね。」
「そうなんですか。」
「まあ、そんな店になるように頑張ってるところだけどね。」
「私にとってはそう思える店なんですけどね。」
「リーナちゃん、嬉しいこと言ってくれるわね。ところで2人はリーナちゃんのお友達?」
「え、えっと。」
クレアの質問にリーナはどう答えようか迷っていると、スフレがかわりに答えた。
「はい!昨日ポケモンバトルして知り合ったんです。」
「へぇ、そうなんだ。良かったじゃないリーナ。」
スフレとクレアが盛り上がっていると、イルが少し遠慮しながら話しかけた。
「スフレちゃん、話をしているところ悪いんだけど、早く選ばないと食べる時間なくなっちゃうよ。」
「そうだった!早く選ばなきゃ、リーナはどれがいい?」
「は、はい。私はそうですねぇ。」
こうして3人は再びクレープを選び始めるのだった。
4人掛けのテーブルに座り、クレープを食べ終えた3人は、のんびりと会話していた。
「どれも美味しかった、大満足だよ。」
「美味しいクレープだったね。ブイとピカ、チャムはどうだった?」
『ブイ!』『ピカピー!』『アサ!』
イルの質問にブイとピカ、そしてアサナンのチャムは満足そうな笑顔でこたえた。
「美味しかったみたい。」
「なら良かった。またみんなで食べようね。」
「うん。」
「はい。そういえば、おふたりはこの後何か用事があるんですよね?」
「うん、そうだけど言ってたっけ?」
「いえ、早くしないと時間がなくなると言っていたので。」
「この後、ロッタジムに挑戦するんだよ。」
「そうなんですね。」
「スフレちゃん、そろそろジムに向かおうか?」
「そうだね。じゃあ、リーナまたね。」
「行くよ、ブイ、ピカ。」
『ブイ』『ピカ』
立ち上がった2人にリーナが話しかけた。
「ロッタジムなら、よく行くので案内しますよ。」
「いいの!ありがとうリーナ。」
「リーナさん、お願いします。」
「はい。チャム行きますよ。」
『アサ!』
「クレアさん、また来ますね。」
「ご馳走様でした!」
「ペロッパフもまたね。」
「またのご来店お待ちしてます。」『ペロ〜』
3人がクレアに挨拶をして、ロッタジムに向かって歩きだした。
しばらくして、公園から出てすぐの建物の前でリーナが立ち止まった。
「ここがロッタジム?」
「大きい建物だね。」
「はい。ポケモンジム以外にも、スポーツジムとしての役割も兼ねているので、いろんな設備があるんですよ。ちなみに私もここで格闘技を習っているんですよ。」
「だから詳しいんだ。」
「いえ、この町に住んでいる人はみんな知ってますよ。」
3人がジムの前で会話していると、オレンジ髪の少年が話しかけてきた。
「やあリーナ。今日は練習の日じゃないのに珍しいね。」
「こんにちはヒカル。今日は彼女たちを案内してきたんです。」
リーナと少年が挨拶をしていると、スフレが話しかけた。
「リーナ、その人は?」
スフレがリーナに聞くと変わりに少年が答えた。
「僕はヒカル。リーナとは幼馴染なんだ、よろしくね。」
「ヒカルだね。あたしはスフレ、こっちはパートナーのピカチュウのピカ。こちらこそよろしく。」『ピカ!』
「私はイルって言います。この子はブイです。よろしくお願いします。」『ブイ!』
自己紹介が終わると、リーナがヒカルに話しかけた。
「ところで、ヒカルはジムに何か用事ですか?」
「いや、近くの図書館に行ってきた帰りに偶然見かけたので声を掛けかんですよ。そちらはジムリーダーに挑戦ですか?」
「はい。スフレさんがジムに挑戦すると言うので、案内とついでに見学して行こうかと。」
「それはいいね。スフレさん、僕も見学してもいいですか?」
「別に大丈夫だよ。」
「ありがとう。ジム戦頑張ってください。」
「じゃあそろそろジムに入ろうか。」
イルが促すと、リーナとヒカルがイルに続いて歩きだす。しかしスフレとピカはジムの方を向いて立ち止まっていた。3人とブイとチャムはスフレとピカの様子に気づき立ち止まる。
スフレとピカは目を瞑り、深呼吸をした。
「よし!」『ピカ!』
気合を入れ直し、2人はジムへと入って行った。
立ち止まっていたイル達はスフレとピカを追いかけジムに入って行った。
こうして、スフレの初めてのジム戦が幕を上げたのだった。
ソード&シールド発売されましたね。
本当はもう少し話を進めておきたかったのにな。(−_−;)
説明文にはソード&シールドのポケモンを出すかはわからないと書いていましたが、ソード&シールドのポケモンも登場するに変更しましたのでよろしくお願いします。(・ω・)ノ
亀もびっくりな遅さの投稿速度ですが、これからもよろしくお願いします。( ´ ▽ ` )ノ