ポケットモンスターレガーメ   作:とんま

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本編を始める前に、この小説でのポケモンの技について説明させてください。
この小説では、ポケモンはゲームで覚えることのできる技を全て覚えることができます。なので初代でしか覚えることのできなかった技を使ったりします。

本来ポケモンが使える技の数は4つまででそれ以外は忘れてしまいます。しかし、この小説では技を忘れるのではなく、一度覚えた技はいつでも使うことができます。そのため公式戦(ジム戦やリーグ戦)では、覚えている技から4つ選択してバトルするというルールがあります。
このルールは小さな大会でも適用されることが多いため、ほとんどのトレーナーは普段のバトルから、技を4つ選んでバトルしています。
ちなみにバトル中に新しい技を覚えた場合は、新しく覚えた技のみ4つの技と入れ替え可能となっています。
そんな設定なので技の入れ替えがよくおきると思います。

最後に技の覚え方はアニメと同じでレベルアップに関係なく覚えたり、突然技マシンでしか覚えない技を覚えたりします。

とりあえず技の設定はこんな感じになっているのでお願いします。
それでは本編をお楽しみください。




第5話 激闘ロッタジム!即席タッグバトル!

 ロッタジムに入ると1人の男性がスフレたちを出迎えた。

「ようこそロッタジムへ、俺はジムリーダーのトウシだ。」

「挑戦の予約をしたスフレです。よろしくお願いします。」

「スフレ君だね。よろしく。」

 トウシとスフレは自己紹介をし、握手をした。

 トウシは細身だが、スポーツマンらしく引き締まった身体をしており、爽やかな笑顔をしている。

「リーナとヒカルは顔見知りだが、君の名前は?」

 トウシはイルの方を向いて質問する。

「わ、私はイルです。よ、よろしくお願いします。」

「イル君か、よろしく。」

 緊張しながら挨拶するイルに対し、トウシは笑顔で挨拶をした。

 そしてトウシはリーナとヒカルの方を向いて話しかけた。

 とあ「ところでリーナとヒカルはどうしたんだ?今日は練習が休みだったと思うが。」

「イルさんとスフレさんと仲良くなったので、ジムまで案内しに来ました。それとジム戦を見学しようかと思いまして。」

「僕は偶然入り口のところで出会ったので、一緒に見学しようかと。」

 リーナとヒカルの返事を聞いたトウシは頷くとスフレに話しかけた。

「なるほどな。まあ、スフレ君が良いなら存分に見学していけばいい。さあスフレ君、そろそろジム戦を始めるとしよう。」

「はい!よろしくお願いします。」『ピカ!』

「バトルのルールは使用ポケモン2体ずつのシングルバトル、2体とも戦t」

「えっ!」

 やる気十分だったスフレはトウシの言葉を大きな声で遮った。

「どうしたの?スフレちゃん。」

「どうしようイル。あたし、ポケモンピカしかいないよ。」

 心配したイルが声をかけると、スフレは泣きそうな顔で答えた。

「そういえばそうだったね。もしよかったらブイを貸そうか?」

「無理だよ。道中のポケモンとは私とピカが戦っていたから、ブイがどんなふうに戦うかとか、技とかも知らないもん。」

 イルの提案にスフレが落ち込みながら答えると、リーナとヒカルが話しかけた。

「落ち着いてくださいスフレさん。今日は無理でも、また挑戦すればいいんですから。」

「そうだよ。今からポケモンを捕まえに行けば、明日にでも挑戦できるよ。」

「そうだよね。すみませんトウシさん。そういう訳で今回の挑戦は諦めます。」

 落ち着いたスフレが残念そうにトウシに話すと、トウシはある提案を持ちかけた。

「ふむ。ならば、タッグバトルというのはどうかな。」

「タッグバトル?」

 スフレが聞き返すとトウシは説明を始める。

「ああ、スフレ君とイル君がタッグを組み、1体ずつポケモンを出せば2体になるだろう。もちろんこちらもジムトレーナーの1人と組んでバトルしよう。」

「でも、それは大丈夫なんですか?」

「じつは今回のポケモンリーグでは新たな試みとして、タッグバトルリーグを開催する予定になっているんだ。」

「そうなんですか?」

「しかし、そんな話は聞いたことないんですが。」

 イルとリーナが聞き返す。

「一般にはまだ公開されてないんだ。もう少ししたら正式に発表されると思うが、君たちのようにその前にジム戦に来たトレーナーにはジムリーダーから話すことになっているんだ。だからタッグバトルで挑戦しても問題はないんだ。」

「でもそれじゃあ、ポケモンリーグのシングルバトルの方に挑戦できないんじゃ。」

「そこは大丈夫だ。タッグバトルリーグの参加条件はお互いにジムバッジを8つ持っていることだからね。だからジムバッジを8種類手に入れればどちらのリーグにも参加できるんだ。」

「待ってください。それだとポケモンリーグで急遽タッグを組むことができるんじゃ・・・。」

 イルの質問に答えたトウシにリーナが聞き返す。

「もちろん問題ない。バッジをシングルバトルかタッグバトル、どっちで集まるかはトレーナー次第だ。まあ、俺は急遽タッグを組んでも勝ち進めるとは思わないがな。ところでどうするスフレ君?」

 ポケモンリーグの説明を終えたトウシはスフレに答えを促したが、スフレが答える前にイルが話しかけた。

「あの、私ポケモンリーグの参加登録してないんですけど、大丈夫なんですか?」

「登録してなければポケモンリーグに参加できないというだけで、ジム戦に挑戦できない訳ではないんだ。そもそもジムへの挑戦に条件がある訳ではないからな。まあ登録してあれば、ジムの予約を取りやすくなるぐらいはあるがな。」

「だってさイル。どうする?」

「私はスフレちゃんがいいなら構わないけど。」

 イルの答えにスフレの表情がみるみる明るくなっていく。

「いいの!イルが組んでくれるなら心強いよ。頑張ろうねイル、ブイ。!」

「こちらこそよろしくね。スフレちゃん、ピカ。」

 

「決まったようだな。ではバトルフィールドに移動するとしようか。」

「「はい!」」『ピカ!』『ブイ!』

「みなさん頑張ってください。私とヒカルは観客席で応援しますね。」

「良いバトルを期待してます。」

「ありがとう2人とも。」

 スフレは観客席に向かうリーナとヒカルにお礼を言うと、イルと一緒にトウシの案内でバトルフィールドにに向かうのだった。

 

 

 

 

 ロッタジムのバトルフィールドは室内に設置されている。

 バトルフィールドのある部屋は3階の高さまで吹き抜けになっており、天井はあるが鳥ポケモンや大型のポケモンが自由に動けるスペースは確保されている。

 室内ではあるが床はスタンダードな土のフィールドで、フィールドのサイドは壁が近くにあり、壁の2階部分が観客席になっておりフィールドを見渡すことができる作りになっている。

 

 

 

 観客席の椅子に座ったリーナはバトルフィールドを見下ろした。

 バトルフィールドにはスフレとイルが立っており、2人が何かを話し合っている様子が見えた。ジムリーダーのトウシはタッグを組むトレーナーを呼びに行っており、まだバトルフィールドには来ていないようだった。

 バトルフィールドを見ているリーナに、ヒカルが話しかける。

「イルさんとスフレさんは何を話しているのかな?」

「多分、作戦を考えているんだと思います。どんなふうに戦うか決めておくのも大切なことですし。」

「なるほど。リーナはどっちが勝つと思う?」

「ジムリーダーはチャレンジャーの実力に合わせて戦ってくれますけど、厳しい戦いになると思います。」

 リーナとヒカルが話していると、1人の黒髪の男性が観客席に入ってきた。

「スフレの試合は今からか、もう終わっていると思っていたけど運がいいな。」

 そう言いながら男性はリーナたちから少し離れた席に座った。

 スフレの名を男性が言った為、知り合いなのかと思っていると、ヒカルが男性に近寄り話しかけた。

「すみません。もしかしてスフレさんの知り合いの方ですか?」

「ん?ああ、そうだけど。君は?」

 突然話しかけられた男性は戸惑いながら答え、ヒカルに問いかけた。

「僕はヒカルって言います。彼女はリーナです。」

「リーナです。よろしくお願いします。」

 2人の近くに来ていたリーナは、ヒカルに紹介された為挨拶をした。

「ああ、よろしく。俺はレツだ。2人はイルたちの友達かい?」

「僕はさっき会ったところですけど、リーナは仲良くなったみたいですよ。」

「そうか。2人に早くも良い友達ができたみたいだな。」

「ありがとうございます。」

 レツに良い友達と言われて嬉しくなり、リーナはお礼を言った。その様子にレツは小さく笑みを浮かべ、改めてバトルフィールドを見た。

「スフレだけでなくイルもバトルフィールドに居るってことは、タッグバトルで戦うのか。」

「はい。本当は2対2のシングルバトルだったんですけど、スフレさんポケモンをピカチュウしか持ってなかったので、急遽タッグバトルに変更になったんです。」

「確かポケモンリーグでも、タッグバトルリーグを開催するって言っていたな。」

「はい。だからタッグバトルでも挑戦できたみたいです。」

「なるほどな。」

 横でレツとリーナの話を聞いていたヒカルは少し首を傾げた。

(何か違和感が?)

 ヒカルが考えていると、バトルフィールドにトウシと2人の男女が入ってきた。

「「あ!」」

 3人を見て、リーナとヒカルは同時に声をあげた。

「どうした?2人の知り合いか?」

「はい。女性の方は私の姉です。」

「そういえば、ジムトレーナーになったって言ってたね。」

「まさか、今回のバトルを担当するとは思ってなかったですけどね。」

「そうなのか。お、始まるみたいだな。。」

 そう言いながらレツはバトルフィールドに目を向けた。

 

 

 

 イルとスフレが話していると、トウシが2人の男女と共にバトルフィールドに入ってきた。

「待たせてすまない。今回俺とタッグを組むのは彼女だ。」

「私はリン。2人ともよろしく頼むよ。」

「あたしはスフレ、こちらこそよろしくお願いします。」

「イルです。よろしくお願いします。」

 ジムトレーナーのリンが自己紹介をすると、イルとスフレは続いて挨拶をした。

「では、始まるとしようか。」

 そう言ってトウシは、審判のポジションについた男性に顔を向ける。男性は頷くと話し始めた。

「ただいまから、ロッタジムのジム戦を始める。ルールはタッグバトル、使用ポケモンは1人1体ずつになります。相手のポケモンを、全て戦闘不能にしたトレーナーの勝利となります。それでは、ポケモンを前へ!」

 審判がそういうと、全員が一斉にポケモンを出す。

「いくよ!ピカ!」『ピカ!』

「ブイ、お願い。」『ブイ!』

「頼むぞ!エビワラー!」『エビエビ!』

「試合だよ!アサナン!」『アサ!』

 4匹のポケモンがそれぞれのトレーナーの前に立ち、戦闘態勢を取った。

 

 

 

 観客席ではリーナとヒカルが話していた。

「ジムリーダー側はエビワラーとアサナン、対してスフレさんたちはピカチュウとイーブイ、相性だけ見ても厳しい戦いになりますね。」

「うん、特にイルさんのイーブイはノーマルタイプで、かくとうタイプに弱いから、どう戦うかが重要になるね。」

「コンビネーションが大事ってことだね。」

「そう上手くいかないだろうな。」

「「え?」」

 2人の会話に入ってきたレツの言葉に2人は驚く。

「どういうことですか?」

「イルとスフレが会ったのは昨日だ。そんな2人がコンビネーションをしようとしても、足の引っ張り合いになりかねない。」

「では、どうするのですか。」

「それでも2人で戦うか、後は…」

 レツが話していると、審判の合図で試合が始まった。

 

 

「それでは先攻はチャレンジャーからとなります。それでは、試合開始!」

「ピカ!」「ブイ!」「「“でんこうせっか”!」」

 2人の指示で、ピカとブイは一斉に駆け出した。

 2匹はジグザグに走りながら、ピカはエビワラーに、ブイはアサナンに突撃する。

「避けろ!エビワラー!」

「アサナン、“みきり”」

 エビワラーとアサナンは体を逸らして避ける。

「アサナン、イーブイに“はっけい”!」『アサ!』

「イーブイ、“スピードスター”!」

 攻撃を避けられ振り向こうとしているイーブイに、アサナンが攻撃しようとする。しかし、イーブイは振り向きながら尻尾を光らせ、尻尾を振ると、尻尾から星型のエネルギー弾が数発発射され、その半分が攻撃の為近づいていたアサナンに直撃し、アサナンを吹き飛ばした。

 さらに残りの“スピードスター”は、アサナンと同じようにピカを攻撃しようとしていたエビワラーへ飛んでいった。

「“マッハパンチ”で打ち落とせ!」

 エビワラーは素早いパンチで“スピードスター”を撃ち落とす。

 しかし、足を止めたエビワラーの懐にピカが潜り込んだ。

「いくよピカ!“メガトンパンチ”!」

 エビワラーの腹にピカが“メガトンパンチ”を打ち込んだ。

 エビワラーは衝撃で地面に足をつけたまま飛ばされるが、すぐに体勢を立て直した。

「エビワラー、大丈夫だな。」『エビ!』

(よし、ここまでは想定通り、問題はここから。)

 エビワラーがピカに対して構え直すのを見てながら、スフレはイルとの会話を思い出す。

 

 

 

 

「1対1で戦う?でもこれタッグバトルだから、一緒に戦った方がいいんじゃないかな?」

「昨日会ったばかりの私たちじゃ、上手くコンビネーションなんてできないと思うの。だからお互いに戦う相手を決めて、その相手に集中した方がいいと思う。」

「確かに。私なんてイルがバトルしてるの見たこともないしね。でもそれなら、どっちがジムリーダーの相手をするの?」

「もちろんスフレちゃんだよ。ブイは相性が悪いし、それに本来はスフレちゃんの挑戦なんだから。」

「そうだね。頑張らないと!」

「うん。私たちも余裕があれば援護するね。」

「ありがとう、イル。」

 イルにお礼を言った後、スフレはある事に気づいた。

(あれ?ジムトレーナーの人も、かくとうタイプのポケモン使うんじゃ?)

「来たみたいだよ。頑張ろうねスフレちゃん。」

 トウシたちが来たことで、スフレとイルは会話をやめた。

 

 

 

(イルとブイも頑張っているんだ、ジムリーダーに集中しないと。)

 スフレがそんなことを考えていると、トウシが指示をだした。

「エビワラー!こちらも“メガトンパンチ”だ!」『エビ!』

 指示を受けたエビワラーが一気に距離を詰め、拳を繰り出した。

「ピカ!こっちも“メガトンパンチ”!」『ピカ!』

 素早く距離を詰められた為、ピカは反応できなくて動けずにいたが、スフレの指示でエビワラーの拳に技を放った。

 ピカとエビワラーは同じ技をぶつけ合う。しかし、ピカは打ち負けて吹き飛ばされる。

「エビワラー畳み掛けろ!」

「ピカ避けて!」

 ピカは体勢を立て直し着地すると、エビワラーが先ほどと同じように距離を詰め何度も攻撃する。しかしピカはしっかりと攻撃を避けていく。

 避けれそうにない攻撃には“メガトンパンチ”で対抗するが、やはり先程と同じように打ち負けて吹き飛ばされてしまう。

(今は何とかしのいで、反撃する隙を見つけないと。)

 

 ピカがエビワラーの攻撃を避けている横で、ブイはアサナンと戦っていた。

「アサナン、“ローキック”!」

「ブイ、ジャンプして“スピードスター”!」

 アサナンの下段蹴りをブイはバク宙をして避ける。ブイはバク宙の回転を使い、“スピードスター”を今度はアサナンのみに放った。

「アサナン“みきり”で避けな!」

 アサナンは“スピードスター”の軌道をみきり、少し身体をずらして避けた。

「アサナン、今度こそ“ローキック”を決めな。」

 ブイが着地した瞬間を狙い、アサナンは“ローキック”を放つ。

 “ローキック”はブイに当たり、ブイは転んでしまう。

「アサナン“はっけい”!」『アサ!』

「ブイ転がって避けて!」『ブイ!』

 アサナンの“はっけい”を転がって避け、体勢を整えた。

「ブイ、一旦距離を取って。」

 ブイは後ろに飛び、アサナンから距離を取る。

「さっきの“はっけい”で決まると思ったのに、やるじゃないか。でも、これならどうかな?アサナン!“ねんりき”!」

「ブイ、“スピードスター”!」『ブイ⁉︎』

 ブイは“スピードスター”を放とうとするが、“ねんりき”で身体を浮かされた為バランスを崩してしまい、“スピードスター”を真下の床に放ってしまう。

 

(あれはリーナとチャムが使っていた技。)

 アサナンはブイをどんどん浮かべていくのを見て、スフレはそちらに気を取られてしまう。

『ピカピー!』

 それに気づいたピカがスフレに呼びかけた。それに気づいたスフレは、慌ててピカの方に集中する。

(危ない気を取られた。イルだってリーナとのバトルを見てたんだ、このまま負けるとは思えない。今はイルとブイを信じてこっちに集中しないと。)

 スフレは気を引き締め直して、エビワラーとのバトルに集中した。

 

「アサナン、叩きつけな!」『アサ!』『ブイ⁉︎』

 アサナンはブイを床に叩きつけた。

 先程の“スピードスター”の影響で砂埃が舞っていた床にブイは叩きつけられる。するとブイの身体は砂埃で隠れてしまう。

「ブイ、大丈夫?」

 イルが呼びかけると、砂埃の中でブイが立ち上がろうとしている様子が影で見えた。

「あそこだね。アサナン!“はっけい”で決めな!」

 アサナンは影に向かって突っ込み、“はっけい”をブイに打ち込んだ。

『アサ⁉︎』

 しかし、アサナンは手応えがない事に気がついた。

 砂埃が収まり始めブイの姿が現れると、アサナンの手はブイの身体にめり込んでしまっているように見えた。

「まさか“かげぶんしん”の後ろに隠れて⁉︎」

 アサナンとリンが驚いていると、アサナンが攻撃したブイは、まるで霧のように消えてしまった。そしてそのすぐ後ろに、黒い球体を口元に発生させているブイが現れる。

「まずい、アサナン離…。」

「ブイ!“シャドーボール”!」『ブイー!』

『アサァァァ⁉︎』

 リンはアサナンに指示を出そうとするが、間に合わずアサナンはブイの放った“シャドーボール”に全く反応出来ずに直撃してしまい、吹き飛ばされた。

「ブイ、“でんこうせっか”!」『ブイ!』

 なんとか立ち上がったアサナンはブイの“でんこうせっか”をくらい、リンの近くまで吹き飛ばされた。

 吹き飛ばされたアサナンは目を回して気絶していた。

「アサナン戦闘不能!」

 審判の声がフィールドに響き渡った。

 

 アサナンが倒れた為、他のポケモンは動きを止める。エビワラーが攻撃をやめたのを確認して、スフレはイルに話しかけた。

「やったね。イル、ブイ!」

「ブイが頑張ってくれたからだよ。でもここからが本番だから、気を抜いちゃダメだよ。」

「うん!」

 そう言うと2人はエビワラーの方に向き直った。

 

「戻れアサナン。お疲れ様。」

 アサナンをボールに戻したリンは労いの言葉をかけた。

「すみません。私がふがいないばかりに。」

「気にするな。後は俺とエビワラーに任せてくれ。」

 謝るリンに、トウシは笑顔で答えバトルに集中する。

(2対1か。数では負けているが、どう戦うかな。)

 そう考えるトウシの顔は笑っていた。

 

 アサナンをボールに戻すのを確認すると、バトルが再開された。

「一気にいくよ!ピカ、“メガトンパンチ”!」

「ブイ、“スピードスター”!」

 エビワラーに接近する為に走り出したピカの横を、“スピードスター”の星が追い越していく。

「“メガトンパンチ“を当てる隙を作ろうとしているようだが、そうはいかない!エビワラー、後ろに下がりながら“マッハパンチ”!」

 エビワラーは後退しながら迎撃する。

 その為、ピカは近づけず攻撃出来なかった。

「ピカ、一旦下がって!」

 ピカはエビワラーから離れ、ブイと合流しようとする。

「そうはさせん。エビワラー“いわなだれ”!」

 エビワラーは自分の周りにいくつもの岩を出現させると、2匹に向かって打ち出した。

「ピカ、」「ブイ、」「「“でんこうせっか”!」」

 ピカは岩の上を器用に跳び、ブイは飛んでくる岩の下をくぐって、“いわなだれ”を回避する。

「エビワラー!“スカイアッパー”!」

 しかし、岩を使って高く跳んだピカにエビワラーの攻撃が迫ってきていた。

 ピカに攻撃が当たる直前、ピカの身体が横に押された。

 ピカが慌てて押された方を確認すると、ピカのかわりにブイが攻撃を受けていた。

 

 イルはピカが高く跳ぶのと同時に、攻撃体勢に入っているエビワラーを見つける。

「ブイ!ピカをお願い!」

 ブイはピカの元に走る。

 エビワラーに攻撃しようにも岩に阻まれてしまっている為、ピカと同じように岩を使って跳び、ピカに体当たりして攻撃から逃したが、変わりにブイにエビワラーの“スカイアッパー”が直撃した。

 

『ブイ〜。』

 イルの近くに落ちたブイは目を回して倒れており、戦闘不能になっていた。

「イーブイ戦闘不能!」

 審判がそう言うと、イルはブイの元に行き抱き上げた。

「ブイお疲れ様、ゆっくり休んでね。」

 そう言ってボールに戻そうとしたが、ブイが首を振って拒否した為、ブイを抱いたまま元の位置に戻った。

 戻ってきたイルにスフレが話しかけた。

「ごめんね、イル、ブイ。」

「気にしないで。私たちが勝手にやったことだから。」

「ありがとう。」

 そう言うとスフレはピカの方を見る。イルもつられてピカを見ると、ピカの耳が下がっており、落ち込んでしまっているようだ。

 

 

 

 観客席ではヒカルとレツが話していた。

「イーブイが戦闘不能になり、残り一体ずつになりましたね。」

「ああ、ブイもかなりのダメージを負っていたからな。相性の悪い自分よりも、ピカの方が勝つ可能性があると思ったんだろう。」

「でも今のところ、ピカチュウはエビワラーに防戦一方なのに勝てるんでしょうか?」

「バトルは最後までどうなるか分からないものだからな。諦めなければ案外逆転できたりするもんだ。」

 2人が話しているとリーナが話に入ってきた。

「ですがピカの方はかなりショックを受けているみたいですよ。このまま戦えるのでしょうか?」

「それはトレーナー次第だな。」

「スフレさん次第ですか…。」

 3人は会話を止め、バトルフィールドに視線を戻した。

(ここが頑張りどころだぞ、スフレ。)

 

 

 

 呆然と立ち尽くしているピカに、スフレが静かに話しかける。

「ピカ、このままでいいの?」

 ピカは少し顔を上げる。

「イルとブイは相性の悪いアサナンをちゃんと倒してくれた。でもあたしたちは何もできてないよ、それでもいいの?」

『ピカ。』

 ピカは首を振る。

「悔しくないの!」

『ピカ!』

 ピカは首を振り、強く否定する。

「勝つよ!ピカ!」

『ピカ!!』

 2人を見てトウシは口元に笑みを浮かべる。

「良い目だ。いくぞ!エビワラー!」

『エビ!』

 ピカとエビワラーは再び戦闘体勢をとった。

 

「ピカ!“でんこうせっか”!」『ピカ!』

 ピカは真っ直ぐにエビワラーに向かっていく。

「エビワラー、“メガトンパンチ”で迎え撃て!」

「ピカ!そのまま“メガトンパンチ”!」

 ピカとエビワラーの拳がぶつかり合う。

 エビワラーは力負けし、後ろに下がる。

(ピカが打ち勝った?そっか!“でんこうせっか”のスピードで“メガトンパンチ”の威力が上がったんだ。これなら!)

「ピカ!一度距離をとって!」

「エビワラーのフットワークを甘く見ないことだ、スフレ君。」

 ピカが離れた分、エビワラーはすぐに距離を詰める。

(近づいてきた!?これじゃあ距離を取れない。)

そう考えていると、スフレはある事を思い出す。

(そうだ!この状況なら、あの技が使えるかも!)

「ピカ!エビワラーを捕まえて!」『ピカ!』

「何!?」

 ピカはエビワラーの懐に飛び込み、腰の辺りを掴んだ。

(師匠から教えてもらったもう一つの技、使うなら今しかない!)

「ピカ!“ちきゅうなげ”!」『ピ〜カッ!』

 ピカは飛び込んだスピードを利用し、自分の身体を軸にして横に回転し、エビワラーを投げ飛ばした。

 

 エビワラーは何度か転がりながらも体勢を立て直し立ち上がろうとするが膝をついた。

 

「今だピカ!“メガトンパンチ”!」

 ピカがエビワラーに飛びかかった。

 しかしすでにエビワラーは膝を上げ、しゃがんだ体勢になっていた。スフレはその事に気づいて咄嗟に指示を出した。

「ピカ!回避して!」

「エビワラー!“スカイアッパー”!」

 エビワラーは飛び上がったピカに拳を繰り出すが、ピカは身体を横に回転させ“スカイアッパー”を回避して、エビワラーの横を通り過ぎた。

 

 

 

「あの状態から反撃したトウシさんもすごいけど、スフレさんもよく回避を指示できたね。」

「ですが今の攻撃で決めれなかったのはスフレさんにとって痛いですね。同じ攻撃がトウシさんに通用するか分かりませんし。」

 ヒカルとリーナが話している横でレツは口元に笑みを浮かべていた。

(滑空するように落ちているピカが、真下に落ちるエビワラーより先に着地するのは難しいだろうから、よくて同時な着地して仕切り直しだろう。でもそれは床に着地するならの話だ。)

 

 

 

 エビワラーが後ろに顔を向けると、壁に着地したピカがエビワラーを睨みつけ、右手を握り締めていた。

「何!?」トウシが思わず声を上げる。

 ピカの頬袋から電気が迸っており、それが収まっていくにつれてピカの

 右手が電気に覆われていく。

 その様子を見たエビワラーが目を見開くと同時に、ピカがエビワラーに向かって跳躍した。

 

「いっけぇ〜!!ピカ!!」

『ピィ〜カァ〜チュ〜〜!!』

 スフレとピカが同時に叫んだ。

 

 ピカの拳がエビワラーの腰に当たるとバチバチと音を立て電撃が炸裂し、エビワラーが吹き飛んだ。

 エビワラーは目を回して倒れきぜつした。

 

「エビワラー戦闘不能!勝者、スフレ&イル!!」

 静まりかえったフィールドに審判の声が響き渡った。

 

「やったね!ピカ!」

 フィールドに座り込み、自分の拳と倒れたエビワラーを見ながら呆然としていたピカにスフレが駆け寄り抱き上げる。

「すごいよピカ!ジムリーダーに勝っちゃったよ!」

 スフレの言葉でピカは我に返り叫んだ。

『ピカチュー!!』

「良かったね、2人とも。」

「イルとブイがいたからだよ。ありがとう。」

「どういたしまして。」

『ブイ!』

 スフレたちが喜んでいると、トウシとリンが近くにやってきた。

「スフレくん、イルくん、良いバトルだった。」

「良いバトルだったよ。」

 トウシはバッジを2つ取り出す。

「これが私たちに勝利した証のロッタバッジだ。受け取りたまえ。」

「「ありがとうございます。」」

 2人はバッジを受け取りお礼を言った。

「やったねイル!」

「うん!」

 パン!っと、スフレとイルはハイタッチをした。

 

「スフレさん、イルさん。」

 2人が呼ばれた方を向くとバトルフィールドにリーナとヒカルが駆け降り、その後ろをレツが歩いて付いて来ていた。

「2人ともやりましたね。」

「僕、興奮しちゃって思わず立ち上がっちゃいましたよ。」

「リーナとヒカルも応援ありがとう。」

「私もうかうかしてられませんね。」

「今度はあたしとピカが勝つからね。」

「私とチャムも負けるつもりはありませんよ。」

 スフレとリーナが話していると、トウシとリンが話しかける。

「スフレくん、イルくん、改めて良いバトルだった。知っていると思うが、ジムバッジを8種類集めることでポケモンリーグに出場できるようになる。どのジムリーダーも手強いが頑張ってくれ。」

「まだまだこれからなんだから、頑張りなよ。」

「「はい!」」

 2人が返事をすると、トウシはリーナに話しかけた。

「それにしても、リーナくんとヒカルくんは良いライバルができたみたいだな。」

「はい。」

「どういうこと?」

「そういえば言ってませんでしたね。私とヒカルもポケモンリーグに挑戦する為に旅に出るんですよ。」

「そっか。なら私たちはライバル同士だね。」

「はい。ですので、また次に会った時はまたバトルしましょう。」

「うん!今度は負けないからね。」

「私とチャムも負けるつもりはありませんよ。」

「ヒカルも今度バトルしようね。」

「うん!もちろんだよ。」

「みんな、頑張ってね。」

 4人が盛り上がっていると、レツが話しかける。

「イル、スフレお疲れさん。よく頑張ったな。」

「お兄ちゃん!」

「師匠!見に来てくれたんですね。」

「ああ、2人ともよく頑張ったな。ピカも最後に“かみなりパンチを覚えたみたいだしな。」

「あれ“かみなりパンチ”だったんだ。夢中でよく分からなかったや。」

『ピカァ。』

 そういうとスフレとピカは同時に頬を掻く。

「きっとこれからのバトルに役に立つはずだ。良かったな。」

「はい!」『ピカ!』

「よし!じゃあいつまでもここにいるわけにもいかないし、行くとするか。」

「はい。」「うん。」

 

 スフレとイルはトウシの方に向き直る。

「ジムリーダー、対戦ありがとうございました。」

「ありがとうございました。」

「ああ、これからも頑張りたまえ。」

「「はい!」」

 2人が返事をするとリーナとヒカルが話しかける。

「私とヒカルもここで失礼します。」

「お互いに頑張ろう。」

「うん!またね、2人とも。」

「さようなら。」

 そうして3人はジムをあとにした。

 

 

 スフレたちが帰った後、ジムの一室でリーナとリンが話しており、近くでヒカルが考え込んでいた。

「リーナも良いライバルができて良かったじゃないか。」

「うん。私もそう思う。」

「そういえば誰かと一緒に観戦してたようだけど、誰と一緒だったんだい?」

「イルさんのお兄さんのレツさんだよ。」

「ならほどね。」

 その言葉の後にリンは小さく呟いた。

「レツの妹か、どうりでね。」

「イルさんがどうしたの?」

「何でもないよ。」

 そう言うとリンは部屋を出ていった。

「ところで、ヒカルは何を考え込んでいるんですか。」

「別にたいしたことじゃないよ。ただ、レツさんがまだ発表されてないダブルバトルリーグについて知っていたのかが気になっただけ。」

「それなら今度会った時に聞いてみたらいいじゃないですか。それよりもバトルしに行きましょう。」

「え!今から?」

「はい!スフレさんたちに負けないように頑張らないと。」

 そう言って部屋を出て行ったリーナを、ヒカルは苦笑しながら追いかけて行った。

 

 

 

 

 〔ロッタシティ 1番道路ゲート前〕

 一夜が開けて、早朝に3人は1番道路に続くゲートに来ていた。

「ここから先が1番道路か〜。」

「なんだかドキドキしてきちゃうな。」

「あたしもだよ。そういえば、師匠はこれからどうするんですか?」

 そう言いながらとスフレはレツを見上げる。

「ポケモンリーグが開催されるまでは、フラウ地方を色々と周るつもりだよ。」

「じゃあ、どこかで会えるかもしれないんだね。」

「ああ、次に会った時、2人がどう成長しているか楽しみにしているよ。」

「はい!頑張ろうねイル!」

「うん!」

「じゃあ、そんな2人にプレゼントだ。」

 そう言うとレツはバッグから箱を2つ取り出し、それぞれ2人に手渡した。

 2人が箱を開けると、モンスターボール数個ときずぐすりなどの回復アイテムがいくつか入っていた。

「師匠!ありがとうございます!」

「そういえば色々あって買い忘れてたね。ありがとう、お兄ちゃん。」

「ジム戦初勝利のお祝いだ。あとイルの分しかなくて悪いけど、これも渡しておくよ。」

 そう言うと、レツは再びバッグからある機械を取り出して、イルに手渡した。

 その機械は五角形の板状で、大きさはイルの顔より少し大きいくらいだ。

「これは?」

「ポケモン図鑑だ。前に使っていたやつだから型は少し古いけど、旅の役に立つと思うぜ。」

「ありがとう、お兄ちゃん。」

「ひとつしかないから、2人で使ってくれ。」

「うん。わかってるよ。」

「いいの!ありがとう。イル、師匠。」

 2人の返事を聞いてレツはゲートの方を見ながら話し始める。

「ここからが改めて2人の冒険の始まりってとこだな。この先多くの人やポケモンとの出会いがあり、楽しいことや嬉しいことだけでなく、辛いことや悲しいことだってたくさんあると思う。」

 そう言うとレツは2人の方を向いて、笑顔で続けた。

「ても、そういうのもひっくるめて思う存分楽しんできな。」

「うん。」「はい。」

 2人は元気に返事をすると、ゲートに向かって歩き始める。

「いってきます、お兄ちゃん。」

「いってきます、師匠。」

「ああ、行ってこい。」

 スフレとイルはゲートに入って行った。

 

 

 

 

 レツは2人が見えなくなると真剣な顔になり、ポツリと呟いた。

「こんな時に旅をさせるなんて間違ってると思うか?」

『バク。』

レツの言葉に、いつのまにかモンスターボールから出てレツの隣に立っていたポケモン、バクフーンが首を横に振った。

レツはバクフーンの答えを聞き笑みを浮かべる。

「そうだな。何が起きても友達や仲間がいれば何とかなるか。」

レツがそう言うと、一陣の風が1番道路の方へと吹き抜けた。

「それに、面白そうな出会いもありそうだ。」

レツはそう言うと、1番道路に背を向けて歩き出した。

「よし!2人が少しでも楽しく旅ができるように頑張るとしますか。」

『バク!』

バクフーンは返事をすると、レツの後ろについて行くのだった。

 

 

 

 

フラウ地方で何かが起きようとしている事を、スフレとイルは知る由もないのだった。

 

 

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