〈??? 視点〉
森を抜けるといい匂いが漂ってきた。周囲を見渡すと一軒の建物を見つけた。
どうやら匂いはそこから漂ってきているらしい。
建物に近づくと、建物の横側がテラスになっており、机や椅子が置かれているのが見えた。
テラスには誰もいないが、とりあえずそちらに向かって歩いてみる。すると、建物の入り口の方から音が聞こえ、音のした方を向いていると3匹のポケモンがうれしそうに飛び出してきた。
1匹目のポケモンは黄色い身体にギザギザな尻尾が特徴的なポケモンで、2匹目のポケモンはオレンジ色の身体に黒い縞模様のポケモン、3匹目のポケモンは茶色の身体に白いフワフワな毛並みが特徴的なポケモンだ。
先頭を走る黄色いポケモンとオレンジ色のポケモンはこちらを見ずに走り去ったが、茶色のポケモンは一度足を止めるとこちらに視線を向けた。
こちらも見続けていると、茶色いポケモンは何事もなかったかのように2匹の後を追いかけて行った。
ちょうどその時、建物の入り口の方から声が聞こえてきた。
「ちょっと待って、みんな」
とっさに近くの茂みに隠れると、ポケモンたちを追いかけるように金色の髪の少女が現れた。
どうやら先程のポケモンたちのトレーナーのようだ。
トレーナーの少女はこちらに気づかずにポケモンたちの元に歩いていく。
3匹のポケモンは少女の足元で声を上げている。
「すぐに用意するから、待っててね」
少女はそう言いながら地面に皿を置くと、そこにポケモンフーズを入れていく。
「はい。準備できたよ」
少女がそう言うとポケモン達は一斉にポケモンフーズを食べ始める。
美味しそうに食べている様子を見ているとお腹が空いてきた。
そう思っていると、少女がこちらに視線を向けた。どうやら匂いにつられ、茂みから出てしまったことで気づかれたらしい。
少女はこちらを見ながら少し首を傾げたので、此方も同じように首を傾げてみた。
少女をジッと見つめていると、少女は少し周りを見渡すと微笑見ながら話しかけてきた。
「どうしたの? お腹すいてるのかな? よかったら君も一緒に食べる?」
少女にそう言われるのと同時にお腹の音が鳴った。
その音を聴いた少女は、満面の笑顔で言葉を続けた。
「やっぱり、お腹が空いてるんだね。ブイ、一緒に食べてもらってもいい?」
『ブイ! ブイブイ』
少女は茶色のポケモンに質問すると、茶色いポケモンは快く返事をする。
すると茶色いポケモンはこちらを向き、一緒に食べようと誘ってきた。
少女は茶色いポケモンの皿にポケモンフーズを追加する。
茶色いポケモンの皿の前に移動し、少女と茶色いポケモンを交互に見ると、どちらも笑顔でこちらを見ている。
黄色いポケモンとオレンジ色のポケモンの方にも目を向けると、ポケモンフーズを食べながらこちら見ている。しかし敵意がある訳ではなく、ただ様子が気になってるだけのようだ。
空腹が限界に近づいたので、もういちど少女の方に視線を向けてから、ポケモンフーズを食べ始めた。
──────────────────────────────
イルとスフレはデーツの森の入り口付近で一軒のパン屋に訪れていた。
その店では買ったパンをすぐに食べれるように、テラスに机と椅子が用意されていた。イルとスフレはデーツの森に入る前にこの店で昼食を食べる事にした。
イルはスフレが買っている間に、ポケモン達にポケモンフーズをあげる為に、先にテラスに来ていた。
イルがポケモン達にポケモンフーズを用意して食べさせていると、近くでピンク色の身体のポケモンがこちらの様子を見ていることに気がついた。
(見たことないポケモンだけど、野生のポケモンかな? ジッとこっちを見てどうしたんだろ?)
イルは周りを見渡すが、近くにトレーナーのような人が見当たらなかったので、ピンク色のポケモンに話しかけた。
「どうしたの? もしかして、お腹すいてるのかな? よかったら君も一緒に食べる?」
イルがそう言うと、ピンク色のポケモンのお腹の音が鳴るのが聞こえた。
イルは微笑むと、ポケモンフーズを食べているイーブイのブイに話しかける。
「ブイ、一緒に食べてもらってもいい?」
『ブイ!』
そう言われたブイは、イルの方を向いて首を縦にふり、ピンクのポケモンに向かって一声鳴いた。すると、ピンクのポケモンが近づいてきて、ポケモンフーズを一緒に食べ始めた。
(仲良く食べてくれて良かった。それにしても珍しいポケモンだな。何てポケモンだろ? ちょっとポケモン図鑑で調べてみようかな?)
イルがポケモン図鑑を取り出すと同時に、後ろから声をかけられる。
「イル! お待たせ! パン買ってきたよ」
イルが後ろを振り向くと、スフレが紙袋を持って向かってきていた。
イルはスフレが、おそらくパンの入っているであろう紙袋を持っている事に疑問を持ちながら返事をする。
「ありがとう、スフレちゃん。あれ? ここで食べるのに、袋に入れてもらったの?」
「それなんだけどね。デーツの森に綺麗なお花畑があって、そこで食べるのもオススメだって教えてくれたんだ。だから、ちょっとお昼ご飯が遅くなっちゃうけど、そこで食べようよ!」
どうやら店員さんの提案に乗って、テイクアウトに変えてもらったらしい。
「私は別に構わないけど、もうみんなにご飯あげちゃったよ」
「食べ終わるまで待ってから出発すればいいよ」
「そうだね」
「ところで、ポケモン図鑑なんか取り出してどうしたの?」
「ちょっと気になるポケモンがいたの」
「え? ピカ達しかいないけど」
スフレにそう言われてイルが振り向くと、そこにはブイ達は変わらずにポケモンフーズを食べているが、ピンクのポケモンがいなくなっていた。
周りを見回してみても、ピンクのポケモンを見つけることは出来なかった。
「本当だ。どこかに行っちゃったみたい」
「そうなんだ、あたしも見たかったな」
「ごめんね。いつの間にかいなくなっちゃって」
「野生のポケモンなら仕方ないよ」
そんな話をしていると、ポケモンフーズを食べ終わったポケモン達がイルとスフレのもとにやってきた。
「ピカ達も食べ終わったみたいだし、片付けて出発しようか」
「うん。そうだね」
2人はポケモン達の食器を片付けて、デーツの森へと歩き出した。
──────────────────────────────────ー
〔デーツの森〕
デーツの森はエフロ湖から流れる川の恵みを受けて大小様々な木々が生い茂る自然豊かな森である。
森には色んな種類のきのみや果物が自生しており、多くの種類のポケモンたちが生息している。
木々を飛び回ってきのみを集めているツツケラの群れ。そんなツツケラをエイパムが木の上で待ち伏せして驚かせて遊んでいたり、オタチが草むらから時折顔を出し周囲を見渡したりなど、ポケモンたちが思い思いに過ごしている。
そんな森の中をスフレとイルは野生のポケモンと戦いながらデーツの森を進んでいた。
「いっけぇ〜、ガーちゃん“ひのこ”!」
『ワン!』
野生のフシデにスフレのガーディ【ガーちゃん】が“ひのこ”をくりだす。
“ひのこ”が直撃したフシデは戦闘不能になると草むらに逃げていった。
「やったね、ガーちゃん!」
『ワン!』
スフレが褒めると、ガーちゃんはスフレに身体を擦り付けた。スフレがガーちゃんを撫でていると、イルがスフレに話しかけた。
「お疲れ様。スフレちゃん、ガーちゃん」
「えへへ、ガーちゃんのおかげでこの辺りに住んでる、くさタイプやむしタイプのポケモンと有利に戦えるから楽勝だよ!」
『ワン!』
スフレがそう答えると、ガーちゃんも元気に返事をする。
デーツの森には舗装こそされていないが、人の手で作られた道があり、苦もなく歩く事ができる為、2人は順調に森の中を進んでいる。
道は一本道の為迷わずにすみ、生い茂る木々の間から溢れる木漏れ日の中を2人は周りの景色やポケモンの様子を楽しみながらのんびりと進んで行た。
少し大きな川に架かる木橋を渡り、しばらく進みとひらけた場所に辿り着いた。
広場の中央には、周囲の木々に比べても大きく立派な木が一本だけ生えており、その周囲に色とりどりの花が咲き誇っている。
先ほどまで、木々に遮られていた太陽の光が降り注ぎ広場を照らしていた。
デーツの森の入り口から広場までの道のりでは、ポケモンたちが動き回っていて、いろんなポケモンの鳴き声が聞こえ、賑やかな雰囲気だったのだが、広場ではむしポケモンが花のミツを集めていたり、小さなポケモンが追いかけっこをして遊んでいたり、中央にある木の枝で寝ていたりとポケモンたちがのんびりと過ごしていた。
そんな様子を見て2人は目を輝かせていた。
「すごいね、イル! こんな一面の花畑見た事ないよ!」
「うん。来てみてよかったね」
「パン屋の店員さんに感謝しないとだね!」
「ところで、どこでお昼ご飯食べようかな?」
「う〜ん、そうだな〜。あの木の下でいいんじゃない? 座れそうな場所もありそうだし」
「うん、そうしようか」
スフレとイルは広場の中央にある木の根上がりした根に2人で並んで座り、パン屋で買っておいたサンドイッチを取り出し、遅めの昼食を取ることにした。
包装を開けると、きのみと野菜で作られたサラダサンド、ジューシーなチキンカツが挟んであるチキンサンド、さらに果物と生クリームがサンドされたフルーツサンドの3つが入っていた。
「美味しそうだねスフレちゃん」
「うん! 景色も綺麗だし、来て正解だったね」
「そうだね」
「それじゃあ、いただきま〜す」
「あ、そうだ」
スフレがサンドイッチを食べようとすると、イルは思い出したように声を上げた。
「どうしたの?」
「せっかくだから、ブイをボールから出してあげよう思って」
「そうだね。じゃあピカとガーちゃんも出しとこ」
そういうと2人はポケモンをボールから出した。
『ピカ!』『ワン!』『ブイ!』
「ピカ、ガーちゃん遊んできてもいいよ。ただし! 他のポケモンと喧嘩したりしちゃダメだからね!」
『ピカ!』『ワン!』
ピカとガーちゃんは仲良く花畑の方に駆け出して行った。
「ブイも一緒に遊んでおいで」
イルがブイにそう促してみるが、ブイはあくびをしてイルの足下で丸くなり眠ってしまった。
「ブイはマイペースだね」
「うん。何かをするより、お昼寝したり観察するのが好きみたい」
2人は笑い合い、昼食を食べ始めた。
サンドイッチに舌鼓を打ち、たわいもない話をしたり、ポケモンたちの様子を見て楽しんだりと、のんびりと昼食を楽しんでいた。
イルが3つ目のサンドイッチに手を伸ばそうとすると、ある事に気がついた。
「あれ?」
「どうしたの?」
「フルーツサンドがなくなってるの」
「え! どこにも無いの?」
「うん。落としちゃった訳でもないみたい」
「え〜、じゃあお店の人が入れ忘れちゃったとか? それなら開けた時に気づくはずだし」
「多分、野生のポケモンが持っていっちゃったりしたんじゃないかな。だから気にしないで」
「む〜う」
イルはそう答えるが、スフレはあまり納得してなさそうであった。
「じゃあ、あたしの半分あげるよ。はい」
スフレはそういうと自分のフルーツサンドを半分にちぎり、イルに差し出した。
「スフレちゃん、わたしのことは気にしなくて大丈夫だよ」
「あたしが気にするの! イルこそ遠慮しないでいいの!」
そういうとスフレはサンドイッチをイルに半ば押し付けるように渡した。
イルは戸惑いながらも受け取りお礼を言った。
「ありがとう。スフレちゃん」
「どういたしまして。美味しいものは一緒に食べないとね」
2人は笑い合い食事を再開した。
食事を終え、しばらく休憩した2人は、花畑を後にして再びデーツの森を進んでいた。
次の町へ進むルートは入り口から花畑の間にある為、2人は元来た道を戻っていた。
「花畑は綺麗だし、サンドイッチはすごく美味しかったしで行って良かったね」
「うん。そうだね」
「そういえば、花畑でポケモン図鑑で何かしてたみたいだけど何してたの?」
「ポケモン図鑑にカメラの機能がついてたから、写真をとってたの」
「へぇ〜! 後で見せてもらっていい?」
「うん。いいよ」
2人がそんな会話をしながら歩いていると、スフレが何かを思い出したように話しかけた。
「そういえばもう結構歩いたけど、分かれ道までまだつかないの?」
「図鑑で調べてみるね。あれ?」
「どうしたの?」
イルが図鑑を覗いてみると、地図では分かれ道を通り過ぎてしまっているのが分かった。
「スフレちゃんごめんね。通り過ぎちゃってたみたい」
「本当だ。話に夢中で過ぎたかもね。今度は見落とさないように気をつけなきゃね」
「うん。じゃあ戻ろうか」
2人は地図を見ながら来た道を再び戻るが、道を見つける事が出来なかった。
「ねえイル。この辺のはずだよね」
「うん。地図にはそう書いてあるけど」
「でも、他の道なんてないよ」
「そうだよね。ブイとピカはどう?」
スフレとイルの歩いている道の端は草木が生い茂っており、花畑に続く一本道になっている。
イルは一緒に探しているブイとピカに聞いてみるが、2匹は首を振って答えた。
イルは地図を見ながらスフレに話しかけた。
「どうしようか。一旦森の入り口に戻って、パン屋の店員さんに聞いてみるとか?」
「でも今から戻ると暗くなってきちゃうよ」
「うん。だから一旦ロッタシティに戻って、明日また探せばいいんじゃないかな」
「む〜、そうするしかないかな」
2人がそんな話をしていると、ピカの目の前に1つのりんごが落ちてきた。
『ピカ?』
ピカが落ちてきたりんごを見ていると、りんごがひとりでに転がりだして、道の端に転がっていった。
ピカとそれを見ていたブイはりんごに近づいてみると、りんごに青白い光の薄い膜に包まれ、空中に浮き始めた。
ピカとブイがりんごを追って顔を上に向けると、木の上の方に3つの顔の付いた実がなっていた。
『ピカ!?』『ブイ!?』
ピカとブイが驚いた声を出すと、木だと思われていたポケモンがサイコパワーで持ち上げたりんごを落として立ち上がった。
スフレとイルも木が動いたことに気づいて、木のポケモンの方を向くと、やしのみポケモンのナッシーが立っていた。
「あれってナッシー!? ピカ! こっちにきて!」
「スフレちゃん待って。刺激しない方がいいよ」
ナッシーを見たスフレは、ピカを呼び戻し戦闘体制を取ろうとするが、ナッシーの実力を感じたイルが慌てて止めた。
「でも!」
「あのナッシーかなり強そうだから、様子を見た方がいいよ」
スフレとイルがそんなやりとりをしていると、ナッシーが2人の方に体を向けようとする。しかしナッシーの足元に落ちていたりんごが勝手に動き出して、転がっていく。するとナッシーは慌ててりんごを追いかけて、森の奥に走っていった。
その様子を見た2人は呆然と立ち尽くしていた。
「なんだったんだろアレ」
「なんだったんだろうね。そんな事よりスフレちゃん、道があるよ。きっとさっきのナッシーがいたから分からなかったんだよ」
「本当だ! よし、これで先に進めるね。暗くなる前に森を抜けちゃおう」
「うん」
そう言って2人はデーツの森を進んで行った。
─────────────────────────────
スフレとイルはデーツの森を抜けようと進んでいると、空が茜色に染まってきた。
「夕方になっちゃったね」
「そうだね。森を抜けるにはまだ結構距離があるみたい」
スフレが空を見上げて言うと、イルは地図を見ながら答えた。
「じゃあ今日は野宿か。早く準備しないと、暗くて作業できなくなっちゃうよ。もう遅い気もするけど」
スフレは茜色から暗くなり始めた周囲を見渡しながら、ため息を吐いた。
スフレが野宿できる場所を探そうと辺りを見渡すと、いつの間にかイルがブイをつれて少し離れた大きな木の近くに立っていた。
「どうしたのイル? 立派な木だけど、そんなことより早く野宿する場所見つけないと」
「それなら大丈夫だよ。私とブイにまかせて」
「?」
スフレにそう言うと、イルはブイにあるワザを指示した。
「ブイ、“ひみつのちから”」
『ブイ!』
イルがブイにわざを指示すると、ブイの身体を淡い光が纏い、その光がイルたちが見ていた木に移動していく。光が木の樹冠を纏うと蔦が降りてきて、木に登れるようになった。
スフレは呆然とその様子を見ていたが、ハッと我に返りイルに話しかける。
「イル、これなにが起きたの!?」
「う〜ん。とりあえず見てもらった方が早いから登ろうか」
イルはそう言うとブイをボールに戻し、蔦を登り始めた。
スフレは仕方なく、イルの後に続いて木に登った。
スフレが木を登り終えると驚きの光景がは広がっていた。
木の枝や葉で埋め尽くされているはずの空間に、板が貼られて床ができており、大人が立ち上がっても平気そうな広い空間があり、先程の光が壁や天井の役割を果たしている。
スフレが光に触れてみると、ある程度の強度があるようで、押してもビクともしなかった。
スフレが周りを見渡して唖然としていると、イルが部屋の真ん中でリュックを下ろし、何かを取り出そうとしていた。
「ねえイル。これどうなってるの?」
「“ひみつのちから”は木や洞窟に秘密基地を作ることができるワザなんだって。お兄ちゃんが旅で役にたつって教えてくれてたの」
「そんなワザがあるんだ。でも、この床とかって本当にどうなってるの?」
「ごめんね、私も詳しくは知らないんだ。ただそういうワザとしか」
「ポケモンって不思議だね」
「そうだね」
イルはスフレと話しながら、リュックから一つのケースを取り出した。
そのケースの中には、ボタンのついた楕円形のカプセルがいくつも整理されて入っていた。その内の1つを取り出してボタンを押すと、カプセルの中から寝袋が出てきた。
「え〜と、必要なのはこれとこれと」
イルはそう呟きながら、先程と同じようにカプセルから色々と道具を取り出していく。
イルの様子を見ていたスフレも、イルと同じようにリュックからカプセルの入ったケースを取り出し、野宿の準備を始めるのだった。
─────────────────────────────
スフレとイルは食事を終え、眠る準備をして寝袋に入っていた。
ピカとブイ、そしてガーちゃんは2人の寝袋の近くに置かれたクッションの上ですでに眠っていた。
「ん〜! イルの作ってくれた、木の実のパスタ美味しかった〜。イルって料理上手なんだね」
「お母さんが教えてもらっていたんだ。お店の常連さんたちも食べてくれたり、アドバイスしてくれたりしてくれたの」
「イルのお母さんの料理も美味しかったもんね。イルはちゃんと旅の準備してたんだね。あたしなんてほとんど何もしなかったな」
「お兄ちゃんが先に旅に出ていたから、いろんな事教えてもらっていただけだよ」
「でも、イルが努力した事には変わらないじゃん。よし! あたしも負けないように明日からも頑張るぞ!」
「そうだね。明日の為にも早く寝なきゃね」
「うん。じゃ、おやすみイル」
「うん。おやすみなさい」
そうして2人は眠りについた。
────────────────────────────
朝になりスフレは目を覚まし、まだほんやりとした状態で体を起こした。
(ふわぁ〜、今何時だろ? イルはまだ寝てる?)
スフレは大きな欠伸をしながらイルが寝ている方を見てみると、予想通りイルはまだ寝ているようだ。
(もうちょっと寝てても大丈夫たよね)
(ん? なんか変だったような)
スフレは二度寝しようと、再び寝袋に潜ろうとした時に違和感を覚え、もう一度イルの方を向いた。
すると寝ているイルの横に、ピンクと黒色のポケモンが丸くなって寝ていた。
「うええぇ〜!?」
スフレは驚いて大声を出してしまった。
すると、近くで寝ていたポケモンたちとイルが目を覚まして起き上がった。
「スフレちゃん、どうしたの?」
イルが目を擦りながら体を起こして、スフレを見る。
スフレはピンクのポケモンを指差して、イルに話しかけた。
「イルの横に知らないポケモンがいる!」
「え?」
イルはスフレの指差す方、スフレがいる方向と逆の方向に顔を向けると、すぐ近くでピンクのポケモンが寝ていた。
「あれ? この子って」
「イルの知ってるポケモン」
イルが寝ているポケモンを見ていると、スフレと手持ちのポケモンたちが近くに集まってきた。
「昨日のパン屋さんで出会ったポケモンなの」
「あぁ、あたしが合流前に一緒にいたってポケモンだね」
「うん。でも何でここにいるんだろ?」
「イルを追いかけてきたのかもね」
「そうなのかな?」
イルがそう言って、ピンク色のポケモンを見つめていると、スフレはイルの近くに置いてあったポケモン図鑑を使い、ピンク色のポケモンについて調べた。
「この子はヌイコグマってポケモンみたいだよ」
「ヌイコグマっていうんだ。初めて聞くポケモンだなぁ」
「図鑑によると、この地方には生息してないみたいだよ」
「そうなんだ。じゃあなんでここにいるのかな?」
「う〜ん、それはわかんないけど」
2人がポケモン図鑑を見ながら話していると、ヌイコグマが起きる。
『ぐ〜』
起きたヌイコグマは嬉しそうな声を出しながら、頭をイルに擦り付ける。
「イルにすごい懐いてるみたいだね」
「そうみたい。ねえ、もし良かったら一緒に行く?」
『ぐ〜!』
ヌイコグマは喜び、イルの体に抱きつくようにのしかかる。
イルはヌイコグマを受け止め、身体を撫でる。
「よろしくねヌイコグマ」
『ぐ〜』
「良かったね。新しい仲間ができたね」
「うん」
『ブイ!』『ピカ!』『ワフ!』
新しい仲間を歓迎するように、ブイたちがイルの近くに集まってきた。
「よろしくね! ヌイコグマ!」
スフレがそう言ってヌイコグマに抱きつこうとすると、ヌイコグマは前脚を伸ばして、スフレの顔に当て、抱きつくのを阻止した。
「何で!? あたしにも触らしてよ」
『ぐ〜』
スフレが懇願しても、ヌイコグマは首を振って拒否する。
そんな2人の様子を見て、ポケモンたちは笑っていた。
(でも、どうやってひみつきちの中に入ったんだろ? 飛ぶことの出来るポケモンじゃないと入れないと思うんだけどな)
イルはスフレとヌイコグマの様子を見ながら、そんな疑問を浮かべるのだった。