ポケットモンスターレガーメ   作:とんま

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第8話 湿地帯とポケモン博士

 〔2番道路〕

 

 スフレとイルが森を抜けると目の前に橋がかかっており、その下には川幅20Mほどの川が流れている。橋の先のデーツの森の中とは違い、しっかりと整備された街道が続いているのを見て、2人は森を抜けたことを実感した。

 

「う〜ん! やっと森を抜かれた!」

『ピカ〜。』

「うん。思ったより時間がかかっちゃったね」

『ブイ。』

 

 森から出たことで木々に遮られる事なく降り注ぐ日の光を浴びながら、スフレとピカは大きく伸びをする。するとスフレとピカのお腹から同時に‘ぐぅ〜’と音が鳴る

 慌ててお腹を押さえるふたりの様子を見てイルとブイは小さく笑い、イルは橋を渡った先にあるポケモンセンターを指差す。

 

「ちょうどポケモンセンターに着いたし、お昼ごはんにしようか」

「えへへ、そうだね。もうお腹ペコペコだよ」

『ピカ!』『ブイ!』

 2人と2匹は笑い合いながら、ポケモンセンターに入っていった。

 

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 ポケモンセンターのレストランで昼食を終えた2人は、そのままレストランでテーブルを挟んで座り、ゆっくりと休憩しながら次の目的地について話し合い、2人のポケモンたちはお腹がいっぱいになったからかお昼寝を始めていた。

 

「美味しかった〜。こんなに美味しいご飯がタダで食べれるなんてポケモンセンターってすごいよね」

「うん。宿泊施設とかもあるし、ポケモンの回復以外にもポケモントレーナーにとっては大事な施設だよね」

「ほんとにそうだよね。ところで次の町にはどれくらいかかりそうなの?」

「今からなら夕方くらいには着くと思うよ」

「じゃあそろそろ出発しようか。食器返してくるね」

 

 スフレが食器を持ってカウンターに向かうとレストランの職員のおばちゃんとジョーイさんが話をしていた。

 

「そういえば、あのお客さん戻ってきたかい」

「いいえ、朝早くに湿原に向かってから戻ってきて無いと思います。おそらく前と同じだとは思うんですけど」

「たく、困ったお客さんだね」

「では、私は仕事に戻りますね」

「ああ、頑張ってね」

 

 2人の話を聞いていたスフレはカウンターに食器を置き、おばちゃんに話しかけた。

 

「ごちそうさまでした」

「おそまつさま。料理どうだったかい」

「とても美味しかったです! ところで何かあったんですか?」

「ああ、さっきの話が聞こえちまってたかい。ただ最近泊まり込んでるお客さんが1人、朝出ていってから戻ってきてないだけさ」

「それって大丈夫なんですか」

「まあ仕事に夢中になって時間を忘れちまうことがよくある人だからね。今回も多分そうだから気にしなくても大丈夫さ。後で弁当でも持って行けば……」

 

 そこで言葉を切ると、おばちゃんが何かを思いついたようにスフレを見た。

 

「そうだ! お嬢ちゃん、この近くに湿原があるんだけど興味ないかい?」

「あります!」

 

 おばちゃんの言葉にスフレは目を輝かせる。

 

「森の出口に川があっただろ? その川に沿って下流に行くと、フロル湿原って湿地帯に着くのさ。そこにいる白衣を着て、眼鏡を掛けた男性に弁当を届けてくれないかい? もちろんお礼はするからね」

「あたしはいいけど、イルにも聞いてみないと」

「わたしは大丈夫だよ」

 

 いつの間にか近くに来ていたイルが答える。

 

「わたしもフロル湿原がどんな場所か気になるしね」

「そうだよね。湿原にどんなポケモンが住んでいるかも気になるし、ワクワクするね」

「決まったようだね。すぐに弁当をこさえるから待ってておくれ」

 

 そう言うとおばちゃんはキッチンに戻り、調理を始めるのだった。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 食堂のおばちゃんから弁当を受け取った2人は川沿いの道を歩いている。

 スフレは風呂敷に包んだ弁当箱を持っており、イルの方は何が入った大きめの紙袋を持っている。

 ちなみにポケモン達は昼寝をしていた為、モンスターボールに戻している。

 2人の歩く道は土手になっており、左側には川が流れ、右側は木々が生い茂っている。

 

「フロル湿原か、どんなポケモンがいるんだろうね」

「スフレちゃん、目的を忘れちゃダメだよ」

「わかってるって、白衣の男の人にこのお弁当渡すんでしょ。ささっと終わらせて、湿原を冒険しようね」

「そうだね。すぐに見つかるといいね」

「よ〜し。張り切って探すぞ〜」

 

 2人がそんな会話をしながら歩いていると、川が左に曲がり、川に沿って道も同じようにカーブを描いている。

 2人が曲がり道に着くと、目の前には広大な湿原が広がっていた。

 大小様々な池や沼が点在しており、池の上を水面を滑るように移動しているアメタマや、その上を飛ぶヤンヤンマや、沼の中から顔を出す、ウパーやヌオー等多くのポケモンたちが生息しているのが見えた。

 

「いろんなポケモンがいるよ! イル、早く行こ!」

「スフレちゃん。ちょっと待って! 靴を履き替えないと」

 

 イルはスフレを制止させると、紙袋の中から2人分の長靴を取り出し、1組をスフレに差し出した。

 

「ありがとう。せっかくおばちゃんが教えてくれたのに忘れるところだった。それにしても、湿原に行く人用にポケモンセンターで長靴を貸し出ししてるとは思わなかったね」

「うん、そうだね。でも、長靴でも泥に足を取られると危ないから注意しないとね」

「よし! 準備完了! 今度こそ行こう!」

「うん」

 

 

 

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「うわわ! こっちの泥は深いや」

 

 スフレは深く沈みかけた足を慌てて戻し、ため息をつき、あたりを見渡す。

 

「はぁ、湿原を歩くのって大変なんだね。どこ歩けばいいのかいまいち分からないや」

「うん。道になってる所とぬかるんでる所の違いがよく分からないね。ゆっくり進めば大丈夫だと思うけど」

「背の高い草も多くて視界も悪いから、思ってたより時間がかかりそうだね。

 

 2人が悩んでいると、2人の近くをグレッグルが通り過ぎて行った。

 

「ポケモンたちは特に困ってなさそうで羨ましいや」

「そうだね」

 

 スフレが羨ましそうにグレッグルを目で追っていると、イルが何か思いついたように声を上げた。

 

「ねえ、スフレちゃん。ポケモンの通った道なら安全じゃないかな?」

「え? そっか、ここに住んでるポケモンならどこの道が安全かわかるもんね。早速あのグレッグルを追いかける?」

「そんな事しなくても、ポケモンの足跡を探せば大丈夫じゃないかな」

「じゃあ、ポケモンの足跡を辿って進もう」

「うん。気を付けて進もうね」

 

 2人がポケモンの足跡を辿りながら進むと、背の高い草に囲われた、広場のような場所にたどり着いた。

 ナゾノクサやヒポポタスなどのポケモンが歩き回っている。ポケモンたちが踏み固めたのか、地面が乾いているのか分からないが、地面が固く所々雑草が生えている。

 スフレとイルが周囲を見渡すと、スフレが何かを見つけたように声をあげた。

 

「イル! あれ! あの人じゃない?」

 

 イルがスフレの指を指した方を見ると、広場に背を向け、背の高い草に体を隠している人物を見つけた。その人物は裾が泥で汚れた白衣を着ており、カメラで何かを撮っているのかカシャッカシャッとカメラで何かを撮っている音が聞こえてきた。

 

「何かしてるみたいだね。スフレちゃんどうしようか?」

「とりあえず、話しかけてみようか」

「でも、邪魔しちゃわないかな?」

「その時は謝れば大丈夫だよ。もしかしたら珍しいものが見れるかもしれないしね」

 

 2人の話し声が聞こえたのか、白衣の男が振り向いた。

 白衣を着た男は一瞬驚いた表情をした後、人の良い笑顔で2人に尋ねた。

 

「おや? 君たちは……、私に何か用ですか?」

「あ、あの、えっと」

「ここでなにをしているんですか!」

 

 白衣の男に話しかけられ、イルが緊張してどもっていると、スフレは気になっていることを質問していた。

 

「スフレちゃん、自己紹介を先にしないと」

「あっ、そうだった。つい気になっちゃって。あたしはスフレっていいます。この子は一緒に旅をしているイル」

「イルです」

「ポケモンセンターの食堂のおばちゃんからこのお弁当を届けるよう頼まれました」

 

 スフレは用件を話して、お弁当を差し出しすと、白衣の男性はお弁当を受け取りながら返事をする。

 

「そうだったのですか。わざわざありがとうごさいます。どうも研究に夢中になると時間を忘れてしまいまして」

 

 白衣の男性はそう言うと、申し訳なさそうに笑った。

 

「そういえば私の自己紹介がまだでしたね。私の名前はスターリーと言います」

「よろしくお願いします! で、話を戻しますけど何をしてたんですか?」

「スフレちゃん、ちょっと待ってもらっていい? もしかしてスターリーさんって」

 

 スターリーが何をしていたか気になってしょうがないスフレを止めて、イルが何かに気づく。

 そんなイルの様子に気付いたのか、スターリーが代わりに答える。

 

「どうやらイルさんは知っているみたいですね。私はフラウ地方でポケモン博士をやらせてもらっています」

「やっぱりそうだったんですね」

「スターリーさんって、ポケモン博士だったんだ。イル知ってたの?」

「会うのは初めてだけど、名前は聞いたことはあったんだ」

「そうなんだ。じゃあ、ここにはもしかして」

「ええ、ここでポケモンの生態調査をしていました。何を調査していたかは、直接ここから見た方が早いですよ」

 

 スターリー博士はそう言うと、2人に場所を譲る。

 スフレが草をどかすと、2人の目の前には大きな沼が広がっていた。

 池にはドジョッチが泳いでいたり、アメタマが水面を滑っていたり、多くのポケモンが生息していたが、特に2人の目を引いたのは、大きな茶色のポケモンの背中に乗っているウパーだった。

 大きなポケモンには、水色と茶色の2種類のウパーが3匹ずつ仲良く乗っていた。

 

「ねえイル、あの茶色のウパーって色違いかな? でもなんか違うような」

「うん。エラの形も違うみたいだし色違いとは違うと思うけど、でも違うポケモンっていうには似過ぎてるよね」

「スターリー博士。あのウパーって、あれ?」

「どうしたの?」

「博士が居ないんだけど?」

「え? どこに行ったんだろう?」

 

 2人が周りを周りを見渡すと、広場の一角に机と椅子が置かれており、そこでお弁当のサンドイッチを食べているスターリー博士がいた。

 2人はスターリー博士の元へ移動すると、スターリー博士が2人に話しかけた。

 

「どうでした? 何か興味深いものが見れましたか?」

「はい。色んなポケモンたちが楽しそうに暮らしていました」

「でも、なんか普通のウパーとは違う見た目のウパーたちがいたんだけど、博士が調査していたのってあのウパーたちですか?」

「ええ正解です。お2人はリージョンフォームという言葉を知っていますか?」

 

 スターリー博士の言葉にスフレは首を横に振り、イルは何かを思い出したように呟いた。

 

「そういえば、お兄ちゃんに聞いたことがあるかも」

「そうなの、イル?」

「うん。その土地の環境に合わせて、本来とは違う姿やタイプになったポケモンだって言ってた」

「じゃあ、あの茶色のウパーはリージョンフォームしたウパーって事だね」

「あれ? でもそれだと水色のウパーと一緒に暮らしているのはおかしいんじゃ?」

 

 2人のやりとりを静かに聞いていたスターリー博士はパチパチと拍手をして2人に話しかけた。

 

「そのとおりです。本来は別の場所で暮らす為にリージョンフォームになったのに、同じ場所で暮らしているは矛盾しているといえます。では何故同じ場所に生息しているか、その答えは実はとても簡単です」

「なんでですか?」

「それは、あの茶色のウパー、パルデアのすがたと呼ばれるウパーたちは別の地方からやってきたポケモンなのです」

「「別の地方から?」」

「ええ、あなたたちが来たポケモンセンターから東の方は進むと、フリュウシティという港町があるのは知っていますか?」

「ううん。アルヒタウン以外にも港があるの?」

 

 スフレは首を横に降るとイルの方を見る。

 

「うん。アルヒタウンは人が行き来する港で、フリュウシティはそれ以外の物だったり、食べ物とかが運ばれて来る港なんだ」

「つまり、貿易港というものですね」

「へぇ〜、そうなんだ」

「そして、その貿易で持ってきた物資にポケモンが紛れてやってくる事があるのです」

「ポケモンが?」

「そういえば、たまにお店のお客さんが話して事があったかも」

「ええ、そういったポケモンたちはできる限り元の地方に返すようにしているのですが、人間に見つかったとたんに逃げてしまって、フラウ地方に住み着く場合があるのです」

「じゃあ、あのウパーたちはそうやって棲みついちゃったってわけだね」

「姿が違っていても、ウパー同志だから仲良くなれたのかもね」

「実は私が研究しているのは、そこの部分なのです」

「そこの部分?」

「ええ、元々同じ種族であっても、違う場所からやって来たポケモンはその土地で暮らしているポケモンたちにとっては余所者です。本来ならば縄張り争いになったり、追い出されてもおかしくありません。現に他の地方ではそのような報告もあるようです。ですが、ポケモンセンターのジョーイさんたちに聞いても、この湿地帯のポケモンたちはあっさりと受け入れていたそうなんです」

「ケンカにならなくて仲良くしているなら問題ないと思うけど、何を研究しているの?」

 

 だんだんと話し方に熱が入ってきたスターリー博士の話に、スフレが首を傾げて質問する。

 

「先程も言いましたが、他の地方からポケモンがやってくるのはよくあるとまでは言いませんが何度もある事なのです。そしてここと同じように棲みついた例もあります。しかしどの場所でもポケモンたちは争ったりせず受け入れているのです」

「でもそれっていいことですよね?」

「ええ、もちろんそうです」

 

 イルの言葉にスターリー博士が微笑んで答えた。

 

「ですがなぜフラウ地方のポケモンたちがすんなりと他の地方のポケモンを受け入れるのか、他の地方のポケモンとの違いは何なのか、などを調べる事によって新しい何かを発見できると思い研究しているのです」

「ちなみに何か分かった事はあるんですか?」

「ええ、ありますよ。フラウ地方に棲むポケモンたちは他の地方のポケモンたちに比べると闘争本能があまり強くないようですね」

「へぇ、そうなんだ」

「まあ、他の地方に比べるとポケモンによる被害報告が少ないというだけですがね」

 

 3人は話しながら、先程まで沼を見ていた場所に移動する。

 沼には先程と変わらず茶色い大きなポケモン、ドオーに乗ってのんびりと移動しているウパーたちがいる。

 

「私はポケモンたちが穏やかなのは、フラウ地方の土地が持つ力なのではないかと考えています」

「フラウ地方の?」

「土地の力?」

「ええ、そう思える根拠もありますのですが、詳しく話す事は出来ないんですがね」

「ええ! ここまで話しといて、それはあんまりだよ!」

「すみません。ですが、旅をしていれば私が言っていた根拠がなんなのかわかる時が来ると思います。だから2人も旅をしながら探してみてください。もし見つけたら私にも教えてくださいね」

「え〜、博士は教えてくれないのにこっちだけ教えるはズルくないですか?」

「もうスフレちゃん、スターリー博士にも事情があるんだから、そんな事言っちゃダメだよ」

「は〜い。とびっきりのを見つけてみせるからね」

「ええ、楽しみにしていますよ。ではそろそろいい時間なので、ポケモンセンターに戻りましょうか」

 

 博士がそう言って時計を見せると、そろそろ戻らないと帰る途中で暗くなってしまいそうな時間だった。

 

「結構話し込んじゃってたんだね」

「そうだね。スターリー博士貴重なお話ありがとうございました」

「いえいえ、お二人もお弁当持ってきてくれて助かりました」

「そうだ! 食堂のおばちゃんがごちそうを用意してくれるんだった。早く戻ろう!」

「うん。ごちそう楽しみだね」

 

 そうして3人は帰り支度を整え、ポケモンセンターへと戻るのであった。

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