魔法少女リリカルなのは~竜の国の社会勉強録~   作:ショウマ

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その16 「わたしはもう逃げない」

 

 

 店内と外の席に分かれての、サッカーチームの祝勝会。

 

 といっても、外にいるのは四人の少女達だけであったが。

 

「それにしても、改めて見るとこのフェレット、変わってるわね」

 

「そうだね。動物病院の先生も、変わっているかもって言ってたよね」

 

 ジュースを飲みながら言うアリサに、すずかが相槌を打つ。

 

 少女達の話題はユーノのこと。なのはが引き取った後、ユーノを見る機会がなかなか無かった二人。今日はなのはと一緒にユーノも来ているために、彼と会うのはあの日以来となる。

 

 試合の間はじっくり見れなかったが、今のユーノはテーブルの上で視線を集めていた。

 

 そのユーノは怪しまれまいとしているが、変に意識をしているせいか、脂汗を流しながら微妙な表情を浮かべているが。

 

 そんなユーノを助けようとして、なのはは助け船を出す。

 

「ま、まぁ、変わったフェレットってことで! ユーノ君、お手!」

 

「キュ!」

 

 自分を助けようとしてくれているなのはに応えようと、ユーノは差し出されたなのはの手の上に前足を乗せる。

 

「「可愛い~!!」」

 

 目を輝かせた二人が、凄い勢いで撫で始めた。

 

「『ごめん、ユーノ君。間違えたかも……』」

 

「『だ、大丈夫だよ……大丈夫……』」

 

 ユーノをどう助けたら良いか、なのははこの会話に加わっていない、隣の席の人物を見る。

 

 そして、その様子を一目見て諦めた。

 

 頼りの妹はチョコドリンクの入ったコップを両手に持ち、いつもは無表情のその顔には見るからに幸せといった表情を浮かべている。

 

 竜ということもあり、本来ならかなり年上なのかもしれないが、今のその表情は現在の姿にとても似合っていた。

 

 その幸せそうな表情を見ていたなのはの前に、茶色いものが突き出される。

 

「あー、面白かった! はい、なのは」

 

「きゅ……キュ~~」

 

「ああ!? ユーノ君!?」

 

 何をされたのか、完全に目を回しているユーノが差し出されていた。

 

 ユーノを介抱しながらの三人と、途中で現実に戻ってきたルティシアも交えて談笑していると、店内から士郎と選手達が出てくる。

 

 気が付いたら結構な時間が経過しており、解散の時間となっていたようだ。

 

「それじゃ、こっちも解散かな」

 

「そうだね」

 

 アリサとすずかも、持ってきていた荷物を手に立ち上がる。

 

「二人はこの後用事があるんだったっけ?」

 

「うん! パパ達とお買い物!」

 

「私も、お姉ちゃんと約束があるから」

 

 聞いたなのはにアリサは笑顔で、すずかはすまなそうに言った。

 

「そっかー。じゃあ、月曜日に話を聞かせてね」

 

 なのはもそう言ってユーノを肩に立ち上がり、ルティシアもコップを片手に立ち上がる。

 

「お、皆も解散かな?」

「あ、お父さん」

 

 選手との挨拶を終えた士郎が、そのまま四人の所にやって来る。

 

 どうやら胃痛は落ち着いたようだ。

 

「今日はお誘いいただきまして、ありがとうございます!」

 

 

「試合も、とても良かったです!」

 

「ありがとう」

 

 二人の言葉に、士郎も笑顔を浮かべた。

 

「帰るんだったら送っていこうか?」

 

「あ、大丈夫です! お迎えが来ますから」

 

「同じくです~」

 

「そうか。なのはとルティシアはどうする?」

 

 二人に頷いてから、今度は娘達に。それと同時に、ルティシアが集めた四人分のコップを受け取る。

 

「う~ん、わたしは家でのんびりしようかな?」

 

「では、私も帰ります」

 

「じゃ、みんなで一緒に帰ろうか。お店の時間までに、風呂に入りたいしな」

 

「うん!」

 

 店の戸締まりを終えた士郎と共に、二人の迎えが来るまでは一緒に過ごし、その場を後にする。

 

 帰り道は、士郎がサッカーの試合中にあった面白い出来事や、道端にいたカラスの冴えた動きや鳴き方の違いなどを、二人に話して聞かせた。

 

 それらの話を、姉妹もそれぞれに楽しみながら家路を歩いていたが、いつもと同じ距離だというのに何故だか短く感じてしまう。

 

 帰宅した姉妹は真っ直ぐに二階の自室へと上がり、なのははそのままベッドへと身を投げた。

 

「なのは~、寝るんならきちんと服を着替えないと」

 

「ぅ~……」

 

 眠そうなその様子に、ルティシアも手伝って着替えさせる。

 

 そして、そのまますぐに夢の国へと旅立っていた。

 

「普段は早起きをしないのに、早朝練習も含めて頑張っていましたしね。疲れも溜まっていたでしょう」

 

「そうだね。今日は、このまま休んでもらおう」

 

 熟睡しているなのはを起こさないように、小声で話す二人。

 

 なのはにそっと布団をかけると、ルティシアは部屋の入口に向かう。

 

「ルティシア? どこか行くの?」

 

「はい。元々、眠たそうな姉さんを寝かせるために帰ってきただけですから。ちょっと出かけてきます」

 

「もしかして、なのはの代わりにジュエルシードを探しに? それならボクも一緒に……」

 

「いえ、期待させたのなら申し訳ありませんが違います。それに、そちらは一応ガンビットでも探していますので。プログラムはまだ不完全ですが……それではなく、個人的な用事なのです」

 

「あ、ううん、それなら良いんだ。でもルティシア。キミも余り無茶はしないでね」

 

 出会ってからまだ一週間程度。自分からは余り喋らないこの少女は、ユーノから見ると余り掴み所が無い印象だった。

 

 どこまで出来て、なにが出来ないといったことも、口頭で簡単にしか説明しない。

 

 なのはとは逆に、無表情に加えてそっけない態度のため最初は嫌われているのかとも思ったが、ほとんどの相手に対してもそういう感じであり、それが少女の“素”らしかった。

 

 それが理解出来た時、ユーノにもルティシアという少女像が見えてくる。

 

 物事には余り頓着しないようだが、家族や友人については――口には出さないが――とても大事にしている。根は生真面目なようだが、その分他の何かからの影響を受けやすく、身内からの押しにも極端に弱い。

 

 負けず嫌いといった部分もあるが、見えないところで無理や無茶をすることをいとわない。

 

 これはなのはも同じようだが……。

 

 そして。

 

「はい、ありがとうございます。姉さんをお願いしますね。ユーノも、ゆっくり休んで下さい」

 

 無表情だが、決して無感情ではない。心配はきちんと受け取り、相手を気遣うことも出来る。

 

「うん」

 

 ユーノの返事を聞いたルティシアは、静かに扉を開閉し階下へと降りていった。

 

 そして、風呂の準備をしている士郎に声をかける。

 

「父様、少し出かけてきます」

 

「ん? さっき帰ってきたばかりなのに?」

 

「姉さんが眠たそうでしたから。友達が来ているかもしれないので、ちょっと公園まで行ってきます」

 

「ルティシア……」

 

 途端、士郎が真面目な顔になり……口を開いた。

 

「あの二人以外にも、友達が居たんだな……」

 

「それはどういう意味でしょうか、父様?」

 

 何やら、良かった……などと言っている士郎を残して、外へ。

 

「兄様とみゅー姉さんはまた修行でしょうか? なの姉さんも休んでいますし、私も後で鍛練するとしましょう」

 

 真っ直ぐに公園……ではなく、スーパーへ。

 

 ややあって、中から出てきたルティシアの手にはビニール袋。

 

 中身はドッグフードとチョコチップクッキー。

 

 それを持って公園へ向かおうとした――その時。

 

 軋むような音と共に空間が歪み、建物はそのままに周りの色が変わっていったのは。

 

 ハッと見上げた空に浮かぶ、赤い月。

 

「月匣……!? それも、結構強力ですね。弱化系のルールは無いようですが、補助がなければ私では上書き出来ない程の」

 

 その時、近くの雑居ビルの一角が輝いた。

 

 そこから、五つの青い光が溢れ出る。

 

――そこにあるのは、四つの青い瞳状の宝石と、一つの青い9の字の宝石。

 

 やがて青い光は、新たに吹き出した黒と緑の光と共に混ざりあい、激しく瞬きながら輝く。

 

 その激しい瞬きは、離れているルティシアからも見えた。

 

 そこに向かおうとした少女の前で、ヒビ割れたビルが崩壊していく。

 

 そこから大地を割りながら、雄叫びを上げて緑色の頭……竜に酷似したそれが姿を現した。

 

 真っ赤な目に、友好的には見えない面構え。

 

「あれは……」

 

 やがて、同じものが三つ地中から現れる。

 

 最後にちょっとした山並の胴体に、辺りの低い建物を軽く薙ぎ払う長い尾。

 

 その胴体の左右から、先程の頭が二本ずつ生えている。

 

 さらに、胴体の正面からもう一つの頭が鎌首を持ち上げた。

 

 五つの頭を持つ、巨獣。

 

『ゴアァァーー……!!』

 

 五つの頭が、一斉に雄叫びをあげた。

 

「あれも……竜……? しかし、波動が少しちが……ッ!?」

 

 ルティシアが、後方へと大きく跳ぶ。

 

 路上に停まっている車のボンネットも足場に使って。

 

 刹那……スーパーを突き破って現れた緑色の何か。それが、たった今までルティシアが立っていた場所を、通った後を薙ぎ払う。

 

 轟音と共に建物や道路の瓦礫や、破壊された車が宙に舞い上がる。

 

 そして、竜の周りにもいくつもの緑色のそれが生えてくる。それは――。

 

「植物の……蔓?」

 

 次々に襲いかかってくる緑色のそれ――蔓を避けながら、少女は冷静に分析する。

 

 一点に留まらず避け続ける少女の後を追って、次々に瓦礫と化していく。

 

 新たに近くの地面を割って表れ、叩き付ける様に振り下ろされた蔓を横に跳んでかわすと、持っていた袋を亜空庫に入れる。

 

 さらに地面を突き破って現れた数本の蔓が、僅かに足を止めたそこに一斉に振り下ろされた。

 

 粉塵が上がり、土煙が巻き上がる中……幾筋もの黄金の閃光が、縦横無尽に走る。

 

「ライトニングプラズマ」

 

 閃光は、襲いかかってくる蔓をまとめて切り刻んでいく。

 

 服ごと覆った黒いアンダーウェア、その上から纏った獅子座の黄金聖衣。

 

「このまま一気に……ッ」

 

 小刻みに跳びながら、避ける。

 

 今いた場所を、再生した蔓と、さらに途中から枝分かれして生えた無数の細い蔓が襲いかかった。

 

「強力な再生能力……となると、本体と思われる竜そのものを倒すしかありませんか」

 

 それを塞ぐように飛び出した無数の太い蔓と、そこから生えた、数え切れない程に多くの細い蔓が邪魔をする。

 

 叩き付けられ、薙ぎ払われ、貫く様に襲いかかってくるそれらの蔓。

 

 避け、あるいは蔓の上を走り、もしくはライトニングプラズマで切り払いながら、少女は本体を目指して進む。

 

 だが。

 

「数が多すぎます……」

 

 避け続けるのにも限界はあり、切り払う端から再生されていてはキリがない。

 

「それなら……ファイアーバード」

 

 振り下ろされる蔓の群れを、赤く発光する右足が、回し蹴りの要領でまためて薙ぎ払う。

 

 その間に呼び出した数十羽の炎の鳥が、ルティシアの周りを旋回し、やがて炎の渦となる。

 

 襲いかかってきた無数の蔓は、瞬時に炎に包まれていく。

 

 しかし蔓は、その炎をも打ち消そうと数を頼みに次々と伸ばされてきた。

 

 いくつもの蔓を犠牲にして、やがて、炎が弱まってくる。

 

 一瞬で燃え尽きない位にまで弱まった頃、蔓は炎ごと中の人物に巻き付き始め……その動きを止める。

 

 次いで、澄んだ音を響かせて蔓が爆ぜた。

 

 それも意に介さない無数の蔓は、さらにそこへ殺到する。

 

 やがて炎が消え……高々と頭上で、両手を組み合わせていたルティシアの姿が現れた。

 

 組み合わされた両手のパーツの関係で、まるで水瓶から水が注がれるように――その両腕が正面へと振り下ろされる。

 

 炎の赤は消え、代わりに青白い冷気が広がっていった。

 

「オーロラエクスキューション」

 

 ――放たれた絶対零度に近いそれは、群がる蔦を瞬時に凍結……! 次々に破砕していく。

 

 獅子座から、水瓶座(アクエリアス)の黄金聖衣へと。

 

 凍てつくような冷たい風に、その背の純白のマントが大きくなびいた。

 

 冷気を纏い、水と氷を司る聖衣。

 

 やはり修復を終えていないそれは、火竜の血を引くルティシアと相まって、その全てを引き出す事は出来ないが……。

 

 

 少なくとも、凍結して砕け散った後に即座の再生は無かった。

 

 しかし、すぐにあちらこちらから別の蔓が生えてくる。

 

「ダイヤモンドダスト」

 

 竜へと少しずつ距離を詰めながら、避け、冷気で砕いていく。

 

 オーロラエクスキューションは放つまでに溜めが必要なため、それを必要としない技になるが。

 

 しかし、やはり数が多すぎた。

 

 蔓達によって四方八方から投げつけられてくる瓦礫を避け、拳や足で砕く隙を突くように、その足に幾重にも蔓が巻き付く。

 

「く……」

 

 凍てつかせようとする動作より速く、蔓はルティシアを高々と持ち上げると、その身体を振り回しながら横の建物へと打ち付ける。

 

 轟音と共に別の面から飛び出すと、今度は真上に持ち上げて、勢いよく地面に叩き付けた。

 

 衝撃によって、道路に無数の亀裂が走る。

 

 その蔓を砕こうとする少女に隙を与えず、さらに持ち上げ、再度叩き付けようと――

 

「ルティちゃん!!」

 

 ――した蔓を、桜色の光が吹き飛ばした。

 

「ダイヤモンドダスト」

 

 宙に投げ出されたルティシアが片手で放った凍気によって、即座に別の群れを凍てつかせる。

 

 別の場所から殺到してくる蔓達、その全てを桜色の光の輪が繋ぎ止めた。

 

 縫い止められた蔓達がもがくも、その輪から抜け出すことは出来ず、薙ぐような凍気によって順次砕け散っていく。

 

 離れた所に立つ、一つの影。

 

 射撃モードの機械式の杖――レイジングハートを構え、白いバリアジャケットに濃紺のマント、肩にはユーノを乗せたなのは。

 

 怯えてはおらず、逆に挑むかのような表情を浮かべていた。

 

 体勢を立て直したルティシアは、姉に視線だけを向けて叫んだ。

 

「姉さん! ここは危険過ぎますので、撤退を!」

 

「ルティちゃんだけを置いて、わたしはもう、逃げない!」

 

 ルティシアに、なのはも叫び返す。

 

 あの時……アラケスの時の様に、一人で逃げるのだけは嫌だ! という想いを乗せて。

 

「なのは!」

 

 月匣の中に入ってきた自分以外の存在は……敵。

 

 なのはにも、蔓は襲いかかってくる。

 

 地面を、建物を突き破りながら。

 

「お願い! レイジングハート!」

 

《protection》

 

 桜色の結界が防ぐ!

 

「姉さん! 魔晶石、いきます!」

 

 ルティシアが呪文を唱える。

 

 以前なのは達に説明した通り、ルティシアの魔晶石に記録されている魔法は、使用の際にはそのほとんどが呪文を必要としない。

 

 それでも彼女が呪文を唱えることがあるとするならば、正式な手順を踏むことで威力を高めているか、数少ない自力で身に付けた魔法を使う時である。

 

 今回は……前者。

 

 多少薄汚れてしまった白いマントが、魔晶石から解き放たれた魔力の余波ではためく。

 

 少女の様子に何かを察したユーノが、なのはの結界の上から防御魔法を重ねがけた。

 

「氷の世界より来たれ。幾千もの光……!」

 

 少女の左右に広げた両手から、アクエリアスの奥義に負けず劣らずな冷気が溢れ、氷霧が辺りを覆い隠していく。

 

「フロストプリズム」

 

 正面で重ねた手から、万物が凍りつく冷気が光を伴って吹き荒れた。

 

 なのはに迫っていた無数の蔓が、顕現した氷の世界にその身を封じ込められていき、光によって次々と砕かれていく!

 

 氷と光の嵐を放つルティシアの頬や指先など、数ヶ所の素肌が見えている部分が裂けてそこから赤いものが流れる。

 

 水瓶座の黄金聖衣に制御されている凍気による技と違って、魔術によるこれは勝手が少し異なる。

 

 それでも、少女が術を使用した際の予想よりも遥かに軽いこの程度ですむあたり、聖衣の加護はやはりかなり高いようだ。

 

 聖衣が万全の状態であれば、この自傷効果は完全に無くなっていただろう。

 

「ルティちゃん、血が! 大丈夫!?」

 

 術を終わり姉の元に駆け出すルティシアと同じく、結界を解除したなのはもまた駆け寄ってくる。

 

 セイティーグで初めて試用した時には、懸念を示した直接の指導役の姉や、旅好きで魔法オタクな姉がそばについていた。

 

 自分が使うとどうなるかという好奇心と、同じ火属性の者への切り札になるかもという判断で、姉を押し切って試した上位に位置する氷の魔術。

 

 唱えた直後に意識を失った少女が目を覚ました時、最初に視界に入ってきたのは、呆れて小馬鹿にしたような妹の顔。

 

 次いで、普段は湖面のように穏やかな笑顔の姉が、静かに怒気を放っている姿だった。

 

 その時は、二人の姉が気付かれないように妹を守っていたわけだが、何の対策もせずに使用していれば命を落としていたかもしれない。

 

 今回も、水瓶座の黄金聖衣が力を貸してくれているからこそ、ルティシアも使用に踏み切った。

 

「大丈夫です。それと、さっきはありがとうございます」

 

「それはいいよ! わたしも、ルティちゃんを助けるって決めたんだから」

 

 しかし、そう言うなのはは射抜くような鋭い眼を、ルティシアに向けていた。

 

「後で、ちょっとお話があるから」

 

「え?」

 

「後で、ちょっとお話があるから。良い? ルティちゃん」

 

「分かりました」

 

 治癒魔法で怪我を治す妹に心配そうにしながらも、なのははキッパリと言いきる。

 

 そんななのはを見ていたユーノだが、真面目な顔でルティシアを見て口を開いた。

 

「ルティシア、これは一体……?」

 

「簡潔にまとめると、植物を操る竜が、蔓を使って大暴れしています」

 

「なるほど」

 

「ユーノ君、これもジュエルシードだよね?」

 

 新たに生じたものや本体側から伸ばされてくる蔓に応戦するルティシアを、なのはもプロテクションや捕縛魔法を使って支援する。

 

「多分そうだと思う。でもこれは、暴走体にしても強すぎるけど……」

 

「じゃあ、ジュエルシードの場所さえ分かれば良いんだよね?」

 

「うん。でも、あの竜を構成しているにしてもどの部分にあるかは……」

 

「大丈夫、分かるよ」

 

 ユーノと話していたなのはがレイジングハートを見る。

 

 

「そうだよね、レイジングハート?」

 

《yes.area search》

 

 下に向けたレイジングハートの先端から桜色の魔力光が放たれ、なのはの足下に魔法陣が描かれた。

 

「リリカルマジカル。探して! 災厄の根源を!」

 

 なのはの力ある言葉を合図に、魔法陣から四方八方へと光が放たれる。

 

「姉さんの邪魔はさせません……ダイヤモンドダスト・レイ!」

 

 姉には絶対に近寄らせないと、近寄る蔓を片端から凍結させていった。

 

 その姉妹を、ユーノも防御魔法で守る。

 

 そして――。

 

「見つけた……!」

 

「本当に!?」

 

「どこですか?」

 

 蔓の対応をしながら、訊ねる。

 

「でも、それが一つじゃないの!」

 

 焦りを滲ませながら、なのはは告げた。

 

「ジュエルシードが、四つ……」

 

「四つ!?」

 

「それは多いですね……」

 

 驚く二人に、「まだ」となのはは頭を振る。

 

「もう一つ、ジュエルシードじゃない何かがあるの」

 

「えっ……!?」

 

「どういうものか分かりますか?」

 

「えと……青くて、9の字の宝石みたいなもの」

 

 聞かれて、サーチで得たイメージを言葉にした。

 

 なのはから伝えられたそれに、思い当たるモノがあったルティシアが「まさか……」と、小さく呟く。

 

 ユーノにはその呟きが聞こえたようだ。なのはに向けていた視線を、今度はルティシアに向ける。

 

「ルティシア、何か知ってるの?」

 

 蔓を始末しながら、迷いつつもルティシアは小さく首肯する。

 

「セイティーグで記録を見た覚えがあります。はるかな昔、神話の時代に封印されたという記録を」

 

 威圧的にこちらを見つめる竜を見据えて、少女はその名を口にする。

 

荒神(アラガミ)

 

 その言葉が聞こえたのかどうか、五つの頭が大きく咆哮すると、二人の元へ更なる蔓が放たれる。

 

 その上空。

 

 赤い月を背景に。

 

 巨大な生物と二人を見下ろしながら。

 

 黒い衣装を着込み、右手に棒状のモノを持ち、黒いマントとツインテールに結われた金髪を風になびかせて。

 

 一人の少女が滞空していた。

 

「ルティ」

 




 
 
 
next
 
 
猛威を振るう神話の生物に、姉妹達は苦戦を強いられる。

そこに新たに現れた黒衣の少女。
 
彼女は敵か、味方か?
 
 
ルティシア「一条の光明を」
 
 
 
(出展)

 水瓶座の黄金聖衣:聖闘士星矢シリーズより
 
 
 フロストプリズム:アリアンロッドシリーズより

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