魔法少女リリカルなのは~竜の国の社会勉強録~   作:ショウマ

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その17 「一条の光明を」

 

 

 赤い月が照らす別空間と化した、商店街。

 

 否、“商店街だった”場所。

 

 付近の建物は軒並み破壊され、あちらこちらに瓦礫が転がっている。

 

 これを成した、この世界で最も目立つ存在。

 

 小山程の体に、その両サイドから生える二対四つ、そして正面にもう一つ。計五つの長い首と、竜に酷似した頭部を持った緑色の怪物。

 

 それぞれに赤い瞳を光らせながら、咆哮する。

 

 その周囲には、舗装された道路を、剥き出しの地面を貫いて生えているる……無数の太い蔓。

 

 

 その太い蔓からは、もはや数え切れないほどのしなやかな細い蔓が伸びて、敵に襲いかかる。

 

 そこから四百メートルほど離れた場所。

 

 次々と襲いくる蔓を氷と炎、砲撃魔法で払いのけながら、姉妹とフェレットは奮闘していた。

 

 黒いアンダーウェアの上から、損傷激しい水瓶座の黄金聖衣を纏い、その背には純白のマントがなびいている。濃紺の髪と瞳の少女――ルティシア。

 

 白い制服のようなバトルジャケットを身に付けて、濃紺のマント、茶髪と青い瞳の少女――なのは。

 

 なのはの肩にいるフェレット――ユーノも防御魔法を駆使して、自分達を守っている。

 

「きりがないよー!?」

 

 砲撃魔法で蔓を薙ぎ払ったなのはが、魔力を消耗させて大きく肩を上下させている。

 

「明らかに足止めを狙っていますね。私達を近付けさせないつもりですか」

 

「うん。蔓に時間を使っても駄目だ。本体の竜をどうにかしないと」

 

 巨獣には知恵があるらしく、それは行動として現れている。

 

 そして蔓は確かに足止めを狙っているが、こちらを倒すことも狙っている。

 

 それは、差し向けられる尋常ではない本数からも、明らかだった。

 

「これでは、地上から近付くのは無理ですね。それなら……」

 

 ユーノが防いでいた蔓を凍らせて砕くと、ルティシアは空を見上げる。

 

「安全というではありませんが、空からですね」

 

「あ、わたしも空が飛べるようになったよ!」

 

 レイジングハートを構えるなのはに、しかしルティシアは首を横に振る。

 

「これ以上姉さんを消耗させたら、封印が出来なくなるかもしれません。四つもあるのですから」

 

 竜の、左右の首の根本に一つずつ存在するジュエルシード。

 

 ルティシアは封印作業 が出来ない為、これはなのはの作業になるのだ。

 

 そして、正面の首の根本にも。

 

「ルティちゃん。ジュエルシード以外の、青い9の形の石はどうするの?」

 

「私が対処します」

 

 なのはの腰を片手で抱き寄せると、そのままルティシアは大きく後方へ跳躍する……と同時に、数十本の蔓が今居た場所を押し潰した。

 

 着地と同時になのはを下ろし、亜空庫から右手で直接抜き身の刀を引き抜き、左手は白い霧のような物質が入れられている小瓶を二つ取り出す。

 

「ミストが奏でる永久なる二重奏で、眠りなさい」

 

 宙に放った二つの小瓶を刀で一閃。

 

 斬られた小瓶それぞれから光が放たれ、それは姉妹の足下へと。

 

 驚くなのは(とユーノ)を乗せた光は、そのまま上空へと昇っていく。

 

 ある程度の高さまで上昇すると、光は前後に伸びて白くに長い身体と、刀の様な角を生やした頭部を持つ生物へと変わった。

 

「ルティちゃん、この子(?)達は?」

 

「一刀獣と呼ばれる召喚獣の一種です。説明は終わってからにしますが、今回は空を移動する補助として呼び出しました」

 

 それを聞いて、なのはが足場になっている一刀獣を撫でながら、「よろしくね」と声をかける。

 

 眼下には、廃墟となった町並の中で、こちらを見上げている竜の姿があった。

 

 ただ、両サイドの四つの頭は姉妹の方を見上げているのだが、正面にある一つだけは違う方向を見上げている。

 

 竜本体の様子を確認しつつ、蔓が来ないかを警戒していたユーノが、「そういえば」とルティシアに向けて疑問を口にした。

 

「ルティシア。さっき言っていた、荒神(アラガミ)というのは何……?」

 

「私もそこまで詳しくはないのですが……。簡潔に言うと、遥か昔とても力の強いモノ達がいました。神とも呼ばれ崇め奉られている一方で、危害を加え厄災をもたらすモノもおり、そういった存在を荒神と呼んでいたようです」

 

 淡々と、昔に見た記憶を辿りながら話す。

 

「そして、ある特殊な力を持つ巫女がその命と引き換えに、全ての荒神達を封印したという内容だったと思います」

 

「それと」と、ルティシアはなのはに視線を向けた。

 

「下のあれを荒神に近いものとするならば、姉さんが見たのはその命とも言われる、(みたま)と呼ばれるモノです」

 

「つまり、それをどうにかすればいいんだね」

 

「はい。破壊するか、封印するかすれば」 

 

 話を聞いて、なのははレイジングハートをギュッと握り締める。

 

「頑張ろう? ルティちゃん、ユーノ君」

 

「はい」

 

「うん!」

 

 頷き合う三人。

 

 その時、眼下の竜が大きく口を開けて咆哮すると、そこに赤いものが灯る。

 

「回避を……!」

 

「わわ……!?」

 

 遅いが扇状に広がる炎の吐息と、速さのある火炎弾が吐き出された。

 

 ギリギリの所で回避が間に合い、何とか事なきを得たが……。

 

 次々と吐き出される二種の火炎を避ける為に、二頭の一刀獣はアクロバット飛行の様な軌道を描く。

 

 さらに、大量の瓦礫を押し退けながら、一本の木が生えてきた。

 

 幹は高く太く成長しながら、多くの枝を伸ばして、そこに青々とした葉を繁らせていく。

 

 みるみるうちに高層ビルに近い高さまで伸びた巨木は、ザワザワと不気味に枝を揺らす。

 

 その枝から、まるでそこに風の道でもあるかのように、次々と木の葉が大空へと舞い上がっていく。

 

 一刀獣を操り、アクロバット飛行で火炎弾と火の吐息を避ける姉妹を、輪で囲む様にして。

 

 輪を狭めながら、葉の一枚一枚が炎を纏い始める。

 

 周囲に気が付いたルティシアは、すぐさまなのはに注意を呼びかけた。

 

「これは……姉さん! 下へ、輪を避けて!」

 

「ふぇぇー!?」

 

 下から飛んでくるものを避けるのでいっぱいいっぱいなのはは、周囲に気が付いていなかった。

 

「なのは、囲まれてる!」

 

 ドーナツ状に囲んでいた炎の葉の一枚一枚が、徐々に一つの炎の輪へと繋がりながら、その穴を狭めてくる。

 

 その時、なのはの足場になっている一刀獣が、不意に下へと向きをかえた。

 

「ボクの指示でも大丈夫そうだ!」

 

 直後、二人を乗せた一刀獣の背後で、穴を無くした炎の輪が火柱を上げる。

 

 そして巨木は、再びざわめきながら葉を舞い上げようとしていた。

 

「やらせない! レイジングハート!」

 

《shooting mode》

 

 なのはの言葉に応えたレイジングハートは、杖形態のデバイスモードから、砲撃用のシューティングモードへと形を変える。

 

《divine buster.stand by》

 

 なのはの足下に現れる大きな魔法陣。巨木に向けて構えられたレイジングハートを、四つの環状魔法陣が取り巻く。

 

 それらによって魔力をコントロールしながら、その先端に球となって集まってくる桜色の光。

 

 

「撃ち抜いて! ディバイィーーン――」

 

《――buster》

 

 ユーノの指示で動く一刀獣の背中を足場に、放たれた桜色に輝く光の柱みたいな砲撃が、真っ直ぐに巨木へと。

 

 しかし。

 

「後少し……!」

 

 命中するその直前、邪魔をするかのように生えてきた無数の太い蔓が、巨木を守る盾となった。

 

 放射面で何重にも重なりあって、巨木にまで届かない。

 

 それを見て、ルティシアは両手を組むと高々と上げた。

 

 腕のパーツが、聖衣の名の通り水瓶に見える構え。

 

 ――その時だった。

 

 三日月状をした金色の光の刃が、高速で回転しながら蔓を根本からまとめて断ち切った。

 

 盾役の蔓が無くなった一瞬の間に、砲撃は巨木に届き……その巨体を打ち倒していく。

 

「オーロラエクスキューション」

 

 膨大な量の凍気が、最後の悪足掻きをしようとした巨木の頂上部、覆い繁る葉を瞬く間に凍結していく。

 

 倒れると同時に、派手な音を伴い砕け散る巨木。

 

「やったぁ! でも、今のは?」

 

「あれは……魔法?」

 

 なのはが付近を見渡すと……一人。地表で蔓を掻い潜る様に飛行し、引き付けるだけ引き付けると、一気に空へ上昇する女の子がいた。

 

 右手には長い棒状のデバイスらしき物を持ち、その先端部からは三日月状に金色の光の刃が伸びている。それは、さながら死神の持つ鎌。

 

 黒を基調とした衣服――バリアジャケットに黒いマント。金髪をツインテールに結った少女。

 

 なのはと同じ年位の様だが、ずっと洗練された動きをしている。

 

 少女はそのまま、竜の火炎弾や吐息を自分に引き付けていた、ルティシアの元へと向かっていく。

 

「ルティ」

 

 少女はルティシアの操る一刀獣の背に乗ると、ためらいがちに話しかけた。

 

 その聞き覚えのある友人の声に、ルティシアはため息を吐くと背後に視線を向ける。

 

「フェイト……あなたも魔導師だったのですか?」

 

 

「うん」

 

 少女――フェイトはどこか気まずそうに頷いた。

 

「ルティも?」

 

「私は違います。近いナニか、ではありますが」

 

 二人が話している間も一刀獣は火炎弾を避け続けているが、フェイトはその背に立ったままバランスも崩れない。

 

「近い……? あ、説明はいい。私も、詳しい説明は出来ないから。それと……」

 

 フェイトはチラリと、こちらに向かって来ようとするなのはに視線を送った。

 

「出来れば、余り関わらないようにしたいんだ」

 

「いつも言っていた事情ですよね。分かりました」

 

「うん……でも、あの子はともかく、機会があればルティには話すね」

 

 本当にすまなそうに話すフェイトに、ルティシアも深く聞こうとは思わなかった。

 

 無理に聞くつもりがないのはもちろんだが、彼女が母の仕事でこの町に来ているのを知っているためだ。

 

 食事も摂れないほどに忙しいというのも問題がありそうな気もしたが、それは自分が言うべきことではないと思ったルティシアは、代わりに別のことを口にする。

 

「関わるつもりが無かったのに、私達が苦戦しているのを見て加勢してくれたのですよね? ありがとうございます、フェイト」

 

 感謝を告げられたフェイトは微笑んで嬉しそうにしたものの、すぐにまた申し訳なさそうな顔に戻ってしまった。

 

「ううん。むしろ、お礼を言わないといけないのは私の方だから。今も……」

 

「今も……?」

 

 気まずそうに視線をそらすフェイトに、ルティシアも首を傾げる。

 

 むしろ、今助けられたのは自分達ですが、と。

 

 気にはなったが、今はまだ戦闘中でなのはも間近に迫っているため、手短に打ち合わせることにした。

 

「竜の元になるコアみたいなものが、左右の首の付け根にあるのですが、砲撃魔法は可能ですか?」

 

「うん」

 

「仕掛けますので、難しいと思いますが上手くタイミングを合わせて下さい。この子は使って構いませんので」

 

「任せて」

 

 ルティシアは自身の一刀獣から、なのはの方へと飛び移った。

 

 それに合わせて、フェイトもなのはから離れるように一刀獣を移動させる。

 

「あ……! 待っ――」

 

 それを見てなのはが思わず声をかけるが、すでに金髪の少女は届く範囲にはいない。

 

 よって、疑問は真後ろのルティシアへと。

 

「ルティちゃん! あの子は?」

 

「ただの通りすがりの魔導師らしいです」

 

「ただの?」

 

「通りすがり?」

 

 ルティシアの説明に、二人がキョトンとしながら言葉を返した。

 

「ここには用事があって来たらしく、たまたま苦戦している姿が見えたから、手伝ってくれるそうです」

 

 嘘や作り話が苦手なルティシアではあるが、過去のフェイトの話を引用しながら話す。

 

「じゃあ、後でお礼言わないとだね!」

 

「魔導師が……魔法がないこの世界で用事? まさか……」

 

 笑顔のなのはとは正反対に、ユーノは何かを考え込でいた。

 

 ルティシアは下の竜を見据えながら、水瓶座の黄金聖衣を解除する。

 

 聖衣はオブジェ形態になると、ネックレスへと戻っていく。

 

 次の行動は決まっているため、アンダーウェア姿のままで話を続ける。

 

「仕掛けます。姉さんは封印作業を」

 

「ふぇ!? 炎が邪魔で撃てないよ……?」

 

「私が止めてみせます。それに、これ以上長引かせると姉さんの魔力が続かないでしょうし」

 

 巧みに一刀獣を操りながら、今はフェイトが火炎を引き付けてくれている。

 

 思わぬ助っ人となのはの魔力消費具合、終わらせるなら、今が最大の好機であろう。

 

「これ以上、危ないことをしちゃ駄目だよ?」

 

「はい。大丈夫ですから信じてください」

 

「「信じられない」」

 

 頷くルティシアだが、そんな彼女に、二人は声をハモらせながら即答した。

 

「酷いですね。当たっていますが」

 

「ルティちゃん!」

 

 なのはの叫びを背中に受けながら、ルティシアは高く跳躍する。

 

 三度目となる黄金の輝きが、その身を包む。

 

射手座(サジタリアス)

 

 左手には黄金の弓、その背中には矢筒と、一対二枚の黄金の翼。

 

 バサリと、煌めく翼を広げる。

 

 纏う際の黄金の光に反応したのか、こちらに飛んできた火炎弾を右手で受け止める。

 

 空中で動きを止めた火球は、やがてほどけるようにして分解……霧散していった。

 

 一刀獣を守るためにあえて回避を選択していたが、火竜であるルティシアには炎は通用しない。

 

 あくまでも、それが“普通の炎”であれば。

 

 同じように血が用いられている雷に関しても、元々使う予定になく少量だったということもあって、炎のようにはいかなかった。

 

 火球を打ち消し、高く掲げた手の先に、黄金の小宇宙(コスモ)で出来た光の球が生まれる。それはどんどんと大きさを増し――。

 

「いきます。インフィニティブレイク」

 

 右手を振り下ろしたのを合図に、光の球が弾けた。

 

 弾けた光球からは生まれた、その名の通りの無限とも思われる程の光の矢が、雨となって一斉に降り注いだ。

 

 地上にいる蔓を、そして竜そのものを……光の矢は次々と貫いていく。

 

 痛みと、それによる激しい怒り。

 

 咆哮する竜に、新たに迫る二色の閃光。

 

 竜の左右の首の付け根を狙って、桜色と金色の光の柱――なのはとフェイトによる砲撃魔法が突き刺さる。

 

 ルティシアもまた、矢筒から取り出した黄金の矢をつがえた。

 

 過去にあった数々の戦いで、多くの悪神を射抜いてきた矢を。

 

 黄金の弓を限界まで引き絞り、災厄を振り撒く神――荒神へと向けた。

 

〈解析〉(アナライズ)〈魔力感知〉(センスマナ)

 

 残り少なくなった魔晶石の魔力を使って、正確な場所を確かめる。狙うは……正面の首の付け根にある、わずかな一点。

 

 強い力を感じるそこに――。

 

「一条の光明を」

 

 ――矢を放った。

 

 空中を駆けるように飛んだ矢は、狙い過たず、その場所を……貫いた。

 

 五つの頭が同時に苦悶の雄叫びを上げる。

 

 その身体から、四つの青い宝石が分離していく。

 

 二つはなのはの元へ。

 

 そして、残りの二つは――。

 

「バルディッシュ」

 

《capture》

 

 フェイトの持つ、渋い男声のデバイスの中へと。

 

「え!? え!?」

 

「やっぱり狙いは……! でも、どうして!?」

 

 その行為になのはは混乱し、何かを確信したユーノも、しかし新たに生じた疑問に戸惑いの声を上げた。

 

 ジュエルシードがこの世界にばらまかれてしまったのは、誰も知らないはずなのに、と。

 

 ジュエルシードを収納した金髪の少女は、躊躇することなく一刀獣からどこかへ飛び去っていく。

 

「あ、ま……待って!?」

 

 手を伸ばしながらのなのはの声は、今度も届くことなく、その姿はすぐに見えなくなる。

 

「姉さん、とりあえず下に降りましょう。月匣が消えたら面倒ですから」

 

 なのははまだ誤魔化せるかもしれないが、黄金聖衣と一刀獣は目立ち過ぎる。

 

「う、うん……」

 

 聖衣を外して私服姿になった妹に促され、なのはは後ろ髪が引かれる思いをしながら、一刀獣を地上に向けた。

 

 なのはがその背から地上に足を着けると、ルティシアはフェイトがそのままにしたのも含めて、二匹の一刀獣を解除する。

 

 構成されていた霧のように二匹が、赤い月と共に消え去っていった。

 

 瓦礫となった世界は、賑やかな商店街の姿を取り戻していく。

 

 その中で、なのははあの金色の少女が消えた方向を見つめ続けていた。

 

 そんな姉の様子は心配だが、ルティシアには別の懸念があった。

 

 フェイトの事もそうだが、それとは別に。

 

「(矢は魂を貫いていない……? 絶命していたのならば、もっと早くに月匣は消えたはず)」

 

 まるで矢が当たる前に魂が移動し、二人が降りるのを見計らってこの場から姿を消したかのような、そんな不可解さ。

 

 三人の心に、小さな刺のようなものを残しながら、今回の騒動はようやく終わりを迎え――てはいなかった。

 

 その日の夜。

 

 モヤモヤしたものはあるものの、一日のあれこれを終えて、後はもう寝るだけとなった姉妹。

 

「ルティちゃん、ちょっと良いかな?」

 

「何でしょう?」

 

 ベッドに座ったままのなのはが、横になろうとしていたルティシアに声をかけた。

 

 そちらを振り返れば、なのははこちらを見ずにドアの方を向いている。

 

 ルティシアもそちらを見てみるが、特に変わったものがあるようにも思えなかった。

 

「ちょっと、ここに座ってくれるかな?」

 

「床……ですか?」

 

 足下を指差すなのはに素直に従い、首を傾げながらも床に腰を――。

 

「正座」

 

「え?」

 

「正座」

 

 そこで初めて、ルティシアは気が付いた。

 

 いつもは明朗快活ななのはが、全く笑っていないことに。

 

「正座」

 

 繰り返されるそれに、ルティシアはなのはの前で正座する。

 

「あの時のこと、説明してくれるかな?」

 

「あの時……?」

 

「魔法を使っていた時に怪我をしたこと」

 

「あ…………」

 

 フロストプリズムを使った後のやりとり。

 

 特に気にしていなかったためすっかり忘れていたルティシアだが、なのははしっかり覚えていたらしい。

 

 今の悩みとは別と、しっかり線引きをして。

 

「ね、ルティちゃん? きちんと、説明して、ほしいかな?」

 

 口調は丁寧だが、有無を言わせぬ迫力が今のなのはにはあった。

 

 そして、正座している少女は嘘や作り話といったものを苦手としている。

 

 怪我をした理由を話すだけのはずが、セイティーグで起きたことも話すことになってしまい――。

 

 この日は、夜遅くまで部屋の明かりが点いていた。

 

「ルティちゃん、ちゃんと聞いてる? 無理や無茶なことばかりしていたら、いつか大変なことに――」

 

「……は、いえ、しかしそれは……はい」

 

 

 




 
 
next
 
 
すずかの家で開かれたお茶会。

思い悩むなのはの前に、件の少女が現れる。
 
 
フェイト「ごめん」




(出展)

 射手座の黄金聖衣:聖闘士星矢シリーズより
 
 荒神など:ブルーシードより

 
 今回暴れた魂の持ち主は“ヤマタノオロチ”。

 ですが、姿はドラゴンクエスト3などの『やまたのおろち』となっております。

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